2013年8月
(戦略プロポーザル)データ科学との連携・融合による新世代物質・材料設計研究の促進  (マテリアルズ・インフォマティクス)/CRDS-FY2013-SP-01
エグゼクティブサマリー

物質・材料の「設計」に必要な新たな方法論として、マテリアルズ・インフォマティクス(materials informatics)を「計算機科学(データ科学、計算科学)と物質・材料の物理的・化学的性質に関する多様で膨大なデータとを駆使して、物質・材料科学の諸問題を解明するための科学技術的手法」と定義し、その重要性を提案する。
先端材料の開発はエネルギー、医療、素材、化学など多くの産業を活気づける源で、政府は、過去10数年間にわたって、研究開発に多大の投資を行ってきた。しかし、今日でも研究室で新発見された先端物質が実用化され市場に出るまでの過程は、一般的に10-30年という長期間を要する状態が続いており、本過程を加速・短縮するための方策が求められている。
そのための新しい手段として、インフォマティクスを導入し、大量・複雑なデータから知識(規則)を帰納的に獲得するアプローチ(データ駆動型)を構築することを提言する。これによって、理論やモデルに基づく演繹的なアプローチ(原理駆動型)との併用によるシナジー効果が生み出され、今後の物質・材料研究を大きく進展させることにつながる。
想定される主な研究テーマとして、「大量で、多種・多様なデータの分析による構造・物性相関の法則の抽出、複雑な現象等の解明」、「大量データからの物性あるいは構造の予測」、「最適化手法などを用いた物質(構造)探索」、「マルチスケール・モデリング」、「高次元データを用いた数理モデルの高度化」、「物質空間あるいは解析データの可視化(方法として俯瞰的可視化、ハイライト的可視化、対象として画像・スペクトルのような一次データ、数値群などの二次データ)」などが挙げられる。
このようなデータ駆動型アプローチの研究テーマを促進するためには、一研究室での実施が困難な場合が多く、多様な専門性をもつ人材・グループが複数関与することが必須である。したがって、このような研究を促進するためには、マテリアルズ・インフォマティクスのためのオープンなプラットフォームを構築し、アカデミアから産業界に至るまでマテリアル・イノベーションにかかわるすべての人が容易に全データを使用できる環境の整備があわせて進められる必要がある。

以上の取組みを進めるため必要な政府や研究機関の役割は以下の通りである。
◆政府の役割
国としては、長期的な視点に立った継続性のある支援が必須であり、ハードインフラの整備・共有だけでなく、物質・材料に関する多種多様なデータを研究者が利用できる「知的基盤(ソフトインフラ)」の整備・共有が火急の責務である。
具体的には、下記を関連するプログラムとして、実施することを提言する。
・データ駆動型研究プログラムの創設
データ利用・解析手法のFS(可能性研究)プログラム(年間1000万円〜2000万円程度の研究費で、物質・材料科学者とデータ科学者からなる複数名の共同提案を原則。学会、ワークショップなどを通じた異分野交流期間を確保)を実施し、手法の確立・高度化を図るとともに、成果事例を創出する。
・データ統合・研究開発センターの設立
サービスセンターとしての機能も有する、中核的データ統合・研究開発拠点を整備し、データマネジメントの方針、あるいは収集するデータの種別や範囲の決定やデータ・ツールの管理を行う。複数の研究機関や大学が、標準的なデータフォーマットを使い、情報を交換し、材料開発に生かすというマテリアルズ・インフォマティクスのシステム構築を進める。

◆研究機関の役割
マテリアルズ・インフォマティクスのオープンプラットフォームを構築するためには、国の財政的な支援の下、大学、公的研究機関からの持続的貢献が不可欠である。最も重要なことは、本提言に掲げるような新興・融合分野をアカデミア自らが発見、奨励し、必要な(意欲のある)人材を積極的に登用し、インセンティブを付与する評価システムを構築することである。

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