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地域結集型共同研究事業

平成15年度事業開始地域中間評価報告書

平成18年3月
独立行政法人科学技術振興機構 地域振興事業評価委員会


4. 地域別評価
4−4 宮崎県
課題名 食の機能を中心としたがん予防基盤技術創出
事業総括 中島 勝美 (社団法人宮崎県工業会副会長、雲海酒造株式会社代表取締役社長)
研究統括 河南 洋 (宮崎大学医学部長)
新技術エージェント 今井 常世 (株式会社キイテック代表取締役社長)
杉田 浩一 (社団法人ジェイエイ食品開発研究所理事兼技術顧問)
三重野 文明 (文殊ブレインズ有限会社代表取締役社長)
中核機関 財団法人宮崎県産業支援財団
コア研究室 宮崎県工業技術センター内
行政担当部署 宮崎県商工観光労働部新産業支援課

1 事業進捗状況及び今後の見通し

 医農連携という県の戦略はターゲットが明確であり、地域COE構築に向けた具体的な構想の下、宮崎大学を中心として公設試や民間企業等の研究機関を巻き込み、県としっかり連携をとって事業推進している点は高く評価できる。
 また、熱意ある研究リーダーと新技術エージェントの優れた指導の下、本事業への参加者の意欲も高く、事業推進体制が十分に整備され機能している。医学分野と農学分野の2つのテーマのバランスが良く、コホート研究等により蓄積されたデータを活用して研究成果も着実に得られており、技術基盤の形成は全体的に順調であると評価できる。今後、事業目標達成に向け、2つのテーマの連携を一層深め、若手研究者を長期的に育てる方針を県が維持していくことが望まれる。

2 研究開発進捗状況及び今後の見通し
(総論)

 それぞれのテーマの中で新規性、優位性、将来性のある成果が上がっており、研究成果発表や特許出願も順調で、2年弱の研究成果としては、十分な進捗であると評価できる。2種類のコホート研究の成果を最大限に活用し、C型肝炎およびATL(ヒトT細胞白血病)の克服と関連健康産業に向けた技術基盤が着実に形成されつつあり、今後に期待がもてる。
 テーマ1−3「ウイルス発がん予防のための高機能性食品の探索及び有用性の解明」が本事業における医農連携のキーとなるので、積極的に推進しフェーズUにおいて両分野の連携が一層深められることを期待する。

(各論)
テーマ名 コ メ ン ト
1 ウイルス発がんの機序解明と予防・治療法の創出
 ・ 肝疾患の進展を抑える遺伝子オステオアクチビンの発見は特筆に値するが、それ自体を研究の要にするためには、ヒト個体に対する効果の検証が必要である。
 ・ これまでのスクリーニングの結果から有望視される農産物の肝がん、ATL予防効果に関わる成分同定ができれば、研究が更に進捗する。
 ・ 地域の特徴をふまえて継続されてきたコホート研究を中核に置いて、さらに研究が進められることを期待する。
 ・ DDS(ドラッグデリバリーシステム)の研究については、今後、製品の物質的、特性的安定性の確保が得られない限り、中断も視野に置いて取り組むべきである。
2 食の機能性活用のための基盤技術の開発
 ・ ハイスループット評価法については期待も高いが、一方で、どれほど信頼できるか、ヒトでどのように検証するのかが明らかになっていない。今後は、体内動態を経た上での効果を検討することも必要である。

3 成果移転に向けた活動状況及び今後の見通し

 外国出願2件を含め権利化に対して意欲的で、商品化に関しては未知数であるものの、かなり高水準の成果がでており、新産業創出・地域COE形成に役立つものと期待できる。
 新技術エージェントを中心として構築している特許戦略はすぐれており、研究成果の技術移転や実用化へのシナリオも明確で具体化されている。今後は、共同研究参画企業以外の製薬企業や健康産業関連企業などにおける具体的な出口開発の成熟が課題であるが、地域振興という観点からは、事業化する際に他地域の企業と地域企業との棲み分けを十分に考慮する必要がある。また、高機能性食品については、販売力のある企業の参画が望まれる。

4 都道府県等の支援状況及び今後の見通し

 知財活用エージェントの配置、フェーズVにおける食品機能研究所の設置構想など、地域COE構築に向けた構想が具体的で明確になっており、本事業による地域産業活性化への県の熱意と意欲が感じられ、評価できる。
 食品機能研究所構想を核としたバイオ・メディカル産業クラスターの形成には、人的ネットワークが必要であり、そのための人材育成支援策が期待される。また、医学分野への支援も期待されるところであり、特にコホート研究の継続には県の支援が必要不可欠である。今後は、他事業への展開や日本全国、さらには世界に目を向けた連携への支援も期待する。


◆(参考1)事業の目標・概要

◆(参考2)フェーズI における学術的、技術的、対外的活動実績

◆(参考3)フェーズI における研究項目と実施体制

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This page updated on Mar 24, 2006
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