採択課題
採択課題
本テーマは令和3年度をもって終了しました。所属・役職は終了当時の情報に基づきます。

エネルギーの有効利用を支える次世代定置用蓄電技術の創出

プログラムオフィサー近影
プログラムオフィサー(PO)
金村 聖志 (東京都立大学 大学院都市環境科学研究科 教授)

研究開発テーマの設定趣旨

●テーマの概要

温室効果ガスの1つである二酸化炭素の削減は喫緊の重要課題です。エネルギーの安定供給と環境配慮の両立を目指しながら二酸化炭素を削減するには、自然エネルギーやバイオマスなどの新しい再生可能エネルギーの社会実装が必要です。自然エネルギーを現実社会に大量に導入するには発電設備の問題もありますが、電力の安定化も重要な課題となっています。そのために、蓄電 、キャパシタ、燃料電池・電解複合システムなどが、今後の自然エネルギー導入の鍵を握っています。これらのデバイスは電気エネルギーを化学物質のエネルギーに変換する、あるいはその逆のエネルギー変換を高いエネルギー変換効率で行う機能を持ち、発電システムと送電グリッドの中間に位置することで自然エネルギーを安定化させるとともに有効利用する役目を担っています。すでに、リチウムイオン電池や鉛蓄電池が定置用エネルギー変換デバイスとして使用されています。しかし、普及のために解決しなければならない問題が残っています。それは、リチウムイオン電池の場合には安全性と寿命であり、鉛蓄電池ではエネルギー密度と寿命です。本テーマでは、これら具体的な問題点を解決するための新規エネルギー変換デバイスやそれらを実現するための新規材料の開発を推進し、定置用電気化学エネルギー変換デバイス構築のための材料技術と電池技術を確立します。あわせて、電気化学エネルギー変換デバイスに関する基盤学術の進展も目指します。

●公募・選考・研究開発テーマ運営にあたってのPOの方針

電気化学エネルギー変換デバイスとして、蓄電池、キャパシタ、燃料電池・電解複合システムなどを中心に、次世代定置用エネルギー変換・貯蔵をシステムに資する電池技術や材料技術の創成を目指します。電気自動車用電池システムや太陽光発電用電池システムは既に存在しますが、これらの応用で使用されているリチウムイオン電池を含め新しい電池系に関する研究を推進します。定置用のエネルギー変換システムにおいては、例えば夜間と昼間の電力料金の差を利用して電力事業に参入できることが重要な課題です。また、各家庭においても同様のことが言えます。さらに、これらの効果は、電力系統の夜間と昼間の電力の需給バランスを調整し、電力のピークシフトやピークカットなどにより、化石燃料を利用する火力発電の負荷を下げ、トータルエネルギーの利用効率を高めることにつながります。このような事業が実際に社会で行われるためには、エネルギー変換システムのコストが重要となります。蓄電池やキャパシタの場合には単位電力当たりのデバイスコストが大きな問題となっています。また、燃料電池・電解複合システムを利用する場合には、単位重量当たりの水素のコストが重要となります。したがって、高効率な充放電や電解が必要であり、少なくともエネルギー変換効率が90 ~ 95 %程度必要となります。さらには、デバイスの寿命が最大の問題となります。これまでにリチウムイオン電池や鉛蓄電池の寿命改善がなされていますが、電池コストを低下させるためには、充放電サイクル3,000回以上、好ましくは5,000回以上のサイクルが必要です。将来的にはさらに、10,000回のサイクルができるエネルギー変換デバイスが登場することが望まれます。また、エネルギーデバイスにおいては安全性も非常に重要な課題です。本テーマではこれらの特性を満足するための技術を取り上げます。可能な限り、実用的な電池での試験結果を出すことが望まれますが、本テーマ終了時点で電池メーカーなどとの共同研究により、提案される材料やデバイスの事業化に向けた検討が始まることが望まれます。したがって、提案書には材料研究のみならず、試験電池への展開方針と事業化技術の見通しも記述されることが求められます。すなわち、材料研究に基づく今後の展開方針を合理的に説明し、実用化研究および事業化につなげる戦略を明確にしておくことが重要です。

二酸化炭素の削減に真の意味で貢献する電気化学エネルギー変換デバイスを創成することが本テーマの責務であり、材料研究から最終のデバイス研究までを常に考えながら研究を進めなければなりません。

課題間での協力体制を構築し、お互いの研究状況を把握しながら、どのようにして実用電池へ技術を展開していくかを意見交換しつつ研究を推進します。また、適切な時期に適切なタイミングで研究の方向性に関する議論を行い、材料研究であっても電池研究あるいはエネルギー変換システム研究につなげる戦略を確認します。これにより、各課題で実施する研究のテーマへの貢献をより明確化します。

本テーマにおける目標は、以下のとおりです。

(1)電気化学エネルギー変換デバイスの提案の場合:
定置用に適合する新奇エネルギー変換システムに関する提案が求められます。原理・原則の実証だけでなく、実電池への展開を視野に入れた提案を期待します。
(2)電気化学エネルギー変換デバイスに使用する材料に関する提案の場合:
特にデバイスの安全性と寿命改善に資する材料提案が望まれます。目標サイクル数は上述のとおりですが、少しでも既存電池あるいは現在開発が進んでいる革新的な電池の安全性と寿命に対して改善ができる材料の提案を期待します。
(3)新型電池の実用化に向けた問題解決に関する提案の場合:
既に電池系として研究開発が行われている電池、例えばLi-S電池の寿命改善方法や安全性に関する研究提案が望まれます。

なお、本テーマで目指すのは、自然エネルギーの導入や昼夜の電力平準化のためのエネルギー変換デバイスですので、電気自動車で求められるほどのエネルギー密度と出力密度を有する必要はありません。

本テーマでは次世代定置用エネルギー変換デバイスに集中して革新電池、革新材料、革新システムの基礎を築くことが目的です。数値目標も重要ですが学術的基盤の構築も大切です。提案書では、学術基盤から事業展開への可能性を示してください。

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テーマの評価

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プログラムディレクター(PD)

※2019年4月現在
豊玉 英樹(JST 開発主監)
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プログラムオフィサー(PO)及びアドバイザー

※2021年10月現在
役 職 PO・アドバイザー
氏 名 所属機関・役職
プログラム
オフィサー
金村 聖志 東京都立大学 大学院都市環境科学研究科 教授
アドバイザー 阿部 英俊 株式会社ABRI 代表取締役社長
アドバイザー 池谷 知彦 一般財団法人電力中央研究所 特任役員/企画グループ
兼務:エネルギーイノベーション創発センター、材料科学研究所
アドバイザー 石川 正司 関西大学 化学生命工学部 教授
アドバイザー 今西 誠之 三重大学 大学院工学研究科 教授
アドバイザー 栄部 比夏里 産業技術総合研究所 エネルギー・環境領域 電池技術研究部門 次世代蓄電池研究グループ 上級主任研究員
アドバイザー 道畑 日出夫 東京電力ホールディングス株式会社 経営技術戦略研究所 技術開発部 需要家エリア スペシャリスト
アドバイザー 湯浅 浩次 パナソニック株式会社 エナジー社 技術・モノづくり戦略室 室長
(五十音順、敬称略)
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課題

※「企業責任者」および「研究責任者」ならびにその所属機関は、直近の評価実施時のものとなります。[所属機関は()内に記載]
※下線はプロジェクトリーダー(課題の取りまとめ役)を指します。
課題名 課題概要 企業責任者  評価結果 完了報告書(概要版)
研究責任者 
カリウムイオン電池およびカリウムイオンキャパシタの基本技術開発 これまで蓄積してきたリチウムイオン電池およびナトリウムイオン電池の研究成果と技術を礎として、自然エネルギー発電やスマートグリッドに適用する電力貯蔵用定置型蓄電デバイスを目指して、カリウムイオン電池およびカリウムイオンキャパシタを開発する。これらのデバイスは、従来のリチウム系デバイスよりも低コストかつ長寿命になることが期待される。 深井 孝行
(昭和電工株式会社)

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中間評価

(平成30年度実施)

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事後評価

(令和3年度実施)

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駒場 慎一
(東京理科大学)
太陽光発電の高効率化を可能とする新型キャパシタの開発 太陽光パネルから生成される発電量の最大活用を目指し、従来の太陽光発電システムに新規キャパシタを組み合わせた新システムの社会実装に向けた基礎研究と実用化に必要な要素技術の検討を行う。新規キャパシタは材料レベルから開発し、太陽光発電の受入性能を持ちながらも大容量高電圧の特性を示すなど、無駄なく蓄電する太陽電池システムへの適用性が高く、太陽電池システムの更なる高効率化に寄与する。 玉光 賢次
(日本ケミコン株式会社)

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中間評価

(平成30年度実施)

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事後評価

(令和3年度実施)

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直井 勝彦
(東京農工大学)
超高エネルギー密度、本質安全および長寿命な鉄-空気二次電池Shuttle Batteryの開発 Shuttle Batteryは鉄と空気で電気エネルギーを発蓄電する高エネルギー、安価な蓄電池であり、主要材料は全て耐火物で本質的に安全である。ラボ試験において200サイクル(DOD100%)経過後容量低下無しという優れた寿命性能を示した。本申請ではShuttle Battery事業化のための重要課題として、長寿命化、高出力化技術の開発に取り組み、50kWh実証モジュールを試作する。
DOD(Depth of Discharge:放電深度):
二次電池の放電容量に対する放電量。全て放電する場合を100%とする。
塚本 壽
(CONNEXX SYSTEMS株式会社)

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中間評価

(平成30年度実施)

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事後評価

(令和3年度実施)

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岩井 裕
(京都大学)
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