2016年1月
(戦略プロポーザル)次世代ものづくり ~高付加価値を生む新しい製造業のプラットフォーム創出に向けて~/CRDS-FY2015-SP-01
エグゼクティブサマリー

製造業は、我が国のGDPの18.5%、雇用の15.4%を占める産業であり、経済面、雇用面の双方において極めて重要である。その製造業の競争環境が近年急速に変わりつつある。本プロポーザルは、その変化に対応するための国を挙げた取組について、その指針を提案するものである。我が国の製造産業は、性能・品質の高い製品を提供することにより競争優位を獲得してきた。しかし、デジタル家電等の分野を皮切りに、この状況が変化しつつある。新興国における製造企業の台頭や、近年の急速な情報ネットワーク化、グローバル化の影響を受け、ものづくりの価値の源泉が製品そのものに留まらず、ユーザとの関係構築を行うに至るまでのサービスを含めたバリューチェーン構築のあり方に移って来ているためである。この新たな価値構築を行うことを前提とした製造業を我々は「次世代ものづくり」と定義した。「次世代ものづくり」においては、例えば、車や航空機等の製品を製造するだけでなく、販売後の運用・保守や新規のサービスを拡充・創出し、ユーザが製品をより効果的・効率的に活用する方策をユーザと共に考え提案する「価値共創」をどのように行うか、そしていかにしてより良いサービスを提供できるかが鍵となる。このような中、あるバリューチェーンの中の基幹的な共通機能を、他社が真似できない質的・量的差別化能力をもって提供するプラットフォーム・ビジネスを担うAmazon、Google等のインターネット系企業「プラットフォーマー」が製造業の強力な競合、あるいは重要なアライアンスパートナーとして注目されている。本プロポーザルは、これらプラットフォーム・ビジネスとものづくり産業との統合化により、製造業のバリューチェーン構築競争を科学技術・イノベーション政策の側面から支援することを目的に、産学官を挙げて取組むべき研究開発課題とその推進策についての提案を行う。

産学官を挙げて取組むべき研究開発課題は、「①プラットフォームの要件定義に係る研究」と「②共通基盤技術の開発」とに大別される。「①プラットフォームの要件定義に係る研究」では、何がプラットフォーム・ビジネスになるのか、プラットフォーム・ビジネスを支えるシステム・技術は何か、新市場形成に必要な規制・法制度はどのようなものか、社会受容性評価を踏まえ、どう社会システムをデザインするかといった研究に取組むことが必要となる。このような研究は、工学と人文社会科学領域とが連携する必要がある。「②共通基盤技術の開発」では、プラットフォーム・ビジネスを支えるため、産業ドメインに依存しない、共通的に取組むことが求められる機能に着目した技術開発が必要となる。ここでは、ユーザの理解を深め価値共創を行うことを目的としたサービス機能、迅速かつ効率的なものづくりを実現する製造機能、サービス・製造に共通する機能についての共通基盤技術の開発を提案する。

上記研究開発課題に取組むにあたっては、その推進策として、これまで省庁、産業、研究領域、政策ツール毎に個々に取組まれてきた様々な壁を越えて、統合的に研究開発を推進することが求められる。このためにはまず、次世代ものづくりプラットフォームについて、産学官での議論の場や産学官が連携した実証プロジェクトの推進等が必要となる。また、プラットフォーム・ビジネスとものづくりの統合のためには、経営とサイバーとフィジカルとを自在に構成(デザイン)できる人材の育成が欠かせない。ベンチャー創出を益々活性化させることも必要となる。次世代ものづくりにおける産業競争力強化に向け、これを担う人材、事業アイデア、ベンチャー等が次々に生まれる基盤を構築する必要がある。このためには、新しい価値のデザインや技術統合による社会への橋渡しが必要であり、アカデミア、とりわけ大学工学部がキープレイヤーとなることが期待される。

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