2017年3月
(戦略プロポーザル)未来エネルギーネットワークの基盤技術とエネルギー需要科学 ~2050年超の一般家庭でのエネルギー需給構造変化に向けて~/CRDS-FY2016-SP-04
エグゼクティブサマリー

 
 本戦略プロポーザルは、2050 年超に向けて、電力供給者と一般家庭、あるいは一般家庭間をつなぐ低圧配電系ネットワークのあり方、さらには一般家庭における人の行動も含めたエネルギー需要に係わる課題について、推進すべき科学技術、基盤研究を提案するものである。

 2016 年に閣議決定した「地球温暖化対策計画」では2030 年の温室効果ガス(GHG)排出量削減26%(2013 年度基準)の必達目標に加え、2050 年長期目標としてGHG80%削減を目指すことが示された。この2050 年長期目標の対応策としては電力のCO2フリー化等が重要とされているが、現状、我が国ではその実現方策として再生可能エネルギーの拡大、特に家庭用も含めたPV の導入拡大が有望な選択肢とされており、今後のコスト低下も相まって一般家庭へのPV 導入数は膨大になると見られている。またPV 以外の家庭用エネルギー機器である燃料電池、蓄電池(電気自動車やプラグインハイブリッド利用含む)についても、コスト削減や導入施策等により、2050 年時点の一般家庭全体で、大きな発電容量、蓄電容量を持つと考えられている。
 一方で大量導入が見込まれるPV は発電量が日照条件に依存した自然変動電源であり、風力発電とともに発電量の制御が難しい電源である。現在の電力システムは電力需給を同時同量でバランスさせる必要があるため、PV 大量導入に対して、需給調整の課題が発生する。2030 年に向けては、デマンドレスポンス、PV 等の発電量予測精度向上、グリッドのスマート化として情報通信技術(ICT)を用いた系統運用の一層の効率化・高度化などの対策が検討されているが、さらにその先の、一般家庭へのPV 導入拡大を想定した対応は必ずしも十分ではない。そこで本戦略プロポーザルは、現行対策後に必要となるであろう2050 年に向けた課題に対応した研究開発戦略の提案となる。

以上を踏まえて2050 年時点の一般家庭のエネルギー需給における主たる二つのボトルネック課題を抽出した。

  • 低圧配電系ネットワーク内の一般家庭で発電した電力をどのように電力システムの中に取り込み活用するか、その際の需給調整はどうするかという電力需給面の課題。
  • 2050 年における一般家庭のエネルギー需要変化の予測や需要の能動化がどの程度可能かをという課題。

 上記課題に対して、前者は通信分野のインターネット技術の発展からのアナロジーとして、自律分散的な技術・システムの研究開発(自律分散的な電力潮流制御技術、さらには優先度を決めるための市場メカニズムなどの仕組みを含めたシステム、家庭内の機器制御など)を提案している。
 また後者の一般家庭におけるエネルギー需要の課題については、エネルギー需要が「派生需要」であるため、その需要の変化を本質的な部分にまで掘り下げて推定するために、エネルギーを利用する人の行動にまで踏み込む必要性を考えた。このためエネルギー消費に関する家庭内の人の行動も含めたモデル構築やそのための計測、さらには人が限定合理的な行動をすることを踏まえた行動科学、行動経済学からの研究を提案している。

 本提案の研究開発課題を推進するためには、産学官で情報共有の場を設定し、コンセプト検証のための小規模な実証研究を行いながら、システムと要素技術の両面から技術進展させ、早い段階で効果を示すことが必要になる。その上で局所的導入の展開、さらにそれらをつなげてネットワーク化を拡大するといった段階を踏まえた展開が必要となる。

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