「IGZO系酸化物半導体TFT」の研究・開発・事業化を検討されている企業の皆様、ならびに「IGZO商標」に関心のある皆様へ

平成25年5月15日
平成26年4月21日追記
平成27年3月5日改訂
平成27年3月18日改訂
平成27年4月1日改訂

国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)

「IGZO系酸化物半導体TFT」のオリジナリティは、JSTの創造科学技術推進事業(ERATO)の「細野透明電子活性プロジェクト」でリーダーを務めた東京工業大学の細野秀雄 教授らにあることが、技術的かつ学術的に認められています。

JSTが現在「IGZO系酸化物半導体TFT」のライセンスを進めている特許群には、TFTにおける活性層が、単結晶、多結晶、微結晶、アモルファスのいずれの薄膜の特許、および周辺特許等がパッケージ化されています。そして当該特許群はJSTが一括し、企業等に対してライセンスしています。

内容

JST産学連携・技術移転事業では、大学や公的研究機関等の基礎研究の成果(シーズ)の特許化や知的財産の活用促進を進めています。その一環として、現在、東京工業大学の細野秀雄 教授らが発明した「IGZO系酸化物半導体TFT(In-Ga-Zn-Oを中心とする酸化物半導体を活性層とする薄膜トランジスタ)」の特許については、国内外の複数のメーカーとの間で、ライセンス契約の締結、もしくは締結の合意に向けた交渉等を行っています。本件について多くのお問い合わせを頂戴しておりますので、ここに改めまして、細野 教授らの発明の経緯と特許群(実用化を想定した権利の確保ができるような特許の集合)の概要について、説明させていただきます。

当該IGZO系酸化物半導体TFTに関する技術は、1999年から細野 教授がリーダーを務めた、JSTの創造科学技術推進事業(ERATO)の「細野透明電子活性プロジェクト(http://www.jst.go.jp/erato/research_area/completed/htd_PJ.html)」から世界で初めて生まれたものです。そして一連の発明は、JSTが保有する基本特許とともに、東京工業大学などが保有する周辺特許等を含めた数十件の特許群から構成され、現在はJSTが一括でライセンスを提供しています。

当該特許群の核となる特許の出願に至る、主要な従来の技術と本件技術の進展に関する歴史的経緯、ならびに関連する学術論文は下記の通りであり、これらは技術的かつ学術的にも認められたものです。

従来の技術

A)1985年12月
結晶IGZO (InGaZnO4, In2Ga2ZnO7) が初めて合成され、粉末X線回折法により同定した空間群が論文発表された。
“Spinel, YbFe2O4, and Yb2Fe3O7 types of structures for compounds in the In2O3 and Sc2O3、A2O3,BO systems [A: Fe, Ga, or Al; B: Mg, Mn, Fe, Ni, Cu, or Zn] at temperatures over 1000℃”
(N. Kimizuka and T. Mohri, J. Sol. State Chem. 60, 382 (1985): http://dx.doi.org/10.1016/0022-4596(85)90290-7)
B)1995年4月
単結晶IGZOを合成し、結晶構造がホモロガス積層構造であることが初めて論文発表された。
“Syntheses and Single-Crystal Data of Homologous Compounds, In2O3(ZnO)m (m = 3, 4, and 5), InGaO3(ZnO)3, and Ga2O3(ZnO)m (m = 7, 8, 9, and 16) in the In2O3-ZnGa2O4-ZnO System”
(N. Kimizuka, M. Isobe, and M. Nakamura, J. Sol. State Chem. 60, 382 (1985): http://dx.doi.org/10.1006/jssc.1995.1198)
C)1995年11月
結晶性IGZOの導電性が初めて論文発表された。
“New Transparent Conductive Oxides with YbFe2O4 Structure”
(M. Orita et al., Jpn. J. Appl. Phys. 34, L1550 (1995): http://jjap.jsap.jp/link?JJAP/34/L1550/)

本特許群の技術

1)1995年3月
c軸に配向した多結晶IGZO薄膜を導電性酸化物に用いる発明を特許出願。(登録済み)
2)1996年5月、8月
大きな電子移動度を有するアモルファス酸化物半導体の材料設計の作業仮説を実証例とともに論文発表。
“Working hypothesis to explore novel wide band gap electrically conducting amorphous oxides and examples”
(H. Hosono et al., J. Non-Cryst. Sol. 198-200, 165 (1996): http://dx.doi.org/10.1016/0022-3093(96)80019-6)
“Novel oxide amorphous semiconductors: transparent conducting amorphous oxides”
(H. Hosono et al., J. Non-Cryst. Sol. 203, 334 (1996): http://dx.doi.org/10.1016/0022-3093(96)00367-5)
3)2002年9月
単結晶またはアモルファスIGZO薄膜を活性層とするTFTに関する発明を特許出願。(登録済み)
4)2003年5月
c軸に配向したエピタキシャルIGZO薄膜を活性層とするTFTに関する研究成果を初めて論文発表。
“Thin-Film Transistor Fabricated in Single-Crystalline Transparent Oxide Semiconductor”
(K. Nomura et al., Science 300, 1269 (2003): http://dx.doi.org/10.1126/science.1083212)
5)2004年3月
アモルファスIGZO薄膜を活性層とするTFTに関する発明を特許出願。(登録済み)
6)2004年11月
微結晶を含むアモルファスIGZO薄膜を活性層とするTFTに関する発明を特許出願。(登録済み)
7)2004年11月
アモルファスIGZO薄膜を活性層とするTFTに関する研究成果を初めて論文発表。
“Room-temperature fabrication of transparent flexible thin-film transistors using amorphous oxide semiconductors”
(K. Nomura et al., Nature 432, 488 (2004); http://dx.doi.org/10.1038/nature03090)

JSTが現在「IGZO系酸化物半導体TFT」のライセンスを進めている特許群には、上記1)、3)、5)、6)の特許が含まれており、TFTにおける活性層が、単結晶、多結晶、微結晶、アモルファスのいずれの薄膜においても特許化されています。この特許群には、ほかにも、In-Ga-Zn-O以外の材料系、不純物、デバイス構造、製造方法、応用素子、応用装置等の発明に関する特許も含まれています。これらのことからも、「IGZO系酸化物半導体TFT」のオリジナリティは、細野 教授らにあります。

上記説明が、IGZO系酸化物半導体TFTの研究・開発・事業化を検討されている皆様の一助となれば幸いです。本件特許群とそのライセンスの詳細につきましては、お気軽に下記お問い合わせ先までご連絡ください。

IGZO商標について

1)商標法第3条第1項第3号に、商品の原材料名は、普通に用いられる標準文字のみからなる標章として商標登録を受けることはできないと定められています。その規定により、既に知られている物質名であるIGZOをシャープ株式会社が商標登録した件で、JSTは平成25年7月31日に商標登録無効審判請求を行い、平成26年3月5日に特許庁の審決で無効が認められました。

2)その後、シャープ株式会社が本審決の取り消しを知的財産高等裁判所(知財高裁)へ求めていたところ、平成27年2月25日に知財高裁は「IGZOの略称は原材料名として広く認識されている」として同社の請求を棄却しました。平成27年3月11日、この知財高裁判決について、同社は上告しないことを表明したため、同判決はこの日をもって確定しました。

3)なお、JSTは、標準文字からなる「IGZO」の登録商標(商標登録番号第5451821号)についてのみ無効の申し立てをしたものであり、同社の保有する他のIGZO関連登録商標(商標登録番号第5563245号等)については対象としておりません。

4)JSTが「IGZO」の商標の無効を請求したのは、IGZO関連の特許について国内外の複数のメーカーとライセンス契約を締結または締結の交渉をしているなかで、これらの関係者が使用できなくなることが懸念されたためです。今回の判決確定により、これまでのJSTの主張が認められたものと思っております。

<問い合わせ先>

国立研究開発法人 科学技術振興機構 知的財産マネジメント推進部 知財集約・活用グループ
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-8486 Fax:03-5214-8417
E-mail:license@jst.go.jp ※お問い合わせの内容によっては、回答に時間を要する場合があります。