2017年3月
(戦略プロポーザル)トポロジカル量子戦略 ~量子力学の新展開がもたらすデバイスイノベーション~/CRDS-FY2016-SP-02
エグゼクティブサマリー

 
 「トポロジカル量子戦略」とは、近年急速に発展しているトポロジカル物質群およびトポロジーに付随して発現する多彩な物性に関する研究開発に着目し、そこで生じている量子力学の新たな展開を加速すると共に工学応用の実現を目指す研究開発戦略である。現在、情報通信技術や人工知能技術の進展を支える電子デバイスに対する微細化・高速化・低消費電力化への要請が世界的に高まり続け、既存のデバイスや技術では性能向上の限界が顕在化している中、新しい技術的なパラダイムが希求されている。このような状況の中、トポロジカル物質群が示す特異な現象・機能を活用することで、量子コンピューティングやスピントロニクス、フォトニクス等における従来の技術的枠組みを超える新規な概念を導入し、デバイスイノベーションを起こすことを目的とする。

 本提言では、物質が持つトポロジカルな性質を活用した具体的な工学応用へ向けた技術開発と、関連する学術基盤の一層の強化を掲げ、取り組むべき研究開発課題として「理論体系の構築」「物質創製・制御基盤技術開発」「デバイス応用技術開発」の3つが挙げられる。これまで、トポロジカル物質群の発見や現象は、理論研究が先行してその存在を予測し、実験によって確認されてきたが、今後の工学応用を実現するためには、理論を体系的に構築し、トポロジカル物質群が活躍するデバイス工学の舞台を磐石にすることが不可欠となる。さらに、新しい物質の創製と、材料・工学的な制御技術、その際同時に求められる新たな計測・評価技術を開発することが必要である。
 具体的な応用先として量子コンピューティング、スピントロニクス、フォトニクスの3つをまずは念頭におくが、さらなる新概念の創出も期待されることから、例えば、フォノニクス、メカニクス、化学反応など、新分野の応用展開可能性についても検討する。

 トポロジカル量子戦略の研究開発にあたって、これまで行われてきた基礎研究から研究開発のステージを一段上げるギアチェンジが求められ、物性物理学、数学、素粒子物理学の学術的知見を備える研究者と、工学研究者や企業研究者が共同して取り組むことが重要である。さらに、海外研究機関との戦略的な連携や、人的な交流についても積極的に検討することが重要である。

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