科学オリンピックだより 2008vol.1

雄の“美しさ”は雌しだい!?
科学オリンピックだより
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過去問題の解説
より多くの子孫を残すための進化、それが性淘汰。
目指せ!科学のアスリート
国際科学オリンピックシンポジウム
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科学オリンピックだよりVol.2
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尾の長さが人気の決め手
 問題文で登場したコクホウジャクは、スズメを少し大きくしたくらいの鳥です。繁殖期になると雄は尾羽の一部を伸ばし、その長さは体長の4倍の50cmになることもあります。一方、雌の尾羽は7cmほどしかなく、体の色も地味な茶色をしています。このように、同じ種でも雄と雌の体の作りが大きく異なることを性的二形といいます。
カブトムシ
クジャクの雄の華やかな羽、ゴリラの性差による体格差、シカやカブトムシの雄にだけ生える角などがそれにあたります。コクホウジャクの雄は尾羽を伸ばすだけでなく、それをなびかせながら縄張りの上を低く飛び回り、求愛します。この行動をきっかけに、雌は配偶行動を起こします。このように一連の行動を引き起こす特定の刺激を信号刺激(鍵刺激)といい、その多くは本能として生まれながらに備わっています。
 実験結果の棒グラフを見ると、尾羽の長い雄ほど多くの巣を獲得し、短い雄ほど巣の数が少ないことがわかります。つまり、尾の長い雄ほど雌から人気があり、より多くのこどもを残すことができたのです。このことから、雌が雄の形質のひとつに着目し、それを基準に配偶相手を選んでいることが実証されました。このように、雌がより著しい形質を持った雄を好むことでその形質が一層進化する現象を「異性間淘汰」といいます。※一部では、タツノオトシゴやモルモンコオロギのように、雄が雌を選り好みする種も存在します。
より多くの子孫を進化・性淘汰  
 雌による選り好みの他、雄同士が雌をめぐって競争する場面も自然界では多く見られます。前述したゴリラの体格差、シカやカブトムシの角などに見られるように、繁殖競争を通じて体が大きくなったり、武器となる形質が発達したりする現象を「同性間淘汰」といいます。「同性間淘汰」と「異性間淘汰」は、繁殖に有利な形質を進化させる現象として《性淘汰》という学説にまとめられました。提唱したのはイギリスの博物学者、チャールズ・ダーウィンです。
ゴリラ
 ダーウィンは自著『種の起源』で進化論を展開したことでも有名です。彼は進化論の骨子として《自然淘汰》という学説も提唱しました。《自然淘汰》とは、生物が生存に有利な形質を進化させる現象をいいます。例えばグッピーの雄の場合、《性淘汰》を通して獲得した美しい色や大きな尾びれは繁殖では有利に働きますが、《自然淘汰》の点から見ると敵から見つかりやすくなり、生存上のリスクを負うことになります。このことから、両者のつり合いが取れる範囲内で生物の進化が起こっていると考えられます。
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