拠点
革新的な造水・水循環システムの実現
プロジェクトリーダー
- 大西 真人
(株)日立製作所
水・環境ビジネスユニット
CTO
研究リーダー
- 遠藤 守信
信州大学
特別特任教授
目指すべき将来の姿
拠点概要
地球規模でみると使える水は少なく、このまま人口増加が続けば、安全・安心な水の確保はますます難しくなります。そんな状況のなか、信州大学のアクア・イノベーション拠点は、得意とするナノカーボン材料の技術と、オールジャパン体制の強固な産学官連携を擁し、脱塩性、透水性、ロバスト(頑強)性、耐熱・耐久性を飛躍的に向上させた物質分離材料の開発とモジュール・システム化を目指します。これにより、地球上の多様な水源から使える水を造り、飲料水だけでなく、農業、工業用水、さらには生活環境を衛生的に保つように循環させます。これが革新的な「造水・水循環システム」の姿であり、世界中の人々がいつでも十分な水を手に入れられる社会が実現します。
研究開発テーマ
- 1. ナノカーボン分離膜による脱塩技術の開発
- 既存の材料で作られた脱塩用の分離膜は、高圧ポンプのエネルギー消費や高温水の対応に課題がありました。これをナノカーボン材料に置き換え、脱塩・透水性に加え、ロバスト(頑強)性のある膜を開発し、将来の需要を想定した上で、水源や利用目的に応じたテーラーメードのカーボン膜を創ります。
- 2. ナノカーボン材料を使った逆浸透(RO)膜のモジュール化
- 海水淡水化から随伴水処理まで幅広く適用できるカーボン膜のモジュール化技術を検討します。ここでは、課題である耐熱、耐薬品性を解決し、多くの水質で安定した膜性能を発揮するカーボン膜とともに、それを支持する基材、及びそれらから構成されるモジュールについて開発を進めます。
- 3. ナノカーボン材料を使った逆浸透(RO)膜のシステム化
- 最新の技術動向を踏まえながら、膜開発とモジュール化のチームと連携しつつ、膜のロバスト性を生かした使用方法を検討し、対象水や再利用の目的に応じた全体プロセスの設計を行います。また、実証を念頭に省エネ目標を達成するための方策を検討し、社会実装できるシステムに仕上げます。
- 4. 周辺技術・関連技術の研究開発
- かん水などに含まれているリチウムなどの有用資源の回収を目的に、イオンの吸着・交換などを駆使した処理技術や、分離用のセルロース膜の形成プロセスを開発します。
- 5. 水関連科学・研究基盤
- 分離膜における水分子、ナトリウムイオン、塩化物イオンのダイナミックな動きを解析する手法を開発し、ナノカーボン膜の開発を側面から支援します。これまで未知であった、水分子が半透膜を通り抜ける仕組みを解明します。
- 6. 統合的な水循環の解析・予測(COI-S 拠点)
- 社会実装を想定する地域や流域に対し、大気、海洋、地表地下水のすべてを考慮した超高解像度連成シミュレーションを行い、開発された技術を社会実装した場合に、地球の自然に影響を及ぼさないことを確認します。