評価結果
 
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事後評価 : 【FS】探索タイプ 平成27年1月公開 - 情報通信技術 評価結果一覧

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課題名称 研究責任者 コーディネーター 研究開発の概要 事後評価所見
医療用テレメーターによる夜間巡視支援システムの研究 公益財団法人函館地域産業振興財団(北海道立工業技術センター)
村田政隆
公益財団法人函館地域産業振興財団(北海道立工業技術センター)
宮原則行
わが国では2025年問題を控え、医療従事者にとっては少ない人数で多くの患者を支える仕組みが今後ますます必要になる。そこで、本研究では、少子高齢化社会における医療の持続性確保を目指し、IT導入による夜間業務負担軽減を図るため、巡視業務に着目した、光通信技術による夜間巡視支援システムの基礎研究を行った。
可視光通信・電波通信併用型の夜間巡視システムについて検討し、移動端末・固定端末のモデルを試作して、実験的検証した結果、巡視者・病床・巡視時刻の各情報をタイムリーに自動記録できる仕組みを構築することができた。今後は、信頼性向上や実用性検討および太陽電池の利用等による導入コスト削減技術の研究開発に発展させる予定である。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に光通信技術による夜間巡視支援システムにおいて汎用・低価格の電子部品を用いて試作品による実証実験まで成功し、成果が具体的な数値で示されている技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、ユーザー(医療関係者)の意見も積極的に取り入れ、共同研究先との協力による早期実用化が望まれる。今後は、組み合わせ技術であり、類似のシステム構築も考えられるので、開発に同期した形で知財や実用新案に結びつけられるよう期待される。
30 GHzをカバーする超高周波磁性薄膜透磁率評価装置の開発 東北学院大学
薮上信
光学的手法および高周波電磁波を磁性薄膜へ印加することにより磁性薄膜の透磁率を評価し、30 GHz までの広帯域測定に成功した。また磁性薄膜への直接通電により膜厚が数nmの極薄膜の評価も可能となった。本研究で開発した手法はサンプルサイズに依存せずに広帯域かつ極薄膜の評価が可能にあることから従来の透磁率測定法にはない特長を有すると考えられる。 磁性薄膜を用いた磁気デバイスの高周波化をふまえて、薄膜透磁率を30GHzまでの全マイクロ波帯において、磁性薄膜の透磁率測定の新規な測定手法3案を提示し、中でもマイクロストリップラインを使ったインライン計測では高速化の成果をあげている技術については評価できる。一方、技術移転の観点からは、関連するテーマで企業との共同研究が実施されており、磁性デバイス、磁気ヘッドなどの測定技術としての実用化が望まれる。今後は、計測方法として3つの方法の意味、使い分け、今後の展開などについても検討を進められることが期待される。
プログラムの自動変換と品質評価の機能を持つ教育用プログラム開発システム 茨城大学
畠山正行
茨城大学
太田秀夫
本研究開発は教育用プログラム開発システムOOJにおいてプログラムの自動変換機能と品質評価機能の実装が目的であった。自動変換機能については自動変換率の向上を図った。その結果変換後にそのままでプログラムを実行出来るケースが大幅に増え、学生の利便性の向上に繋がった。品質評価機能についてはV&V評価環境の一部としてのレビュー環境を設計・実装した。レビュー環境とはプログラム開発が妥当な手順と作業内容で行われているかを検証するソフトウェアであるが、従来は簡単に実行できる製品は殆ど存在しなかった。それに対してOOJにおいてはプログラム内部の詳細な作業追跡機能をそもそもの言語機能として持たせており、その機能をレビュー環境として実装することで実現した。レビュー機能はデバッガーとしても使えるので好評であり高い評価を得、本開発の目的をほぼ達成した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に教育用プログラム開発システムOOJにおいてプログラムの自動変換機能と品質評価機能の実装したソフトウェアは、学生教育レベルでは十分実用に耐えうるものと評価できる。一方、技術移転の観点からは、協力企業とも目処が付いていることと、成果を利用する企業側のニーズについてもある程度分析ができており、KINECT用ライブラリという応用分野も見つけている。今後、協力企業の細かいニーズを吸い上げてブラッシュアップして戴くことと、KINECTライブラリ以外の応用分野に展開されることが期待される。
低消費電力プリント基板のための部品配置設計手法の開発 筑波大学
安永守利
筑波大学
太田司
バイパスコンデンサ(パスコン)はパソコンやスマートフォンの電源ノイズを低減し、誤動作を防ぐために不可欠な部品である。一方、そのプリント基板上の配置設計手法は未だに確立されていない。このため、消費電力と価格の増加を犠牲にしてまで、数百個ものパスコンが使用されている。本研究では、パスコンの配置問題に遺伝的アルゴリズムを適用することを提案した。従来手法に比べて、消費電力60%以下、電源ノイズ70%以下、パスコン数70%以下を目標とした。その結果、基本的なプリント基板構造モデルにおいて、いずれの目標も達成することができ、提案手法の基本的な見通しを得ることができた。今後は、さらに適用事例を増やし、提案手法の汎用性を示す予定である。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に遺伝的アルゴリズムを用いて、コンデンサの最適配置設計手法により消費電力、電源ノイズ、コンデンサ数を削減している技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、試作評価および現実の設計事例に対する複数の評価の必要性や、実際の設計における有効性を進めることによる実用化の検討が望まれる。今後は、遺伝的アルゴリズムの改良方向として、交叉個体の選択方法や突然変異操作の検討に加えて、コンデンサの位置を動かす局所探索や不要なコンデンサを取り除く局所探索とのハイブリッド化などの検討が期待される。
液体中でも動作する特殊レンズドファイバ技術の開発 宇都宮大学
白石和男
宇都宮大学
野本義弘
2種のレンズドファイバ、PC型とHILC型、のフェルール化技術を確立し、本研究が当初目標としたレンズドファイバの堅牢化と量産に向いた作製法の開発を達成した。得られたレンズドファイバは光学特性にも優れ、PC型では標準単一モード光ファイバ(SMF)中を伝搬する波長1.55μmの光ビームを、液体中で直径1.0μm(波長の65%)に集光できた。これは、世界最高の集光性能であるほか、挿入損失は0.2dB以下、反射減衰量は27dBと良好である。2種のレンズドファイバを、スポットサイズ変換器付きシリコン細線導波路との結合系に応用した結果、高効率結合が可能であることを証明した。医用分野への展開は今後の課題として残った。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、特殊レンズドファイバに関する基礎的な作製技術を確立した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、オプトジェネティクス分野や、レーザメスなどの医用研究分野への応用展開先の探索が望まれる。今後は、広く応用先を開拓するために、サンプル提供を検討することが期待される。
車載用超小形マルチバンド平面アンテナの開発 埼玉大学
木村雄一
埼玉大学
笠谷昌史
本研究では車載用の超小形マルチバンド平面アンテナを開発することを目標として、多リング形マイクロストリップアンテナの小形設計について検討した。小形化の手法として、放射素子の折り曲げによる方法と高誘電率基板を用いる方法を用いた。いずれの方法においても、3周波で良好な整合特性を示し、かつ、各々の周波数で右旋円偏波、直線偏波、右旋円偏波を放射する良好な単向性のパターンが得られることが確認された。設計されたアンテナの放射素子のサイズは27.5 mm × 27.5 mmと26.0 mm × 25.8 mmであり、当初の目標を達成することができた。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に自動車への設置を容易とする超小形マルチバンド平面アンテナにおいて、放射素子の折り曲げによる方法と高誘電率基板を用いる方法を開発し、所定の特性を得ている技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、自動車部品関連メーカー等との共同研究の進展や、研究成果のPRをより積極的に行なうなどでの実用化が望まれる。今後は、製品化に向け、アンテナのパッケージング、利得などの評価を進められることが期待される。
スピン偏極した電子及び正孔を利用する排他的論理和ゲート動作の実証研究 埼玉大学
酒井政道
埼玉大学
北島恒之
排排他的論理和ゲート動作の成否は、強磁性体ソース及びドレイン電極における相対磁化方向が互いに平行時(P状態)と反平行時(AP状態)との間で、出力応答に巨大変化が発生するかどうかに依る。我々は、強磁性電極(Co)と非磁性両極性伝導体(YH2)チャネルから構成されるホール素子を作製、磁気抵抗(TMR)及びホール抵抗(HR)特性に、スピン蓄積による異常ホール効果を見出した。並行して電子及び正孔のスピン蓄積効果を考慮して理論計算を実施、測定結果との比較によって、観測されたのはP状態に対応することが分かった。このことはソース電極からはスピン偏極正孔が、また、ドレイン電極からは、スピン偏極電子がYH2中に注入できることを意味する。一方、AP状態を、低キュリー点材料TbFeCoを用いて作製することに取り組み、約1μm隔てて隣接する2本のTbFeCo細線の相対磁化方向を局所レーザー加熱によってAP状態に着磁する技術を確立した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、電子スピン偏極を活用した新しい動作原理の論理演算素子開発と、動作実証という挑戦的なテーマに取り組み、技術的課題をひとつひとつクリアして実用化に向けた基盤を固めつつある点は評価できる。一方、スピン蓄積効果を有効に発揮させるための材料探索、デバイスパラメータの最適化では、国内外のスピントロニクス分野の専門家と広く連携協力することにより、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、XORのみにとどまらず、他のロジック回路についても検討を進めることが望まれる。
ディジタルアーカイブのための大容量・高画質な情報埋込技術の開発 千葉大学
今泉祥子
千葉大学
竹内延夫
本研究では、限定色画像を対象に著作権保護のための大容量かつ高画質な情報埋込技術を目的として検討した。限定色画像は、画像内で使用する色数が制限された画像である。本研究では、類似色のクラスタリングにおいて、初回のクラスタリング処理で排除された代表色に対して再クラスタリング処理を施すことにより大容量な埋込を可能とする手法、および、色差式CIEDE2000の導入により劣化の知覚がより困難な埋込画像を生成する手法をそれぞれ達成した。今後は、情報埋込技術とスクランブル技術のハイブリット化により、スクランブル処理前後で埋込情報を保持し、いずれの場合においても画像の著作権が保護となる手法を研究する。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にGIFやPNG形式に代表される限定色画像を対象に大容量かつ高画質な情報埋込技術を開発している点については評価できる。一方、技術移転の観点からは、ユーザー権限に応じた品質で再生可能とするスクランブル技術を開発することや、PSNRによる画質の比較において、更に、画像内容の多様性に対応した検証をするため、実際の活用状況において評価をすることによる実用化が望まれる。今後は、アーカイブされた画像は、その活用が拡がることが大切であり、埋め込まれた情報を大きくすると共に、その情報のユーザビリティを高める取り組みも検討されることが期待される。
遠隔探査用可視・近赤外超解像分光撮像システムの開発 東京大学
横矢直人
東京大学
長谷川克也
本課題では、光学センサ融合に基づく遠隔探査用可視・近赤外超解像分光撮像技術の実用化に向けた研究開発を行った。光学センサ融合の基盤技術となる物質・含有率分解のアルゴリズムを改善し、従来よりも空間分解能を高めることに成功した。また、光学系歪み関数やスペクトル応答関数などの装置関数の推定と、光学センサ融合アルゴリズムを統合し、地上観測データを用いた検証で、目標の空間分解能とスペクトル精度を達成した。さらに、航空機撮影データから得られる高空間・スペクトル分解能画像を、物体検出・識別に適用し、その有効性を確認した。今後は、ハードウェアとソフトウェアのパッケージ化とリアルタイム処理に取り組み、航空機搭載用のプロトタイプを開発する。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に超多波長分光カメラとマルチバンドカメラをセンサ融合し、空間分解能の高い分光画像を生成する超解像分光撮像システムを開発し、空間的超解像の倍率が6倍以上、スペクトル角度誤差が1度未満の分光画像を生成する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、衛星や航空機による地球情報の収集技術に適用できるため、農業分野や環境分野における情報提供サービスへの展開などでの実用化が望まれる。今後は、企業との連携を強化し、早急な実用化が期待される。
ナイキストレートを超える高速情報伝送技術の研究開発 東京農工大学
杉浦慎哉
東京農工大学
諏訪桃子
本研究開発では、ナイキスト基準で決定されるシンボル間隔の限界を超える高速情報伝送技術、Faster-than Nyquist Signaling (FTNS)、の実現を目標として、その実用化に不可欠な低演算量受信機開発と理論上限の導出を実施した。具体的には、1.広帯域通信を前提としたチャネル伝搬路に対応可能、2.FTNSで生じるシンボル間干渉の影響を除去可能、かつ、3.現状の受信機規模で実行可能な低演算量受信アルゴリズムを提案した。ここで、準理論解析的、および、数値解析的な両アプローチを適用し、性能限界を導くとともに動作確認を実施した。さらに、三連接符号器を用いたシステム提案を行い、従来課題であったエラーフロアの問題を解決した。今後は、実機による伝送実験を含めた研究が必要不可欠である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ナイキストレートを超える超高速情報伝送技術の開発において低演算量受信機の開発と理論上限を導出している技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、受信側における低演算能力で実働可能な複合機の開発に向けて、三符号連接誤り訂正符号化FTNSのシステムが提案されており早急な実用化が望まれる。今後は、より伝送路の信頼性を高めるため本システムのonチップ化や、実機での検証が期待される。
4次直列結合半導体マイクロリング波長選択スイッチの開発 横浜国立大学
荒川太郎
横浜国立大学
村富洋一
4次直列結合半導体量子井戸マイクロリング共振器によるヒットレス波長選択スイッチを開発し、その有用性を示すことを目的とした。その結果、コア層に独自開発を行っている五層非対称結合量子井戸を用い、量子井戸における電界誘起屈率変化を用いた基本動作の実証に初めて成功した。次に、周回長の異なるマイクロリング共振器によるバーニャ効果を用いた動作電圧の低減と箱形フィルタ特性の両立を目指した素子設計に成功した。更に、電子ビーム露光法を活用して設計した素子の試作を行った。完成には至らなかったが、作製プロセス上の課題を明らかにしてその解決策を見いだし、素子作製も見通しがたった。今後は、素子作製を行い、その動作実証、さらには高速スイッチング特性を実証する。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、目標の一部が達成されたことにより、基本構想について検証されたことは評価できる。一方、計画の中で実施できなかったものや、目標に達していない項目は継続的な研究開発が必要である。今後は、技術開発競争の激しい分野であるので、提案されている性能が実現されることが必要である。その後、デバイス設計・加工製造技術を有する企業と共同研究に進むことが望ましい。
体内深層部の細胞観察を実現させる超精細次世代型MRI組み込みソフトウェアの開発 富山大学
廣林茂樹
富山大学
永井嘉隆
本研究では、NHA の2次元化と MRI 応用のための組み込み技術の開発)とMRI データへの適用と評価実験を行った。まず、実数信号の解析用に構築されたNHAを複素数信号に拡張することを試みた。MRI再構成画像を得るために、フーリエ変換を行うk空間カテジアングリッド上では時間軸に加え、計測方向の角度情報を考慮することに起因して複素信号となる。その結果、本組み込み技術を、コンピュータシミュレーションで誤差評価を行ったところ、NHAの空間分解能は、1μm以上の精度向上を確認した。一般にFFTなどでは、精度は0.75mm~1.5mm程度であるため、100倍以上の精度向上を確認し、これまでの3TクラスのMRIの空間分解能3㎜の場合では、FFTをNHAで置き換えることで、理想環境下における空間分解能が3μmを見込めることがわかった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に低磁場でもMRIで鮮明な断層撮影を実現するソフトウェア解析技術NHAの2次元化とMRI応用のための組み込み技術について検討し、MRIデータへの適用と評価実験を行い、分解能の評価結果を示したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、医療・診断技術ばかりだけでなく、再生医療をはじめとした最先端技術を創出するための次世代計測装置として貢献されることが望まれる。今後は、学術的な成果の公開と共に、企業化に向けた連携も積極的に推進されることが期待される。
リアルスケールフォトコミュニケーションに関する研究開発 金沢大学
佐藤賢二
金沢大学
松枝世
本研究では、ディスプレイ上で実寸表示でき、寸法測定も可能なリアルスケールフォトの研究をさらに発展させ、Webサーバを介してユーザ同士がコミュニケーションできる環境を構築することにより、個人用途や産業用途でどのような新しいコミュニケーションが可能かを調査した。タブレットで動作する開発済みのアプリをさらにブラッシュアップし、サーバへのアップロード機能等を追加した上で、30人程度のテスターに2週間程度使用して貰ったところ、インターネットショッピングや遠隔地を結んでのデザイン開発などの実務応用から、ブログやSNSに見られる個人間の日常的なふれあいまで、リアルスケールフォトによる多彩なコミュニケーションの形を明らかにすることができた。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にリアルスケールフォトに関する技術について、その実用化に向けた評価として実装したスマートフォンアプリの被験者実験により、有用性に関して調査している技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、商談や遠隔医療、インターネットショッピングやグルメサイトなどの業務向けや一般向けアプリケーション等に広く利用が見込まれ、サイバーワールドとリアルワールドの融合という観点から重要な技術であると考えられるのでこれを生かした実用化が望まれる。今後は、評価実験とその分析は、学術的に有益であり論文に公表が期待される。
鉛直方向曲線状アレイを用いる遠隔局所空間の音圧感度制御方法の研究 金沢大学
三好正人
金沢大学
分部博
遠隔音声の高品質(高SN比)収音を目的として、鉛直曲線状にマイクロホン素子を等間隔配列するアレイを用いて、目的音声を含む部分空間内の収音感度を外空間と差別化する方法を定量評価する仕組(ソフト、ハード)を開発した。目的音声の中心周波数を超える帯域において、10 dB以上の領域内外集音感度差を得るために必要な アレイ開口長、マイクロホン素子数、及びアレイ・目的音声間距離の範囲 を求めることが出来た。今後は、計画より遅れている実機(ハード)による検証を進めるとともに、具体的な応用例の探索に努める。なお、本技術は収音系と再生系の相反性により、再生系にも適用出来る技術である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも直交する平面上に配置した音圧制御点に対する鉛直方向曲線上にマイクロホンをアレイ状に等間隔配列する構成により、水平面内音圧制御領域を絞り込む技術については評価できる。一方、会議場での質問者へのマイク受け渡しが不要な、質問者の発言のみを適応的に遠隔集音する装置またはその汎用システムなどの実用化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、システムが大掛かりになりがちであり、全体の規模が大きい施設/展示/イベントでの活用を考えることが望まれる。
マルチホップ型すれ違い通信で広範囲へのデータ伝送を実現するユーザ位置制御技術の開発 福井大学
橘拓至
福井大学
宮川才治
本研究開発では、マルチホップ型の新しいすれ違い通信を使って、広範囲なデータ伝送を可能にするユーザ位置制御技術の研究開発に取り組んだ。従来のすれちがい通信では、ユーザ位置の移動によってネットワークの接続形態が変化するため、データを常時伝送することができない。そこで、各ユーザから収集した位置情報を基に、広範囲なデータ伝送が可能になる各ユーザの最適位置を導出する技術を検討した。さらに、現在の位置情報を取得し、他の端末へ各ユーザの位置情報を転送するスマートフォン用アプリの開発に取り組んだ。このスマートフォン用アプリは、無線LANなどの既存通信インフラを使用せずに各ユーザの位置情報を取得することができるため、最適位置情報技術と組み合わせることで、大規模災害時などの通信インフラが使用できない場合での利用が期待できる。しかしながら、研究開発実施機関に本アプリの開発を完了することができなかったため、今後も引き続き開発を続けていく予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもマルチホップ型通信を使って、広範囲なデータ伝送を可能にするユーザ位置制御技術により最大1000ユーザの利用性および最大15ホップのデータ伝送の実現については評価できる。一方、大規模災害発生時等における活用に加えて、日常の利用促進の工夫等の検討に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、実環境での性能評価、有効性評価が未実施であり、早期の実施が望まれる。
半自動の言語タグ付けによる3次元モデルの形・意味協調検索システム 山梨大学
大渕竜太郎
山梨大学
還田隆
3次元モデル(3Dモデル)を簡便に検索する為に、人にとって簡便な、キーワードを検索要求とした検索を実現したい。しかし、殆どの3Dモデルは言語タグ(キーワード)を持たないため、これらの言語タグ無し3Dモデルに対し半自動で言語タグを付与する必要がある。本研究では、3Dモデル間の形状の類似度を元に、小数の言語タグ付きの3Dモデルの言語タグを、その他多数の言語タグ無しの3Dモデルへと高精度に伝播して付与する手法の開発を目指した。
本研究開発では、(1)密な局所視覚特徴を用いた高精度の3次元形状比較手法、(2)多様体を用いた高精度な単語-3Dモデル間類似度計算手法、の2つを組み合わせて用い、一定の成果を収めることができた。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも3次元形状モデルとそれに付帯する意味言語とをまとめて検索の対象とする検索システムを構築し、評価用の3Dモデルデータベースを作成した点については評価できる。一方、精度が少し向上したことにより、技術移転の話が出やすくなったとは思われるが、まだまだ実用的にはF値で0.2~0.3程度であり検索精度は実用にはほど遠く、更なる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、トイプログラムではなく、現実的な応用場面を想定して手法を検討することで、その場面特有の制約条件や特徴を利用でき、精度向上されることが望まれる。
逆プロトン交換法を用いてゼロチャープ・DCドリフトフリーを実現するLN光変調器の開発 山梨大学
垣尾省司
山梨大学
還田隆
ゼロチャープ特性が得られるXカットLiNbO3上の逆プロトン交換光導波路において、目標とするバルク値と同等の電気光学定数を得るために、電界印加逆プロトン交換法を提案したが、プロセス中に電極が変質する等の問題があり、得られた電気光学定数はバルク値の1/2に留まった。YカットLiNbO3を用いれば、逆プロトン交換時間が短時間であっても、より機能性の高い光導波路を作製できた。可視光帯の分岐干渉形光変調器を用いた測定において、DCドリフトの要因となる可動キャリアの存在を裏付けた。今後の作製条件の検討によって、バルク値と同等の電気光学定数をもち、自発分極の揃ったRPE光導波路が得られれば、DC ドリフトが十分に小さい光変調器が得られるものと期待できる。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも逆プロトン交換法と電界印加による分極処理を組み合わせ、逆プロトン交換光導波路を作製し、バルク値の1/2を得ている点については評価できる。一方、いくつかの問題点は明確なようであるが、どのように作製条件を追い込んで行くべきかに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、リッジ導波路等とのベンチマークを行うことが望まれる。
実環境に向けたマルチモーダル声質変換手法の研究開発 岐阜大学
田村哲嗣
岐阜大学
馬場大輔
本研究課題では、入力された音声(元話者)を別の人の音声(目標話者)に変換する「声質変換技術」と、音声・画像など複数の情報を統合的に処理する「マルチモーダル技術」を用いた、「マルチモーダル声質変換技術」の確立を目指した。これは、元話者の音声と画像(口唇動画像)を用いて、雑音下・実環境下でも音質の低下を抑えつつ、目標話者の音声に変換する技術である。実環境を想定した音響雑音や画像外乱を入力音声・画像に施し、従来の声質変換とマルチモーダル声質変換の比較実験を行った。結果、雑音環境下で従来手法より変換音声の音質が向上し、画像外乱に対しても頑健性を確認した。今後は実用化を見据え、マルチモーダル技術の高度化による音質改善と、モバイル端末への実装を行う。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に人工喉頭・高齢者の聞き取りにくい音声を、発話時口唇画像を用いて、聞き取りやすい健常者の自然な音声に変換する「マルチモーダル声質変換技術」において、障害者や高齢者などの音声を別の人の音声に変換する声質変換技術を実現している技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、Android端末上での実装やエンターテイメント分野での技術展開などでの実用化が望まれる。今後は、市場やニーズの調査や、障がい者や高齢者などによる実験的運用を通した評価を進めることが期待される。
色変調を用いた無線可視光通信システムのための適切な誤り訂正技術の開発 静岡大学
和田忠浩
静岡大学
鈴木俊充
本研究では、無線可視光通信における色変調の有効性を確認し、適切に誤り訂正符号を適用することで、通信性能が大きく改善することを検証した。まず、送信機として3原色LEDアレイおよび液晶表示装置を、受信機としてイメージセンサ搭載のUSBカメラを利用した並列伝送型可視光通信システムのプロトタイプを試作した。色変調における受信色強度特性を確認し、干渉色がレイリー分布に従うことを確認した。次に、色変調の性能をプロトタイプで評価し、単色光を使う場合の3倍近いスループットを達成できることを確認した。また誤り訂正符号としてターボ符号をプロトタイプに実装し、通信品質を保ちながら通信距離を1.25倍以上にできることを確認した。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にLEDアレイを送信源とした無線可視光通信において、隣接LED間の干渉、さらに色変調/色復調で生じた復号誤りによる特性劣化を補償する誤り訂正符号に関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、本研究はまだ学術的検討段階にあり、性能分析自体はパラメータが多すぎるので、網羅的に行うより具体的な利用シーンを想定した形での実用化が望まれる。今後は、学外の機関(民間企業や利用者団体)との共同検討を実施して効率的に展開されることが期待される。
高密度実装を対象とした電源ノイズ解析のための非構造格子によるモデリングツール及び高速解析ソルバの開発 静岡県立大学
渡邉貴之
静岡県立大学
柴田春一
本研究では、高密度実装を対象とした多層電源・グラウンドの非構造格子によるモデル化手法の確立を目指し、構造格子を用いた場合と比較して1/5程度の素子数で同等の解析精度を実現すること、及び、GPUによる解析アルゴリズムの高並列化を施した高速解析ソルバの開発を目標とした。モデル化手法に関しては、当初有望視していたV-modelについては導体境界への対応に問題が生じ、代替としてD-modelでの技術開発を行った。結果として、D-modelを採用したモデリングツールを構築し、構造格子を用いた場合と比較して例題について当初の計画通りに1/5程度の素子数で同等の解析精度を達成することに成功した。また、例題についてLIM法による解析がSPICE系アルゴリズムに比較して最大で20倍以上高速であること、GPUによるLIM法に基づく高速解析ソルバがSPICE系アルゴリズムに比較して最大で90倍以上高速であることを確認した。今後、モデリングツールとソルバ間の連携を強化し実用化への可能性を示すことを希望する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、技術開発に関する目標は、概ね達成され、モデルの確立やツール開発、GPUを用いた実装等の多岐にわたる研究開発を短期間で実施している点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、知財権確保に向けて、どの部分が特許化可能かなのかの検討が望まれる。今後は、実用化に向けて、企業との連携の検討と、具体的な研究開発計画の作成を期待する。
モバイル環境を指向した環境・話者適応型音声認識の実環境性能検証 名古屋大学
北岡教英
名古屋大学
大住克史
モバイル環境において、周囲環境や使用機材、話者の違いを簡易で高速に吸収して高い音声認識精度を得る手法を検討した。環境や機材などの、不特定多数に共通する音声への複数の影響要因と、話者の違いの要因を区別し、それらの組み合わせとなる特定の環境には各要因への対応を組み合わせることで対処する方法を考案した。具体的には、音声のモデル(音響モデル)の適応のための最尤線形回帰法(MLLR法)の変換行列を、環境ごと、機材ごとに保存し、その組み合わせを行列の積で表現する。この行列で環境適応された音響モデルを話者適応することにより、周囲環境・機材・話者すべてに適応した音響モデルを作成できることを示した。いくつかの環境・機材で収録した音声で実験した結果、その効果を確認した。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも既存の大規模データベースを再利用して環境に合った学習用音声データを生成する生成学習法において、認識性能を向上させる技術については評価できる。一方、サーバ側の指定によって選択的に個人への適応情報を適用するには場所・機材の適応効果があまり得られない場合もあり、更に実用化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、適応を車内環境などに特化して認識率を改善されることが望まれる。
自動車レーダ全車普及へ向けたプラスチック成型超低コストミリ波導波管スロットアンテナの開発 名古屋工業大学
榊原久二男
名古屋工業大学
岩間紀男
自動車レーダを全車に普及させることを目的とし、アンテナの低コスト化実現のために、プラスチック成形で導波管スロットアレーアンテナを開発した。プラスチック成形で製作する上で必要な構造上の制約条件を考慮してアンテナを設計した。また、次世代の自動車レーダを念頭に、広帯域特性実現のため、部分並列給電方式を考案した。電磁界解析の結果、±2GHzの周波数範囲で指向性方向が変化しないことを確認した。過去にアルミの切削加工で試作したアンテナをプラスチック成形で試作・評価したところ、利得低下量は0.4dBと、金属のアンテナとほとんど遜色のない特性が得られた。本研究により、プラスチック成形で、低コストで高性能なアンテナを実現できる目処が立った。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に従来は金属の切削加工などにより製造されたいた導波管アンテナを、プラスチック成型品にて製造可能な導波管スロットアンテナにに関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、プラスチック成型によるアンテナの製作を行い、実用に向けた実機テストでの評価を実施する計画段階にあり、耐久性、安定性の検証などと合わせ具体的な実用化が進められるものと期待される。今後は、小型化および軽量化のメリットを生かし、アンテナアレイをモジュール化するなど、部品としての汎用性を高める事が期待される。
動的なWebページのオンライン共同編集機構の実現 名古屋工業大学
新谷虎松
名古屋工業大学
太田康仁
本研究では、動的なWebページをオンラインで同期閲覧・編集を可能にする新たな手法の開発を目指した。目的達成のために、4種類のアルゴリズムを実現した。具体的には、(1)弱同期アルゴリズム、 (2)HTML・CSS同期型強同期アルゴリズム、(3)操作同期型強同期アルゴリズム、および(4)疑似強同期アルゴリズムを実現した。特筆すべき点として、モバイル端末でも利用可能な軽量な同期手法を実現した点が挙げられる。さらに、本技術の応用例としてタブレット端末に基づく介護支援システムを試作し、本手法の実用性を確認した。今後は、本技術を豊かな生活環境の構築のための要素技術とした応用システムの開発および普及を推進する。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に動的なWebページをオンラインで同期閲覧・編集を可能にする新たなアルゴリズムを開発し、複数のWebブラウザ間でアプリケーションの同期実行を可能としている技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、試験的に開発したシステムの長期運用による安定性や応答性能などの評価などでの実用化が望まれる。今後は、プロキシ―サーバ等を用いる方法でも似たような同期機構を実現することは可能と思われ、これらの手法に対する優位性を明確されることが期待される。
臨床工学技士の経験不足を補う人工心肺装置のスマートアラームの開発 中部大学
松井藤五郎
中部大学
藤原健一
本研究では、体外循環業務における臨床工学技士の経験不足を補うため、人工心肺装置のセンサー情報から人工心肺装置の異常を検知して臨床工学技士に知らせるスマートアラームを開発することを目標として、異常検知技術とスマートアラーム試作機の開発を行った。異常検知技術については十分に使えるものが開発できた。今後は、どのセンサー情報を利用するかについて検討する。また、警告灯及び液晶モニターを用いたスマートアラームの試作機を作成した。この試作機では、過去に行われた手術のデータを再生しており、今後は、人工心肺装置のセンサー情報をリアルタイムで監視しながら異常を検知できるようにする。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、当初の目的は残念ながら達成できなかったと判断されるが、実際の医療データを用いて医療関係者と連携しながら研究開発を行っているところについては評価できる。一方、 現在は、異常検出のための観測値の選定と、それらの多次元時系列データの処理技術に関する基礎研究を行っている段階と考えられるが、これが解決すれば、産学共同の研究開発ステップへ可能性が高まると推定されるのでさらなる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、医療データを利用できる立場にあることは大変貴重であり、時系列上の異常値検出法は既に多くの研究があるので、それらも参考にして提案手法を改善されることが望まれる。
タブレット上の力覚提示を伴うバーチャル物体との相互作用提示システム 大阪大学
浦西友樹
大阪大学
有馬健次
本研究課題は、伸縮可能なペンとタブレットを組み合わせて用いることで、ユーザがバーチャル空間内にペンを挿入する感覚を得ると共に、バーチャル空間内の三次元モデルとの力覚を伴う相互作用を認識するシステムの実現を目指したものである。本研究期間においてはまず、力触覚提示機構を有するペンを試作した。試作したペンは2種類から成り、それぞれ振動モータによる触覚提示と、ペンの伸縮制御による力覚提示を検証するためのものである。研究期間においては、力触覚提示機構の構築については当初目的を概ね達成した。今後は被験者実験の結果の分析を進める予定である。また、当初予定していたペンへの無線通信機構の搭載は、引き続き今後の課題として挙げられる。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、タブレット端末とペンを用いた三次元バーチャル空間との力覚を伴う相互作用を提供するシステムの試作および有効性の定量評価について、成果が得られていることは評価できる。
一方、技術移転の観点からは、ペンの小型軽量化および無線化に関する課題が明らかになっているが、この分野においては技術の発展がめざましく、今後のハードウエアの進歩に応じた改良も考慮し、実用化につなげることが望まれる。今後は、応用範囲を絞って有用性を高めることも重要と考えられ、産学共同のステップにつながることが期待される。
高齢者見守り支援のための照明器具に寄生する屋内位置計測システムの開発 大阪大学
前川卓也
大阪大学
BeringKristian
老人の遠隔見守りシステムの運用可能性・開発に関する以下のような成果を得ることができた。
1.独居老人を介護する被験者インタビューの質的分析を行うことにより、介護家族による遠隔からの老人に関する情報収集を妨げる要因を明らかにした。また、発見した要因を基に見守り介護に必要な機能を提案した。
2.見守り介護のための位置推定システムの長期的運用可能性を確かめる実験を50日間にわたって行った結果、長期に渡って安定を保てるシステムの開発に成功した。
3.これまでに製作していた位置推定用ビーコンの小型化(当初の1/4に対して1/3)・低消費電力化(1/17.5)を行い、消費電力に関して当初の予定(1/2)を大きく上回る成果を示した。
4.本研究遂行の過程で、高齢者に位置推定用のタグを携帯してもらうことは難しいことが分かったため、今後はタグを必要としない推定手法の開発を行う知見を得られ、実用化においてはユーザの声を常に意識する開発過程を重視する見解にも繋がった。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に照明器具に取り付ける位置計測デバイスの小型化と見守り用位置計測システムによる家庭内位置計測技術を開発し、その有効性を評価実験により明らかにしている点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、被験者インタビューを通して、実用化に向けたユーザの声を収集し、アンケートによる実用化に向けたユーザ調査も実施しているなどでの実用化が望まれる。今後は、達成出来た精度から利用者にどのような事が提供できるかを提示するアプローチや、現在模索している企業との共同研究をすすめることが期待される。
エンドユーザのための球面ディスプレイ開発基盤 大阪工業大学
橋本渉
大阪工業大学
乙武正文
球面ディスプレイを容易に構築するための取り組みとして、設計・調整・映像生成の開発フローに着目した開発基盤を構築することを目標としてきた。設計フローにおいては、光学設計ツールである「バーチャルプロジェクタ」をより使いやすく改良するとともに、並列計算によってリアルタイムに歪み補正テーブルを計算することが可能となった。調整フローでは、深度センサによりスクリーン形状を観測することで、特殊な調整なしで対象の形状を取得する方法を実現することができた。映像生成フローでは、深度センサにより得られた形状より、自動的に補正テーブルを獲得し、歪み映像の生成が可能であることを確認した。これらの開発フローを有機的に連携させ、開発工程として一貫性を持たせることが今後の課題である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも球面ディスプレイシステムにおいてデプスカメラの効果による正確な球面の位置や大きさ、曲率の計測結果が、球面スクリーンへの投影に利用されている点については評価できる。一方、光学設計フロー、調整フロー、コンテンツ生成フローの技術に分割して研究を継続していくとしているが、研究成果を応用、展開していくために、それぞれの要素技術の開発だけでなく、要素技術の体系化をテーマとして取り上げ、如何に球面ディスプレイシステムとして1つにまとめ上げるかに向けた技術的検討が必要と思われる。今後は、球面ディスプレイの実用化開発フローが実用化できれば、医療、芸術など様々な分野での利用が期待され、また、実用化を急ぐために(処理時間を短縮するために)はディスプレイ形状を任意形状としないで、ある程度制限(限定)すべく検討されることが望まれる。
マイクロ波分配回路を一体化したゼロチャープ光変調素子の開発 兵庫県立大学
榎原晃
兵庫県立大学
八束充保
長距離光ファイバ伝送や高速変調動作の際に問題となる波長チャープを低減させ、さらに実用性の高い構成の光変調素子の実現を目指した。ラットレース回路と呼ばれるマイクロ波分配回路を電気光学変調素子表面上に直接形成し、一体化することにより、変調信号の等分配と位相制御を変調素子上で行い、単一入力で後調整不要な小型・ワンチップ構成のゼロチャープ光変調素子を提案した。ラットレース回路は目標値である従来構成の面積1/2以下の小型化に成功し、一体化構造に対応した。光変調素子を設計・試作し、動作実験により当初目標である0.1以下のチャープパラメータを実測し、本構成の有効性を実証した。今後、素子構造をさらに発展させることや小型ゼロチャープ変調器の実際の光通信システム等への応用展開を検討し、本技術の産業化につなげたい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にマイクロ波分配回路を電気光学変調素子表面上に直接形成して光変調部分と一体化することにより、変調信号の等分配と位相制御を基板上で行うことによる光変調素子を実現し、同一LN基盤上での複数の機能を有する微細マイクロ波回路と光回路の実現とチャープ量の低減実証を行っている技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、シミュレーションが異方性媒質をどの程度織り込んであるかや、合波時の一方向の光強度のコントロール原理を明確にすることなどでの実用化が望まれる。今後は、将来のインフラだけでなく、現状の市場を狙った小型高性能でローコスト化を狙った研究開発検討されることが期待される。
仮想コンテンツセントリックネットワーキングの通信性能 関西学院大学
大崎博之
関西学院大学
丸本健二
本研究課題では、現実的な環境下におけるVCCN (仮想コンテンツセントリックネットワーキング) の通信性能を計測し、そのフィージビリティを検証した。まず、IA-32アーキテクチャのモデル固有レジスタを利用することで、エンド-エンド間のコンテンツ配送遅延およびスループットの高精度計測モジュールを開発した。次に、Linux カーネルのインターフェースエイリアス機能およびネットワークエミュレータを応用し、単一の物理計算機上で、大規模な VCCN ネットワークを模擬できるネットワークエミュレーション環境を構築した。さらに、大規模なネットワークを想定した環境下での性能評価を行い、VCCNのスケーラビリティおよびフィージビリティを明らかにした。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にVCCNの通信性能の計測については、IA-32アーキテクチャのモデル固有レジスタを利用して、nsecレベルの高性能計測が可能となる枠組みを開発し、CCNをエミュレーション環境で実装し、通信性能を計測し実現性を検討している技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、開発したエミュレーション環境を、CCNの実装コードであるCCNxをベースとして開発している利点を活用し、今後企業との連携推進による実用化が望まれる。今後は、エミュレーションを用いた大規模ネットワーク評価について、さらに複雑なトポロジを用いて様々な環境で評価を進められることが期待される。
多段クラウドソーシングを活用した多言語用例対訳プラットフォームの構築 和歌山大学
吉野孝
和歌山大学
藤ヶ崎諒平
本研究開発の目的は、医療現場における様々な対話において使われる多言語用例対訳を提供するための多言語用例対訳プラットフォームを構築することである。本プラットフォームの特徴は、単言語話者のみであるが、機械翻訳を介すことで、翻訳作業が適切に実施できる環境の実現である。本研究開発では、複数のクラウドソーシングとして、(1)日本人向けのクラウドソーシングサービス、(2)外国人向けのクラウドソーシングサービス、(3)学生向けのクラウドソーシングサービスの3種類を組み合わせて、多言語用例対訳を生成する。実験の結果、話者を明確に示し、翻訳の状況を画像で伝えることにより、不完全な機械翻訳を利用しても、正確な多言語用例対訳が生成できる可能性を示した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に医療現場における様々な対話において使われる多言語用例対訳を提供するための多言語用例対訳プラットフォームを構築し、クラウドソーシングに注目して対訳用例を生成するためのメカニズムを構築し、実験を通してその実現可能性を示している技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、応用の展開先は、病院などいくつか考えられており、社会への還元性という点では大いに期待できるため早急な実用化が望まれる。今後は、クラウドソーシングを用いた対訳用例の生成において、作成される用例の品質を高めるための仕組みについて検討されることが期待される。
密結合ヘテロジニアスマルチコアによる高信頼車載応用画像認識の研究 岡山県立大学
有本和民
岡山県立大学
湯浅光行
画像認識応用に向けてのメモリとの密結合したヘテロジニアスマルチコアアーキテクチャを構成する高速再構成型演算器や高バンド幅高密度メモリ等のコア技術の検討を行った。また高信頼車載応用に向けてのFPGAハードウエアプラットフォームとIPの形式検証環境を構築し、画像認識アルゴリズムを実装して、基本性能評価と実用化に向けての評価と課題抽出を行った。上記コア技術により、高信頼性を確保しつつ、従来比50%以下のハードウエアリソースと低消費電力化を実現する目途を得た。今後は、実用化をめざして、上記コア技術の実証実験システムへの実装に向けての詳細な評価、改良設計を推進していく。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に従来の複数アルゴリズムを多重化したハードウエア上に実装して高信頼画像認識を実現する場合に比べ、車載機器向け高信頼画像認識システムを小規模ハードウエア量、低消費電力で実現している技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、「障害物検知応用」と「高信頼医療画像認識応用」という研究目標に対する技術課題を明確にした技術展開などでの実用化が望まれる。今後は、車載機器のみならず、医療分野等、信頼性の高い画像認識に対する応用は広範囲に及ぶが、今後の展開のためには、それぞれの分野に対する技術的課題を検討されることが期待される。
集積化テーパーファイバーによるプラズモンセンサーの開発 九州大学
山本和広
九州大学
姫野康隆
本研究課題では、金属化したテーパー化光ファイバーにナノギャップ構造を設けた新規光センサーの開発を目標とした。金属コートしたテーパー化光ファイバー構造では光強度の増強が生じることを数値計算により示し、集束イオンビームおよびウェットエッチング加工による構造作製を行った。作製した構造では目標である光透過率による液体の屈折率測定には至らなかったが、課題解決のため光相互作用の増強が可能なフォトニック結晶構造の導入を行い、透過光スペクトルの測定からセンサー構造での光閉じ込め効果を確認しセンサーデバイスへの適用を検討した。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも金属コートしたテーパー化光ファイバーを基板上に配置した構造による光センサーにおいて集束イオンビームおよびウェットエッチング加工による構造作製している技術については評価できる。一方、ファイバ表面へのフォトニック結晶構造の導入は新規性があり知財化が期待されるが、公知技術の組合せと見做される可能性も考えられるため何らかの新規性の付与のための技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、高精度な光ファイバー加工法、より滑らかな金属膜の製膜法を検討されることが望まれる。
相互評価と可視化・迅速フィードバックに基づく社会人基礎力育成支援システムの開発 九州工業大学
大西圭
九州工業大学
影山隆雄
現在社会的に急務である若者の社会人基礎力の育成を支援するために、経済産業省が提唱する「社会人基礎力レベル評価基準」を利用した自己評価と他者評価のズレを当事者に多面的かつ直観的に自覚させることができるシステムを開発した。さらに、本システムを従来システムと比較する主観評価実験を実施し、その基本的有効性を示した。目標としていたシステム開発と評価を行い、さらに本システムに関する特許の出願を果たし、高い目標達成度を得た。もう一つの目標であった自己評価と他者評価結果の可視化方法を個人の好みに合うようにカスタマイズする仕組みの実装は果たせていない。その仕組みの実装が、本システムを普及させるための今後の課題である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に自己評価と他者の評価のずれを自覚させるシステムの開発と評価結果の可視化をカスタマイズする技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、結果の可視化のカスタマイズは、得られた結果を直感的に自覚するための重要な技術であり、早急なシステム開発の進展が望まれる。今後は、若者の社会人基礎力の育成は我が国の大きな課題であり、多くの業界へ積極的に普及されることが期待される。
スマートフォンで車両混雑状況を推定し表示するオンラインシステム 佐賀大学
中山功一
佐賀大学
末安亜矢子
現在運行中の電車やバスの車両の混雑状況を提示するAndroidアプリを研究開発した。複数の乗客が所持するスマートフォンに搭載された加速度センサの情報から、車両内で立っている乗客の比率を判別し、車両の混雑状況を推定できることを、約20台の加速度センサとのべ100人・日以上の被験者実験により確認した。その中で、電車用の姿勢判別アルゴリズムとは別の、バス用のアルゴリズムを新たに開発した。その結果、従来のアルゴリズムでは姿勢判別できなかったバスの乗客に対しても、姿勢を判別して乗車率を推定できることが確かめられた。また、今後の事業展開を見据えた連携を模索できた。今後も引き続き、開発した研究用アプリを改良し、Androidアプリを一般公開を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にスマートフォンに搭載された加速度センサの情報から、車両内で立っている乗客の比率を判別し、車両の混雑状況を推定する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、関係する企業との連携を進めることによる実用化が望まれる。今後は、混雑度のリアルタイム推定に加えて混雑度の予測につなげることが期待される。

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