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理事長挨拶

独立行政法人科学技術振興機構 理事長 中村 道治

戦後のわが国の発展は、欧米諸国の科学技術を積極的に取り入れ、新しい工業製品を産み出すところから始まりましたが、高度成長を迎えた1960年頃には、研究開発における独創性が重要視されるようになりました。資源の乏しいわが国が経済的に繁栄し世界に貢献できたことは、創造的な研究開発によるところが大きく、先人の努力に改めて感銘を受けます。

しかしながら、2011年3月11日に起こった東日本大震災とその後の東京電力福島第一原子力発電所の事故によって、わが国の安全・安心ブランドが打ち砕かれ、国民の科学技術に対する信頼が大きく損なわれました。また、わが国の科学技術力の相対的な地位低下も近年明らかになってきました。私たちは、過去の延長の上に未来はないという気持ちで、原点に戻って科学技術創造立国を目指す必要があります。

国の総司令塔機能の強化

わが国の研究開発のあり方について、さまざまな改革が検討されてきました。例えば、国の研究開発の総司令塔機能の強化の一環として、日本医療研究開発機構(仮称)の設置が検討されています。また、府省連携や革新的研究開発の推進に向けて、戦略的イノベーション創造プログラムや革新的研究開発推進プログラムなどの新規プログラムも検討されています。研究開発法人のあり方に関しても、成果の最大化という観点から検討が進められています。これらが、新しい未来の創造につながることを切に祈念します。

健康・医療に関する研究開発は、新材料や情報など他の分野の研究と離れて存在しません。逆もまた真です。その意味で、JSTと日本医療研究開発機構の連携は極めて重要であると考えています。また、エネルギーや環境、防災、社会システムなどさまざまな分野で、総合科学技術会議や他府省との連携を深め、わが国の成長戦略や安心・安全な国づくりに結びつくように努力します。

JSTの挑戦課題

このような研究開発制度や体制の改革に並行して、新しい研究開発文化を醸成することが重要です。

わが国が現在目指している課題解決型イノベーションにおいて、革新的な技術(Quantum-Jump Technology)の創生と迅速な産業化が大命題になっています。JSTは、戦略プログラムパッケージをもとに、基礎研究から出口までの連続的、循環的な研究開発や分野融合的な取り組みに注力して、新しい研究開発文化を育てます。またこの中で、新分野に果敢に挑戦する次世代グローバル人材を、意識的に育てていきたいと考えています。

他国にはまねできない、信頼性の高い製品やシステムにこだわることが、ものづくり国家としてわが国の進むべき道ですが、そのためには「基盤技術の深耕と伝承」が欠かせません。基盤技術の弱体化は、大きな事故にもつながります。最近の論文重視の風潮の中で、ものづくりを支える基盤技術への取り組みが失われつつあることが指摘されています。われわれは、科学の基礎に立ち戻ったものづくり基盤技術の深耕とシステム安全工学の展開に光を当てていきたいと考えています。

JSTの運営

JSTは、「バーチャル・ネットワーク型研究所」運営を核に関連府省との連携のもと、科学技術政策の推進機関として未来の創造に貢献します。このために、長年培ってきた目利きやプロジェクト運営の能力を強みに、内外から最強のリーダーや研究者の参加を得て、最適な場所で最大の成果を生み出す研究所を、これからも運営します。

また、科学技術情報の収集・整備・提供や次世代人材育成、科学コミュニケーションの向上などの科学技術イノベーションの基盤形成に係わる業務を、先端研究開発との深い連携の上で進めます。日本科学未来館は、2017年に開催される世界科学館フォーラムを主宰し、2020年の東京オリンピック・パラリンピックにおける「科学のおもてなし」においても重要な役割を果たす予定です。科学技術が社会と共に歩むために、科学者のアウトリーチ活動や市民参加の場として活用を図ります。

以上の考えのもと、JSTは社会と共に歩み、新しい未来の創造に向かって努力を重ねる所存です。本年も、皆様方のご理解とご協力をお願いする次第です。

独立行政法人 科学技術振興機構 
理事長 中村道治