2016年9月
(調査報告書)医療・介護データ活用のための情報科学と社会基盤/CRDS-FY2016-RR-03
エグゼクティブサマリー

 本報告書は、わが国の医療・介護データの活用状況、関連する技術動向や政策動向、諸外国の動向等に関し2015年度に実施した文献等調査、有識者へのヒアリングやワークショップでの議論、およびこれらの調査から得られた、わが国が今後進めるべき方向性について取りまとめたものである。

 本調査を実施した背景は、社会的には、少子化・超高齢化の進展、それに伴う毎年の医療費・介護費の増大と若年世代に対する負担増、国と自治体における財政負担の増加など、わが国の社会保障を廻る深刻な現実がある。また科学技術的な背景としては、近年のICT、ビッグデータ関連技術の急速な発展がある。これらの状況は、医療・介護提供の現場や医療技術開発だけでなく、地域医療計画などの政策面に対しても極めて大きな影響をもたらし始めている。

 一連の動きは、ICTやビッグデータの活用が可能となる「超スマート社会」における「医療・医学・医療政策」のあり方に深く関わっている。すなわち医療・介護データとオミックス研究の成果を統合することにより、医療や医学研究だけでなく、医療政策もダイナミックに変貌し、以下の3つのレイヤーにおいて大きなインパクトを与えると予想される。

① 個々の患者に提供する医療の改善:データ通信、コミュニケーションの拡大により、全く新しい医療技術の開発や医療技術の提供が可能となる。すなわち個々人に、よりきめ細かい医療を提供と、データに基づく高精度の疾患予測や重症化予防が実現する。オミックスデータはこうした医療に重要となる。

② 患者集団に対する最適の医療・健康サービスの提供と疾病に関する知識の構築: ビッグデータを活用して、サブグループ化した患者集団に最適の医療・健康サービスを提供し、同時に、疾患に関する知識を構築することができる。すなわち介入試験や疾病登録などの観察研究が容易になり、新たな医療技術の開発や評価も推進される。介入試験が困難な場合でも、時系列化したビッグデータを解析することによって病態のサブグループ化や治療効果の予測・評価が可能となる。オミックスデータはこの点についても重要である。

③ 日本の医療提供体制の制御: わが国の医療は公的に支払われるが、病院の8割以上が民間によるものであるため、米国のような市場原理でもなく、欧州のような国家管理によるものでもない独自の体制を構築している。このため医療のステークホルダーが協議をし、限られた医療資源配分を最適に配分しなければならない。そのためのデータや政策決定に、ICTや医療・介護データは重要な役割を果たす。

 このように医療におけるICTの推進と医療・介護ビッグデータの活用により、患者個人単位のミクロなレベルから、地域・国のマクロなレベルまで様々な効果をもたらすことが期待される。これはまさに「超スマート社会」における医療、すなわち「超スマート医療」であり、これを実現するためにはさまざまなレベルの医療情報の有機的な活用が求められる。そのための健康・医療関連データとして、わが国には世界有数の大規模な健康・医療関連データが存在しており、必要に応じて他のデータと組み合わせながら、健康管理や医療・介護、さらには医療政策等に活用することが期待されている。一方、わが国の医療ビッグデータには利点だけではなく欠点もあり、実際にこれらのデータを活用していくにはいくつもの課題があることが、調査を通じて明らかになった。

 これらの詳細について、科学技術的背景・社会的背景は第1章で、調査を通じて得られたわが国の課題は第2章で、今後進めるべき方向性については第3章でまとめた。また第4章では2016年2月に開催したワークショップの内容をまとめている。

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