科学オリンピックだより
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「科学オリンピックだよりvol.8」
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 日本代表のなかに、今回の震災を身近に経験した高校生がいます。国際物理オリンピック代表の佐藤遼太郎さん(宮城県・秀光中等教育学校6年)です。多賀城市にある学校が地震の被害を受け、自宅近くにまで津波が押し寄せました。

 3月の時点で代表候補11人に残っていた佐藤さん。移動や通信連絡が困難な状況のなか、「最終選考にはぜひ行かせたい」との両親の意向を受け、岡山大学での最終選考を兼ねた合宿に参加し代表の座を勝ち取りました。「答案の書き方がしっかりしていて、迫力があった。彼の芯の強さを感じました」と並木雅俊・物理オリンピック日本委員会副理事長は振り返ります。

 佐藤さんはタイでの国際大会に向けて、「無事に参加できることに感謝し、チームメイトや他国の選手と交流を深め、大会を有意義なものにしたい」とコメントを寄せています。
 5月8日〜13日、米国カリフォルニア州で開催された、第62回国際学生科学フェア「Intel ISEF(International Science and Engineering Fair)」に、世界65カ国から1,500人以上の高校生たちが集い、研究成果を披露しました。

 日本からの参加者の一人、木村麻里さん(選考当時2010年12月、立命館高等学校3年)は、「小さい頃から折り紙好き」だったこともあり、今回『折り紙を用いた多面体の切断・分割と空間の充填』と題したプロジェクトに取り組みました。

 大会期間中、木村さんの研究はメディアからの取材を受けたり、他国の学生たちからも質問を受けたりと、注目度の大変高いものでしたが、残念なことに受賞には至りませんでした。「発表の仕方や練習もがんばってきたけれど、他のプロジェクトを見て、元々の勉強が足りていなかったと感じました。日本代表として、自分がこの会場にいてもよいのかとさえ思いました」と、授賞式直後には肩を落としていました。しかし、しばらくすると「ここでやめたら中途半端なまま。今後も数学の勉強を続けて行こうと思います」と、いつもの笑顔で未来へ向けての力強いコメントを語ってくれました。