2017年3月
(戦略プロポーザル)我が国における拠点形成事業の最適展開に向けて -組織の持続的な強みの形成とイノベーションの実現のために-/CRDS-FY2016-SP-03
エグゼクティブサマリー

 
 我が国では2000年代半ば頃から科学技術関係予算の伸びが鈍化し、特に国立大学においては2004年の法人化以降、運営費交付金が継続的に削減されてきたこともあり、国際社会における我が国の研究力の相対的な低下が懸念される状況になっている。一方、我が国が様々な社会的課題に対応していくうえで、科学技術イノベーションが重要な役割を果たすことへの期待はますます高まっている。このため、限られた予算の中で科学技術イノベーション推進に向けた政策を展開していくこと が重要な課題となっている。

 そうした政策のなかでも、事業規模が大きく政策的な重要性が高い制度として、最近15 年ほどの間、各種の拠点形成事業が創設されてきた。これらの拠点形成事業は、卓越した教育研究拠点の形成を通じて、創造的な研究成果の産出、教育研究体制の高度化、イノベーションの創出などの政策目的を達成してきた。加えて、拠点が所属する組織全体の制度改革への波及や、累次の資金獲得による固有の強みの形成など、さらに幅広い効果がもたらされたケースもある。

 一方で、これらの拠点形成事業では、新規の拠点創設を指向する事業が非体系的に林立してきた結果、多様な形で問題が顕在化している。その主なものとしては、拠点の所属機関の長期的な戦略立案の困難さにより所属機関の疲弊を招いたことや、一部の大規模大学等に採択拠点が集中し大学間に教育研究環境の格差が生じてきたこと、幅広い教育研究分野の醸成が制約され多様性の確保が容易ではなくなりつつあることである。さらに、事業期間終了後に人材育成/確保やインフラ整備の継続的な実施が難しく、本来先進的な教育研究を促進すべき拠点の活動が停滞し、拠点が曖昧な形で所属機関に残存している場合もある。

 このような問題意識に基づき、本戦略プロポーザルでは、新拠点の創設及びその維持を指向した拠点形成事業が林立する従来の政策から、各大学等の現状に適確に対応した戦略的な政策への転換をめざし、以下を提案する。

 <拠点形成事業のグランドデザインに向けて>
   提案1:大規模拠点はトップダウン的要請に対応
   提案2:支援規模を緩やかに3層構造化
   提案3:多様な教育研究分野の支援を重視
   提案4:大規模研究大学以外に対する支援を確保
 <柔軟で持続的な拠点運営の実現に向けて>
   提案5:所属機関における拠点のライフサイクル確立
   提案6:ネットワークの構築・強化
   提案7:拠点運営の戦略的な資金計画を推進

 拠点形成事業は、科学技術イノベーション政策の推進に重要な寄与を成すものであるとともに、大学改革の推進に重要な役割を果たしている。本戦略プロポーザルでは、そうした拠点形成事業の特性を踏まえ、科学技術イノベーション政策と高等教育政策の双方の観点から拠点形成事業のあり方を検討する。拠点形成事業の役割や意義についての認識が関係者の間で共有され、今後の方向性についてさらに議論が深まることが望まれる。

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