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事後評価 : 【FS】探索タイプ 平成26年7月公開 − ライフイノベーション 評価結果一覧

※他分野の評価はこちらからご参照ください。 >> 事後評価 : 【FS】探索タイプ 平成26年7月公開
課題名称 研究責任者 コーディネーター 研究開発の概要 事後評価所見
表面性状の制御による安全・快適なペット共生型床材の開発 地方独立行政法人北海道立総合研究機構
松本久美子
地方独立行政法人北海道立総合研究機構
斎藤直人
数種類のブラシを用いて浮造りを行い、異なる表面形状を有する床材の試験体を作製し、形状測定、すべり試験、べたつき係数の算出を行った。結果より、すべり抵抗係数(以下C.S.R・D')は、試験体表面の粗さ(以下Ra)に依存し、Raがある程度の値になると発現することが示された。一方、べたつき係数(以下Cs)についてはRaとの間に明確な相関は認められなかった。また、犬による傾斜法試験の結果より、当該研究で開発した床材は、すべりにくさについて、一定の効果が認められた。人による接触感の主観評価を行い、凹凸のある床材は、市販の床材とは異なる接触感を持ち、好ましいと評価する被験者層を有することが示された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、 当初目標としていた「すべりくにくさという安全性を備えた床材を開発すること」については、一定の成果が得られていることは評価できる。 また、数値による性能評価ができたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、居住性に対する数値評価は重要であり、十分なデータの蓄積をさらに目指すことが望まれる。今後は、研究成果に基づいた新規特許出願をおこない、関連企業と連携を図りながら実用化に進むことが期待される。
自己骨髄間葉系幹細胞の静脈内投与による糖尿病性肝障害・腎障害の治療 札幌医科大学
藤宮峯子
札幌医科大学
石埜 正穂
自己骨髄間葉系幹細胞を投与することで、糖尿病で起こる腎障害、肝障害、血管障害やその他の合併症を治療することを目的に研究を行ってきた。自己骨髄細胞を治療に用いる場合、糖尿病患者では骨髄幹細胞が異常を来していることが分かっており、有効な治療効果を得るために体外で培養・増殖させる際に調製を加え、正常化する必要がある。本研究の結果、物質Xを培地に添加することで、 糖尿病で起こる骨髄間葉系幹細胞の異常を正常化しうることが分かった。この方法につき、現在特許申請中である。H26年度からは、民間企業から寄付金を得て研究を継続する予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。動物モデルを用いたMSC細胞の新たな体外培養法の開発とその細胞を活用した糖尿病性肝障害・腎障害の治癒効果を明らかにした点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、ヒト臨床応用を考慮すると、体外培養に用いるヒトMSCは成分既知培地が望ましく、異常なMSC細胞の正常化メカニズムの解明も必要と思われる。今後は、MSC細胞の大量培養や無血清培養について経験を有する研究者との共同研究が最終目標達成の迅速化に必要である。
新規バイオマーカー探索としての大腸癌・大腸鋸歯状病変のゲノムワイドDNAメチル化とmicroRNA発現異常の網羅的解析 札幌医科大学
能正勝彦
札幌医科大学
石埜 正穂
我々は大腸癌でゲノムワイドDNAメチル化の指標となるLINE-1メチル化レベルと相関を示すmiRNAを同定するためアレイでその発現を網羅的に解析した。その結果、LINE-1と強い相関を示したmiR-31が同定された。このmiR-31を多症例の大腸癌で検証したところLINE-1だけでなくBRAF遺伝子変異とも相関を認めた。よってmiR-31はEGFR下流シグナルを制御する可能性があるため、抗EGFR抗体薬投与例で効果予測因子として有用であるか検討。その結果、その高発現群では無増悪生存期間が有意に短いことが明らかとなった。大腸鋸歯状病変でもその発現を検討したところmiR-31はその発育進展に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。よって今回同定されたmiR-31は大腸癌の分子診断や標的治療の新たなバイオマーカーとして期待される。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、大腸癌のLINE-1メチル化レベルと相関するmicroRNA-31(miR-31)を同定し、その分子は大腸癌の予後やBRAF遺伝子変異とも有意に相関していることを明らかにした。転移性大腸癌の抗EGFR抗体薬投与例でmiR-31高発現群はPFSの短縮が認めたことから、EGFR下流シグナルのRAS-RAF-MEK-ERK経路の活性化に関与する可能性が示唆された。miR-31は大腸癌の新規バイオマーカーとして期待され、新規特許出願中である。また、企業によるキットの販売と薬事承認を目指すなど評価できる。 一方、技術移転の観点からは、技術移転を目指した産学共同等の研究開発ステップにつながる可能性が高まり実用化が望まれる。今後は、企業によるキットの販売と薬事承認を出来る限り迅速に実現されることが期待される。
ウシ乳由来リポカリンの利用技術開発 帯広畜産大学
福田健二
帯広畜産大学
藤倉雄司
泌乳牛延べ560頭から血液試料を採取した。また、ウエスタンブロットによるbcOBP検出法を改良し、より明瞭なデータを得ることが可能となった。採取した血液試料のうち80頭分についてウエスタン解析を行なった結果、bcOBP発現量の正常なウシでの個体差は33.4% (n=64)と見積もられた。乳房炎(n=5)、蹄異常(n=4)、ケトーシス(n=5)に罹患したウシ血液について、bcOBP発現量に正常なウシとの統計的有意差は認められなかった。試料採取は目標を達成したがウエスタン解析が完了しておらず、達成度は60%と見積もった。今後、残りの試料について解析を行ない、bcOBPがバイオマーカーとして利用可能か見極める。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ウシ乳中に在る、疎水性分子を運搬する新規リポカリンタンパク質bcOBPが血液中にも存在することを見出した事、及び、80頭の血液分析で大まかな見通しをつけた事については評価できる。一方、分析した試料は予定の14〜16%と少なく、乳房炎、蹄異常、ケトーシスなど疾病のバイオマーカーとしてbcOBPが有用であるとの知見は得ておらず、分析未実施の試料について他の疾病に関するデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、初乳中でのbcOBPが子牛の成長等にどのように関与しているか(例えば免疫系への貢献)なども検討されることが望まれる。
日本におけるクリプトスポリジウム症の簡易迅速診断を目的とした新規原虫抗原の探索 帯広畜産大学
正谷達謄
帯広畜産大学
藤倉雄司
原虫性下痢疾患の一つであるクリプトスポリジウム症は、新生牛に発育不良を引き起こすだけでなく、ヒトにも感染することから公衆衛生学的にも重要な感染症の一つである。本課題では、日本で蔓延しているクリプトスポリジウム症に対する迅速かつ高感度な簡易診断法の確立を最終目的とし、北海道内各地を中心としたクリプトスポリジウム陽性牛下痢便の採集及び原虫オーシストの精製を行う。採集された本原虫のDNA配列を解読することで、日本におけるクリプトスポリジウム原虫の分子遺伝学的特性を明らかにすることを第一の目的とする。さらに得られた精製オーシストを材料とし、我が国のクリプトスポリジウム対策に有用な新規原虫抗原を免疫学的手法によって探索・同定する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、クリプトスポリジウム原虫感染症の簡易診断法確立のための基礎となる疫学的調査し、候補分子であるGP15に対するモノクローナル抗体を獲得していることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、迅速簡便診断キットの開発はこの種の疾患では極めて重要であり、実用化された場合、社会的意義は大きい。得られた抗体の有効性と実際の診断キット作製に向けた問題点を洗い出すことで実用化が望まれる。今後は、知的財産に関する対応を十分に考慮するとともに、民間企業との連携されることが期待される。
トリパノソーマ症に対する簡便で迅速な血清診断法の開発 帯広畜産大学
井上昇
帯広畜産大学
藤倉雄司
トリパノソーマ症はアジア・アフリカ・南米地域に蔓延する致死的原虫病で、その被害は甚大である。未だに顕微鏡検査による原虫検出が標準診断法として用いられているが、感度が低く時間がかかるために、簡便、迅速、正確な診断法の開発が喫緊の課題である。そこで本申請課題ではトリパノソーマ症簡易迅速診断法の開発を目的とした。研究代表者らが報告してきた各種のトリパノソーマ血清診断用組換え抗原を活用してICT法の開発を試みた結果、試作ICT診断法が完成した。ICT法は既に熱帯病の簡易迅速診断法として応用されており、将来トリパノソーマ症のみならず、各種感染症の簡易迅速診断法として応用できる可能性が極めて高い。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、感染動物血清に対してELISA法に近い感度と精度を持つトリパノソーマ症診断用ICTテストストリップを開発することに成功し、発展途上国の流行地における安価で簡便な診断キットとして実用化される可能性があり評価できる。一方、技術移転の観点からは、今回の結果は多くの原虫症診断に応用される可能性がある。ICTテストストリップの改良と同時に流行地での実用化に向けたフィールド試験を行ない実用化が望まれる。
今後は、よりスピード感を持った研究の発展を目指されることが期待される。
大量生産を可能にするタラバガニ属卵の同調孵化誘発技術の開発 東京農業大学
松原創
東京農業大学
西澤信
タラバガニ属は1個体あたり約2〜8万粒の卵を抱くが、それらは1〜2ヶ月かけて非同調的に孵化する。つまり初期に孵化した幼生と後期に孵化したそれの発達段階は大きく異なり、同一水槽で飼育した場合、後者は捕食されるため、大量生産ができない。そこで、本課題ではオーガニック技術を用いた同調孵化誘発によるタラバガニ属種苗の大量生産を試みた。その結果、わずか2週間で全ての卵を孵化させることに成功した。また得られた種苗を様々な水質で飼育したところ、6度以下、27PSU以上で飼育すると生残率が高いことがわかった。今後は、本技術により得た種苗の更なる大量生産を実施し、本属種苗の安定供給に貢献したい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、簡便な同調孵化を誘発する技術を開発し、生残率向上のための種苗生産での最適な水温と塩分の条件を明らかにしたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、孵化同調のメカニズムを明確にすると共に、発達段階の大量の種苗を飼育する技術も検討し種苗生産の一連の技術としての実用化が望まれる。今後は、知財権の取得や他の研究機関との連携も検討し、技術開発を加速されることが期待される。
神経細胞相互作用研究プラットフォームのための細胞パターニング 独立行政法人産業技術総合研究所
鈴木正昭
独立行政法人産業技術総合研究所
太田英順
細胞接着性物質への真空紫外光照射による接着性変化を利用した多点電極基板上への神経細胞パターニングについて研究した。この方法は基板上に細胞を播くだけで培養の経過とともにパターンができるので、特に細胞を操作することなく中程度の数の神経細胞集団の配列、軸索成長を制御できる特色がある。神経細胞相互作用研究のプラットフォームとしてのこの技術の実用化可能性を探るために本課題では適用できる細胞接着性物質の種類を増やし、かつパターン基板の信頼性評価法確立を目標に進めた。その結果4種類の接着性物質に付いてこの手法の適用可能性を明らかにし、また表面の性質を利用したパターンの非破壊検査法を二つのノウハウとしてまとめた。今後研究開発は中断するが、ノウハウを元にした新たな連携の可能性を探っていく。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、PDLの一般的有用性を確認し、また他種の接着因子の適性の検討を行い、今後の細胞パターニング技術に関わるノウハウを蓄積したことについては評価できる。一方、技術的中断を余儀なくされたため、技術展開が可視化されにくい状況である。ノウハウとして重要な知見をみているため、共同開発先を得て展開されることが望ましい。人工臓器などの将来的な生命科学産業に有用であるため今後パターン基板の信頼性評価の定量化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、研究が中途である印象が否めず、本来の目標を達成するべく機会を得て進めていただきくことが望まれる。
数値人体モデルを用いた、高精度電磁界-熱伝導連成解析手法の検討 苫小牧工業高等専門学校
武居周
苫小牧工業高等専門学校
土田義之
本研究は、マイクロ波帯域の電磁界を用いた医療機器の治療品質向上に向けて、生体内の電磁界強度とその熱効果の高精度な予測に必要となる電磁界-熱伝導大規模連成数値解析手法を検討したものである。本研究により、電磁界-熱伝導連成解析手法が確立し、また、連成システムのアルゴリズム上において電磁界解析がボトルネックとなることがわかった。このことを解消するために、スーパーコンピュータ利用を前提とした電磁界解析コードのチューニングを行った結果、一定の性能が得られ、2.6億自由度の大規模人体モデルが計算可能であることがわかった。以上の結果より、本研究開発課題の技術移転の一定度の可能性が見出された。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも電磁界-熱伝導連成解析おいて、スーパコンピュータにより最大70時間、通常数十時間の実用時間内で計算可能であること、手法の開発に於いては、プログラムを実装した結果、電磁界解析がボトルネックとなることがを明確にしたことについては評価できる。一方、数値人体モデルデータを用い、ハイパーサーミア等の温熱治療器の治療品質向上を応用分野として挙げており、当初より実用を視野に入れているため産学協同による研究開発に進む可能性は高いが、そのためには、開発企業や潜在的利用者との共同開発が必要と思われる。
漢方薬原料「カンゾウ」の薬用成分高含有品種「スーパーカンゾウ」の低コストクローン培養法の開発 北海道医療大学
高上馬希重
公益財団法人北海道科学技術総合振興センター
伊藤征也
カンゾウ(甘草)は漢方薬原料として最も多く利用される薬用植物である。主薬用成分グリチルリチンの含有率が高い選抜植物体の大量供給には、栽培期間を飛躍的に短縮することができる植物組織培養によるクローン増殖苗の生産が必要である。本研究成果から、従来非常に困難であったグリチルリチン高含有植物体の再生クローン植物体を得る手法を確立した(再生率50%)。今後さらなるクローン植物体再生の高効率化と、生産コストの低減化を推進することにより、グリチルリチン高含有カンゾウの実用的な生産が期待される。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、これまで困難とされたグリチルリチン高含有植物体のクローン増殖法として特殊な設備や技術が不要な低温処理法を確立した事に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、計画中の大規模な圃場栽培試験を通して低コスト化とスケールアップに伴う課題を解決するなどで、早期の実用化が望まれる。今後は、クローン苗作製技術に関する周辺特許を含めた排他性の高い特許を出願すると共に企業とのコンタクトを密にされることが期待される。
重水と水素ガスによるマージナル肝グラフトの修復 北海道大学
深井原
北海道大学
金子真紀
UW液による単純冷保存を陵駕する臓器保存法を見出すために、ラット肝冷保存し、単離肝灌流装置で再灌流した。重水含有新規臓器保存液による各種の冷保存法はUW液による単純冷保存法を陵駕するグラフト保護効果であることが、門脈抵抗の減弱、胆汁産生量、酸素消費率から明らかになった。心停止肝グラフトを通常の冷保存法で保存すると、肝細胞による胆汁の生合成、細胆管から総胆管への胆汁排出という複合的な肝機能は完全に廃絶し、一滴の胆汁も排出されなかったが、今回検討した条件で処置することにより、機能を維持できることが示された。 当初目標とした成果が得られていない。中でも、 研究中断により、課題を分析するだけの研究成果が得られていない。そのため、特許出願や技術移転が見込めない。脳死による提供臓器をできるだけ有効に活用するための保存液の開発は、本研究に限らず魅力あるテーマであるので、改めて技術的検討や評価が必要である。今後は、本申請者の研究再開のための環境整備がされることが望まれる。
愛玩動物の腫瘍疾患に対するキメラ抗体を用いた新規治療法の創出 北海道大学
今内覚
北海道大学
須佐 太郎
近年、愛玩動物における腫瘍性疾患の重要性はますます高まっており新規治療法の開発が期待されている。本研究開発は腫瘍の宿主免疫回避機構を解明し免疫抑制因子を標的とした抗体療法の開発を目的とした。まず免疫抑制因子イヌPD-1およびPD-L1遺伝子を同定し、犬種間に遺伝子多型がないことを確認した。免疫組織化学染色法によりイヌの腎細胞癌、肥満細胞腫および悪性黒色腫においてPD-L1が高発現していることを確認し、抗PD-L1抗体により腫瘍浸潤免疫疲弊化リンパ球を再活性化することに成功した。このことからPD-1/PD-L1経路の阻害がイヌ腫瘍疾患の新規免疫治療の戦略となりうることが示された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にイヌおよびネコのPD-1およびPD-L1の遺伝子および分子解析を完了した事、IFNγの分泌を刺激する抗体を作製し更にはLAG-3抗体との併用で増強効果を認めた事は評価できる。一方、技術移転の観点からは、当初計画にあったin vitro試験で腫瘍細胞抑制効果を確かめるなどでの実用化が望まれる。今後は、PD-L1抗体を用いたヒトの臨床試験での有害作用が報告例も勘案した臨床試験と知財権の取得を検討されることが期待される。
抗菌性ポリリン酸と高強度うろこコラーゲンを活用した新しい歯槽骨再生デバイスの開発 北海道大学
柏崎晴彦
北海道大学
城野理佳子
歯槽骨(歯を支える骨)喪失による咀嚼機能の低下は、著しくQOLを損なうが、失われた歯槽骨を十分に回復させる生体材料は存在しない。歯槽骨は外力が加わりやすく、かつ細菌にさらされているため、高い耐荷重性と抗菌性を有する生体材料が求められている。これまで提案者らはテラピアのうろこから抽出したコラーゲンとアパタイトの複合化技術と架橋・高強度化技術により高強度人工骨を開発した。今回、この高強度人工骨に、抗菌性ポリリン酸を複合化することにより、黄色ブドウ球菌に対する抗菌性が向上することを見いだした。今後、臨床応用に最適な抗菌性と強度を有する生体材料の開発をめざす。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、テラピアのうろこから抽出したコラーゲンとアパタイトの複合化技術と架橋・高強度化技術により高強度人工骨を開発し、抗菌性ポリリン酸を複合化することにより黄色ブドウ球菌に対する抗菌性が向上させたことは評価できる。一方、ほ乳類を用いた動物実験を通じて、起炎性や組織障害性を見る必要があり、骨形成能についてもin-vivoでの評価が中心になるので、動物への埋植試験を実施に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、早期に動物への埋植試験を実施すべきである。もともと生体材料であるため、早々に起炎性や組織への異害性等をin-vivoで見ることが望まれる。
原子間力顕微鏡法を用いたがん細胞診断自動解析法の開発 北海道大学
岡嶋孝治
北海道大学
城野理佳子
がん細胞の診断において、その早期発見は極めて重要である。がん細胞を単一細胞レベルで診断する技術は、究極のがん細胞早期発見技術と言っても過言ではない。近年、正常細胞と比べて、がん細胞は、その硬さが異なることが分かってきた。そして、原子間力顕微鏡(AFM)法を用いて、個々の細胞の硬さを精密に測定することにより、従来のがん細胞診断法では識別が困難であったがん細胞を診断することが可能になってきた。このように。 AFMは、他の手法では診断が困難ながん細胞を、単一細胞レベルで力学的に精密に診断できる手法として期待されているが、未だ基礎研究領域からは脱していない。その大きな理由の1つとして、AFM装置の操作の煩雑性がある。本研究開発では、単一細胞の力学計測技術の自動化を達成し、単一細胞レベルで、多数のがん細胞のレオロジー計測に成功した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、正常細胞とガン細胞とをAFMによって識別する実用的な検査法の基礎技術を開発したことはと評価する。一方、技術移転の観点からは、ガン識別への道を拓いただけでなく、様々な細胞レベルの計測手段として、生物・医学の研究装置として活用されれば、社会的な貢献は大きいと考えられる。装置技術に加えて、個々の細胞間の干渉を防ぐ手法も開発しており実用化が望まれる。今後は、生物・医学等の関連分野の研究者との共同研究を推進し、関連装置企業との共同開発に早期に取組むことが期待される。
硫酸化グリコサミノグリカンのオリゴ糖製造法開発 北海道大学
?剣萍
北海道大学
須佐太樹
コラーゲン会合して皮膚や骨の主成分として存在するデルマタン硫酸(DS)は組織の弾性の維持に寄与しており、化粧品や健康食品として利用されているが高分子であるため、吸収に問題があった。本研究では、DSの低分子化し、オリゴ糖を高収率で製造する高温・高圧水マイクロ化学プロセスを構築した。この方法は、既に医薬品として利用されているヘパリンにも応用可能であった。生成オリゴ糖は、DSを生合成することができない動物細胞変異株に繊維芽細胞増殖因子2 (FGF2)と共に与えると、顕著にそのシグナルの亢進(リン酸化の亢進)が認められ、創薬シーズとしての高い価値が認められ、今後の研究展開によっては極めて有用な創薬素材となることが期待される。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に高温・高圧水マイクロ化学プロセスを用いて、硫酸化グリコサミノグリカンのデルマタン硫酸およびヘパリンを8糖以下のオリゴ糖まで低分子化させる方法を確立できた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、製造レベルでスケールアップした場合も同条件で分解が可能か、硫酸基を含めた生成オリゴ糖の詳細な構造解析結果を含めて再現性があるかを検討する必要がある。今後は、本法で調製したヘパリンオリゴ糖が、市販の医薬品と比較して、効果やコスト面等で優れているか検討することが期待される。
吸血昆虫唾液由来の新規RGDペプチドを応用した抗血栓薬の開発研究 北海道大学
加藤大智
北海道大学
須佐太樹
本課題は、南米アンデス地域に生息するサシチョウバエ唾液から見出した新規RGDペプチドの機能を解明することを目指したもので、本研究では大腸菌タンパク発現系を用いて、このペプチド(ayadualinと命名)が、C末端のRGD配列とシステイン残基に依存して血小板凝集を阻害し、かつRGD配列非依存的に血液凝固系の接触相を阻害するという2つの止血機構を抑制するユニークな生理活性を持つことを明らかにすることができた。今後はayadualinが生体に対してどのような薬理作用を及ぼすのか詳細に検討するとともに、医薬品のシーズや検査・研究試薬への応用へと展開していくことができればと考えている。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にAyadualinがインテグリンαⅡbβ3を介して抗血小板作用を発現するとともに、複数の凝固因子を抑制して抗凝固作用を発現するユニークな新規ペプチドであることが確認された点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、さらに企業の注目を引くような動物実験データがあれば説得性が増すと思われる。特許出願戦略についても早急に検討が望まれる。今後は、適切な企業との共同で、経口投与可能な、安全域の広い化合物の合成検討等が必要である。最小限の動物実験データを取得し、企業との連携を模索することが期待される。
迅速かつ明瞭多彩な色調変化を示す糖検出チップのグルコース応答感度改善 北見工業大学
兼清泰正
北見工業大学
内島典子
新たな分子構造を有するボロン酸モノマーを合成して薄膜作製に用いることにより、1〜100 mMの範囲でグルコース濃度を測定可能な糖検出チップを実現することを目標とした。当初の計画では合成する新規ボロン酸モノマーを1つしか想定していなかったが、実際には3種類の異なる構造をもつモノマーを合成することに成功し、予想以上の成果を収めることができた。種々検討を行った結果、新規ボロン酸モノマーを用いた糖検出チップは従来の3〜10倍と見積もられる高い感度を示し、グルコース検出下限はおよそ3 mMであることが明らかになった。これは、当初目指した1 mMの検出下限には及ばないものの、目標に向けての着実な前進となる成果である。今後は、糖検出チップ作製に係る諸条件の最適化を深化させ、グルコースに対する一層の高感度化を進めていく。また、生体成分に含まれる共存物質が測定及ぼす影響についても適宜検証を行う。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に糖検出チップのグルコース応答感度を新たな分子構造を有するボロン酸モノマーを合成して薄膜作製に用いることにより、3 mMのグルコース濃度を測定可能で従来の3〜10倍高い感度の糖検出チップに関する技術は評価できる。
一方、技術移転の観点からは、検出感度の向上と安定性・再現性や耐久性などの技術的課題の解決とともに基本原理や物質についての特許出願を行い、産学連携を通じた実用化が望まれる。
本技術はグルコース以外の糖類のセンシングにも応用が可能であり、今後新規生体関連センシングデバイスとして幅広い応用展開が期待される。
DNAマイクロアレイ法を用いた鶏糞便からの迅速な薬剤耐性カンピロバクター検出法の開発 酪農学園大学
田村豊
DNAマイクロアレイ法による鶏糞便からの迅速な薬剤耐性カンピロバクター検出法の実用化を目標とした。実験室内でカンピロバクターを鶏糞便に添加した試験では、十分な感度及び特異性を確認することができ、従来実施されてきた培養法では、検出に約5日かかるところを約4時間に短縮することができた。
野外鶏農場のサンプルでの検出試験を行ったところ、6農場中5農場で培養法と同等の結果を得ることができた。結果が一致しなかった1農場についても、試験法の改良を行ったことで検出可能となった。今後、30鶏農場での比較試験を行い良好な結果が得られたら、製品化に向けての試作品を作成する予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初はなかった課題(新規SNP)を克服し、簡便でかつ正確な菌株検定を可能にした技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、新規SNPに係る特許出願も検討し、鶏農場からの迅速診断手法などでの実用化が望まれる。今後は、Campylobacter coliが陽性として検出される課題の克服と共に、未知の菌株や変異も検出可能な手法への展開が期待される。
ヒト食中毒治療選択のための迅速下痢原性大腸菌分類技術の開発 弘前大学
藤岡美幸
弘前大学
工藤重光
本研究ではヒト下痢症の原因である5種類のカテゴリーに分類される下痢原性大腸菌について、早期治療選択を可能とするため、多遺伝子検出技術に蛍光検出技術を加えた電気泳動不要の可視化検査技術の臨床医学応用を目標とした。多遺伝子同時検出法として10種類の遺伝子を標的とした1 step mPCRを開発し、従来法の90%のコスト削減や70%の実施時間短縮による効率化に成功し、その達成度は100%であった。また蛍光色素を用いたリアルタイムPCRでは当初目標の80%の達成度であったが、非特異的反応を回避するためにプライマーの組み合わせやプライマーの再設計等の技術的課題が明確となり、今後の開発が期待できる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、異なる複数の病原性大腸菌の菌種を一度に同定可能な同一条件でのランが可能なリアルタイムPCR向けプライマーセットの確立で、同時に目標とする10種類の菌種の同定ができたことについては評価できる。一方、感染性下痢としてノロウイルスなどウイルス性のものも多く、大腸菌の占める頻度が高いとは言えない。一部の発展途上国などでのニーズはあるが、リアルタイムPCRを使用するコスト面や技術面で慎重に検討する必要性がある。安定性や実用段階での、検体での評価など社会実装に向けた技術的検討が必要と思われる。今後は、コストや市場性、本検査が必要な地域での展開が可能かなど、企業と連携して検討されることが望まれる。
網膜色素変性症モデルにおけるカルパイン阻害ペプチドの普遍的な薬効評価とさらなる薬効性の向上 弘前大学
尾崎拓
弘前大学
工藤重光
本試験では、網膜色素変性治療薬の開発を目的として、本疾患モデル動物であるロドプシン変異S334terおよびP23Hラットなどに対して、新規ミトコンドリアカルパイン阻害ペプチドであるTat-μCLが普遍的な視細胞保護効果を示すのかを評価した。その結果、Tat-μCLの点眼によってS334terおよびP23Hラットの視細胞変性が有意に抑制された。今後は、RDマウス、RDSマウス、RDH5変異マウスおよびRPE65ノックアウトマウスに対するTat-μCLの効果も調べ、さらに、Tat-μCLにおいてアミノ酸を修飾することによって薬効性を高める研究を継続する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。網膜色素変性治療薬の開発を目的に、S334terラット、P23ラット、RDラット、RDSラットなどの疾患マウスに新規ミトコンドリアカルパイン阻害ペプチドであるTat-μCLを投薬して普遍的な視細胞保護効果を示すのか評価し、S334terラット、P23ラットにおいて視細胞変異が有意に抑制される効果を確認している。疾患マウスへの投薬実験により、Tat-μCLの普遍的な視細胞保護効果が明らかにされつつあり、大手製薬会社と共同研究契約を結んでおり、技術移転が進められていることは評価できる。一方、RDラット、RDSラットなどの疾患マウスに対する投薬効果の確認が急がれる。今後は、Tat-μCLの薬効性向上に重きを置いた検討が必要と思われる。
においの可視化および定量化システムの開発 弘前大学
丹治邦和
弘前大学
工藤重光
におい物質(オドラント)のうち生理機能を有するものを機能性オドラントと称して、特に酸化ストレス誘導能を有する機能性オドラントの効果を可視化、定量化するシステム開発を目指した。本研究において酸化ストレスに対する細胞レベルでの可視化は予定通り確認できた。次に「より素早い検出系の構築」の確認途中で終了したため、動物レベルでの検証まで到達することができなかった。課題が明確になったため、特許申請に向けて学内研究費によって共同研究者と開発を継続する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、機能性オドラントの細胞レベルでの可視化を達成し、また新しい分子を用いた可視化システムの改良が行われていることについては評価できる。一方、研究テーマ自体は技術移転につながる可能性を秘めているが、研究の進行が遅れているために、実現性は現段階で不明である。定量性の検討と動物レベルでの可視化システム(FORTA)の開発に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、応用展開するためは、構築した細胞レベルでの可視化システムの定量性を証明する必要がある。さらに、個体レベルでの可視化システムの開発研究をスピードアップすることが望まれる。
培養細胞を用いたペルオキシソーム増殖剤の発がん性の短期評価法の開発 弘前大学
土田成紀
弘前大学
工藤重光
ペルオキシソーム増殖剤(以下PP)には産業上重要な化合物が多いが、長期投与によりラットでは肝がんを誘発することから、発がん性の迅速な評価方法が求められている。化学物質の安全性の評価は、世界的に動物個体を使用せず、培養細胞などにより行う方法に変化しつつある。しかし、PPでは動物個体を用いる方法しかなく、60‐90週間の長期投与を行っている。
本研究は、マクロファージ活性化のマーカー遺伝子を解明し、肝細胞とマクロファージを用いてPPの発がん性を2‐3日間の処理で評価できる方法を開発する。期間内に複数のマクロファージ活性化のマーカー遺伝子を見出し、短期評価法のマーカーとなる知見を得た。研究を継続し目標を達成する。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、網羅的解析では、特異的な遺伝子は同定できなかったが、低感受性ラットにおいては、Pla2g4c遺伝子が欠失していることを明らかにして、この遺伝子がマーカーとして使えることを明らかにしたことについては評価できる。一方、技術移転を目指した産学共同研究開発のステップに繋げるには、PPに高感度で反応し特異性の高い複数の遺伝子を持つ培養細胞株の確立とその知財化が必要で、そこに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、スクリーニングに用いるのであれば、定量方法の確立ではなく発現の有無で識別する方法の確立することが望まれる。
複数人の視線を同時に計測・可視化可能な次世代視線追尾システムの開発 岩手県立大学
PRIMA・OKY・DICKY
岩手県立大学
上野山英克
本研究では、複数人の視線を同時に計測・可視化可能なヘッドマウント型の視線追尾システムのプロトタイプを作成し、動作確認を行ってきた。本システムで用いるカメラとして、市販のWebカメラを眼球撮影用に赤外線カメラ化したもの(以後、これを瞳孔カメラと呼ぶ)と、利用者が見た風景の撮影用に超広角レンズを搭載させたもの(シーンカメラ)を作成した。複数人が共有する視野(注視面)は、ARマーカーで囲むことによって、当該マーカーをシーンカメラで自動認識することができ、同時に注視者の位置と姿勢も自動的に特定できるようになった。各注視者の注視点の座標と角度を 6 自由度で表現することによって、注視面上で注視者らの注視点を重ねて表示することが可能となった。
研究期間の前半(平成24年11月1日〜平成25年3月31日)では、主に既存技術の調査や開発機器のための基盤技術を確立した。後半(平成25年4月1日〜平成25年10月30日)では、視線計測機器の精度や使い易さの向上について重点的に開発を進めてきた。測定精度を確保するために、視線計測機器のキャリブレーションに利用するPCモニタのサイズに合わせて、キャリブレーションの基準点数を5点から9点に適応的に変更できるようにした。使い易さの面においては、キャリブレーション時の利用者の頭部動きの補償を行い、頭部を固定しなくても、キャリブレーションを行うことができるようにした。その結果、キャリブレーション時の頭部姿勢の変化はヘッドマウントの視野カメラが注視画面を捉えられる範囲内であれば、注視者と注視画面が約60 cm離れた場合、誤差角度を0.5度以内に確保できることが分かった。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ハードウェアは、市販品に多少の改造を加えることで極めて安価に製作し、座標変換の式にしたがってソフトウェアを作成し、複数人の視線計測を可能にした点には評価できる。一方、技術移転の観点からは、企業からの連携強化の要請や機器の製造・販売を申し出る民間企業があることから、システムの性能評価と共に、実用的で競争力のある技術に育つことが望まれる。今後は、本システムの利用分野を掘り起こしながら、幅広く展開していくなかで、用途に合った性能の向上が図られていくことが期待される。
視覚再生:感受波長域増大のための多重遺伝子導入ベクターの創出 岩手大学
冨田浩史
岩手大学
小川薫
これまでに、失明した網膜の残存する神経細胞に緑藻類由来のチャネルロドプシン-2(ChR2)遺伝子を導入し、視覚機能を回復できることを明らかにしている。ChR2の感受波長が青色に限定されるのに対し、我々は赤方に感受性を持つChR(mVChR1)を開発している。本研究では、これらの2つの遺伝子を同時に発現させるためのウイルスベクターを作製した。両遺伝子を含むウイルスベクター、ChR2またはmVChR1の各々を含むウイルスベクターを遺伝盲ラットの眼内に注入し、経過観察中である。今後は、視覚誘発電位測定による電気生理学的検査ならびに行動解析を行い、その効果を検証していく予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、脂溶性の薬剤に対しては目標が達成されたが、水溶性の薬剤では本DDSへの内包化が得られず目標が達成されていない。脂溶性の薬剤では目標が達成できたので、技術移転が可能な道が開かれた。独創的な血管内皮DDSシステムとして技術移転の候補となる可能性があることについては評価できる。一方、実験データが不十分で実用化研究には至っていない。次のステージに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、有効な薬剤に対して治療の実現に至るまでには、本DDSシステムの製造承認が必要など、多くのステップを乗り越える必要がある。開発パートナーと組むんど研究が加速されることが望まれる。
生体医療光学における高信頼性伝送装置の高効率製作法 仙台高等専門学校
岩井克全
仙台高等専門学校
庄司彰
赤外レーザを用いる治療装置は、生体に対する適合性に優れ、需要は益々増加している。赤外光伝送に適した中空ファイバを搭載することで、数多くの診療科目に有効な新たなレーザ医療装置が実現できる。しかし、中空ファイバの誘電体内装工程は、複雑・緻密性が要求され、多数本の同時成膜は難しい。本課題においては、従来の環状オレフィンポリマーに変え、ヨウ化銀を誘電体膜として採用し、充填成膜法という新たな手法を用いることで、簡便かつ対環境性に優れ、多数本同時成膜による省力化が可能な高信頼性中空ファイバの高効率製作法の開発を目的としている。ヨウ化銀膜形成のため、ヨウ素溶液の濃度、充填時間などの条件を明らかにした。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ヨウ化銀を誘電体膜として、充填成膜法という簡便な方法を開発している点は、従来の方法に比べ優良な点で評価できる。一方、具体的なアウトカムが示されていないので、今後の具体的な開発計画が不十分である。社会還元につながるアウトカムを設定して、具体性を示した上で、本法の優位性を実用化に向けて開発を進めていく必要があると思われる。今後は、現在使用されているものとの優位性について医療現場や企業との連携を密接に進めていくことがことが望まれる。
難分解性配糖体からの機能性食品素材セサミノールの効率的生産系の確立 東北大学
中山亨
ゴマリグナンのセサミンは機能性食品素材として広く利用されているが、その構造類縁体であるセサミノールはセサミンと異なる有効利用が期待されながら、難分解性の配糖体として存在するために未利用であった。本研究では、セサミノール配糖体の難分解性糖鎖を効率よく分解する新規な糖加水分解酵素の生産菌の育種による酵素力価の向上を検討した。また同酵素の機能解析を行い難分解性糖鎖分解機構も解明した。さらに同生産菌や酵素の固定化を検討した。得られた研究成果を基盤にしてさらなる研究開発を行うことにより、微生物(酵素)を用いるセサミノールの量産化技術が確立されることが期待される。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、難分解性糖鎖の分解メカニズムの解明するなど、酵素の固定化による効率的な製造技術に関する成果が顕著である。一方、技術移転の観点からは、開発目標を定量化した上でプロジェクト管理を行い、微生物(酵素)を用いるセサミノールの量産技術としての実用化が期待される。今後は、知財権の取得を図ると共に、技術移転戦略を策定し研究開発目標をそれらと整合させることが期待される。
ミトコンドリア関連ホルモンStanniocalcin-1 (STC1)発現間葉系幹細胞(MSC)を用いた局所炎症の効率的コントロールによる間質性肺炎治療 東北大学
大河内眞也
株式会社東北テクノアーチ
松本京子
我々は間葉系幹細胞(MSC)が分泌する液性因子STC1(Stanniocalcin-1)が、①過酸化ストレス軽減、ミトコンドリア機能改善を介して肺胞上皮細胞を保護すること、②STC1の気管内投与が間質性肺炎動物モデルの線維化を軽減すること、を見出し特許出願した。しかしいくつかの癌でSTC1高発現例が報告されており、投与による癌化誘発の懸念がある。MSCが障害局所に集積する作用を持つことに着目し、STC1過剰発現MSCを作成、投与し、肺障害局所への効率的STC1デリバリーと癌化リスク低減を可能にすることを本課題の目的とした。今回我々はSTC1過剰発現MSCを作成し、動物モデルにおける研究より上記目的をほぼ達成した。今後、臨床応用に向けた研究、技術移転などを展開する予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目標としたSTC1発現MSCの有効性について、ブレオマイシン誘発肺障害モデルを用いて確認したころは評価できる。一方、技術移転の観点からは、臨床応用を考えた場合、前投与でなく形成後の効果をやより長期の効果も検討する必要があるが、実用化が望まれる。今後は、独創的なアプローチであり、肺線維症、特に、特発性肺線維症に対しては有効な治療が全くなく、ニーズを考えた場合に研究を発展されることが期待される。
ヒト白血病多段階発がんモデルの開発 東北大学
石井直人
東北大学
岩渕正太郎
異種拒絶反応を完全に欠損するNOD/scid/γc-KO(NOG)マウスに、2種の癌遺伝子を同時に発現導入したヒト造血幹細胞を移植したところ、マウス内でヒト白血病を発症させることに成功した。そこで、本研究では、ヒト造血幹細胞に複数の癌遺伝子を段階的に遺伝子導入して2次移植することによりヒト正常造血幹細胞から白血病を発生させ、分化・増殖・腫瘍化までを生体内で解析可能な白血病多段階発症モデルの作成を試みた。しかし、1種目の癌遺伝子を発現した造血幹細胞に2種目の癌遺伝子を段階的に導入することに成功しておらず、癌遺伝子の組み合わせを変更しながら実験を継続している。今後成功した場合には、ヒト正常細胞を用いた多段階発がん生体モデルの確立が期待される。 当初期待していた成果までは得られなかったが、研究テーマ自体は興味深く、一つの多段階仮説の検証試験を期間内で完了させた事は評価できる。サイエンス面でその結果をどう今後に生かして行くか、と同時に、産業界で使用されるための疾患モデルが有しておくべき評価可能項目を検討しながら、継続して研究を進められる事が期待される。
2型糖尿病の発症予測に寄与する遺伝子診断法の開発 東北大学
山田哲也
東北大学
金野徳子
独自に開発したDNAアレイでの検討により見出された2 型糖尿病と関連するCNV に特化し、第4番染色体4p16.3 領域の約800kb-1.7Mb の範囲内のコピー数の減少を定量PCR にて検出することを目標とし、質量分析法による定量PCR(Mass Array System)を用いてコピー数解析を行った。検討した9種類のプライマー配列のうち、1種類のプライマー配列において、13名中4名の患者でコピー数の減少を検出できた。検出が一部の患者にとどまった原因として、4p16.3領域は反復配列に富み、GCrichなサブテロメアの領域であること等が考えられたが、質量分析法による定量PCRのシステムがコピー数の減少を確実に検出できるポテンシャルを有していることを示しており、更にプライマー配列の検証を進めることによって、より感度を高め得ることが期待できる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、いくつかの問題点を解決できれば技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも2型糖尿病患者で認められるゲノムコピー数の減少に着目した診断法の概念には期待が持てる。一方、感度、特異度が高く測定、解析できるようにするプライマー設計を含めた技術の改良が必要であろう。
今後のさらなる研究が望まれる。
セロトニンの抗肥満作用機構の解明と高機能健全食品開発への応用 東北大学
金山喜則
東北大学
齋藤悠太
新たな機能性食品素材になり得る農産物の開発を目的として、これまでにセロトニンが高脂肪食摂取マウスの脂肪蓄積量と体重増加を抑制する抗肥満作用を有することを発見している。そこで、セロトニンを新たな機能性成分として位置づけ、セロトニン高含有青果物を、抗肥満効果を有する機能性食品として開発するために、最も生産額の多いトマトにおけるセロトニン含量の増進に資する知見を得た。すなわち、トマト果実におけるセロトニンの抽出および測定方法を検討するとともに、野生種の染色体領域を含むトマトにおいてセロトニン含量が高いこと、また、果実の発育にともなって主な可食部である果皮に蓄積することから、セロトニンの供給源としてのトマトの有用性を示唆することができた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、トマトの機能性成分としてセロトニンに着目しその作用機作を明らかにしつつ、高セロトニン含有トマト品種の育成を目指して交配育種における目標値6?g/gFWを達成したことについては評価できる。一方、遺伝子組換えによる高セロトニン化の部分についての技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、技術移転の方向性を明確にした上で応用を目指した基礎知見を積み上げることが望まれる。
新規化合物SST-VEDを活用したヒト発毛促進剤の開発 秋田大学
夏井美幸
秋田大学
伊藤慎一
SST-VED化合物はα2受容体遮断作用を持ち、血圧に影響せずに血管拡張作用を示す事から、頭皮血管の拡張を介した発毛促進効果が期待できる。我々は、SST-VEDによる発毛促進効果と作用機構を解明し、発毛剤として商品化することを目的として、本事業でSST-VEDの毛包器官培養による発毛促進効果の検討、ヒトでの発毛促進効果の臨床試験を実施した。
毛包器官培養で発毛促進効果を確認したが、ヒトの臨床試験は、実施期間が短く明らかな発毛促進効果は確認できなかった。天然物カキドオシ・エキスは、ヒトの臨床試験、毛包器官培養で発毛促進効果が認められ、SST-VEDとカキドオシ・エキスを混ぜると、毛包器官培養における発毛促進効果が増大した。これらの結果から、ほぼ目標を達成した。
今後は、SST-VEDにカキドオシ・エキスを混ぜた育毛整髪剤の開発が有用と思われる。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にマウスの毛包器官培養において、天然物カキドオシ・エキスにSST-VED1を加えることで毛包の伸張が増強されることを確認した等、マウス毛包器官培養系に関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、カキドオシ・エキスの商品化が先行している状況で、単独で活性が確認できていない物質の相乗効果をアピール・差別化するためには、科学的作用機序解明が求められる。今後、SST-VED1に天然物カキドオシ・エキスを加えることの意義を示す科学的裏付けデータ(作用機序)と臨床効果をさらに確認することが重要である。
緑内障性視神経障害に対するニューロステロイド型神経保護治療薬の開発 秋田大学
石川誠
秋田大学
伊藤慎一
本申請課題の目的は、ex vivoにおけるニューロステロイド(NS)の緑内障性神経保護効果の検証である。NSはエストラジオール(E2)やプレグネノロンなど脳内で合成されるステロイドであり、神経保護効果を示すことから、緑内障の神経保護治療薬として期待される。目的を達成するため、閉鎖系加圧実験装置を新たに開発し、実際の緑内障に近い病態を再現した。この実験装置をもちいて、NSの加圧障害に対する薬理効果を調査した結果、E2はグルタミン酸代謝系を賦活化して、神経保護的に働くことが明らかになった。緑内障in vivo実験モデルを用いた実験においても、E2の神経保護効果が再現された。今後は、本実験系でE2およびE2誘導体やエストロゲン・モジュレータ、 プレグネノロンの神経保護効果を確認し、緑内障神経保護薬として開発を進めたい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に今回開発・改良をすすめた閉鎖型加圧装置は、独自の装置であり、その点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、ニューロステロイドの薬効が明らかとなり、臨床において使用に耐えうることが実証される必要がある。ニューロステロイド型神経保護薬として最適の薬物を見つける方策を計画・実施することが望まれる。今後、プレグネノロンのみならず、類似構造の薬剤など、より優れた効果を有する薬剤の探索も進められることが期待される。
進行性前立腺がんの予後予測を目的とした一塩基多型セットの開発 秋田大学
土谷順彦
秋田大学
伊藤慎一
我々は、癌関連遺伝子SNPアレイを用いて生存期間に関わるSNPを同定し、進行性前立腺癌治療の個別化を図ることを目的として本研究を行った。骨転移を有する前立腺癌と診断された188例の患者を対象とし、408個の癌関連遺伝子における1421の SNPをタイピングすることによって癌特異的生存期間に関与するSNPをスクリーニングした。その結果、14個(6遺伝子)の生存期間に有意に関連するSNPを同定した(Tsuchiya N, et al., Genes & Cancer, 2013)。これらのSNPの臨床使用を目指し、外部コホートにおける検証を行う目的で国際共同臨床研究を計画した。現時点で韓国2施設を含む8施設から126例の症例が登録されており、SNPアレイを用いたジェノタイピングが進行中である(UMIN Trial ID: UMIN000009785)。観察期間終了時(5年後を予定)には進行性前立腺癌の予後に関与するSNPの検証結果が公表される見込みである。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、進行性前立腺癌治療の個別化に役立つ14のSNPを6遺伝子から同定した。これらのSNPは、癌特異的生存期間との相関を示すものであり、その視点は今までほとんどなく、多型の新たな観点からの医療応用が期待できるものである。癌特異的生存期間に関与するSNPの同定という今までにない考え方によるSNPのスクリーニングで新規のSNPのセットを同定していることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、A-STEPの重要な目的である特許の取得と産学共同への展開ということを、十分には意識していないように思える。2011年に出願してある特許が、今回得た知見をもカバーしているものであれば、その特許の実施権を企業に与えて共同開発を早くすすめ、実用化が望まれる。今後は、バイオインフォマティクスの高度な専門家を加えることで解析が加速されることが期待される。
液晶レンズを用いた近赤外線血流撮像システムの開発 秋田大学
河村希典
秋田大学
伊藤慎一
本研究課題の目的は、機械駆動部を一切必要とせず、赤外線光の焦点距離を可変できる液晶レンズを創製することにより、生体組織内部における血液中の酸素濃度を画像化するシステムを開発することである。近〜遠赤外線波長領域における液晶素子の評価装置を新たに構築し、液晶レンズ及び液晶素子の試作・測定を行った。測定対象物からの赤外線光を液晶レンズを介して赤外線カメラにより測定を行った結果、液晶レンズの電極に印加する電圧を調整することにより10mm〜20mmの焦点距離を変化することができた。また、血流を模擬した散乱体の移動速度を変化させ、高速フーリエ変換解析を行った結果、散乱体の移動速度を増すことで、100Hz〜700Hzまでの高周波成分が増加する傾向が見られた。今後、電子制御の焦点可変・ズーム機能を有する赤外線撮像システムを再構築し、断層部の分解能向上、コンパクトに使用できる生体組織の診断に用いる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、新規液晶レンズの基礎的な開発ができたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、より高性能の液晶レンズへの改良、具体的な応用展開の検討が望まれる。今後は、血流計測や医療診断への応用を目指すには、医療機器の承認が必要となるので、データをどのように取得するかを検討する必要があるように思われる。
X線CT装置撮影時に使用する顔面装着型金属ハレーション除去フィルターの開発 秋田大学
田中清志
秋田大学
伊藤慎一
本研究の目的は、顔面に装着するだけでX線撮影時に金属ハレーションが発生しないハレーション除去フィルターの開発であり、目標は、元素周期表より、金属ハレーション除去フィルターとして最適な元素を見つけ出すことにした。その結果、Al(元素番号:13)フィルターを装着して撮影するとAlフィルターなしで撮影するよりも金属ハレーションの減少が見られた。その達成度は、完全な除去には至らなかったが、金属ハレーションの減少が見られたことで一定の除去効果があったと考える。今後の展望は、フィルター自身で金属ハレーションを発生しない元素V(原子番号:23)以上でRh(原子番号:45)の中に最適な除去フィルターがあると思われる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、多くの金属の冠状フィルターの実験的検証が行われ、効果を確認できたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、X線減衰計算によって、最適の金属と厚さが求めれるはずであり、金属の選定に関して理論的な検討が加えられることが望まれる。今後は、X線吸収、CTの数値解析ができるグループと共同することにより、材料選定の最適化を進めるとともに、早い段階で臨床試験に進むことが期待される。
基準腸内フローラモデルマウスを利用した腸内環境評価法の開発 慶應義塾大学
中西裕美子
慶應義塾大学
栗本忠
腸内環境を正常化できる腸内フローラの最小単位モデルであるAltered Schaedler Flora(ASF)を定着させたノトバイオートマウスを作製し、維持する方法を確立した。ASF定着マウスに対し、キャピラリー電気泳動−質量分析装置(CE-MS)を用いたメタボローム解析と定量PCR 法を用いた腸内フローラ解析を組み合わせた統合解析法を構築した。今回、ASF定着マウスの作製と各分析手法の確立はできたが、基礎データの取得ができていないため、再試験を行いデータの補完の確認後、特許出願の可能性とその対応を図る。また、共同研究機関との連携・調整し、企業との共同研究等を考えている。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。
腸内フローラ評価法は多種多様で環境による因子が大きいため、これまで有効な手段がない。本FSによるデータ蓄積が行われ、解析が可能となれば腸内フローラが関与する多くの疾病の解明につながる。
慶應義塾大学の得意とするメタボローム解析と本研究による腸内フローラの挙動解析結果を基にする科学的知見は、新たな産業応用展開を構築することが期待できる。現段階では技術移転できる段階にはないが、本研究の展開次第では、健康寿命の延伸に貢献する展開も考えられる。
寝たきり高齢者の在宅ケアのための下痢防止機能を有する経腸栄養剤の開発 山形大学
小酒井貴晴
経腸栄養時の下痢と栄養的ストレスにより水分泌を促進する腸管ホルモン(エンドセリン)の関係を、経腸栄養モデル動物を用いて解明した。その結果、経腸栄養時の下痢発症時は、経腸栄養しない非下痢区と比較して、エンドセリンおよびそれらの受容体の遺伝子発現は変化せず、大腸上皮組織における短絡電流値(塩化物イオン分泌の指標)や膜コンダクタンス(水分泌の流れやすさ)にも影響しなかった。がしかし、エンドセリン感受性は正常で、エンドセリン誘導性の短絡電流は認められた。これらの結果から、経腸栄養時の下痢の発症にエンドセリンは関与しておらず、エンドセリン抑制因子による下痢防止は期待できないことが明らかになった。 当初目標とした成果が得られていない。エンドセリンが経腸栄養時の下痢発症に関与しないという事実を得たことは、今後の経腸栄養時の下痢防止のメカニズムを再考する上で役立つと思われる。今後エンドセリンに関する実用化が望めない場合は、ターゲットとする分子候補を再考することが望まれる。
抗SARSリード化合物の分子設計、合成と評価 山形大学
今野博行
山形大学
金子信弘
SARSは東アジアで猛威を振るった呼吸器疾患であり、原因は新型コロナウイルスである。その増殖にはSARS 3CL proteaseが必須である。筆者らは治療薬開発を目指し強力な阻害剤創製に成功したが、経口投与に不向きであった。更なる構造展開により得たセリン誘導体はIC50=30μMであり、その原因が直鎖構造の自由度と考え、シミュレーションで環状構造へ展開した。標的プロテーゼとフィッティングが高く、合成可能な化合物を抽出し、実際に化学合成を行った。さらにペプチドアルデヒド合成法の開発も検討し、過去に例を見ないチオアセタールを経由する方法論の開発に成功した。
本戦略を継続し化合物の自由度を制限した二環性化合物へ展開し酵素選択性の高い阻害剤へ導いていきたいと考えている。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもL-セリンテンプレート誘導体が3CL protease阻害剤の可能性を有することを示したことについては評価できる。一方、シミュレーションで合成する目標化合物の系統は示されているが、その根拠を実際に合成・評価し、データで検証することが必要である。また、活性向上ならびにDrug-likeness改善に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、経口有効性改善のための固定化した環状誘導体のドラッグデザインを検証することが望まれる。
臨床現場でわかる簡易型肝機能検査キットの開発 山形大学
木島龍朗
独立行政法人科学技術振興機構
山口一良
バイオマーカー検出系にアゾ還元酵素による色素分解系を組み合わせた、色の変化で判断できる臨床検査用バイオマーカー検出システムの開発を行った。この検出系は肝臓疾患の診断においてマーカーとして重要なGPT(ALT)を検出し、その結果をアゾ色素の分解(色が消える)という変化で知らせるものである。HPLC等を用いた定量法との相関性、固定化による酵素の安定化等まだ未検証の課題が多く残されているが、血液サンプル等を用いた実証試験においても反応の進行(アゾ色素の分解)が確認され、肝機能検査キットとしての開発可能性を示唆した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、現行法より簡便で低コスト化を目指した差別化が大きな目標であったが、当初計画していたの測定系がうまくいかなかったため、改良法を考案し一定の成果を収めたことについては評価できる。一方、GPT測定は、すでに汎用のルーチン項目として採用されているので、現行法を凌駕するシステム開発に対する目標がないと、さらに実用化に向けた研究開発ステップに移すメリットがない。現行法と同じ酵素法を採用すれば、律速反応があるために反応時間の短縮化は困難であるので、アゾ色素を直接生成物に反応させ短時間で検出するなど技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、現行法を凌駕する簡便な方法の確立をめざし、最終的にPOCTを目指せるシステム開発が望まれる。
動脈硬化症予防・診断のための新規酸化LDL測定試薬の開発 いわき明星大学
佐藤陽
いわき明星大学
坂本美穂子
酸化低密度リポ蛋白質(酸化LDL)は、血液中に増加して動脈硬化の発症・進展を支配する。本研究では、高機能性ペプチドを用いた、動脈硬化症予防・診断のための新規酸化LDL測定試薬を開発することを目標として、酸化LDLとの特異的結合能に優れた蛍光標識ペプチドの設計・作製を行った。その結果、酸化LDLに対して特異的かつ用量依存的な結合性を示す2種類の蛍光標識ペプチドを見出した(特許出願済)。さらに、動脈硬化症モデルマウスを用いて検討した結果、これらペプチドはいずれもマウス血漿中の酸化LDLに対して特異的に結合する可能性が強く示唆された。以上より、本研究で見出した蛍光標識ペプチドは新規な動脈硬化症予防・診断剤として期待できると考え、今後はその実用化に向けて産学共同の研究開発につなげていきたい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に酸化LDL に結合する蛍光標識ペプチドを取得できた点は高く評価できる。一方、技術移転の観点からは、定量的解析を行ない、既に市販されている測定方法に比べて簡便さだけでなく、感度の点でも優位性を示す必要がある。今後は、まず特異性が十分であるかどうかを厳しく評価し、診断キットへの展開を目指すことを期待する。
診断方法のない中枢神経(CNS)ループスの新規マーカーの開発 福島県立医科大学
橋本康弘
独立行政法人科学技術振興機構
山口一良
全身性エリテマトーデスは、免疫細胞が誤って"自己"を攻撃する疾患である(自己免疫疾患)。時には、免疫細胞が"脳"を攻撃するために、精神神経症状を示すことがある(CNSループス)。このような症例では免疫抑制剤であるステロイドを用いて治療する。一方、ステロイド剤の副作用として精神症状を示すことがあり、この場合は投与の中止が必須である(ステロイド脳症)。両者は全く逆の治療を行うため、正確な鑑別が必要である。本研究により、髄液中の糖タンパク質GP-Xが鑑別診断マーカーになりうることが示された。また、その迅速測定キットが開発され、研究目的が達成された。今後の臨床応用・技術移転が期待される。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、レクチン/抗体サンドイッチELISA法の技術に関してはほぼ完成しており評価できる。一方、技術移転の観点からは、識別マーカーとしての精度の検証が実用化のために望まれる。引き続き症例数を増やすことにより、診断マーカーとしての精度を検証し、カットオフ値の検討が期待される。
電場印加によるタンパク質結晶化促進技術の開発 茨城工業高等専門学校
若松孝
茨城県工業技術センター
浅野俊之
タンパク質の結晶構造解析は、抗体タンパク質等の診断薬をはじめ、タンパク質を活用した治療薬の開発で大変重要であるが、ボトルネックとなっているタンパク質結晶作製の効率化が大きな課題である。開発した透明導電膜電極の小型結晶化溶液セルを用いて、モデルタンパク質(リゾチーム、ソーマチン)を対象に、微量溶液に対して数ボルトの低電圧印加による結晶化促進の効果を調べた。リゾチーム以外に、新たにソーマチンに対しても電場印加による結晶化促進の効果を確認した。今後、タンパク質結晶作製の効率化を図るために、電場印加による結晶化促進技術の確立を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、リゾチーム以外のタンパク質について1種類ではあるが電場印加による結晶化の促進効果が認められ、この促進効果の一般性が示されたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、タンパク質の結晶化や構造解析の経験がある研究者と共同研究で、電場印加の効果をもっと多くのタンパク質についてもっと多くの結晶化条件で実証し共通の印加条件が見いだすことなどでの実用化が望まれる。今後は、タンパク質の結晶化の効率化メカニズムの解明や多数の試料を扱える装置の開発が期待される。
結晶性制御技術を用いたジルコニアセラミックスへのアパタイト薄膜成膜技術の開発 茨城大学
尾関和秀
歯科インプラント治療は年々普及し、近年、従来のチタン材料に加え、審美性に優れ、メタルフリーが可能なジルコニア材料が欧米を中心に注目を集めている。ジルコニアは生体不活性で、表面粗さ処理が困難なため、骨との結合を高めるためにはハイドロキシアパタイト(HA)のコーティングが有望である。研究代表者らは2003年にスパッタリング法によるチタンへのHA薄膜の水熱結晶化技術を開発し、HA薄膜インプラントへの実用化を図った。本研究では本技術を活用し、ジルコニアへのHA薄膜コーティング、水熱結晶化処理を行う。また、課題であるHA膜のジルコニア基板との付着強度を向上させるため、傾斜型中間層を設け、本コーティング技術の確立を図る。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ジルコニアへのアパタイトの付着に傾斜型中間層を設け、その付着性能を上昇させることができた点で一定の目標は達成されている。また、スパッタリング法と呼ばれる水熱結晶化技術によるアパタイト被膜のコーティング技術は研究者のオリジナルのものであり、それを応用したジルコニアへの付着技術を検証した本研究成果は評価できる。一方、材料の安定性やイオンの溶出の程度、細胞毒性や細胞変異の有無の検討を、初期の段階から生体材料に関するあらゆる安全性試験を念入りに行うべきである。生体への安全性評価に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、in v itroでの検証を尽くしたうえで、実験動物を用いた長期移植の結果を検討されることが望まれる。
副作用の少ないがん治療薬を指向した20Sプロテアソーム阻害剤の構造研究 茨城大学
海野昌喜
茨城大学
園部浩
我々が最近見出した新規プロテアソーム阻害剤は、不可逆的に活性部位に結合するのではなく、筒状の形状をした20Sプロテアソームの基質の入り口を塞ぐような様式をとっているということが示唆されている。その阻害機構を原子レベルで理解すれば、例えば、その化合物構造を利用したドラッグデリバリーシステムを更に開発し、がん細胞に集積するようにするような、副作用の少ない新しいがん治療薬を開発していくことが可能になる。本研究では、薬剤設計を目指し、薬剤とプロテアソームの複合体原子構造をX線結晶構造解析で解明するのが目的であった。我々は、新規阻害剤一種類と20Sプロテアソームの複合体のX線結晶構造解析に成功し、現在、生化学的なデータを集めているところである。計算科学的な手法が取れていないが、それ以外の概ねの目標は達成できたので、達成度としては75%程度というところだと自己評価している。今後は、生化学的な実験で、提唱する阻害機構が妥当であることを証明し、学術誌で発表する。その後、興味を示してくださる企業や団体が現れれば、共同研究・開発に展開することも考えている。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも阻害剤が予想とは異なる場所に結合している可能性が示されたが、活性残基の一つと結合しているため分子標的治療剤開発の可能性が示された点は評価できる。一方、結晶を作製する過程で細胞内での構造と異なり、より安定に結合する部位が選択的に現れた可能性なども考えられ、検討する必要がある。今までにない作用様式を持つプロテアソーム阻害剤の開発は優れてチャレンジングである。今後、生化学的な分析を十分に行う必要があると思われる。
トマト果実のオスモチン定量技術の開発 筑波大学
江面浩
本研究開発では、トマトの果実中のオスモチン定量法を開発するため、1)オスモチン遺伝子を導入した組換えトマトの解析を進め、トマト果実へのオスモチンタンパク質の蓄積に主要な役割を果たすオスモチン遺伝子を明らかにすること、2)当該遺伝子情報を活用して、オスモチンタンパク質を定量する特異抗体を作成すること、3)作成したトマト・オスモチン抗体を使って代表的なトマト品種の果実で正確なオスモチンタンパク質の定量法の開発に取り組み、1)と2)については当職の目標を達成できた。3)については継続中であり、年度末(平成26年3月末)には達成見込みである。今後、関連企業と連携し、得られた成果の実用化を目指したい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、トマトのオスモチン遺伝子の特定と検出ができたこと関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、オスモチンの定量法を早期に確立すると共にトマトオスモチンの生理機能を確認し、知財権の取得を踏まえた実用化が望まれる。今後は、重要な抗体作成の工程で種々のモノクローナル抗体の親和力を測定するなどで最適な抗体を選ぶことも期待される。
DNAポリメラーゼのdisplacement活性(鎖置換活性)の増強による二本鎖DNA複製系の開発 独立行政法人産業技術総合研究所
松井郁夫
独立行政法人産業技術総合研究所
小高正人
本提案ではDNAプライマーゼとMCMヘリカーゼを共存させることによりファミリーB DNAポリメラーゼ (PolB)の鎖置換活性を高め、化学合成プライマーに依存しないLeading鎖とLagging鎖の同時合成系を開発することを目的とした。精製されたMCMヘリカーゼには3か所の点突然変異が含まれていた。しかし、耐熱性のATPase活性を保持し、微弱な3'→5'方向性の巻き戻し活性が検出された。5'FITC蛍光標識化プライム化基質にDNAプライマーゼ(PriLS)、変異MCMヘリカーゼ、PolB、PolDを加え、共同でDNAのLeading鎖とLagging鎖の同時合成を行わせた。その結果、蛍光標識プライマーの明らかな伸長を確認した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、Leading鎖とLagging鎖の同時合成系の開発を目的としたが、Leading鎖とLagging鎖の同時合成系の開発はまだ達成されていない。期待された成果はまだ得られていないが、問題点の絞り込みが行われたことについては評価できる。一方、技術的問題がクリアされれば、技術移転をめざす研究開発ステップにつながることが期待される。本研究課題は社会的需要は高いので、成果が応用展開されれば社会還元が期待されるので、改善につなげる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、明らかになった問題点以外に研究開発の障害になる点がないことを常に検討することが望まれる。
動圧軸受を用いた心疾患用補助循環ポンプの開発 独立行政法人産業技術総合研究所
小阪亮
独立行政法人産業技術総合研究所
池田喜一
本研究では、短期使用の遠心血液ポンプに非接触軸受である動圧軸受技術を導入し、1ヶ月程度の補助循環ができる、低価格かつ長期耐久性と優れた血液適合性を有する、動圧軸受を用いた心疾患用補助循環ポンプの研究開発を実施した。補助循環ポンプのプロトタイプモデルを製作し、補助循環条件において評価試験を実施した結果、目標であった100μmを超える軸受隙間を実現し、in vitro試験においても、溶血や血栓形成などの血液適合性に問題がないことを確認した。本技術は、原理的には任意の軸受隙間を実現可能であるため、広い軸受隙間の非接触ポンプを求めている、食品やバイオリアクタ、化学プラント、燃料電池などの産業界へも技術移転可能である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、溶血や血栓形成を排除できる仕様のポンプのプロトタイプが作成され、循環血液の実験にてこの性能が確認された。プロトタイプを作成し、予定した性能評価がしっかりとなされている点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、人工心臓の実用化までには長い道のりが予想される中で、食品業界などでも応用が可能であるとのことでもあり、別の形での社会還元の可能性もあり、実用化が望まれる。今後は、別の応用領域での展開についても具体的に進めていただくとともに、人工心臓実用化に向けた臨床実験を視野に入れ研究展開されることが期待される。
ナノギャップ法による食品機能性成分を内包したナノエマルションの高画質観察技術の開発 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
小林功
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
鍋谷浩志
本研究では、ナノエマルションの高画質観察が可能なナノギャップ法の食品分野への応用可能性について検討した。高さを20 nmに微小化したナノギャップを新たに開発し、当初のナノギャップ法では困難であった液滴サイズが最小で100 nm台後半の食品用O/WおよびW/Oナノエマルションの直接観察を可能にした。また、さらに、ナノギャップ法による食品機能性成分を内包したナノエマルション(最小平均液滴径:300 nm程度)の観測も可能であることも示した。以上のように、当初の目標を概ね達成することができた。今後は、企業との連携により、ナノギャップ法の改良や実用化に向けた研究開発を進めていく必要がある。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ナノギャップの高さが20 nmのチップを開発し、実際に食品用エマルションや食品機能性成分を内包したナノエマルションを観察できたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、レーザー粒径測定装置と比較して優位性のある装置などでの実用化が望まれる。今後は、連続測定が可能な装置の開発や、50nm程度のミセルの観察手法も検討されることが期待される。
血管内皮を標的とする薬物送達システムの開発 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
町田幸子
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
矢部希見子
血管内皮機能障害は動脈硬化性疾患などの発症・進展につながるが、その機能障害は修復可能である。血管内皮特異的な薬物送達システムの開発を目指し、血管内皮上の酸化LDL受容体に作用し特異的に取り込まれる1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-(1-グリセロール)]からなるリポソーム(DOPG-SUV)への薬剤封入法を検討した。その結果、脂溶性のCaチャンネルブロッカーであるアムロジピンをDOPG-SUVの内部に封入したDOPG-SUVは、より低濃度で血管拡張効果のある一酸化窒素の放出を促進することが示された。一方、水溶性のRho-kinase阻害剤であるファスジルを封入した場合には、顕著な効果は確認されなかった。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、脂溶性の薬剤に対しては目標が達成されたが、水溶性の薬剤では本DDSへの内包化が得られず目標が達成されていない。脂溶性の薬剤では目標が達成できたので、独創的な血管内皮DDSシステムとして技術移転の候補となる可能性があり評価できる。一方、実験データが不十分で実用化研究には至っていない。次のステージに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、有効な薬剤に対して治療の実現に至るまでには、本DDSシステムの製造承認が必要など、多くのステップを乗り越える必要がある。開発パートナーと組むんど研究が加速されることが望まれる。
免疫原性を有する核酸医薬の作用制御技術の開発 独立行政法人物質・材料研究機構
花方信孝
独立行政法人物質・材料研究機構
中野義知
細胞質に局在するDNAセンサータンパク質は、塩基配列に依存することなく主に2本鎖DNAを認識し、炎症性サイトカインおよびインターフェロンなどのサイトカイン類を誘導することによって免疫を活性化する。これらのDNAセンサータンパク質は病原体に対する防御とともに、自己DNAによって引き起こされる自己免疫疾患にも関与することが指摘されている。本研究では、自己のDNAによる細胞質DNAセンサーを介したサイトカイン類誘導を合成オリゴデオキシヌクレオチドとナノ粒子の複合体によって制御する技術を開発し、免疫疾患治療のための基礎的知見を得ることができた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、2本鎖CpG ODNを、ナノ粒子に静電的に結合させることによって、サイトカイン誘導を効率的に抑制できることが明らかにししたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、企業家に向けた最大の課題は、ナノ粒子の安全性にあることは明確である。サイトカイン誘導の効率的な抑制効果のメカニズムを解明しているが、安全なナノ粒子を用いた実験結果が必要となる。免疫治療は、現在非常に注目されている治療法の一つであり、応用展開された場合の社会的インパクトは大きいと考えられる。安全性の高いナノ粒子を見いだし、実用化が望まれる。今後は、本研究の成果は将来のDNA医薬の創製に繋がり社会的なインパクトも大きく、臨床に適用可能な材料で調製できることが期待される。
皮膚表面温度および皮膚水分量を考慮した香り付き織布の印象の感性的評価に関する研究 宇都宮大学
長谷川光司
本研究では、香りを付加した織布が、それを使用した被験者の印象にどのような影響を与えるのか、また、それらと使用者の皮膚表面温度および皮膚水分量の関連性を感性的な見地から明らかにすることを目的とする。そのために我々は、織布3種類 (綿、絹、麻)、香り5種類 (レモン、ペパーミント、バニラ、ナツメグ、および無臭)を組み合わせた15刺激パターンを使用した主観評価実験を行った。その結果、レモンやペパーミントを付加した織布は、無臭に比べ、清潔感、爽快感、嗜好性といった評価を高めることが明らかになった。また、皮膚表面温度や皮膚水分量は織布の印象評価にほぼ影響を与えないことが示唆された。今後は、織布の印象評価に、より大きな影響を与える柑橘系、ミント系の香りの調査研究を行う予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、レモンやペパーミントが織布の清潔感、爽快感および嗜好性を高めること、特にレモンの香りがそれらの評価を飛躍的に高めることが明らかとなった点は評価できる。一方、環境温度の違いによる感性テストの実施が必要と思われる。さらに、急激な環境温変化を外乱として与えた場合のテストも必要と思われる。また、香りの持続性や耐久性の検討も必要と思われる。さらに、感性の評価手法、統計処理手法に関しても、創意工夫、新規性が加味されることが必要と思われる。今後は、香りに関する物理量との対応付けだけでなく、香りの付与方法や布の製造法などの技術的問題の検討も実施されることが、望まれる。
座位によるbaPWV計測法の確立−ヘルスケア・チェアの開発を目指して− 宇都宮大学
嶋脇聡
baPWVと近赤外光による半収束時間の両方のデータを同時に計測しようとする場合、被験者の計測姿勢が異なる。しかし、baPWVを座位にて計測した報告は無い。
そこで、被験者50人以上(年齢:20〜65歳程度)の男性に対して、baPWVに及ぼす3項目(計測姿勢、膝関節角度、リクライニング角度)の影響を調査した。25人について調査した結果、座位と仰臥位のbaPWVには相関(r=0.62)が確認された。また、膝関節角度、リクライニング角度がbaPWV値に影響を及ぼしていることが示された。
今後の展開として、baPWV(またはCAVI)と半収束時間の同時計測を行い、両者の関係を調査する必要がある。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、真実に近いbaPWVが計測できたとしても、ヘルスチェックシステムとしてどのように有用であるかを明示することが課題であるが、各種の病的状態をチェックする指標としてbaPWVを簡便に計測する方法が確立される可能性が見出せたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、baPWVによるヘルスケアシステム開発は中断して、近赤外光透過血管可視化技術を新たに検討するとなっている。しかし、社会的ニーズには合致しており、可能であれば実用化が望まれる。今後は、もしbaPWV計測法にヘルスチェックの可能性があるのであれば、保健学領域の研究者と連携した開発研究されることが期待される。
メグスリノキから生まれた立体認識性チロシナーゼ阻害剤の構造最適化 宇都宮大学
二瓶賢一
宇都宮大学
山村正明
皮膚の光老化を防ぐチロシナーゼ阻害剤は、女性・高齢者の雇用促進や紫外線過多環境への対応に必須な機能性分子である。最近、申請者は、メグスリノキ成分のエピロドデンドリンをリード化合物として、新規ロドデンドロール型チロシナーゼ阻害剤の開発に成功した。
この阻害剤は、既存の阻害剤と比べ、親水性、高活性およびチロシナーゼ活性部位への高い立体認識性を示すが、実施例が少なく、阻害剤構造の最適化は完了していない。そこで、立体認識性の精査、立体選択的合成方法の確立および生理活性評価に関する試験研究により、さらなる高性能化を図り、企業の開発意欲を刺激するような阻害剤を開発し、企業との共同研究による安全性、実製品での性能・品質評価を経て本阻害剤の製品化を目指す。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、光学異性体の作り分けも含め、6種の新規ロドデンドロール誘導体を合成し、チロシナーゼ阻害活性がリード化合物より高い化合物を見出した成果は顕著である。一方、技術移転の観点からは、社会問題化しているロドデンドロールの問題への対処も検討するなどでの実用化が望まれる。今後は、開発対象の化合物群について既知の薬理活性を十分に把握して、商品化に結び付けることが期待される。
直交三軸加工機を用いたCo-Cr合金製人工股関節の高精度ELID研削加工 栃木県産業技術センター
江面篤志
栃木県産業技術センター
藤沼誠人
金属同士の摺動面を持つMetal on Metal方式の実用化のためには、高い形状精度と鏡面仕上げが必要となる。本研究では、直交3軸加工機、CAD/CAMシステム及びELID研削法を組み合わせて、人工股関節の骨頭に対し、形状精度5 μm以下、算術平均粗さ10 nm以下の高精度・鏡面加工を実現する加工プロセスの開発を目指した。ワーク周速に合わせて送り速度を制御して加工した結果、骨頭の頭頂部と赤道付近での加工除去量の不均衡を是正することができ、形状精度が4.8 μmとなり、目標値を達成した。また、#8000の砥石を用いて送り速度5 mm/minで加工を行ったところ、算術平均粗さが8 nmとなり、仕上げ面粗さについても目標値を達成した。また、高能率加工のため、同機上で切削加工による粗加工を行った。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、加工精度の面では目標を達成できており、加工時間も目標値はクリアできていないが大幅な短縮を図ることに成功しいることは評価できる。 一方、技術移転の観点からは、生産本数を考慮した生産性、場所によるバラツキ、安定性などに考慮したデータを取得することが望まれる。また、ELID研削による金属イオンの溶出抑制効果についても明確にすることが望まれる。今後は、組み合わせによる予測できなかった新規効果などを盛り込んだ工夫を加えて、企業化を進める段階で、特許出願を意識した検討を実施することが期待される。
皮膚創傷治癒に対する新たな治療法の開発 群馬大学
茂木精一郎
群馬大学
早川 晃一
申請者らは、これまでに分泌蛋白質MFG-E8が悪性黒色腫の腫瘍血管新生を促進させることや、そのメカニズムを明らかにしてきた。しかしMFG-E8の皮膚における発現や、皮膚創傷治癒における役割については明らかになっていない。そこで、マウスを用いた解析を行うことにより、皮膚創傷治癒におけるMFG-E8の役割やその機序が明らかになりつつある。当初の目標の7割程度は達成したと考えられ、今後は、MFG-E8の創傷治癒効果についてより詳細な検討を行う。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。申請段階で既に得られていた成果ではあるが、MFG-E8が皮膚の血管新生を促進させ、皮膚創傷治癒を促進させることが強く示唆されている。これは、独創性、優位性に富む成果と評価できる。一方、bFGFとMFG-E8外用との併用効果は、最優先で実施すべき実験であったと思われる。MFG-E8併用による創傷治癒促進に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、MFG-E8の生物学的作用に関してさらなるに基礎的検討が望まれる。
エネルギー調整器作成装置の積層型補償フィルタケースの最適化 群馬大学
田代睦
群馬大学
早川 晃一
これまでに実用化された積層型補償フィルタ用のケースは特殊な構造を有しており、運用コスト面で不利であるため、現有のケースと同等の性能を有しかつコストを抑えた補償フィルタケースの開発を行った。アルミニウム合金に対して、必要とされる寸法形状を保ちながら軽量化した状態での材料強度を確認した。また、使用者による取り回しのしやすさ向上のため改善要望を取り入れた形状を設計、製作し、目標であるケースの開発とその実用化を達成した。今後はさらに精度や使いやすさを向上させるために、ワーク材であるポリエチレン板材の厚みの精度向上や、積層型補償フィルタの異なる厚みに対応した装置開発を行うことを考えている。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも重粒子線治療で用いられるエネルギー補償フィルタケースについて、従来型より加工製作の低コスト化を主眼とした技術開発であり、実用化を達成した点は評価できる。一方、掃型補償フィルターのワーク材であるポリエチレン板材の厚みの精度を高めるための技術開発やそれに対応した装置開発が必要と思われる。今後は、現在の産学協同体制を活用しながら、補償フィルターを設計、製作、実用化されることが望まれる。
イオン液体を利用した環境にやさしい導電性多糖類ゲルの創製 独立行政法人日本原子力研究開発機構
木村敦
独立行政法人日本原子力研究開発機構
笠井昇
本研究開発課題では、誘導化や橋かけ助剤添加を伴わない環境にやさしい導電性多糖類ゲルの高効率合成プロセスの確立、および有機電解質に必要とされる電気伝導度1 mS cm-1以上を有するゲルを作製することを目標とした。温度および湿度を精密に制御した条件で、多糖類の一種であるセルロースを高濃度溶解したイオン液体溶液を調製し、放射線を照射することで、最大収率14 %のセルロースゲルを作製することに成功した。また、イオン液体を膨潤したセルロースゲルは3.0 mS cm-1の導電性を有することから、人工筋肉などのアクチュエータや生体電位測定用電極材等の医療分野への利用が期待される。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に各種溶媒に不溶性の天然由来の多糖類に対して、溶媒としてイオン液体を選び可溶化し、さらにその放射線照射により導電性多糖類ゲルが得られたことは評価できる。
一方、技術移転の観点からは、放射線照射により高効率にゲル生成する機構の解明と共に、放射線を使わないゲル化手法を利点を製造プロセス・経済性・生成物特性などの点で明確にし、医療材料やその他の新しい材料工学分野への具体的な応用展開の検討が望まれる。
イオンチャネル作用薬の効率的探索を可能にする蛍光膜電位プローブの開発 埼玉大学
大倉正道
埼玉大学
久野美和子
本課題では、細胞膜電位変化を大きなシグナルとして検出可能な蛍光膜電位プローブタンパク質を作製し、その遺伝子を組み込んだ培養細胞を用いた蛍光測定を行うことで、イオンチャネル作用薬の効率的な探索を可能にすることを目指した。研究はおおむね順調に進展し、神経細胞の脱分極に伴って大きな緑色蛍光上昇を示すクローン(GVo7)を得ることに成功した。現在、GVo7の安定発現細胞株の樹立を行っている。今後、GVo7の性能をさらに向上させて特許申請し、産学共同でのイオンチャネル作用薬シード化合物探索に向けた研究開発を目指す。一方、プローブを用いて発火閾値下のシナプス入力統合機構に関する基礎生理学的な研究を行う。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも本研究成果により、従来法とは異なる蛍光タンパク質をプローブの反応素子として用いることで、イオンチャネル作用薬をより効率的に探索する技術構築の可能性が見いだされた点については評価できる。一方、次の開発ステップに入る前に、残された課題を検証する必要があると思われる。今後は、10%/mV以上に固執せず、既存薬の薬効評価を行うことで、従来法との優位性を示すことが望まれる。
機能性食品のアンチエイジング効果を測定可能なバイオセンサー技術の基礎と応用 早稲田大学
千葉卓哉
生体センサーの活性化と酸化ストレス耐性との間に正の相関関係が見られたことから、開発したセンサーマウスは概ね実用的なレベルにあると考えられる。しかし、今回アンチエイジング候補分子として期待した物質は、このセンサーを活性化しなかった。抗老化に関与すると示唆されるパスウェイ解析の結果、センサーを活性化させると示唆される遺伝子群を含むパスウェイを同定した。センサーの感度をより高めるための改良を行い、新たな発現コンストラクトを組み込んだ培養細胞系を開発し、現在その有効性を検証している。今後は、この改良型センサーをもつ遺伝子組換えマウスを作製し、当該技術の普及と新たな候補物質の同定を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初想定した結果は得られず苦労して研究の推進を図ったことが伺えるが、レポーターアッセイで抗老化作用分枝の探索を行う系は独創性があり評価できる。また、技術移転のための知財権利化に関しては成果は不十分であるが、当該技術の技術移転を目指し企業との共同研究の実績や論文成果は評価できる。一方、技術移転の観点からは、医薬品、漢方・生薬、食品分野との連携、化学メーカーや化粧品業界との連携も期待され実用化が望まれる。今後は、基礎から産業化とハードルは高いが組織総合力の発揮することが期待される。
ラベルフリー、非侵襲的な細胞ソーティングのための機能性マイクロ構造化表面のオーダーメイド設計手法の確立 独立行政法人理化学研究所
三好洋美
独立行政法人理化学研究所
井門孝治
混合状態の細胞から標的細胞をラベルフリーで識別・分離し、非侵襲的に収集するためのマイクロ構造を細胞種毎にオーダーメイド、ボトムアップで設計するための最適設計問題の定式化を行うことを目的とし、標的細胞を95%以上の精度で識別・分離可能なモジュールとその配置の最適設計を、少数(< 10個)の細胞変数を用いて定式化することを目標とした。上皮系、間葉系のモデル細胞株を用いて研究開発を進めた結果、由来組織の違い、がん細胞としての悪性度に違いに基づき、5%未満の誤識別率で標的細胞を識別、分離、収集するためのマイクロ構造を同定することに成功した。研究開発期間中、共同研究先候補の企業を得ることができ、実用化に向け、プロトタイプの作製および性能評価に関する議論を開始している。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、当初の目標は達成され、技術移転につながる成果は得られ、特許が出願されている。次のステップへの技術課題も明確であり、企業との共同研究に発展している。目標達成度、知的財産権問題、出口企業のすべてがそろっていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、研究成果が応用展開され、社会還元が導かれるので実用化が望まれる。今後は、一般性を担保し汎用性のある技術基盤確立のために、他の細胞系への適用を検証されることが期待される。
タブレット端末を用いた発声評価機能付き失語症者向け言語訓練装置の開発 千葉大学
黒岩眞吾
音声認識技術、高齢者・障害者を考慮したヒューマンインタフェース技術を応用し、失語症者向けの言語訓練装置をアンドロイドタブレット上で開発した。開発した装置は従来の言語訓練装置の機能(ヒント・正解の音声出力、録音・再生)に加え、訓練に用いる絵カードの各種検索機能、音声認識を用いた発声の自動評価、動画や歌での訓練機能、及び、自身で撮影した写真やネット上から得られる絵や写真を独自の絵カードとして利用する機能を有する。これらの機能により、言語聴覚士は短時間で効果的に訓練プログラムを設定し、訓練の現場で利用したり、宿題課題として提供できるようになった。また、失語症者も、いつでも、どこでも、一人で訓練が可能となった。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特にタブレット端末上で予定の機能をすべて実現し、失語症者がこの装置を利用して高い満足度を示している点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、絵カードの利用において産学共同はスタートしており、また、Android タブレット以外への応用などでの実用化が望まれる。今後は、失語症者と言語聴覚士の意見を十分に取り入れて、個々の状況に合わせた設定を容易にする機能の拡張や、国際的な応用にも技術展開されることが期待される。
酸性化ポリエチレンイミンによる低コスト・高効率遺伝子導入方法の企業化 千葉大学
福本泰典
遺伝子導入は癌、発生・分化、免疫、神経科学等の今日の分子生物学的研究において欠くべからざる必須の基礎技術であるばかりでなく、遺伝子治療などにおいても重要な基礎技術である。現在市販されている遺伝子導入試薬は高効率の遺伝子導入を可能にするが、非常に高価でありそのコストがしばしば研究活動の妨げとなる。そこで高効率の遺伝子導入を可能にし、しかも低コストで利用できる遺伝子導入試薬の開発には分子生物学的研究に取り組む研究者の間で大きな需要がある。今回我々は酸性化ポリエチレンイミンによる低コスト・高効率遺伝子導入法を確立したので、その実用化にむけた研究開発を行った。期間内に予定していた実施項目を遂行し目標を達成した。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、安価で高効率な酸性化PEI遺伝子導入法の汎用性と安定性を確認するという当初の目標はほぼ達成されている。本方法はある程度汎用的であり、かつ安定性にもかなり優れていることが示されたので企業化にも近い状態にあり評価できる。一方、技術移転の観点からは、 利潤を求められるレベルの判断が必要な段階である。 遺伝子導入法は医学・生物学の基本技術であり、遺伝子治療や疾病の診断など、本研究成果の社会への還元性は高いので、温度など、基本条件を細胞腫によって適切な条件を確認することでの実用化が望まれる。今後は、基礎研究領域から市場の広い応用研究領域にどこまで広げられるか、グローバルに展開されることが期待される。
細胞接着ネットワーク制御による癌転移・浸潤抑制薬物療法の開発 千葉大学
丹沢秀樹
公益財団法人千葉県産業振興センター
富岡登
癌細胞の転移・浸潤能の抑制は、癌を制御するうえで最も重要な課題となっている。本研究では、Lin7C-CASK-βcateninネットワーク上流に位置する遺伝子Aの作用薬剤6種のうち、このネットワークを効率的に活性させることのできる薬剤としてBを特定し、本薬剤を作用させることで浸潤能および遊走能の抑制を可能とした。さらに癌転移・浸潤治療薬としての最適なB濃度を決定することができたため、申請時の目標を予定通り達成することができた。Bは抗うつ薬として市販されているため、今後の実用化を目指し臨床検体を用いた研究を進める予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にLin7C-CASK-βcateninネットワークの上流に位置する遺伝子 Aに作用する薬剤の6種のうち、Bを特定し、ネットワークの発現が最も上昇する濃度を明らかにしたことは評価できる。 本薬剤は、抗うつ薬として市販されている薬剤であるため、必須と考えられる試験(毒性試験や安全性試験)は必要としないので、臨床応用の実現性が高い。一方、技術移転の観点からは、早期に、担癌マウスなど動物病態モデルを使用したin vivo有効性試験を実施し、検証することが必要である。今後は、医師主導治験も平行して検討することが期待される。
C4b-binding protein alpha chainを用いた新規膵臓癌検出キットの開発と実用化 千葉大学
曽川一幸
千葉大学
小柏猛
網羅的プロテオーム解析技術を駆使して発見したC4b-binding protein alpha chainは、従来の検査法では検出することが困難である膵臓癌の早期(ステージI・II)診断に有用なマーカー候補である。本シーズは、国内出願(特願2012-114048)申請中である。本申請ではこの有望なマーカー候補のイムノアッセイ系のプロトタイプを作成し、実用化への道筋をつけることを目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、膵臓癌の早期発見のためのC4b-binding protein alfa chain検出ELISA kitが作製され、それにより早期発見が難しい膵臓癌が血液検査でスクリーニングできる可能性が示された。本アッセイ系が確立すれば血清のスクリーニングで容易に膵癌の早期発見が可能になる点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、特定の蛋白定量には特異性の高い抗体によるイムノアッセイ法を構築する必要がある。C4b-binding protein alfa chainは微量であり、それを定量的にかつ再現性の高いイムノアッセイ系を確立することで実用化が望まれる。今後は、早期実用化に向けてイムノアッセイ系に秀でた企業、研究機関とのコラボレーションをされることが期待される。
中枢薬開発を革新する次世代in vitroヒト血液脳関門モデルの開発 千葉大学
降幡知巳
千葉大学
小柏猛
本研究の目的は、汎用性が高くかつ中枢薬候補のヒト脳内移行性を高精度に予測する、次世代in vitroヒト血液脳関門(blood-brain barrier, BBB)モデルを開発することである。本研究ではまずBBBモデルの実体を成すヒト不死化脳毛細血管内皮細胞を作製し、続いてその機能を向上させるヒト不死化アストロサイトも作製した。これら細胞は高い増殖能とともに高い分化形質を示した。ここに現在作製中のヒト不死化ペリサイトを組み合わせることにより、次世代ヒトBBBモデルの基盤が確立する。今後、製薬企業や学術機関における中枢研究者との共同研究を推進することにより、治療薬開発の促進に有用なヒトBBBモデルが確立すると期待される。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、提案の3種ヒト不死化細胞共細胞系を用いたBBBモデルは独創的であり、世界的に他に例がない研究で評価できる。一方、企業での評価が高まれば技術移転が可能となろう。しかし、本研究の当初の目的とする3種細胞系は残念ながらまだ確立されていない状態にある。複雑なin vivoBBB環境をin vitroで達成させるヒト3種細胞系のBBBモデルの確立にはさらなる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、本アプローチを既存薬について詳細に調べて、本法の適応限界を確認することが望まれる。
タンパク質相互作用からみた発がん機構の解明と診断・治療への応用 千葉大学
松下一之
千葉大学
小柏猛
癌組織ではc-myc遺伝子の転写抑制因子FIR(FBP interacting repressor)の転写抑制部位(exon2)が欠損した複数のスプライシング変異体(FIRΔexon2)が高発現し、そのために癌では正常型FIRの機能が阻害され、その結果TFIIH/p89/ERCC3/XPBのDNAヘリカーゼ機能を抑制できずにc-myc遺伝子の持続的な賦活化が惹起される。本研究開発では、FIRと相互作用するタンパク質を免疫沈降し、質量分析計を用いて網羅的に同定してタンパク質ネットワークや、FIR pre-mRNAのスプライシングにSAP155 (SF3b1)が必要であることを見出した。さらに新規細胞増殖抑制剤(抗癌剤候補)の開発を目指してFIRΔexon2蛋白のみの活性を阻害する低分子物質(ペプチド含む)をコンピューターシミュレーションや細胞培養の実験で同定し、それぞれの全長の精製タンパク質の結晶化によるX構造解析を行った。現在までの成果ではFIRΔexon2(513aa)全長蛋白質のX線結晶構造決定に成功し、FIR(542aa)全長のX線結晶構造決定にあと一歩である(千葉大学薬学大学院 星野忠次准教授との共同研究)。今後検討を続け、FIRのスプライシングによる発がん機構の解明と本邦発の診断・治療への応用を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、当初目標を達成したか判断できないものの、FIRを中心にした癌研究に前進がみられる。FIRΔexon2の結晶構造が明らかになると同時に、FIRおよびFIRΔexon2に結合する化合物が複数同定でき、p53-/-マウスにFIR-/+を加えると白血病が発症することが明らかとなったことについては評価できる。一方、今後の研究開発計画につい、短期的な課題とその具体的解決方法も示す必要がある。どのようにFIRの基礎生物学研究の成果を技術移転に繋げるか、具体的なロードマップを示すべきなのではないか。技術移転を目指した研究戦略とともに技術的検討やデータの積み上げなど努力がが必要と思われる。今後は、FIRの関与が高い癌がどのような癌なのか、FIR機能阻害だけで癌治療になるのかなどPOCの確立が必要である。FIRに結合能のある化合物はそれに有用であり、細胞内でのFIR機能阻害検証がされることが望まれる。
vitro/vivoシャトル型3次元細胞培養チャンバーの開発 日本大学
野呂知加子
日本大学
渡辺麻裕
本課題は、すでに特許出願した発明である「細胞培養下と実験動物移植下の双方で利用可能な3次元細胞培養チャンバー」を利用して、再生医療研究開発用の3次元組織構築試験デバイス、および細胞工学的物質生産デリバリービークルとして実用化することを目的とし、試作品を改良して完成するための技術開発を目標としている。まず, チャンバーの形状を3Dプリンターで作成し展示会等に出展した。実用化に向けて材質・形状、無線タグ、境界浸透膜、内部充填マトリックス素材等の部品について改良検討を行った。また移植チャンバー内3次元組織の安定構築のために不可欠である血管形成の制御について, 血管誘導物質生産細胞や抗酸化物質を用いて試験した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、 vitro/vivoシャトル型3次元細胞培養チャンバー開発に関する当初の目標(ECM素材、デバイス、血管誘導・酸素供給システムなど)について一部検討中のプロジェクトもあるが、概ね達成されたと考えられる。シャトル型の組織再生用デバイスを考案したことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、産学連携を具体的に視野に入れており、 産学共同の研究開発ステップにつながる可能性は高まったと思われる。ただ、既に血管新生デバイスの植埋による、評価モデルが存在するので、この技術を超える必要がある。得られた研究成果を応用展開できれば、社会還元につながることが期待されるので実用化が望まれる。今後は、実用サイズの試作品を作り動物への埋植実験を行い、その機能性を評価した後に現在の計画を実践すべきで、検討の順序を再考されることが期待される。
高い腫瘍細胞選択性を有する抗腫瘍性インディルビン誘導体の開発 日本大学
宮入伸一
日本大学
渡辺麻裕
我々の目標は、キナーゼのATP結合部位に親和性を有するインディルビンに核酸やタンパク質との反応性に富んだ官能基を付加したハイブリッド型抗腫瘍剤の開発である。
まず、反応活性基のエポキシドまでの最適結合距離を明らかにした。次いで、細胞傷害性の向上を期待してメトキシ誘導体を開発したが顕著な効果は認められず、ヒト神経芽腫を用いた実験治療学的試みでも有意な腫瘍成長抑制効果は確認できなかった。そこで、新たな反応活性基を導入した誘導体を作成したところ、有意な細胞傷害性を示した。今後の実験治療学的検討に加える予定である。
一方、本研究で細胞傷害性の比較検討に用いた誘導体中に、細胞分裂抑制効果を示す化合物を見出した。今後その作用機序の解析を通じて新たな細胞周期研究用プローブの創出につなげる。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、予定された計画が概ね遂行され、報告書に具体的なデータが記載されて、それに基づいて議論されており、今後の進め方も具体的に検討されていることについては評価できる。一方、in vivo活性を示すことは重要であるが、創薬研究を目指すならば、in vitro活性と共に、物性(吸収性、安定性、溶解性等)を同時に測定しつつバランスのとれた化合物を選択する必要がある。今後は、「ハイブリッド型」が作用機作的に他剤と差別化できることを示す必要がある。また、分子標的薬となるキナーゼ阻害と細胞障害性官能基を1分子中に含むことの優位性を明確に示すことが望まれる。
新規オイルゲル化技術を利用した経皮吸収型製剤の開発 日本大学
橋崎要
日本大学
渡辺麻裕
生体親和性の高い新規レシチンオルガノゲル化剤を利用し、より安全かつ効率的に薬物を送達する経皮吸収型製剤を開発することを目的とする。いずれのステロイド(エストラジオール、テストステロン、ヒドロコルチゾン)を用いた場合にも、ゲル製剤を調製することに成功した。また、レシチン+糖類からなるレシチンオルガノゲル化剤は、ゲルのレオロジー特性を損なうことなく、薬物を含有できることが明らかになった。さらに、得られたゲル製剤について薬物の皮膚透過性を検討した結果、ゲルの粘度は薬物の経皮吸収速度には影響せず、テストステロンの皮膚透過性が3種のステロイドの中で最も高くなることを明らかにした。今後は、処方の最適化を図ることにより、実用化が期待できる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもこれまでに開発してきた各種のレシチンオルガノゲル化剤を経皮吸収製剤の基剤に適用し、新たな製剤を開発しようとする視点は評価できる。一方、期間内に検討できなかった皮膚刺激性の検討は、必須の項目であり、継続して検討すべきである。今後、他の基剤を用いた経皮吸収製剤と比較して本システムにどのような優位性があるのかをデータとして示す必要がある。
医療安全のための手術器械の個体管理システムの開発 お茶の水女子大学
太田裕治
お茶の水女子大学
湯浅長久
本研究では、手術器械の体内遺残事例防止のために、手術器械に取り付け可能なRFIDタグと個体管理システムを開発した。本申請では本格的な患者安全の向上と医療従事者の負担軽減に向けて、手術室での使用を目指したRFIDタグ自動読み取り装置とソフトウェアの開発を行った。本申請では次の知見が得られた。(1)RFIDタグが読み取り面に対して垂直の状態でも読める、(2)手術室で使用可能な要件を実験的に調査するとともに開発を行った、(3)開発したシステムを実際の手術現場で試験的に運用し、初期的な臨床評価試験を行った。結果として、本システムの使用における医療機関での有用性が示唆された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、RFIDタグ装着の手術器械の個体管理システム開発目標に対し、着実に進展している。手術現場におけるリアルタイムでのトレーサビリティ管理に関して、医療従事者と連携して臨床評価できる段階である。研究開発目標が明確であり、医療現場・手術現場に密着し、医工連携での研究開発効果を確認していることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、密な医工連携により完成度の高い機能・性能を早期完成することが期待できる。本研究開発成果は医療関係者及び患者に安心・安全の効果もたらすものであり、早期に実用化が望まれる。今後は、産学連携による着実なシステム開発推進を行い、早期実現と普及されることが期待される。
スギ花粉アレルゲンタンパク質上のヒト抗体結合配列の解析 玉川大学
新本洋士
本研究課題では、スギ花粉アレルゲンタンパク質Cry j1に対するIgMクラスヒトモノクローナル抗体を用い、当該IgM抗体がCry j1のアミノ酸配列をどのように認識するかを解明する。さらに得られた配列を含むペプチドによる「スギ花粉症の予防、治療」への道筋を示すことを目的とする。
IgM抗体はB細胞上のアレルゲンレセプターとして体内に侵入したアレルゲンタンパク質と結合する。B細胞内に取り込まれて分解された抗原ペプチドはT細胞に提示され、これを認識したT細胞はサイトカイン類を分泌して、B細胞をアレルギーを引き起こすIgE分泌形質細胞へとクラススイッチさせ、IgE抗体はスギ花粉症を発症させる。 アレルギー初期応答に必須のIgM抗体が結合するアミノ酸配列を含むペプチドによる、新たなスギ花粉症の予防、治療への道がひらけると期待される。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、スギ花粉アレルゲンタンパク質Cryj1に対するヒトIgM抗体の結合エピトープ解析を実施し、抗体結合性のペプチド配列を明らかにしたことについては評価できる。一方、アレルギー応答の抑制作用の評価可能な実験系、動物モデルの構築については具体的に計画されていない。アレルギー応答の初期段階の遮断できる抗体結合ペプチド配列の特定に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、アレルギー応答の初期段階を遮断できるペプチドを明らかにする実験系の早期構築することが望まれる
病原性細菌特異的制御基盤構築に向けた、H. pyloriの鉄取り込みトランスポーターFecA1を標的としたリード化合物の機能解析 慶應義塾大学
鈴木秀和
慶應義塾大学
伊藤道雄
本研究開発の目標は、宿主異物排除応答依存的抗菌療法の開発を目指し、細菌の鉄取り込みトランスポーター(FecA1)結合可能性化合物のHelicobacter pyloriの抗酸化活性破綻誘導ポテンシャルについてin vitro評価を行うことであった。本研究により、FecA1結合可能性化合物とその類縁化合物は、H. pyloriの抗酸化能を容量依存的に破綻させ、メトロニダゾール耐性株にも効果を認めることを確認した。これらの化合物は、抗菌活性を示さず酸化ストレス感受性を亢進させるため、宿主異物排除応答依存的な病原細菌排除論構築が可能となると考えられた。本研究成果をもとに今後、さらなる基礎研究データを取得し、産学共同の創薬開発に向け応用的に展開する。また、創薬等支援技術基盤プラットフォーム事業などを活用し、他のライブラリやHTSの利用可能性を検討し、より多くの候補化合物の抽出、異なる菌種での効果確認を通じて産学連携の可能性を広げる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に通常の抗菌薬と異なる作用メカニズムを持つ創薬を目指そうとする挑戦的な計画で、鉄取り込みという点に着眼している点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、in vivoでの成果を得るなど基礎データの積み上げが必要であり、知的財産権の確保が望まれる。今後は、in vivo実験を進め、成果を企業にもアピールされることが期待される。
酸化還元特性を利用した極微量放射性金属フラーレンの分離技術開発 首都大学東京
秋山和彦
本課題では、金属内包フラーレンと中空のフラーレンの酸化還元特性の違いを利用する事で、核医学分野で利用可能な放射能純度の極微量放射性金属内包フラーレンの分離技術を開発する。
本研究開発においては、電解フローセルを用いて金属内包フラーレンを電気的に酸化・還元すると共にフローセル内に吸着させる事で分離することを検討した。電解質としてBu4NPF6塩を用い、溶媒をクロロベンゼンとすることで理論上金属内包フラーレンの第1酸化還元電位を十分収めることの出来る-0.5 Vから+1.5 Vのウィンドウを持つ装置を作成した。酸化側での若干の吸着は確認されたものの、還元側での吸着は今回最適と見られた溶液系では不可能であることが見出された。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも核医学分野で利用可能な放射能純度の極微量放射性金属内包フラーレンの分離技術に関し、金属内包フラーレンの分離・精製の基礎的課題が明確になったことについては評価できる。
一方、技術移転の観点からは金属内包フラーレンの利用目的を明確に定めるとともに、溶液、電解質の組み合わせの見直しなど実用化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。
新型MR Elastography加振動装置の試作と実用化の検証 首都大学東京
沼野智一
首都大学東京
中西俊彦
本研究ではMR Elastography(核磁気共鳴画像法を用いた組織弾性イメージング:MRE)で使用するボールバイブレータによる新しい加振器を試作し、その効果を検証した。本研究の基礎理論等は国内では特許化され、国際特許(JST特許出願制度)は申請済である。新型機は圧縮空気によるボールバイブレータ振動を利用する。本手法は撮影対象を直接加振することが可能であり、振動周波数に依存することなく振動量を一定に保てることを、レーザー変位計と加速度計を用いた計測実験により実証した。また、生体模擬試料(寒天ファントム)を対象にしたMRE実験を実施した事で、新型機は高磁場中でも安定した振動を発生できる事を実証した。今後はラットを対象にしたMRE動物実験を行うことで新型機の生体応用への有用性を発信し、ヒトを対象にしたMREスタディをめざす。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、特許は研究開始前に出願し、目標は達成され技術移転が十分に可能な成果が得られている。新しい方式の加振装置により品質の高いMRE画像が撮れるようになった技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、新しい手法によるMREが撮れることが証明された。MREはMRIと同様に今後の診断技術に大いに貢献するものと考えられる。医療機器承認が必要なので、そのためのロードマップを作成し実用化が望まれる。今後は、できるだけ早い段階で企業と連携し、実用化されることが期待される。
生体組織類似の弾性率まで硬化する体温応答性インジェクタブルコラーゲンゲルの開発 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
柚木俊二
地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
三尾淳
室温以下で少なくとも30分間流動性を保ち、生体内温度で急激に硬化するインジェクタブルなコラーゲン/ゲニピンゲルシステムを開発した。温度応答性のゲル化にはコラーゲン線維化のみならずゲニピン架橋の温度応答性が寄与していた。最終的なゲルの弾性率はゲニピン濃度およびコラーゲン濃度と比例し、ゲニピン濃度0.25mM以上で明確な硬化が認められた。コラーゲン/ゲニピンゾルに細胞を混合すると著明な細胞毒性を生じ、細胞のインジェクタブルキャリアとしての応用が難しいと推定された。一方、ラットを用いた皮下注入試験では組織障害が見られず、ドラッグデリバリーキャリアとしての可能性が示された。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ゲル化時間、ゲル強度の調整技術に関しては目標を達成し、ゲニピン架橋ゲルの組織適合性に関しては良好な結果を得たことについて評価できる。一方、ゲルピン事態に強い毒性があることは判明し、用途限定の必要性もある。次のステップに進めるには安全性の確認や具体的な用途のついて技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後、DDSへの用途転向を考えた場合も体内でのゲルの安定性/毒性問題は優先課題である。従ってこの点をクリアにしてから具体的な開発計画を立案されることが望まれる。
(ヘモグロビン-アルブミン)クラスターからなる人工酸素運搬体の開発 中央大学
小松晃之
中央大学
加藤裕幹
輸血液の代替物となる人工酸素運搬体の実現は、次世代医療の最重要課題である。これまで欧米を中心に様々な製剤が開発されてきたが、副作用や安定性に問題があり、臨床利用には至っていない。本研究は、我々が独自に開発した"(ヘモグロビン-アルブミン)クラスター"を生体投与可能な人工酸素運搬体として実用化するための基礎知見の集積を目的とした。酸素親和性(P50)25 Torrの製剤を調製することに成功し、量合成法を確立、高い血液適合性を実証した。現在、次のステージである安全性・有効性の評価を行いながら、企業化に向けた基盤技術の確立を進めている。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、酸素親和性の制御、スケールアップ、血液適合性評価に関する当初目標は達成されたと評価できる。企業化に向けたスケールアップなどを視野に入れた展開とIn vitroではあるが人血サンプルを用いた適合性評価の結果は評価できる。一方、技術移転の観点からは、社会的な潜在需要は大きいので、安全性はもちろんのことタンパク変性の度合いやそれに伴う生体内の滞留性能など、早急にデータをそろえることで実用化が望まれる。今後は、知的財産を早急に行い、小規模でもよいのでIn vivoの実験結果を示してその有効性の安全性を示すことが期待される。
マイクロRNAの発現制御予測プログラムによるin silicoアッセイの開発 中央大学
田口善弘
中央大学
加藤裕幹
疾患や発生など広範な生物プロセスに大きな影響を与えていると思われるmicroRNAの活性を、標的である転写物の発現から逆推定するという当初の目標に対して、microRNA標的特異的なプロモーターメチル化という現象を見出し、また、この現象がmicroRNA標的遺伝子の転写物の発現の変化に大きな影響を与えているという新たな発見をしたことで大きく前進した。直接、microRNAの活性評価をすることには到達出来なかったが、今後、今回発見したmicroRNA標的特異的なプロモーターメチル化による標的遺伝子の発現量制御という現象を考慮することで将来的に同目標の達成は可能であると思われる。 当初目標とした成果が得られていない。当初の目的を達成することは出来なかったが、データに関する情報をつかむことが出来た点は今後のin silico開発の基盤となる可能性はある。データに関する複雑な形式等の多様性が明確になっているが、技術移転につながる研究成果であるかは不明である。広範囲な収集から、もう少し範囲を制限して実際のデータを収集し、in silicoプログラム開発に入ることが必要であり、また、in silico アッセイを進める際には、ウェット系とのコラボが必要と思われる。
居住者見守りシステムのためのRFIDタグによる姿勢検出アルゴリズムの開発 電気通信大学
沼尾雅之
電気通信大学
小島珠世
高齢者施設においては、転倒などの異常状態を検出するため、プライバシーを考慮した居住者モニタシステムが必要とされている。本研究では、RFIDタグとアンテナを複数用いることによる物体の姿勢検出アルゴリズムを応用する事によって、複数居住者が行きかう建物内での、認識率が高く、かつ、雑音 に強いモニタシステムの開発と実用化に向けた評価を目標とした。今回開発したアルゴリズムを用いて実環境の実験を行い、想定する条件を満たすことを実証し、さらに本システムの実用化への達成度と課題を明確にした。今後は、この課題を解決するための研究開発を進めるとともに、これまでの研究成果の特許申請や企業等との連携も進めていく。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもRFIDタグとアンテナを複数用いることによる物体の姿勢検出アルゴリズムについては評価できる。一方、研究成果が応用展開された際に社会還元に導かれることは期待されるので、実用化に向けた認識率の向上が必要と思われる。今後は、認識率を高めるためのRFIDの配置や個数の検討、アンテナの配置の検討や誤認識を引き起こす金属類などを検討することが望まれる。
生細胞表面における分子イメージングのための蛍光アプタマープローブの開発 東京工科大学
加藤輝
東京工科大学
塚本勝
本課題は、標的分子との結合に伴い蛍光強度が増強される蛍光アプタマープローブを用いた生細胞表面における疾患マーカー分子の検出・イメージング技術の開発を目的とする。蛍光アプタマープローブの標的分子に結合するアプタマー部分を疾患マーカータンパク質(PTK7)に結合するアプタマーに改変して、がん細胞表面に発現するPTK7の洗浄操作なしでの蛍光イメージングを試みた。その結果、CCRF-CEM(ヒトT細胞性急性リンパ芽球性白血病細胞株)細胞表面のPTK7の可視化に成功し、当初の目的は達成された。今後は他のマーカータンパク質を標的として汎用性を確認し、生細胞表面タンパク質の新たなイメージングツールとしての可能性を検討したい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、時間が短いためにできなかった部分はややあるものの、がん細胞表面に存在するマーカー分子の可視化を洗浄操作無しに検出できた技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、本手法は、特定疾患に限定されず幅広い応用を可能とするものであるが、この領域の競争は激しい。独自性がどの程度あるのか判断できない部分も多いが、かなり有望と思える。ふさわしい技術力を持った適切な企業が見つかりさえすれば、実用化の可能性がかなり高まると思われ、実用化が望まれる。今後は、様々な点でハイスループットな応用が期待できる技術であり、微調整と広範化、産業化を大学の産学連携機能を利用して進めていくことが期待される。
再生医療を活用した慢性腎不全ペットネコのための腎性貧血治療法開発 東京慈恵会医科大学
横尾隆
公益財団法人木原記念横浜生命科学振興財団
村戸康人
我々はこれまで異種後腎の大網内移植によりホスト骨髄細胞が流血中に動員され移植片内エリスロポエチン産生細胞に分化誘導されることを見いだした。そこで腎性貧血が生命予後を規定する慢性腎不全ペットネコ治療の臨床応用の基盤研究を行った。超急性拒絶回避の為のネコ化ブタ作成のため、ネコ補体制御因子のクローニングしブタ細胞に遺伝子導入することで拒絶回避が可能であることを示した。さらにブタ後腎を保存運搬可能とするため、ガラス化凍結条件の設定を行った。これらの成功によりペットネコ腎性貧血新規治療法として実施が可能であることが示唆され、今後獣医前臨床試験を開始するレベルまで到達したと判断される。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、異種胎生組織をEPO産生細胞の分化誘導の場として利用する発想と、補体による異種細胞の拒絶反応についてネコDAFを発現させて細胞傷害を防ぐ工夫をするなど、問題点の打開を図ったことは評価できる。一方、異種胎生組織によるEPO産生細胞の分化誘導のメカニズム解明に向けた技術的検討や多くの個体ネコからスクリーニングによるデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、誘導された組織の長期的な形態変化の観察など治療法の確立に向けたデータを取得されることが望まれる。
悪性乳癌の早期診断を目的とした腫瘍マーカーの探索 東京大学
井上純一郎
研究対象とする悪性腫瘍や高転移性乳癌の診断マーカー候補因子、39種の評価系を構築する優先順位付けを行う目的で、日本・US・EUの特許検索を進めた。悪性乳癌の早期診断をクレームするものではない特許出願数の少ない因子から研究を開始した。また、各マーカー候補に対する特異抗体を探索する目的で、各候補遺伝子を哺乳細胞で発現させた細胞破壊液あるいは大腸菌で発現精製したリコンビナントタンパク質を用い、購入市販抗体を評価した。現在、39 候補のうち34タンパク質の発現に成功し、マーカー候補に対する25の特異抗体を、ウエスタンブロット法を用い確認した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、乳がんの悪性度評価マーカーを同定する、という当初の目標は達成できていないが、既に34タンパク質の発現に成功しマーカー候補に対する25の特異抗体を確認している点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、いまだマーカーの同定に至っていないため、早急に同定作業を終了させると共に企業への導出を目指すことが求められる。本研究の連携企業は診断薬開発に関して多くの経験を有し、血清診断法の開発に高いノウハウを持つので、申請者が今後優れたマーカーを同定できた場合、競争力の高い研究開発ステップに進む可能性があり実用化が望まれる。今後は、乳がん患者は増加の傾向にあるのでマーカー評価の際に多施設共同臨床試験することが期待される。
川崎病における血中PTX3複合体の同定 東京大学
浜窪隆雄
川崎病は日本の乳幼児に多い原因不明の熱性疾患で、罹患者数は年々増加している。IVIG療法などに反応しない例もあり、原因の究明と治療法の開発が待たれている。本研究では、血中PTX3およびその複合体をプロテオミクスにより検出する手法により、原因の究明や診断法の開発につなげることを目的とした。PTX3は可溶性のパターン認識受容体と呼ばれ、ウイルスや細菌を捉えて免疫担当細胞に提示する役割を担っていると考えられている。川崎病患者血中にELISA法によりPTX3の上昇を認め、また抗体磁気ビーズを用いたプロテオミクスにより、PTX3および複合体タンパク質を数種類同定した。今後症例数を増やして、PTXとその複合体タンパク質の病態意義および診断応用について解析する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、血中PTX3の測定はELISAによって行われ、血中PTX3の測定方法、およびPTX3結合物の解析方法は確立しており評価できる。一方、血中PTX3の測定が3症例について実施され、川崎病の重症度と関連する傾向が得られているが、症例数が少なく、特異性も不明である。症例数の増加や更なる解析については具体的に記載されているが、他疾患との比較など特異性の検討が望まれる。症例数を増やし、特異性をきちんと確立させるための技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、川崎病は、日本では比較的頻度の多い疾患であるので、症例数を増して、当初の目標を達成されることが望まれる。
抗体医薬品の抗体定常領域の迅速な改変方法の開発 東京大学
太田邦史
本課題では、抗体の定常領域を、従来法よりも遥かに簡便かつ迅速に、任意の配列に改変することができるCre-Inシステムを利用して、酵素融合抗体などの高付加価値な抗体の作製を目指した。その結果、二重特異性抗体の作製は未達であるが、他の研究目標は概ね達成した。具体的には、高ADCC活性抗体の特徴を持った変異型抗体のスクリーニング系の確立および取得に成功し、今後、各候補抗体のADCC活性について直接的な証拠を得る予定である。また、ルシフェラーゼや蛍光タンパク質を融合した抗体の精製および実用化に成功した。さらに、モノクローナル抗体から得た塩基配列情報を元に一本鎖抗体を設計した。今後、一本鎖抗体を他のモノクローナル抗体に融合し、二重特異性抗体を作製する予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に高感度GFP蛍光融合たんぱく質の創出は一定の成果である。一方、技術移転の観点からは、次のステップへ進めるための課題を充分に明確にする必要がある。今後は、開発時間の短縮化を目指し、ADCC活性を評価するためのより簡便なスクリーニング系の構築、また、二重特異抗体が作製できた場合の精製方法について検討する必要がある。
ELISAおよび尿検査試験紙による尿路癌の新たな検査法の開発 東京大学
越川直彦
東京大学
清木元治
我が国は人口の高齢化が進み膀胱癌を初めとする泌尿器癌患者は増加傾向を示している。しかし、前立腺癌を除く膀胱癌などの尿路上皮癌の診断可能なバイオマーカーは存在しない。
そこで本研究開発では、研究責任者が見出した悪性癌の浸潤マーカーであるラミニンγ2単鎖(モノマーγ2鎖)に注目し、尿路上皮癌患者尿中のモノマーγ2鎖をウエスタンブロット、サンドイッチELISAで定量的に測定することで、尿中のモノマーγ2鎖が尿路上皮癌診断の新たなバイオマーカーとなる可能性を示した。特に、モノマーγ2鎖による尿路上皮癌の診断の感度、特異度は95.5、47.5となり、前立腺癌の優れた腫瘍マーカーであるPSAと同等の能力があることが明らかとなった。また、当該疾患患者の多くは高齢者であることから、簡便、非侵襲的なモノマーγ2鎖の検出法の開発は必須である。そこで、本研究開発では尿試験紙によるモノマーγ2鎖の検出法の開発のための予備的検討を行い、モノマーγ2鎖の検出にクレアチニンによる尿濃度の補正を必要としないことを見出し、尿試験紙がモノマーγ2鎖の検出に適した手法であることを示した。
以上、本法を臨床応用することは国民の健康の脅威となるがんの疾患リスクを短時間かつ正確に評価でき、信頼性の高い臨床情報を診療分野にフィードバックし、高齢化で増大するがん患者に早期治療の場を提供することが可能となる。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、尿路癌に対して検出感度が高く、かつ侵襲のない簡便なスクリーニング法を開発するという当初の目標に向けてこれまで順調に研究成果が得られるに技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、この簡便な診断法が確立すれば尿路癌が早期に、試験紙で診断される可能性があり、診断薬企業への技術移転準備が進行中で実用化が望まれる。今後は、もっと多くの尿サンプルを採取し、種々の病期の尿路癌、異なる組織型の尿路癌での検出率、検出感度を検証することが期待される。
免疫寛容性を持ったヒト胎盤由来新規細胞株による虚血性心疾患回復へのアプローチ 東京大学
竹内純
東京大学
増位庄一
心筋梗塞後の悪化を防ぐ為の細胞移植はいくつかの課題があるものの、即効性や効率性において大きな期待がもたれている。胎盤から抽出された単一の新規細胞株は、心臓前駆細胞にて発現する因子を有する(特許2012)だけでなく、極めて高い血管新生能力と分化転換能を有している。さらに本細胞は「免疫寛容」、「Flk陽性」「細胞数を確保し易い」「生着率高い」ことから、現行の血管内皮細胞より有効性が期待できるため、心筋梗塞マウスモデルを用いて本細胞株の特異性を調査するとともに有効性を実証した。次のステップにおいては、ヒト虚血性心疾患患者や先天性心疾患患者への治療をサポート出来る細胞株樹立した。
今後は、まず特許申請行い、心筋細胞分化能の向上を目指し研究推進を期待する。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ヒト胎盤由来細胞が「細胞移植による心筋梗塞治療」において有効活用可能か否かのフィージビリティスタディとしては、当初の目標を達成したものと評価できる。一方、応用までにはまだまだかなりの基礎研究が必要なテーマであり、「新規細胞株」が不死化細胞株のことだとすると、不死化細胞株にはES/iPS細胞と同様な腫瘍化リスクが否定できないので、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、まだまだ基礎的な研究が必須の分野であり、競争が激しい分野とは言え、急ぎ過ぎることなく、確固たる基礎研究を積み重ねられることが望まれる。
マイクロ超音波モータによる血栓除去機能をもつ血管内視鏡の開発 東京農工大学
遠山茂樹
東京農工大学
松下文夫
コイル型およびフォイル型の超音波モータを試作し、IVUS試作と血栓除去実験を行った。IVUSは当初8000rpmを目標としていたが、実際には3000rpm程度も十分である。速度誤差は3%以内と良好な結果であったが、モータ駆動中の血管内壁までの距離を測定することができなかった。またさらなる検討として、血栓除去はロータ形状および材質も検討したが、十分なものは見つからなかった。2時間程度回転し続けると回転数も落ちてくる(ライニング材の選定が重要である)。これらは実用化に向けての課題である。しかし、本研究開発では、IVUSの基礎技術を確立し、血栓除去については良好な結果を得た。全体的には超小型のモータが開発できた意義は大きく、目標はほぼ達成できたと考えている。最後の人体モデルの実験でも良好な結果を得た。実用的な医療器具になると思われる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に超小型モータ開発の技術基盤が得られた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、長時間回転が安定したマイクロ超音波モータを実現するための改良などが望まれる。今後は、医療機関と連携をして、具体的な用途について検討されることが期待される。
マイコウイルスを用いた新規抗菌性蛋白質の開発 東京農工大学
森山裕充
東京農工大学
松下文夫
これまで、イネいもち病の予防・防除に有効なマイコウイルスを用いた生物農薬を開発してきたが、研究テーマの実用化を促進するために、新たな用途として同じ手法を用いてマイコウイルスが持つ抗菌性蛋白質の発現系の構築と、ヒト病原性真菌に対する生物活性について検討を行ってきた。今回得られた研究成果により、マイコウイルス由来の抗菌性蛋白質は、真核細胞のモデル生物であるパン酵母に対する抗菌作用に加え、ヒト病原性真菌であるクリプトコッカスに対しても、生育速度や夾膜多糖形成において一定の減退効果を持つことを明らかにすることが出来た。マイコウイルス由来抗菌性蛋白質の生産系においては設定された目標値までは到達しなかったが、精製方法の改善などの見込みをつけており、今後も抗菌活性・安全性などの定量的な評価を行い、その結果を基に製薬会社等との連携によって新たな抗菌剤の実用化を目指していく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にN末端欠損ORF4に抗菌活性を見出したことと新たなマイコウイルスの抗菌性蛋白質(ORF2)を発見したことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、分泌型の抗菌性蛋白質を大量に産生できる系を構築することやORF4の機能特性部位の明確化と活性の向上を達成するなどでの実用化が望まれる。今後は、先行抗菌剤(主に低分子医薬品)との差異化とヒトへの安全性、特にアレルギー性に注意を払われることが期待される。
ボツリヌス毒素複合体の糖結合能を活かした新規な細胞識別システムの開発 東京農工大学
西河淳
東京農工大学
松下文夫
ボツリヌス毒素複合体は、レクチン活性を持つHA1とHA3をそれぞれ6分子、3分子持つ巨大な複合体で、認識する糖鎖を持つ細胞に結合して毒素を体内に侵入させる。本課題は、HA1やHA3の糖鎖認識部位に変異を加えて認識する糖鎖構造を変えたリコンビナントからなる複合体を作製して、がん化等による細胞表面の僅かな糖鎖構造の変化を捉え、簡便かつ迅速な高感度細胞識別システムを開発することを最終目標としている。今回は、糖鎖認識の異なるHA1変異体の中から2種を選び、複合体を形成させる条件や、複合体が期待通りに細胞表面の糖鎖構造を識別するかを検討した。結果は、効率よく蛍光標識HA1-HA2複合体を作製できる条件が判明し、それらが細胞表面の糖鎖構造を認識していることも確認できた。また、HA2-HA3複合体も作製でき、立体構造も推定できたことより、今後のHA1-HA2-HA3複合体作製の重要な基盤技術が本課題により確立できたと結論づけられる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、糖鎖構造変化を感度よくとらえる複合体レクチンのミュータント作成し、標識試薬とした複合体を用いて、がん化細胞を高感度で識別する試薬を創出することであるが、基礎的検討をしっかり実施していることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、レクチンミュータントを含む複合体が細胞表面の糖を認識させることが確認されており、産学共同等の研究開発ステップにつながる可能性が高まっている。がん化に伴う糖鎖構造の変化を本技術で簡便に見出せる技術が確立することで実用化が望まれる。今後は、がん細胞に限らず、レクチン結合性の特異性等に研究を進めることも期待される。
電子顕微鏡用高品質位相板の開発 東京農工大学
箕田弘喜
東京農工大学
松下文夫
「生きたままの状態」の生体観察を電子顕微鏡で高コントラストに観察可能にすることを目的に、シリコンプロセスを用いた電子顕微鏡用の高品質薄膜位相板を作製した。本開発では、窒化シリコン薄膜への不純物ドープと金属薄膜コートにより導電性を向上させて、生体試料の無染色での可視化が実現できる位相板の開発に成功し、シリコンプロセスによる位相板作製の可能性を見出した。今後、更なる導電性の向上により、生物分子の無染色での3次元構造解析も可能となり、生体細胞について分子レベルの構造評価を簡易化できる技術の実現へつながり、将来にはがん細胞診断等への応用も可能となる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも生体観察用電子顕微鏡の位相板として、炭素膜に代わる高性能窒化シリコン膜の可能性を見出した点は高く評価できる。一方、金属板のコーティングに関する評価と検討に加え、低コスト化と汎用性の観点からのGaイオン打ち込みプロセスに関する検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、加速器を利用したGa以外のイオン打ちこみ、あるいはイオン液体の活用等の検討をすることが望まれる。
機能性オリゴ糖製造酵素の新規な固定化法の開発 東京農工大学
殿塚隆史
東京農工大学
松下文夫
ArFFaseは、機能性オリゴ糖として知られるラクトスクロースを製造する際に使われる酵素であるが、イオン交換担体等に物理的に固定化すると性質が変化してしまい、オリゴ糖とは別の多糖を生成する。各種固定化担体のスクリーニングの結果、担体の種類によってArFFaseによる多糖の生成量は異なることが明らかとなり、最も生成量の多い担体と少ない担体で、約10倍もの差があることが判明した。また、本酵素は、特定の物質の存在下で多糖を多量に生成させることが分かっているが、立体構造解析の結果、活性中心の裏側に存在するトンネルの入り口にその物質が結合することが明らかになった。ArFFaseは、活性中心の裏側から水分子が通るトンネルを有する構造をしており、本研究結果より、このトンネルがふさがってしまうことにより酵素の性質変化が引き起こされるものと考えられた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、イオン交換体への固定と変異体酵素を用いることで、オリゴ糖ラクトスクロースの生産での副反応(多糖生成)を抑制できたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、添加剤や固定化剤をより広範囲に検討するなどでの実用化が望まれる。今後は、固定化酵素の安定性の向上も併せて研究すると共に特許出願を通した移転技術の明確化も検討されることが期待される。
正しい天然型SS結合を有する組換えタンパク質の安価で汎用的な発現系・精製法の開発 東京農工大学
黒田裕
東京農工大学
三浦英靖
大腸菌は、増殖が速く培養が容易なため、組換えタンパク質の大量発現系の宿主に汎用されているが、複数SS結合を形成するタンパク質は、大腸菌ではほとんどの場合不溶性画分(封入体)に発現する。本計画では、SS結合を5個形成するGLucをモデルタンパク質に用いて、タンパク質を天然状態かつ可溶性画分から効率的に精製する技術の開発を進めた。本技術は、我々の現在までの研究で開発した溶解性向上タグ(SEPタグ)を、天然型SS結合の形成を促進させるプロ配列の酸化還元電位制御効果(Cell 1992)と組み合わせることに基づく。現在、人工設計したタグ(以下、酸化還元タグ)を用いることで、大腸菌から精製するGLucの収量を2倍にすることに成功しており、酸化還元タグの工学的応用の可能性を示したと考える。今後は、酸化還元タグを改良することで本技術の実用化を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、酸化還元電位制御タグを利用し天然型SS結合を持つモデルタンパク質の収量を倍加した簡便な技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、タグの一層の最適化と汎用性の証明などを通した実用化が望まれる。今後は、キット化により研究者へ、大量対応により生産者へ貢献できる技術として開発されることが期待される。
オレンジ由来フラボン高含有の“歯周病予防ケア製品”の開発 東京農工大学
宮浦千里
東京農工大学
三浦英靖
高齢化が進む今日、中高年齢者の健康には歯の健康維持が必須である。歯周病は歯を失う主因であり、わが国の歯周病罹患者は2,000万人を超え、その予防を家庭で手軽にできるオーラルケア製品が求められている。新規のオレンジ由来フラボン画分(ODF)は破骨細胞の分化を抑制して歯槽骨の破壊を阻止する。歯周病予防ケア製品の開発を目指し、本課題では、ODF高含有基剤を試作して歯周病モデル動物における歯槽骨効能を評価し、歯周病予防効果を発揮することを明らかにした。さらに、ODF高含有の歯周病予防ケア製品の製品化に向けて、ODF配合の溶解・分散・安定性試験を実施して配合条件を最適化することに成功した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、オレンジ由来のフラボン化合物(ODF)が歯槽骨の破壊と骨芽細胞におけるプロスタグランジンの産生を抑制することを明らかにすると共に、基剤や製品化された際の剤形を想定した最適化条件を見出しODFの有用性を具体的に立証したことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、ODFの分子実体を明らかにし、作用の用量依存性や長期安定性と確認するなどでの実用化が望まれる。今後は、既成医薬品(医薬部外品)に対する優位点の明確化と、特許出願を踏まえた研究論文の投稿が期待される。
重度視覚障害者も独力で点字教材の触読図の作成が可能となるユニバーサルのデザインの作図ソフトウェアの開発 独立行政法人大学入試センター
藤芳衛
株式会社キャンパスクリエイト
堺奈都
大学入試センターは、グラフィックプロッタ制御コマンド方式の作図言語の採用により、世界で初めて重度視覚障害の職員もコンピュータを活用して独力でグラフや模式図等、手で触察して把握する触読図の作図ソフトウェアを開発した。また、この作図言語を媒介としてCUIとGUIとが相互に連動することに着目し、CUIとGUIのユーザインタフェースを備えたユニバーサルデザインの点字教材触読図作図ソフトウェアを開発した。
本技術を民間移転し、点字教材の質の向上に資すると共に、重度視覚障害と晴眼の職員が相互協力して作図作業が可能な共生的職場環境の構築と重度視覚障害職員の就労機会の拡大に寄与するため、開発を行った。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特にグラフィックプロッタ制御コマンド方式の作図言語の採用により、重度視覚障害の職員もコンピュータを活用して独力でグラフや模式図等、手で触察して把握する触読図の作図ソフトウェアに関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、製品化には技術力の高いソフトウェア開発企業の協力が必須であると考えられ、早急に協力企業を選定することによる実用化が期待される。今後は、学術論文、学会発表等が実施されていない点を踏まえ、専門家の論評、意見を聴く機会を得られることが望まれる。
高性能微量薬液注入装置の開発 日本医科大学
浅野健
目標:今日の医療では、微量の薬液を持続的かつ高精度に注入する必要性が高まっている。我々は、平成23年度第1回A-step(AS231Z02787F)の経験を生かし、「流量の精度が高く、送液量が安定化するまでの時間が短い、微量持続薬液注入装置」の開発を試みた。達成度:駆動部の構造、送液方式、閉塞・過負荷検出法を変更することにより目標が達成され、1マイクロリットル/時から200ミリリットル/時まで注入可能なシリンジポンプが開発できた。今後の展開:市販のシリンジは微量注入シリンジポンプには適さないことが判明したので、新規のシリンジを開発する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、市販ディスポジリンジを用いて、送液安定化時間が10μL/hで送液時1分以内、流量変動が2%位内の微量持続薬液注入装置を開発するもので、そのためにディスポシリンジの改良と送液の安定化技術を検討しており達成している。延長チューブやシリンジポンプの剛性改善等、今後の課題を明確にしていることについては評価できる。一方、「シーズ顕在化」への移行申請を期待しているが、具体的かつ的確に今後の研究計画は明記していない。内容的には連携企業で実施できると伺われ、大学の役割を明確にする必要があると思われる。今後は、本開発によって社会還元へと導く研究成果の発信や特許出願がされることが望まれる。
組織工学的人工歯根創製におけるヒト歯根象牙質と同硬度の象牙質再生の探索 日本大学
本田雅規
この課題では、ヒト歯根象牙質の硬さを持つ象牙質を再生することを試みることを目標とした。
はじめに、ヒト歯根象牙質と同じ硬さの象牙質を誘導できる担体を予定通りに開発し、作製した。共同研究者であるジーシー社の独自技術で成型したブロック状PLGAは従来の手法によるスポンジ状PLGAより圧縮強さが高いので、気孔率を90%に上げても形状を維持できることに成功した。そこで、従来作製できなかった気孔率90%のブロック状担体に、顆粒の大きさと、焼結、非焼結など、数種類のハイドロキシアパタイトをPLGAに混合させて、新規担体を作製し、歯髄細胞を播種して移植を行った。移植16週後に担体を取り出して、μCTおよび組織学的に、再生組織を評価すると、天然の象牙質に近い硬さを持つ象牙質が再生できた。このことから、達成度は90%と考えている。100%になっていないのは、天然の象牙質と同じ硬さではないことからである。今後は、今回再生した象牙質の周囲に、確実に歯周組織を再生させるための担体を開発する予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、象牙質と同じ硬さを持つ象牙質誘導のある担体の開発が目的とされており、未焼結ハイドロキシアパタイト(HA)+焼結HA配合PLGAを開発し、生体内で石灰化誘導能があることを明らかにしたことは評価される。一方、技術移転の観点からは、本研究成果を基に歯周組織再生へ発展させる道程は、インプラント治療が世界の主流となっている現状で、歯根膜を有した人工歯根の開発は、QOL向上に大きく貢献できると期待され、実用化が望まれる。今後は、形成された石灰化物が骨とは異なり象牙質の成分を含むか否か、またその構造についての解析、そしてこの石灰化物がマウス由来ではなく移植細胞によるものかどうかについても検討されることが期待される。
新規合成トリプトファン誘導体の効果的骨芽細胞分化促進条件の同定と作用機構の解明 日本大学
三上剛和
日本大学
渡辺麻裕
本研究では、新規合成トリプトファン誘導体の骨粗鬆症治療への応用を目指し、その効果的作用条件の同定と作用機構の解明を目標とした。研究の結果、当該化合物の骨芽細胞分化促進効果は10−11Mの低濃度でも認められ、そのピークは10−9〜10−10Mであることが明らかになった。さらに、これらの化合物は、骨芽細胞の最終分化と石灰化を亢進するものの、未分化な細胞の骨芽細胞へのコミットメントに対しては抑制的に働くことが明らかになった。また、その作用機序においては、転写因子Osterixが重要な役割を担うことが強く示唆された。これらの結果は、当初の目標を概ね満たすものと思われる。今後の展開として、他の骨芽細胞分化誘導因子(カルシウム剤、ホルモン製剤等)との相乗効果について検討すると共に、臨床応用においては、in vivoのデータが必要不可欠であることから、マウス、ラット等の実験動物に対する作用効果についても検討する予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に新規合成トリプトファン誘導体の骨芽細胞分化促進作用に必要な濃度ならびに作用機序としてOsterixの関与が示されたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、SSH-BMIの作動濃度や時間に関する試験やOsterixのノックダウン細胞などでの検証試験などについても十分な検討が必要である。また、in vivoでの検討が望まれる。今後は、適切な骨粗鬆症モデル動物を用いたin vivoでの評価試験を進めることが期待される。
微生物利用の新展開:皮膚のバリア機能の改善効果を有する化粧品素材ならびに医薬母核などの探索研究 北里大学
高橋洋子
北里大学
鈴木賢一
放線菌1,162株を生産培地で培養し、その培養液抽出物(以下、抽出物)を用いて、皮膚疾患の改善効果を有する化粧品素材を探索した。即ち、ヒトケラチノサイトのインボルクリン産生促進効果を指標に約500株の抽出物について検討し、5抽出物を選択した。現在、約600株の抽出物を検討している。5株の抽出物の効果の再現性と濃度依存性試験を実施した。その結果、植物の根より分離された放線菌2株の抽出物まで絞り込めた。これら培養液抽出物は細胞障害性も低く、無添加群と比較して有意なインボルクリン産生促進効果を示した。目標としたインボルクリン産生促進効果を示す微生物培養物を得ることができた。今後、特許を申請すると共に化粧品素材としての評価を検討する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、 数多くの微生物培養液のスクリーニングで、皮膚のバリア機能改善効果を有する抽出物を得た技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、 化粧品素材としてのニーズはあるかもしれないが、既存品との差別化を明確にすることが必要で、活性成分の同定、ヒト試験に向けた安全性の確認など基礎研究をさらに実施することで、実用化が望まれる。今後は、特許出願前にある程度成分を特定することが必要で、地道にデータを積み重ねていくことが期待される。
次世代型植物活性化剤および抵抗性誘導剤のハイスループット探索法の付加価値創造 横浜国立大学
平塚和之
横浜国立大学
西川羚二
次世代型植物活性化剤および抵抗性誘導剤のハイスループット探索法による新規有用物質等の探索と特徴付けによる付加価値創造を実施した。抵抗性誘導剤については、新規な非SAR系防御応答遺伝子誘導化合物を見出すことができたが、これは既報のサリチル酸系の抵抗性誘導剤とは作用機序が異なり、温室やハウスなどの施設栽培で問題となる病原菌や、害虫に対しても効果が期待できる全く新しい抵抗性誘導剤候補である。既に実験室レベルでのモデル植物に対する効果は検証できており、今後は企業等と連携し技術移転の中核を担う技術として展開していきたい。一方で、植物活性化剤については、新たな候補化合物を数種単離することができたが、実用植物への効果検証に課題が残った。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、抵抗誘導性について新たな候補化合物を取得した通り、スクリーニングおよび評価受託などで有用なハイスループット探索法であることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、実験植物での結果が実用化植物での結果に繋がらない原因を早期に明確にするなどでの実用化が望まれる。今後は、実験植物から実用化植物への研究が一連の流れとなるようにアッセイ系を工夫すると共に複数企業との連携を前提に知財面の強化も期待される。
神経細胞の配向制御によるOn chipネットワーク形成技術の開発 慶應義塾大学
宮田昌悟
慶應義塾大学
伊藤道雄
神経疾患治療薬スクリーニングのためのOn Chip型神経回路の開発を最終目標とし、本研究では神経細胞パターニング技術と軸索伸展方向の制御技術の確立を目的とした。成果としては、誘電泳動を用いた神経細胞の電極基板上へのパターニング技術を確立し、さらに、軸索伸展方向を制御するために神経成長因子(NGF)の流動機構を構築することで、パターニングされた神経細胞集団の一部において軸索伸展方向を制御することに成功した。今後は細胞集積密度を向上し、加えて基板への細胞接着因子のコーティングを行うことで、連続的に軸索ネットワークが接続された神経細胞回路の作製および活動電位の観測系の開発を行う計画である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも神経細胞のマイクロアッセンブリ技術については評価できる。一方、神経疾患由来のiPS細胞由来神経細胞でのOn−Chipネットワーク形成技術を確立する必要がある。しかし、同技術を確立させるためには、多くの検討課題が存在する。今後の改善点としては、例えば、チップ基板を上方から観察した場合、縦軸方向において複数列の細胞配列アッセンブリを実施したのち、横軸方向へ静水圧および軸索伸長因子の濃度勾配等を利用し、軸索伸長を促すことなど、基板上の微細構造を再考したうえで、新規技術を探索する必要があると思われる。ディバイス開発企業との連携も重要なので企業連携先の選定精査を今のうちに行うべきと思われる。
インフルエンザウイルスの新規検出法を目指したペプチド/オリゴ糖鎖の開発 慶應義塾大学
佐藤智典
慶應義塾大学
伊藤道雄
インフルエンザウイルス(IFV)の検出手法の開発を目指して、IFVのヘマグルチニン(HA)との結合性を有するペプチドやオリゴ糖を用いた固体表面の固定化方法を開発して、その認識機能を評価した。まず、ペプチド提示ファージライブラリーを作製して、HAに結合するペプチド配列の探索を行い、新たなHA結合性ペプチドを獲得した。HA結合性ペプチド修飾脂質を固体表面に固定化することで、HAとの高い親和性が見いだされた。また、糖鎖プライマー法により、HA結合性を有するアジド化オリゴ糖を作製した。得られたオリゴ糖を固体表面に固定化して、HAとの特異的な相互作用を検出した。これにより、ファージディスプレイ法で得られたHA結合性ペプチドや糖鎖プライマー法により得られたオリゴ糖がIFVを検出するための認識素子として有用であることが示された。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ペプチドや糖鎖を用いてウイルスの検出系を構築するという本研究は斬新で評価できる。一方、インフルエンザウイルスの場合、イムノクロマト法を用いた簡便かつ迅速な診断キットが臨床現場で汎用されているため、より高感度の測定系を構築することが必要と思われる。今後は、臨床的に重要でありながら、ウイルス量を簡便に測定出来ないウイルス感染症はまだまだ多くある。研究対象とするウイルスをうまく選択することにより、本研究成果が社会還元しやすくなることが望まれる。
酪酸菌MIYAIRI 588を用いた純国産メタボリックシンドローム予防薬の開発 東海大学
渡辺哲
本研究では、研究者らの見いだしたNrf2活性化作用を有するプロバイオティクスMIYIRI 588の、メタボリックシンドローム(MetS)の予防薬としての有用性を検討した。高脂肪食マウスモデルでの検討では、当初の目標であった、肥満抑制、糖代謝改善効果はみられなかったが、肝臓への脂肪沈着は著明に抑制された。脂肪肝はMetS進展の危険因子であり、15〜20%の人は脂肪肝炎に、さらに肝硬変へと進行するが、現在これを予防する薬はない。本研究で明らかとなったMIYIRI 588の肝への脂肪沈着抑制効果は、肥満抑制や糖代謝異常改善とは関係なくみられることより、これはMIYIRI 588に整腸剤以外のさらなる付加価値を与えるものである。今後は、食事療法との組合せで、MetS予防薬としての価値をより高める予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。MIYARI588は、長年、整腸剤として使用されている点から副作用の心配が比較的少ないと思われる。また、MIYARI588投与が高脂肪食によるIL-1αの増加を抑制する現象は興味ある成果である。一方、技術移転の観点からは、ビフィズス菌などのような他の乳酸菌とその有効性においてどのように差別化できるのか、MIYARI588によるNrf2の活性化と生物応答性の機序を明らかにするなど実用化に向けた継続研究が必要である。遺伝改変マウスを用いてMIYARI588の効果を検証する際は、実験系を単純化し結果を解析しやすいように工夫する必要がある。今後は、腸内細菌と疾患、特に炎症性疾患を含め免疫との関連性を考慮した研究推進が望まれる。
CCL2タンパク質によるヒトiPS細胞の安定培養および効率的分化誘導 独立行政法人理化学研究所
長谷川由紀
独立行政法人理化学研究所
井門孝治
マウスにおいてフィーダー細胞なしの状態で、CCL2タンパク質がiPS細胞/ES細胞の未分可能を維持しながら安定して培養させることを見いだした。ヒトiPS/ES細胞においては、フィーダー細胞なしでの培養が困難であるが、CCL2タンパク質をFGF-の培養液中に添加することでフィーダー細胞がなくても安定した未分化能を維持することを確認してきている。遺伝子発現変動をみてみるとヒトiPS/ES細胞の特徴でもあるエピブラスト様幹細胞からより未分化能が高くマウスiPS/ES細胞様のブラストシスト様幹細胞に変化していることが確認されていることから、CCL2添加により、マウスのようにより安定した培養、増殖が可能になるだけでなく、より効率よく安全に分化誘導が可能になると期待される。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、当初目標である3胚葉それぞれへの分化誘導は確認できず、自発的分化を行い、その分化効率を評価するにとどまった。CCL2の使用にでfeeder freeの培養が可能になったことや、より未分化な細胞への変換は注目すべき成果で評価できる。一方、興味深い成果はあるが、目標までの道筋は平坦ではないが、さらなる知見があれば共同研究開発ステップにつながる可能性はある。3胚葉への分化誘導の具体的方策の技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、外胚葉への分化のみでも良いので分化誘導法を確立することが望まれる。
シナモンの糖尿病改善効果の抗糖尿病サプリメント開発への応用 日本大学
細野崇
日本大学
渡辺麻裕
本研究では、2型糖尿病に対するシナモンの効果を明らかにし、有効成分を同定することを目的に研究を行った。2型糖尿モデル動物にシナモン熱水抽出物(CE)を与えると、経口糖負荷試験での血糖値上昇を抑制した。脂肪細胞と筋管細胞を用いた検討の結果、CEの細胞内糖取り込み促進作用の作用点に違いがあることが明らかとなった。さらにシンナムアルデヒドと桂皮アルコールに同様の作用があることを見出した。しかしながら本研究期間中ではシナモン熱水抽出物中のすべての糖取り込み促進物質を同定するには至らなかった。今後は、未同定の活性成分の同定を進めること、2型糖尿病発症後の動物モデルにシナモン熱水抽出物やその活性成分を投与し、糖尿病を改善することができるか検討する予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも従来の1型糖尿病モデルに加えて、2型糖尿病モデルでも食後高血糖を予防する効果が認められ、その作用機構としてはAMPKの活性化を介したものであることを明らかにした点は評価できる。一方、シナモン熱水抽出物の関与成分の早期の同定が必要である。また、2型糖尿病発症後の投与で有効かどうかの検討が必要がある。食品・サプリメントなどとして製品化することも視野に入れた研究計画が必要と思われる。今後は、シナモン熱水抽出物の関与成分の同定がなされることを期待する。
線維芽細胞成長因子アンカーリング型骨形成促進材料の実用化研究 北里大学
内田健太郎
北里大学
佐藤修
塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)とコラゲナーゼ由来のPKDドメイン(リンカー部)、コラーゲン結合ドメイン(アンカー部)からなる融合タンパク(CB-bFGF)を高密度コラーゲン材料にアンカーした新規材料の難治性骨折、広範囲骨欠損動物モデルに対する有用性を検討した。高齢者患者を模擬したげっ歯類骨折モデルにおいて、従来法の1/10量での骨形成促進を実現した。また、広範囲骨欠損モデルに対し、CB-bFGFをコラーゲンシートにアンカーリングした移植材料は高い骨形成能を示した。病態モデルでの効果実証と使用する融合タンパクの低用量化により技術移転を達成した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に低用量で有効な材料開発に成功しており、目標は達成されている。しっかりした動物実験が行われており、成果の信頼性は高い。特許の出願はまだであるが、国際特許出願の準備は着実に進められている。大型動物での実験のプランもあり、今後の課題も認識されている。目標の用量低減をしっかり達成した技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、企業との連携も進んでおり、実用化に向けた計画が立てられている。新しい医療材料として承認申に向けた検討や、コストや滅菌法など企業ニーズに合わせた研究開発をすすめ、実用化が望まれる。今後は、国際特許出願を早期に行うとともに、大型動物実験など実用化に向けた次の段階に研究を着実に進められることが期待される。
高精度レーザ焼結による骨梁構造を有するバイオインプラント製造技術 新潟大学
新田勇
新潟大学
嶽岡悦雄
レーザ積層造形は、テーラーメイドの金属インプラント作製技術として有望である。過去に、骨梁構造を模擬したサブミリの空洞形状を持つチタン粉末積層造形を試みたが、形状精度を満たすためにはレーザパワーを抑えなければならず、積層造形物の機械的強度は低い結果となった。本研究では、レーザ積層造形後に真空加熱を加えることで、機械的強度を人骨と同程度に増加させることを目的とした。圧縮強度は目標である150MPaを上回ることができた。骨のヤング率10-30GPaの目標に対して、今回の積層造形物のものは3GPaにとどまった。今後は、原料粉末の粒径分布を見直してヤング率の改善に取り組むと共に、骨との親和性を向上させるためにハイドロキシアパタイトで表面を被覆する技術開発を行う。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ヤング率については目標値に達していないが、インプラントの圧縮強度は当初目標の150MPaを大きく上回る250MPaに耐える積層造形物の作製ができたは評価できる。一方、技術移転の観点からは、現行技術ではこれ以上のヤング率の改善が見込めないことから、骨より多少ヤング率の低いインプラント材料の開発に方向転換するという現実的な方向性が示された。生体適合性の高いインプラントの構成技術を開発し、骨の補強やその一部を置き換えることなどを目指した本研究の成果により実用化が望まれる。今後は、先行している同様な技術との長所や相違点を明確化し、一つひとつの課題を克服し、前進させることが期待される。
歯周病予防向けデンプン系増殖阻害成分の生産技術の開発 新潟大学
石山洋平
新潟大学
川崎一正
申請者は、これまでに可溶性デンプンを含む微生物培地に糖化酵素を作用させることによって、歯周病菌Porphyromonas gingivalisの増殖を阻害する成分が生成することを明らかにした。そこで本申請課題では、デンプンを利用した高活性な増殖阻害成分の効率的な生産方法を確立することを目的として研究を行った。その結果、小麦デンプンをα-アミラーゼによって処理することで、高活性な増殖阻害成分が生成することを明らかにした。また、増殖阻害成分を精製した結果、当該成分は分子量100 kDa以上の画分に存在し、従来の膜分離技術を利用した分離・濃縮が可能であることが示唆された。これらの成果に基づいて、歯周病予防素材の実用化を目指していく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、新規特許出願は行われていないが、高活性な歯周病菌増殖阻害成分を生産できることを明らかにした。応用に足りる歯周病菌の増殖阻害成分の生産条件を見つけた点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、歯周病予防は高齢化社会において大きな問題であり、社会的な期待も大きい。よって本研究課題の成果の応用は、社会的に重要な課題となりえる。大体でもよいので、活性物質の分子量と構造決定することで実用化が望まれる。今後は、いち早く特許出願を行い、活性物質の応用に取り組むことが期待される。
扁平上皮癌の高精度バイオマーカー実用化に向けた診断キットの製作 新潟大学
永田昌毅
新潟大学
松原幸夫
【目標】 扁平上皮癌の高悪性度バイオマーカー実用化の基盤となる、診断キットの製作
【達成度】 至適条件のITGA3、ITGB4、JUP、CD9のプライマー・プローブの設計と試験反応を実施し、プライマーダイマーやゲノムDNAによる非特異反応が最少で、広い濃度範囲で定量性、特異性、検出感度の全てが最良のプライマー+プローブセットを選定した。 さらに、検出配列を含むプラスミドDNAの既知濃度段階希釈で、コピー数回帰式の作成と定量性を検定し、4遺伝子の検出キットを完成した。
【今後の展開】 インテグリンバイオマーカー診断キットは扁平上皮癌の再発や遠隔転移に関わる生物学的悪性度を検出するので、個別化医療による生存率とQOL向上が期待できる。この診断キットを用い2014年から全国規模の多施設共同研究を実施する。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、高悪性度バイオマーカー検出試薬キットの試作を行い、臨床検体での評価に使用できることが示唆された点については評価できる。一方、高悪性度バイオマーカー検出試薬キットの試作については達成されたが、その有効性の評価は未実施であるため、十分に目標が達成されてとは言えない。口腔扁平上皮癌のcDNA検体300例を用いての本検出試薬キットの有効性の評価を速やかに実施し、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、診断キットとしての開発を考えるのであれば、実用化を見据えて、企業との共同開発や特許のライセンスアウト等により積極的に取り組んでいくことが望まれる。
免疫賦活作用を示す高付加価値機能性オリゴ糖ニゲロースの大量生産技術の開発 新潟大学
仁平高則
新潟大学
星野鉄哉
本申請課題では、申請者らが2012年に世界で初めて発見した新規酵素ニゲロースホスホリラーゼが有する厳密な反応特異性を利用して、免疫賦活作用や抗う蝕作用などヒトに有益な生理活性を有する高付加価値機能性オリゴ糖ニゲロースを、安価な天然糖質から効率的に大量製造する技術開発を目標とした。一部システムにおいて反応の最適化が未完であるが、現段階においても麦芽糖、ショ糖、澱粉から高収率でニゲロースを生産できた。これにより、食品・医薬品分野に高純度の機能性オリゴ糖ニゲロースを安価に安定提供可能とした。今後、酵素および糖アクセプターの種類を変更することにより、他のオリゴ糖合成法として応用・展開も検討している。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、新規酵素ニゲロースホスホリラーゼを用いて、マルトースやスクロースからニゲロースを生産する可能性を明らかにしたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、酵素の安定化を含め反応系の効率を上げ、デンプンからのマルトース生産と組合せた形での実用化が望まれる。今後は、ヘテロオリゴ糖であるニゲロース誘導体の生産についても検討されることが期待される。
インジェクタブル多血小板血漿(PRP)調製システムの開発 新潟大学
川瀬知之
新潟大学
小浦方格
美容整形で社会問題化しているPRP注入療法による「青あざ」が、調製者の未熟な技術による赤血球の混入であることから、従来の遠心分離法にたよらないフィルターによる調製法の開発をめざした。しかし、赤血球と血小板の一体化が予想以上に強力であったことから、フィルターによる分離で最適な条件を見つけるには至らなかった。そこで、代替法として、従来の遠心分離でBuffy coatを分画化するステップを見直し、血小板を血漿分画全体に濃縮することとした。この分画から赤血球分画と接しない部分(上部90%)を再度遠心することで赤血球の混入しないPRPを容易に調製できた。初期の目標とは異なるものの、これは調製者の技術的熟達度に影響されない方法であり、「青あざ」発生の危険性を著しく低下させる効果が期待できる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、採血用のシリンジにフィルターを取り付けて簡便にPRPを調製する方法が実現できていないが、代替法として遠心分離操作による方法を試み、不慣れな技術者にも実施可能な方法を提案している点については評価できる。一方、代替法として試みた遠心分離操作を最適化することを計画しているようだが、その内容が具体的かつ的確に検討されているとは言い難い。代替法として試みた遠心分離操作を最適化することによって技術移転を目指した産学共同等の研究開発ステップにつながる可能性はあり、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、赤血球除去フィルターの利用について見通しが得られていない現状に鑑みれば、代替法として試みた遠心分離操作を最適化されることが望まれる。
フタルイミド誘導体のモノアミン神経薬理作用;新規精神病薬の開発に向けて 新潟大学
那波宏之
新潟大学
長谷川佐知子
本開発課題は、モノアミン神経を細胞標的とするフタルイミド誘導体の分子作用機序を明らかにし、当該分子の新規抗精神病薬開発のシーズを獲得するものである。統合失調症は、生涯罹患率が1%近くに及び、本人・家族・社会への負担は計り知れない。しかし治療薬の選択肢は少なくドーパミン受容体の拮抗分子がほとんどを占める。これまでに申請者は、サリドマイドを初めとするフタルイミド誘導体に、統合失調症関連の認知行動異常を改善する活性を見出した(特許申請済)。また東京工業大学との共同で、その受容体であるセレブロンが橋セロトニン神経に発現し、その標的細胞がセロトニン神経やノルアドレナリン神経である可能性を見出した。本課題はその作用薬理メカニズムを明らかにすることで、主作用と副作用の弁別を諮り、副作用の少ない新規抗精神病薬の開発可能性を探索するものである。
なお、本開発課題の計画実施中に、当該特許申請は承認され、特許として登録された。
特許第5339588号;サリドマイドまたはその誘導体を有効成分とする統合失調症の治療薬
発明者;那波宏之  登録日;平成25年8月16
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に今回の薬剤の標的がセロトニン神経系であることを示唆するデータを得ており評価できる。一方、技術移転の観点からは、すでに製薬会社とのライセンシングと共同研究を模索しているとのことで、今後の計画は具体的である。今後は、既存の薬物、および既存の薬物を複数処方した場合に比べて、どのような利点があるか整理し、実用を見据えて研究を継続することが望まれる。また、対象となる疾病が統合失調症のみであるかについても、(より広く適応できる可能性もあり)検討を加えることが望まれる。
クロトグラフの波形を利用した嚥下機能の新たな評価ツールの開発 新潟大学
井上誠
新潟大学
尾田雅文
本研究では、簡易的な嚥下運動の同定とその病態把握を目的として、本来音声解析のために用いられてきたグロトグラフを用いて、嚥下運動の評価法確立のためのデータ構築を図ることを目的とした。嚥下運動の同定に広く用いられている筋電図とグロトグラフの同時記録によって、同手法による嚥下運動の同定のみならず、嚥下反射成分と合致するピークをもつことが健常若年者データから得られた。解析方法についての高い信頼性が得られたことから、被験者を高齢者、嚥下障害者に広げてさらなる記録構築を目指す。将来的に臨床応用化するために必要な項目として考えられる装置の簡素化や嚥下記録の波形解析ソフトウェア開発などを模索する予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、筋電図のデータ解析を通して、嚥下運動発現の測定を行い、データの取得を行っており、成果は十分だが、目標達成はやや不十分である。グロトグラフの検査機器応用を目標に、嚥下反応における筋電位の測定とデータ解析を行い、十分な知見と経験を蓄積している点については評価できる。一方、社会的に要請された技術であり、今後の産学共同開発により技術の具体化が望まれる。高齢者のQOLを確保する上で大変重要な技術であり、臨床検査機器に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、特許化を進める過程で、共同研究企業等による技術の実装化がされることが望まれる
病原菌と結合するオリゴ糖結合ビーズの研究基材および生活用品への利用 新潟薬科大学
鰺坂勝美
公益財団法人にいがた産業創造機構
田辺寛
本研究課題では、病原菌やウイルスが結合する性質を有するマンノオリゴ糖やヤギミルクオリゴ糖をビーズに結合し、そのビーズをカラムに詰める等して、病原菌を捕捉することを特徴とする生活用品あるいは研究基材の開発が目的である。そのためには、オリゴ糖の還元末端の糖の環状構造を保持したままビーズに結合する方法の開発が課題であった。本研究においては、マンノオリゴ糖とヤギミルクオリゴ糖を3段階の簡単な反応でビーズに結合することに成功した。これまでにマンノオリゴ糖を結合したビーズおよびヤギミルクオリゴ糖を結合したビーズの調製までは終了しているが、そのビーズと微生物との結合実験には至っていない。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、オリゴ糖鎖の還元末端の化学構造を破壊することなく、環構造を保持したまま適当な担体に固定する新しい化学を実現した。オリゴ糖を固定した担体が安価にかつ大量に調製できる可能性がある技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、 オリゴ糖固定化樹脂の用途が見つかれば十分社会還元して役立つと思われるノデ、応用例を具体的に示すことで実用化が望まれる。今後は、病原菌との結合試験について、他の施設に依頼するか、企業との共同研究で実施されることが期待される。
多チャンネル脈圧波分布計測システムによる非観血・連続血圧評価 長岡技術科学大学
野村収作
MEMS-ECMによる多チャンネル脈圧分布計測システムを作成した。半導体技術により作成された超小型(3×4mm)のエレクトレット型マイクロフォンであるMEMS-ECMは、実際には可聴音のみならず超低周波域の音波(空気振動)に対しても十分な感度を持つ。このMEMS-ECMと皮膚との間に閉空間(クローズドキャビティ)を形成することで、心臓の拍動に由来し全身の血管を伝播する脈圧波を計測出来る。本課題では同デバイスのスケールメリットを活かし、高時空間分解能を有する多チャンネル型(32ch)脈圧分布計測システムを作成した。同システムにより人体を5m/s以上の速度で伝播する脈圧波の時空間イメージを捉えることが可能となった。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも超小型マイクロフォンのMEMS-ECMを用いた多チャンネル脈圧波分布計測システム技術については評価できる。一方、センサー精度を向上するための技術的課題(皮膚との隙間、材質、接触形状等)を提示しているが、それの具体的対策や、血圧を安定的に精度良く計測する手法の開発に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、校正の方法や、頻度などについての研究も進められることが望まれる。
がん遺伝子Ect2からのシグナルの特異的遮断による新世代抗がん剤の開発 長岡技術科学大学
三木徹
長岡技術科学大学
品田正人
本研究の目的はEct2からの各シグナルを個別に阻害できる薬剤のアッセイ系を構築し、細胞のがん化シグナルのみを特異的に遮断する薬剤を見いだすことである。まずEct2とPar6の結合を詳しく解析した。またEct2を介する新しいシグナルとして、Ect2とc-Mycの相互作用を見出した。更にEct2の主要機能である細胞質分裂に影響を与える薬剤のスクリーニング法を確立した。これらのアッセイ系はまだ最適化する必要があるが、Ect2を介する新しいシグナルの発見という点では予想外の進展が得られたので、達成度は9割程度と評価している。今後の展開として、Ect2とc-Mycの結合の詳しい解析とEct2/Par6結合遮断系の改良を考えている。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、Ect2シグナルに関与する分子が新たに見いだされ、Ect2シグナル阻害に関する試験管内での化合物評価方法2種類と、ヒト培養細胞を用いた評価方法1種類、酵母を用いた評価方法1種類と確立しつつあることについては評価できる。一方、新しいコンセプトによる癌治療法の確立を目指しているので、さらに大規模スクリーニングに対応できるように、評価系のスモールスケール化、スループットの向上、評価に使用するバイオマテリアルの品質管理・大量調整などにに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、Ect2に結合能を有する化合物群と確立した化合物評価系を用いて、化合物の優劣および化合物評価系の実効性を示し、優れた化合物を用いて、Ectシグナルを標的とした癌治療のPOC確立されることが望まれる。
完全非侵襲血管内血流速度分布測定装置による血液粘性率センシング法の開発 富山高等専門学校
秋口俊輔
富山高等専門学校
古河秀一郎
目標:血液の流動状態を定量的に評価可能な血液粘性率の測定は、病状の早期発見や健康状態を測る指標となりえることから、非侵襲で、迅速かつ正確な血液粘性率の測定法の開発が求められている。そこで本研究では血液の粘性率を完全非侵襲で生体計測可能な装置の開発を目指す。達成度:線計測LDVを用いた非侵襲生体計測及び新規面計測μ-MLDV装置を開発した。新規面計測μ-MLDV装置の問題点解決に注力し、モデル動物を用いた血液粘性計測実験については行わなかったため、達成度は70%程度である。今後の展開:面計測μ-MLDV及びシミュレーション実験での課題を解決でき次第、動物実験に移行し、完全非侵襲での血液粘度計測装置の完成及び製品化を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の目標が概ね達成され、特許出願が行われた。 モデル動物実験を用いた血液粘性計測実験を行う課題が残るが、新しい計測手法が有する有用性を実験等を通じて示したことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、計測装置の小型化が今後の研究開発計画について具体的に検討されている。疾病の早期発見や抗血小板薬の要領決定等に活用が見込まれるので、計測手法の精度の向上を図り、実用化が望まれる。今後は、他の研究機関や企業と連携し、実用化できる装置の完成を目指すことが期待される。
血管モデル推定による微小血管縫合のための刺入感覚フィードバックインターフェースの開発 富山大学
笹木亮
本研究では、顕微鏡下で行う手術マニピュレータを用いた微細な縫合動作の精度向上のため、施術者に体組織や血管に触れた際の微細な感覚をフィードバックできるシステムの開発を行った。開発したシステムはマニピュレータの駆動部に液圧駆動型関節を用い、この液圧の変動を測定することで、極めて微小な刺す際の貫通力や接触時の抵抗を検知できた。現在、脳血管の部分縫合では一般的にφ1mm以上の血管縫合が限界とされるが、このφ1mmの模擬血管に対し、φ0.1mmの微細縫合針を用いて刺入実験を行った結果、針が血管に接触した際や、貫通した際の抵抗力を高精度に検知することができた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、微細な血管の縫合を行うための力覚フィードバックの装着を可能とする液圧駆動型関節の可能性が見出されたことは評価できる。また、新たな特許の出願がなされている。一方、技術移転の観点からは、まず臨床の担当者と技術内容の検討を行うことが望まれる。今後は、医師にによる評価を早急に実施し、安全に配慮した問題点を考慮して、実用化に進むことが期待される。
国産ブランド豚の資源保全および増産技術としての新規精子凍結保存法の開発 富山大学
西園啓文
富山大学
平川龍夫
国産ブランド豚の安定的な資源保存のための新規精子凍結保存方法開発の第一歩として、特別な試薬や機器などを用いず、凍結融解後の精子運動性が50%以上、精子形態異常率が30%以下、精子前核形成能80%以上を達成できるような方法の研究開発を実施した。凍結保護剤、緩衝液等の組み合わせ検討を行った結果、一般的な試薬と器具だけを用い、ブタ精子を良好な前進運動性を保ったまま1時間未満で凍結保存することが可能となった。凍結融解後の精子運動性は35%程度と、これまでよりも向上したものの、精子形態異常率および前核形成能とともに目標達成までにはさらなる検討が必要であり、今後は畜産現場でも実施できるようにキット化を視野に入れながら研究開発を継続する予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、精子頭部の保護などに多くの課題が残されているものの、卵黄代替の安価で簡便な溶液を開発したことについては評価できる。一方、豚の精子の凍結技術にブレークスルーを得るためには、受精能を獲得するための保護物質の探索や融解後の処理方法の開発など、生物学的な観点からの技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、凍結融解後の運動性や生存性が必ずしも受精能を反映していないので、精子性状と受精能を両立させる新規性の高い物質の探索や処理方法を考案されることが望まれる。
低栄養環境下でも作用する新しい膵臓がん治療薬の開発研究<担癌マウスでのin vivo評価> 富山大学
加藤敦
富山大学
平川龍夫
本研究では、膵臓がん細胞に対して低栄養状態時選択的に増殖抑制効果を示す実用的な化合物の創製を目標とした。最終的にデザインした化合物5は、溶解性・安定性にも優れ、リード化合物と比べ100倍以上、強い増殖抑制効果を示した。また、本化合物の処理によりG0/G1期細胞の増加と、顕著なS期の細胞数の減少が認められた。更に化合物5は特異的にミトコンドリアに集積し局在していることが明らかとなり、主にミトコンドリア電子伝達系の呼吸酵素を阻害してATP産生を阻害し、AMP活性化プロテインキナーゼ (AMPK)活性化を介した哺乳類ラパマイシン標的蛋白質複合体-1(mTORC1)の阻害により、がん細胞の増殖を抑制していると考えられた。本研究の成果により、現在、製薬企業と共同でゼノグラフト膵臓がんモデルマウスに対する投与実験を開始している。今回得られた成果を基に産学連携の研究開発ステージにつなげることができている。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。当初の計画をほぼすべて行うことができて、有望な新規化合物の合成に成功したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、preliminaryな結果であったとしてもin vivoでの抗腫瘍効果についてのデータの提示が必要であり、本化合物による細胞増殖抑制効果のメカニズムの詳細についてもさらなる基礎的検討が必要である。また、早急に新規化合物に関する特許申請が望まれる。今後は、in vivoでの抗腫瘍効果の評価を行うとともに、その作用メカニズムの基礎的検討が望まれる。
薬物伝達治療の最適化を目指した低強度超音波発生装置の開発と性能評価 富山大学
近藤隆
富山大学
平川龍夫
パルス繰り返し周波数 (PRF)およびデューティ比(DF)が同一装置で可変できる超音波発生を開発するとともに、薬物や遺伝子導入等治療増強効果について調べ、その最適条件を検討することを目的とした。 両因子を同一機種で変化させることが可能な装置を依頼・作製した。超音波が放射線と同様にDNA二本鎖切断を誘発することを最近報告しており、今回はPRFを変えた超音波と放射線併用し、一定条件下で、細胞死の相乗的増強を認めた。一方で、細胞死の一様式であるアポトーシスについて増強作用は認められなかった。超音波はがん治療から骨折治療等の治療応用の期待が高く、今後は抗がん剤や遺伝子治療への利用可能性を検討したい。治療応用に向けては目的に即した最適な照射条件を探索することが重要と思われる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、 in vitroでの細胞死とアポトーシスへのパルス繰り返し周波数(PRF)の影響については放射線併用療法を組み合わせて、PRFのアポトーシスを含めた細胞死効果への影響についての知見を得たことについては評価できる。一方、機器に関しては仕様を指定して外注製作させたものであり、新規性はない。システマティックな実験により当初目標に謳われた内容を着実に達成することが必要である。本研究の重要な研究目標は超音波の作用機序解明と思われるが、研究目標に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、細胞死や遺伝子導入の効果的実施という本手法本来の目的に沿った超音波作用機序の解明されることが望まれる。
出血助長の副作用を回避した新規低分子化ペプチドの抗血小板薬開発研究 金沢大学
吉田栄人
マラリア媒介蚊の唾液より天然物としては最も高い血小板凝集阻害活性を有する新規タンパクAAPPを発見した(国際特許取得済)。本研究では、血栓形成による虚血性疾患に対する出血助長の副作用のない安全で有効性の高い抗血小板薬に向けて、AAPP構造を解明し、低分子化を行うことを目的とした。部分的な結晶化に成功し、コラーゲン結合部位の一部の構造決定に成功した。しかし、この部分は非常に奇異な高次構造をとっているためアミン酸の一次配列だけではコラーゲン結合部位として低分子化することは出来なかった。ヤブカにもホモログが存在しているので、そのアミノ酸配列の共通部位から予想される活性領域を絞り込み、低分子化を達成する計画である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。困難な課題にもかかわらず、かなり精力的に実験を実施していることについては評価できる。一方、血小板凝集阻害活性部位の同定と低分子化や低分子化AAPPの活性測定は未達であり、活性部位同定が難しく、新規特許出願までに至っていない。今後は、大型グラント申請や共同研究先の大塚製薬の強力支援などで、研究成果を積み上げることを期待したい。
日本の伝統的な発酵食品抽出物を用いた糖尿病合併症の予防・治療効果の検証 金沢大学
棟居聖一
金沢大学
奥田光一
最終糖化産物(AGE)は、細胞表面に存在するAGE受容体(RAGE)を介して細胞障害的に作用し糖尿病合併症の原因となる。本研究において、申請者は本研究室独自のAGE細胞評価系を用いて、様々なAGEを含む食品の生体への効果を検証してきた。この結果、AGEには細胞表面受容体にアゴニスティックに作用する「悪玉」とアンタゴニスティックに作用する「善玉」とがあり、特に日本古来の伝統的な発酵調味料でありAGEを多く含む醤油といしるから抽出した低分子成分が後者に属することを見出した。また、醤油の低分子画分をもちいた腹腔マクロファージのサイトカイン分泌活性については、醤油低分子はその活性を抑制することが示された。本実験ではいしるの成分を用いた生物活性については測定できなかった。また、糖尿病モデルマウスを用いた動物実験については実験が現在進行形であり結果が出るには至らなかった。今後は、本研究で明らかにしたサイトカイン分泌活性を抑制した醤油成分の実体を明らかにしたい。さらに、今回現在進行形のまま継続中の動物実験評価を行い、健康食品への応用および創薬の可能性について検討したい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。醤油といしるの低分子成分がAGEの細胞表面受容体にアンタゴニスティックに作用する「善玉」であることは、申請時にも記載しているが、本研究でも再度確認している点については評価できる。一方、動物実験で低分子成分が合併症予防に有効か否かのデータの積み上げが必要と思われる。今後は、AGEの細胞表面受容体にアンタゴニスティックに作用する「善玉」の低分子成分を単離同定していくことが望まれる。
癌の骨転移と軟部組織転移の同時診断・治療を可能とする放射性薬剤の開発 金沢大学
小川数馬
金沢大学
奥田光一
癌への輸送担体としてc(RGDfK)ペプチドを、骨への輸送担体として(Asp)n (n = 8, or 11)を、放射性ガリウムの配位子としてDOTAを同一分子内に有する化合物Ga-DOTA-(Asp)n-c(RGDfK) (n = 0, 8, or 11)を設計、合成し、in vitroにおけるハイドロキシアパタイトとの結合実験、in vivoにおけるU87MG担がんマウスにおける評価を行った。その結果、溶骨性、造骨性骨転移と原発巣に集積しうる放射性薬剤の開発に成功した。これは、申請時に考えていた内容とほぼ一致するものであり、本研究の目的を達成できたと言える。今後は、本研究内容を発展させ、診断のみならず、治療用放射性核種で標識した化合物を用いた治療実験を行い、動態データと治療効果との相関を調べることにより、診断と治療をカップリングした包括的診断治療法の開発を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に従来のRIと輸送担体(酸性アミノ酸ペプチド)に加えて腫瘍指向性を高めるためにRGDペプチドを付加した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、本複合体のヒト転移性骨腫瘍への応用における今後の計画の具体化が望まれる。マウス実験系では腎臓への排泄が問題であり、転移骨病巣への集積性は確認出来ていない。今後は骨腫瘍部位への集積を高める工夫、さらに次のステップでは臨床応用を目指してヒトの骨転移巣に本化合物を集積させる方法を確立する必要がある。今後は、最適核種、最適酸性アミノ酸ペプチド長を早急に決定して実用化に向けた研究計画を提示することが期待される。
非線維性VI型コラーゲンを含む生体吸収性ナノファイバーを用いた神経再生用ガイドチューブの開発 金沢大学
横山茂
金沢大学
奥田光一
I型コラーゲン(Sigma type 6)と生体吸収性人工ポリマーの混合溶液から、配向性をもたせたナノファイバーシートを作製し、別の生体吸収性人工ポリマーから作製したナノファイバーと組み合わせて、細胞培養液中での易融解性を抑制した。また、神経系培養細胞の生着性も確認した。さらに、このシートをシリコンチューブの中に詰め、神経再生用ガイドチューブの試作モデルとした。今後、このチューブを神経損傷動物モデルに装着し、再生誘導性を検定するとともに、企業との共同研究を継続して材質および性能を改善する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、本研究は、蛋白含有性ナノファイバーを作成する事が、主たるテーマであり、コラーゲン導入によるガイドチューブの新たな提案はは評価できる。一方、失敗の原因が明確にされていないので、今後の研究計画をみても、同様の失敗を繰り返すリスクが拭えない。神経の方向性を持った神経再生の技術は、臨床の場において要望の高い分野の一つであり、技術移転につながる研究の重要性は高い。今回の失敗原因を解明するために技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。
今後は、研究目標の社会貢献は計り知れないため、不成功に終わった原因究明が望まれる。
医薬品原料光学活性α-アミノ酸両鏡像体の簡便かつ安全合成法の開発 金沢大学
宇梶裕
金沢大学
寺本時靖
有用な生理活性を有する医薬品の合成原料として重要な光学活性α-アミノ酸の両鏡像体の簡便安全合成法確立を目的に、諸課題の克服を目指した。即ち、両鏡像体ともに安価で入手容易な酒石酸のアミド誘導体を不斉源として活用し、より安全安価なシアニド源のアセトンシアノヒドリンとニトロンとの不斉付加ルートにより、光学活性α-アミノニトリルの合成法を確立した。また、不斉源の減量化の可能性を示し、生成物の光学活性α-アミノ酸への変換ルートも見出し、目標の相当の部分を達成できた。しかし、後者のシアノ化生成物よりα-アミノ酸への変換の改善が新たな課題として明確となり、今後この変換手法の確立により実用化可能な技術へと展開する予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも高価な試薬を使用せず、高い選択性で有用物質の前駆体を合成していることは評価できる。一方、αーアミノニトリルの反応条件下での不安定さの問題、光学活性酒石酸アミドの使用量の削減に向けて、さらなる条件検討を進める必要がある。また、知的財産権の確保も必要と思われる。今後は、課題は明らかになってきているので、本ルートによるαーアミノ酸合成の特許化に向けて、企業との共同研究を含め、準備を進めてほしい。
炎症惹起膜型受容体をデコイ(おとり型)に変換する薬剤・化合物のスクリーニングによる革新的医薬品の開発研究 金沢大学
山本靖彦
金沢大学
渡辺良成
(目標) 自然免疫に関わり生体に炎症を引き起こす膜型受容体RAGE (receptor for advanced glycation end products)を膜型から可溶型のデコイ受容体に転換する、つまりRAGE sheddingを引き起こす薬剤・化合物を見出す。
(達成度) FDA Approved Drug Libraryの640種類の化合物と13種類の抗炎症に働く化合物を用いた1次スクリーニング、続いての2次スクリーニングの結果、計50種類がヒットした。現在、3次スクリーニングを行っている。
(今後の展開) 引き続き候補薬剤・化合物の検証を行って、革新的な治療法・医薬品の開発へと繋げたい。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。リガンド-RAGE-NfKB遺伝子発現系を抑制する化合物のスクリーニングが出来たことについては評価できる。一方、基盤となるRAGE sheddingアッセイ系を樹立し、化合物をスクリーニングし、次のステップに進まなければならない。化合物のRAGE sheddingに対する効果を評価するシステムの構築に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、研究の前提となるRAGE shedding評価系をまず確立することが望まれる。
糖尿病の予防と治療を目指し新規標的膜輸送体を利用する食後高血糖抑制物質の探索 金沢大学
加藤将夫
有限会社金沢大学ティ・エル・オー
木下邦則
申請者は、高投与量グルコース摂取時の血糖値上昇を抑制する働きを持つ膜輸送体を見出した。本研究は当該膜輸送体の活性を促進する物質を探索することで、食後高血糖抑制物質を見出し、動物でその効果を実証することを目標とした。当該膜輸送体遺伝子導入細胞等を用い化合物スクリーニングを行ったものの、輸送促進活性を持つ物質の解明には至らなかった。その原因として当該膜輸送体による排出輸送を直接評価できていなかったこと、当初の仮説以外の作用機序による血糖上昇抑制の可能性を考え、今後の展開として、ウィルスベクターを用いた膜小胞輸送評価系を確立するとともに、グルコース代謝物の輸送による血糖上昇抑制の可能性を検証する。 当初目標とした成果が得られていない。当初目標は、血糖上昇抑制に関わる新規膜輸送体Xの活性を促進する作動物質を同定し、その薬理作用を検討することであった。スクリーニングのための評価系を確立しようと試みているが、適切な評価系の確立には至らなかったようである。膜輸送体Xの元来の生理的役割を見直す必要があるかもしれない。今後は、問題となる技術的な課題を克服することで、膜輸送体Xの機能解析と化合物スクリーニングのための評価系が確立できるかどうか検討することが望まれる。
小胞体ストレス応答を利用した革新的脳血管障害治療薬候補の開発 金沢大学
堀修
有限会社金沢大学ティ・エル・オー
木下邦則
小胞体ストレス応答を活性化するタンゲレチン(IN19)について、脳虚血に対する神経保護効果を評価した。タンゲレチンを1日一回、3日間連続でマウスに投与した後に中大脳動脈閉塞(MCAO)モデルを行った所、vehicle投与群に対して梗塞巣の大きさが有意に小さくなった。更に免疫組織学的検討から、タンゲレチン投与によりアストロサイト由来の神経保護因子BDNFの発現が増加することが明らかになった。今回の結果は、タンゲレチンがアストロサイトを介して神経を保護していることを示唆するものであり、今後、より多くの小胞体ストレス制御化合物の神経保護効果を比較検討することで、小胞体ストレス制御を切り口とした、脳梗塞予防薬の開発が可能になると考える。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもタンゲレチン(IN19)の術前経口投与で一部の脳梗塞モデルマウスで梗塞巣が小さくなったことから、小胞体ストレス活性化薬の脳梗塞治療予防薬としての開発に希望があることを示したことは評価できる。一方、タンゲレチン(IN19)以外に他の小胞体ストレス制御分子(例えばHerp欠損細胞を用いた小胞体ストレス評価系で同定した残り3つの化合物など)の神経保護作用を調べる必要がある。また、技術移転を目指した産学共同等の研究開発ステップに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、他の小胞体ストレス制御薬の検討、予防薬効果を狙うなら副作用の検討も含めさらに精力的に研究を推進することが望まれる。
生活習慣病予防/治療を目的とした大豆タンパク中の糖代謝調節物質の探索 金沢大学
井上啓
有限会社金沢大学ティ・エル・オー
木下邦則
本研究課題において、大豆タンパク(SPI)からの肝糖産生調節成分の選別を目標とした研究開発を行い、肝臓糖代謝調節作用によるインスリン抵抗性改善作用を示す分画として、7S分画を見出した。SPIにおける7Sの含量が25%弱であることから、分画精製が非効率である。そこで、食品タンパク中で、7S分画に類似し、効率的に生成しうる分画成分の探索に取り組んでいる。研究責任者らは、7S分画類似成分候補を見出しており、今後の展開として、タンパク成分候補の肝糖代謝・インスリン抵抗性への作用の確認とメタボリック症候群予防への有用性を、研究成果展開事業研究成果最適展開支援プログラムを活用した産学連携研究開発により進めていく予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも肝糖代謝やインスリン抵抗性を改善するターゲットをSPIの7S画分や緑豆タンパク質中の8Sに絞り込めたことについては評価できる。一方、「肝糖産生モニターマウス」による簡便な評価により糖代謝改善作用をもった候補物質を見出すシステムを稼働させる必要があると思われる。絞り込んだ被験物質を「肝糖産生モニターマウス」によって簡便に評価できるような工夫があれば、開発のスピードは増すとと思われる。今後は、in vivo系の他に、HepG2細胞等in vitro系による評価方法も取り入れ、作用機序をより明確化することが望まれる。
金時草の全体が利用できる新たな機能性の解明と機能性を活かした商品化の検証 石川県立大学
榎本俊樹
金時草粘質物と乳酸菌による抗アレルギー作用については、粘質成分が糖タンパク質であり、粘質多糖の構成成分は、マルトオリゴ糖が構成糖であった。乳酸菌の菌種は、石川県内の「だいこんずし」から採取したPediococcus pentosaceus の効果が高く粘質物と乳酸菌の配合比は、3:1が最適であった。血糖値上昇抑制効果を糖質関連酵素活性阻害で検討したところ、茎の水抽出物でマルターゼ、茎、葉のエタノール抽出物でα-アミラーゼ阻害が強かった。その関与物質としては、クロロゲン酸を中心としたポリフェノール類の相乗効果と考えれれた。脂質代謝改善作用は、動物試験により確認した。アルツハイマー予防効果成分としては、金時草からインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ抑制活性成分としてLoliolideが考えられた。金時草の味、香りの成分について確認を行った。最後に、錠剤、粉末の製剤を試作し金時草の製剤の原料としての可能性を確認した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に石川県の特産物である金時草や「だいこんずし」から抽出・分離した粘質多糖類や乳酸菌のなかに、抗アレルギー作用、血糖値上昇抑制効果、脂質代謝改善作用やアルツハイマー予防効果をもつ種々の成分を単離し、錠剤、粉末の製剤を試作し、金時草の製剤のとしての大きなそして貴重な可能性を確認した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、カマボコ以外のアプリケーション開発による用途幅の拡大として、錠剤化および粉末化は容易に出来る事が確認されており、サプリや青汁等での幅広い実用化が望まれる。今後は、金時草特有の差別化や定量的評価が明らかにされることが期待される。
能登ベリーと能登ラプラ乳酸菌をベースとする食品開発 石川県立大学
小柳喬
本研究は、石川県産発酵食品である「アジのなれずし」に由来する「能登ラプラ乳酸菌」 (Lactobacillus plantarum) の食品への利用を推進する目的で遂行した。能登ラプラ乳酸菌を用いた発酵製品の開発目標として、能登ベリー (能登産ブルーベリー) を用いた発酵乳の完成を見据えて、菌体の発酵適合性の評価や菌体保存条件の最適化を行った。結果、該菌株が優れた高温発酵特性・菌体保存安定性をもつことを確認し、また該菌株を大量培養できる培地を見出した。牛乳ベースでの連続発酵の試みは継代時における生育の鈍化がみられ達成できなかったが、出来上がった発酵乳の風味は極めて良好で、十分上市可能な製品開発が可能と考えられた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも石川県産の著名な発酵食品である「アジのなれずし」に由来する「能登ラプラ乳酸菌」が優れた高温発酵特性や菌体保存安定性を持つことを確認し、該菌株を大量培養、保存技術を確立し、各種ヨーグルトを始めとする発酵食品への応用の基盤を作った点は評価できる。一方、より現実の重要が大きい牛乳ベースでの連続発酵の継代時における生育に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後も、継続して企業との連携により、地域の特色を活かした商品開発や産業振興に貢献することが望まれる。
デザインされたスーパー変異体酵素を応用する携帯型尿酸センサの開発 福井県立大学
日び隆雄
福井大学
奥野信男
ペルオキシダーゼを固定化したフェロセン練り混みカーボンペースト電極(PO-CPE)は、オキシダーゼの固定化電極として血清中の成分の定量に優れた特性を示す。PO-CPE上にウリカーゼを固定化した電極を作製した。尿酸の定量行ったところ、野性型酵素固定電極に比べ、超耐熱型好冷性変異体固定電極を用いた場合は温度変化に対する感度変化が抑えられ、室温環境下の測定でバラツキを小さくする上で有利な性質を示した。2〜18 mg/dl尿酸を含む標準試料溶液について測定したところ、直線的な応答を示し、実用的な感度を持つことが示された。予定していた開発目標をほぼ達成できたことから、チップ型センサ構築のための予備検討についても追加実施した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、 耐熱性と低温高活性をもつ改変型ウリカーゼ固定化電極の作製とこれを用いた尿酸センサの開発については、当初目標が概ね達成されている。超耐熱型好冷性変異体酵素固定電極を用いた場合は温度変化に対する感度変化が抑えられ、室温環境下でバラツキが少ない測定が可能になった点は優れている。 チップ型センサの開発についても検討しており、実用化に向けた着実な取り組みがなされていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、血糖センサ等の開発製造販売に実績のある企業との連携が検討されている。 使い捨てタイプの携帯型尿酸センサが開発できれば、生活習慣病の予防にも役立つことが期待でき実用化が望まれる。今後は、企業等との連携によりプロトタイプ実用機をできるだけ早急に完成し、大規模病院や検査センターとの共同研究により検査実施例を蓄積することが期待される。
機能性流体と振動モータを複合した衝撃に強いアクチュエータの開発 福井大学
高橋泰岳
福井大学
奥野信男
人間の動きを補佐し生活支援に貢献するロボットシステムに不可欠な、衝撃に強く人に優しいアクチュエータを開発することが目的である。現在ロボットに用いられるアクチュエータはギアを用いるものが多く、転倒や衝突時の衝撃で破損しやすく、またシステム暴走時に人間に危害を加える可能性が高い。そこで、シャフトを貫通させたシリンダ(駆動部)に、見かけの粘性を瞬時に制御できる機能性流体を封入し、シャフトに与える振動モータの往復運動に合わせて電磁場を制御することで、人工筋肉のように伸縮可能なアクチュエータを提案する。特徴は、運動伝達部に流体を用いるため機械的摩耗が少なく、ダンパとして衝撃吸収性能があり衝撃による破損も抑えられる点にある。
今回、機能性流体として磁場によって見かけの粘性を制御可能なMR流体と、電場によって見かけの粘性を制御できるER流体を用いたアクチュエータを開発し、その挙動を確認した。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、MR流体およびER流体を用いたアクチュエータを設計・製作し、それぞれ10mm/sの速度と、力を測定することが目標で、MR流体では成功していることは評価できる。一方、目標に達した試作機においても、速度だけではなく、加速度、減速度の目標を立て、改良することが必要と思われる。今後は、応用できる段階には達していないが、具体的な商品ターゲットを想定して、達成目標を設定して改善を進めることが望まれる。
タウ蛋白オリゴマーを介したアルツハイマー病の分子機序の解明 福井大学
濱野忠則
福井大学
青山文夫
アルツハイマー病(AD)の主要な病理学的所見は、神経原線維変化(NFT)と老人斑である。 NFTは高度にリン酸化し、重合したタウ蛋白から形成される。NFTの中間代謝産物であるタウ蛋白オリゴマーは神経細胞死をもたらす。研究責任者らは、Tet-Offインダクションを導入し、培養液中のテトラサイクリン(Tet)を除去することによりADの原因物質である3種類の野生型タウ蛋白を発現する神経系細胞を用いた検討を行う。本細胞系は、短時間で十分な量のタウを発現量することができ、オリゴマー形成も可能となる。さらにTet濃度に応じて、オリゴマーの発現量も自在に調節可能であり、優れた薬剤スクリーニング・ツールとなりうる。
本研究において、タウ蛋白オリゴマー形成機序の解明を行うとともに、ADの危険因子である2型糖尿病や脂質異常症といった生活習慣病の治療薬によるタウ蛋白リン酸化、オリゴマー形成抑制効果について検討し、AD治療への応用につなげる。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にタウ細胞系を用いた薬剤のスクリーニングで、ピオグリタゾンや塩酸ドネペジルのタウ蛋白リン酸化抑制効果を見いだしたことは、次へのステップにつながる成果として注目される。一方、技術移転の観点からは、研究計画を整理して、研究成果の社会還元に向けたロードマップを作ることを勧める。既存薬の新しい効果を産学共同開発に発展していくため、コーディネーターの役割が重要である。タウ蛋白凝集体を標的とした治療薬が見つかれば、アルツハイマー病や前頭側頭型認知症などの治療に大きく貢献できることが期待される。今後は、動物モデルを用いてIn vivoでの効果の検証をした上で、タウ細胞系を用いた薬剤のスクリーニングを更に続けていくのか、ピオグリタゾンや塩酸ドネペジルの効果を動物モデルで検証するのか、ピタバスタチンの臨床研究に重点をおくのか、研究計画を整理することが必要である。
同位体標識試薬を用いたアミンおよびアミノ酸高感度分析のためのサンプル前処理法をセットとした測定キットの開発 福井大学
成田和巳
福井大学
青山文夫
本課題では申請者らが以前開発した質量分析器用の安定同位体標識化合物(PyII)を用いて、カテコールアミンおよびアミノ酸の高感度測定法の確立を目的とし、それに不可欠となるサンプル前処理法の開発を中心に研究を行った。測定対象は脳内の神経伝達物質であるカテコールアミンのドーパミン、同じく神経伝達物質であるアミノ酸のGABAとした。
フェニルホウ酸を官能基とした固相カラムを用い、有機溶媒と強酸を組み合わせた精製法によりPyII標識したドーパミンとGABAの同時精製に成功した。この方法により標準品、脳組織共にドーパミンは100 fmol、GABAは10 fmolの高感度での定量に成功している。生体試料中のGABAの測定感度としては、実施者の知る限り、現時点で世界最高の測定感度である。
当初目標とした成果が得られていない。中でも、ノルアドレナリンやアミノ酸を微量分析するためのサンプル前処理法の技術的検討や評価が必要である。今後は、複数の神経伝達物質の同時分析も視野に入れ、先ずは前処理法を技術として確立することが望まれる。
臨床診断用クライオ生検摘出標本による組織構築鑑別システムの開発 山梨大学
大野伸一
山梨大学
還田隆
套管針の下端部のみに液体窒素貯留槽を有し、シリコン小管を通して液体窒素(LN2)を充填して冷却されたヒト生検鉗子を使用するクライオ生検装置(CB III)を開発して、麻酔下マウス臓器を凍結採取した。凍結試料は、パラホルムアルデヒド含有アセトン中で凍結置換固定を行い、包埋薄切後HE染色と免疫染色を行った。またCB III装置性能については、内筒冷却面温度と冷却速度を測定した。この凍結採取試料では、200〜300μmの深部組織において肝類洞は開大し、凍結良好な肝細胞が見られた。しかしLN2の貯留槽への充填が遅かったので窒素ガス排気系に真空ポンプを接続すると、冷却速度と到達温度が改善した。以上、 "生きた動物組織"の凍結採取が可能となった。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、この課題は研究責任者が従来より取り組んでおられた手法の改良を目指したもので、その実現のための機器改良に取り組んでいる内容で着実に進展している。「生きた組織像」の観察に向け、着実に改良が重ねられ、特に、真空ポンプの装着により温度を下げる速度を速め、到達温度を下げることが出来たことは優れた改良で評価できる。一方、すでに、企業と連携しており技術移転のステップにはつながっているが、「生きた組織像」を観察できる利点が診断学上どの程度あるかについて、説得力を持ったデータの積み上げが必要と思われる。今後は、たゆまぬ改良と新規特許出願されることが望まれる。
超音波画像処理による食素材の内部弾性分析と食品加工デザインシステム 山梨大学
阪田治
山梨大学
還田隆
食品内部弾性測定装置の設計と試作、超音波断層画像処理法検討、関連画像処理技術情報収集等を行った。実験装置の設計・試作では、有限要素解析シミュレーションに基づいて食品圧迫法を提案したものの、被測定対象となる食品の大きさ・硬軟度・材質のあまりの多様性により、すべての食品に適用可能な共通装置の開発は断念した。特に、弾性が弱く非可逆変形しやすい粉生地類と、加工肉やブロック肉塊では、内部弾性計測法を全く別手法とする必要有りとの結論に至った。一方、圧縮変形前後の食品の超音波断層画像に基づく新しい食品品質評価パラメータについても、その算出法の検討を行った。有限要素解析シミュレーションにより、さまざまな内部弾性分布を独立した2つのパラメータからなる2次元座標系で表現する方法を考案した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもあらびきソーセージやゼリーなどで食品内部の超音波断層画像を撮影して、食品の品質評価法として食品産業に応用するためのノウハウを蓄積した点ついては評価できる。一方、測定対象となる食品と食材を絞り込み、特定食品分野に特化した装置の開発へと研究方向を変えることが望ましいと思われる。今後は、対象や研究ポイントを絞って実験し、計測の可能性を示すことが必要と思われる。
カチオン性糖質高分子による完全無毒性高効率核酸キャリアの開発 山梨大学
小幡誠
山梨大学
還田隆
本研究開発は、高分子量カチオン性糖質高分子1が低毒性の核酸キャリアとして機能するという知見に基づき、(1)構造因子を変化させたコポリマー1を系統的に合成し、(2)完全無毒性(細胞生存率が100 ± 10%)でかつ(3)LipofectamineTMよりも高い遺伝子導入効率を達成することを目的として遂行した。結果として(1)コポリマー1のライブラリ合成を達成し、(2)と(3)については定量的な評価は完了していないが、低毒性でかつ核酸キャリアとして機能するコポリマー1の組成・分子量範囲を定性的に確認した。今後は定量的なデータを取得し、コポリマー1の従来品に対する優位性を確立する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、完全無毒性高効率核酸キャリアを開発するためコポリマーの合成に成功したが、予想に反して細胞毒性が現れてしまい、「完全無毒性」とはならなかった。しかし、フリーラジカル重合で行うことにより、目標とした分子量範囲である高分子量のコポリマーの合成に成功したことについては評価できる。一方、分子設計を見直し細胞毒性の低い効率的な核酸キャリア基材の開発に向けて技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、特許出願し成果を社会還元することを目標に研究を行うのであるならば、研究の立案段階から所属大学の知財担当者と相談し、学会や論文発表する前に特許出願を検討されることが望まれる。
脳機能障害に対する新規ビタミンD治療薬の開発 松本歯科大学
中道裕子
信州大学
百瀬傳一
IL-34は、ミクログリア活性化を介してアルツハイマー病の病態を改善することが報告された。我々は活性型ビタミンDが、骨や脾臓において、IL-34発現を著しく上昇させることを見出した。本課題の目標である脳移行性活性型ビタミンD誘導体を探索したが、そのような誘導体を見出すことは出来なかった。また、ビタミンD誘導体の中枢でのIL-34活性化作用は弱い事が明らかとなった。その一方で、皮膚では顕著なIL-34発現抑制作用を見出すことができ、炎症性皮膚疾患治療剤としての可能性を見出せた。現在、アトピー性皮膚炎、乾癬は難治性であり新規治療薬のニーズは高い。今後は、本課題の成果をもとにIL-34を分子標的とした皮膚炎症疾患に有効な治療法開発に挑む。 当初目標とした成果が得られていない。当初の目標である脳内移行性の高い活性型ビタミンD誘導体を見出すことができなかった。ビタミンDのIL-34に対する作用が複雑であること、組織により作用機序が異なることが明らかとなり、次のステップに進むための大きな課題であることが示された。 ひとつの可能性が否定されたことは、今後の発展に向けて有意義な情報となりえると思われる。
外耳道へ挿入するイヤホン型センサーで咀嚼回数を測定する装置の開発 松本歯科大学
増田裕次
信州大学
百瀬傳一
噛むことの大切さや、歯科治療後の噛む能力の回復などを評価するために、咀嚼回数を測定することは重要である。本研究は、正確かつ簡便に咀嚼回数を測定する装置を開発することを目的とした。外耳道に入るような、低周波マイクロホンを内蔵したセンサーを作製し、咀嚼したときに記録される波形を特定のアルゴリズムで解析した。その結果、咬筋筋電図から得られた咀嚼回数と外耳道内圧波形を分析し、算出した咀嚼回数との相関の決定係数は0.889と比較的正確な測定ができた。今後、他のパラメータの検討に加えて、咀嚼回数測定を自動的に行うためのソフトウエアを開発することにより、咀嚼回数測定装置の商品化へと進むことができると考える。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、自動化は達成出来なかったが、三次元再構築された顎関節と顎運動測定器の座標系を一致させる冶具の開発については、実際の測定までは到達しなかったものの治具そのものは開発できた。顎口腔機能を高精度に可視化し、歯科診療の支援システムとして応用する点については評価できる。一方、本研究で開発した歯科診療支援システムは、システムとしての技術的に解決しなくてはならない問題が山積しているが、技術移転を目指した産学共同等の研究開発ステップにつながる可能性は十分にあると思われる。顎口腔機能のうちどのような物理量を計測し、どのような疾患の診療で役立てようとしているのか、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、今回提案されている「正確かつ簡便に咀嚼回数を測定する装置を開発すること」について、特徴のある「装置開発」をまず重点的に行うことが望まれる。
二酸化炭素を良溶媒として用いた超臨界溶体急速膨張法によるナノメディスン設計技術の開発 信州大学
内田博久
信州大学
宮坂秀明
二酸化炭素を良溶媒として用いた超臨界溶体急速膨張(RESS)法によるナノメディスン設計技術の確立を目的として、1) RESS法によるナノメディスン創製装置およびナノメディスン設計法の汎用化、2) ナノメディスン創製技術の適用性拡大(共溶媒効果の検討)を検討した。その結果、我々が提案したナノメディスン創製装置および粒子設計技術は多くの薬物に適用可能であり、汎用性が高いことが明らかになった。さらに、固体共溶媒を超臨界二酸化炭素に添加した場合に、薬物の溶解度が大きく向上することがわかり、RESS法の適用性が拡大された。以上の成果により、本研究の目標は達成されたと判断する。今後は、本手法の技術移転を目指した産学協同の研究開発を進める。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、本提案の超臨界容体急速膨張法は、薬物のナノ粒子創製への実用化と製造コスト削減につながる革新的な技術であり、多くの医薬品創製につながるブレークスル―となる優位性の高い技術で評価できる。一方、技術移転の観点からは、提案されたナノメディスン創製装置および粒子設計技術は多くの薬物に適用可能であり、現在本研究の共同研究が大手の企業と本格的に実施されている点から、研究成果が応用展開された際に大きな社会還元が期待でき、実用化が望まれる。今後は、技術移転のために早急に特許を取得するされることが期待される。
体内ロボット用 オープンスペース形非接触エネルギー伝送システムの開発 信州大学
水野勉
信州大学
宮坂秀明
身体に与える負担の少ない医療デバイスとして体内ロボットの研究が盛んに行われており、そのエネルギー供給方法として非接触エネルギー伝送技術が有力視されている。しかし従来の研究では二つの給電用送信コイルを対向させ、そのコイル間に患者(体内ロボット)を配置する構成が想定されており、医師や看護師の作業を困難にし、かつ、患者に閉塞感を与える問題があった。そこで本研究では患者がベッドに横たわるだけで治療が可能となるオープンスペース形給電の検討を行い、消化器官が収まる300(縦)×300(横)×250(高さ)mm3 の範囲に体内ロボットに最低限必要とされる30 mW 以上の電力を供給可能なことを実証した。さらに給電コイルに電界防護アルミシールドを適用することで有害な高周波電界を抑制し、電磁波曝露に関するガイドライン(ICNIRP)の電界に関する公衆の曝露制限を満たすことが分かった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に当初の目標の中で、体内ロボットの非接触エネルギ伝送システムの実現可能性の確認、30mW以上の伝送電力の確保、電界制限値の遵守は達成された。さらに、送電コイル構造、伝送周波数、使用導線を変更する等、実施結果に基いて、当初の計画を柔軟に変更して非接触エネルギ伝送システムの実現可能性を確認したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、磁界制限値の遵守は達成されなかった。実用化するためには磁界制限値を遵守できるように非接触エネルギ伝送システムを改良しなければならないという技術的課題が明確になった。これが解決できれば、患者がベットに横たわるだけで治療が可能になるオープンスペース形給電が可能になる。この技術を用いて身体に与える負担の少ない医療デバイスとしての体内ロボットが実現でき、社会還元に導かれることが望まれる。今後は、臨床現場との意見交換を活発に行い、産学連携とともに、現場で使える技術に発展させることが期待される。
皮膚圧(衣服圧)測定用受圧部の開発 信州大学
三野たまき
信州大学
百瀬傳一
衣服の着心地を決定する一因子である衣服圧は、その測定法のコンセンサスが未だ得られておらず、早急な開発が待たれている。衣服圧は体部位や被覆する素材、デザインによって許容範囲が異なるので、これらのニーズを網羅できる丈夫で、薄くて、柔らかい受圧部の作製を目標としている。そのためには、受圧部の素材の選定、シール方法、温度特性、応答速度、封入量、官能評価との関係等を調べたところ、当初の目的数値にほぼ達成した。さらに、今回得た技術情報を踏まえた上で、小型・軽量化・シールの精度を高めるべく、新たな問題が明確になった。なお、従来問題であった受圧部とトランスデューサーの高さを揃えることに関しても一案が得られ、これを来年早々に新規特許出願に結びつけるべく、共同研究を開始した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、受圧部プローブの厚さなど課題が残り、特許出願にはいたってないが、衣服圧を測定するための受圧部の試作は、当初の目標をほぼ達成できたと考えられる。衣服圧を測定するための受圧部の開発において、目標をほぼ満足する試作品を作成できたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、技術移転の段階に至るには、さらに基礎的な研究が必要と思われる。ただ、課題は明らかで、衣服圧を気軽に測定できるようになれば、幅広い年齢層の人々に対して、着心地の良い衣服を提供でき、実用化が望まれる。今後は、衣服の着心地と言っても、衣服の種類や着る人の年齢などによって異なるので、具体的な目標を個々の条件に絞って開発することが期待される。
新規蛍光プローブを用いたがん分子標的としてのNox1阻害剤の探索 信州大学
鎌田徹
信州大学
百瀬傳一
ROS産生遺伝子Nox1がヒト大腸癌を含む癌細胞の増殖に媒介的役割を果たし、癌治療の新規分子標的となりうることを我々は既に明らかにした。本研究では、将来の癌治療薬開発のために、Nox1の選択的阻害剤の新しいスクリーニング法の技術的検討、及び阻害剤の探索を行った。その結果、我々の新スクリーニング法の有効性を確認し、Nox1によるROS産生を特異的に抑制する天然化合物NOS31を同定することに成功した。今後、前臨床試験を通じてNOS31のさらなる解析を行う予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に天然物ライブラリーのスクリーニングからNox1を特異的に抑制する新規化合物1種を見いだしていることに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、スクリーニングした天然物ライブラリーがわずか100種であること、阻害のIC50の値が高いことからこの物質をリードにするにはまだ検討が必要である。新規化合物であれば早急に知的財産権を確保することが必要である。今後は、in vitroおよびin vivoでの抗悪性腫瘍薬としての有用性および安全性の検討を行うことが望まれる。
キクイモ抽出物に含まれるスギ花粉症軽減物質の同定とその応用 信州大学
片山茂
信州大学
福澤稔
申請者はキクイモの高度利用を目的として、キクイモ抽出物に優れた花粉症軽減効果があることを動物実験により明らかにした。本課題では、キクイモ抽出物中の花粉症軽減物質を同定するとともに、その作用機序の解明を目的とした。キクイモ抽出物をHPLCにより分画し、腸管パイエル板のIL-4産生抑制効果、樹状細胞の抗原提示抑制作用、マスト細胞の脱顆粒抑制作用について検討した。その結果、ピークBにおいて顕著な活性が認められた。EI-MS及びNMR解析に供し構造解析を行ったところ、活性成分は1-(3'、4'-dihydroxycinnamoyl)cyclopentane-2、3-diolと同定された。また、キクイモ茶にも上記の活性成分が含まれることをHPLC分析により確認した。以上より、キクイモ抽出物の花粉症軽減効果における活性成分とその作用機序が明らかとなった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、アレルギーを抑制する物質を科学的に同定したことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、活性物質の物理化学的性質に基づき抽出条件を改良すると共に、試験管内の実験ではなく個体での実験も行うなどによる実用化が望まれる。今後は、基礎研究成果をさらに蓄積し企業との連携を早期に構築されることが期待される。
糸状菌に青色光刺激を与えて有用代謝産物を製造する実用化モデルの試作と性能の評価 信州大学
小嶋政信
信州大学
福澤稔
本研究開発目標は、(1)可視光透過性容器内で液体培養したヒラタケ菌糸に青色光刺激を与えた後、その水層抽出物中のシキミ酸量を測定し、本シキミ酸製造方法の実用化の可能性を検証すること、また(2)上述のサンプルの有機層抽出物中に、癌細胞増殖抑制効果並びに癌転移関連遺伝子の発現抑制効果を示す有用物質が存在することを精査することである。研究期間において、提案方法による光照射法では、菌糸に効率よく光刺激を与えることができないこと、また癌細胞増殖抑制効果と癌転移関連遺伝子の発現抑制効果は十分に再現性が確認されるが、異なる物質による作用であることが示唆される新規データが得られた。今後は、新たな研究予算を獲得し、大量に液体培養した菌糸を用いて効率よく光照射する方法の開発と、抗癌活性物質に関するさらなる知見の獲得を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、キノコ菌糸体の大量培養法として還元式液体培養法が突破口になりうることを見出したことについては評価できる。一方、菌糸のシキミ酸産出量の定量法や菌糸体への光照射法の開発など大規模化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、固体培養と液体培養の差異も考慮すると共に、まずは菌糸体からのシキミ酸の検出法を検討されることが望まれる。
足関節内反捻挫予防用「足関節機能測定・トレーニングマシン」の開発研究 信州大学
木村貞治
信州大学
木下幸彦
本研究は、足関節内反方向への不意な外乱刺激を加えることができる足関節機能測定・トレーニング装置の試作機を開発し、その試作機を用いて8週間の不意な外乱に対する反応性トレーニングを行い、その有効性を長腓骨筋の表面筋電図における反応性収縮のピーク値までの潜時(PL)と脳の賦活状況を表す近赤外線分光法(fNIRS)における酸素化ヘモグロビン変化量(oxy-Hb)を指標として検証すること、そして、その結果に基づいて、より実用的な足関節機能測定・トレーニング装置を開発することを目的とした。その結果、反応性トレーニングにより、長腓骨筋のPLが有意に短縮したとともに、運動の自動化に関連する前頭前野でのoxy-Hbが有意に減少したことから、足関節内反捻挫を予防するための反応性トレーニングの有効性が示唆された。また、試作機を改良した新たな装置を開発した結果、より実用的な測定とトレーニングが可能であることを確認したことから、今後、スポーツ現場における本装置の活用を目的とした製品化の有用性が示唆された。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも反応性トレーニングの実施やその効果判定に有用である装置の開発技術に関しては評価できる。一方、足関節内反捻挫が予防できることを明らかにする技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、予防に関する評価法を検討されることが望まれる。
牛心臓由来ペプチドを活用した革新的コレステロール代謝改善素材の開発 岐阜大学
長岡利
食品による高コレステロール(CHOL)血症などの生活習慣病予防改善は極めて重要である。我々は牛心臓由来低分子ペプチド(HRHU: 分子量1,000以下)による強力なCHOL代謝改善作用を発見した。HRHU由来のCHOL代謝改善作用に寄与する活性ペプチドの発見を目指して、in vitroのCHOLミセル溶解性低下能(CHOL吸収抑制作用の指標)を評価した。その結果、ゲルろ過、逆相クロマトグラフィーなどにより、CHOLミセル溶解性を顕著に低下させるIB画分を得た。さらに、牛心臓の主要タンパク質であるミオシン由来ペプチドのin vitroでのCHOLミセル溶解性低下能(CHOL吸収抑制作用の指標) 評価から、医薬品であるコレスチラミンと同程度に顕著な作用を発揮する新規ペプチドAを発見した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にミオシン由来ペプチドがコレステロール(CHOL)ミセルの溶解性を低下させることを見出したことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、ペプチドのアミノ酸配列を明らかにすると共に分離精製法も工夫するなどでの実用化が望まれる。今後は、早期に動物実験等を実施し新しいコレステロール低減化ペプチドとして展開されることが期待される。
迅速性と安全性に優れた狂犬病ウイルス中和抗体測定法の開発 岐阜大学
杉山誠
岐阜大学
安井秀夫
本研究では、狂犬病ウイルスの遺伝子操作系を活用し、半日で結果が得られ、簡便かつ安全性の高い狂犬病ウイルス中和抗体測定法の開発を試みた。その結果、ルシフェラーゼ発現・複製欠損型ウイルスを作製することに成功した。本ウイルスを使用すれば、12時間のウイルス感作時間で十分に中和抗体を測定できることが判明した。また、同ウイルスは4週齢マウスにまったく病原性を示さないことが確認された。すなわち、本研究は、当初の計画通りに進行し、ほぼ目標を達成したと言える。今後、より高感度なルシフェラーゼを高発現させることで、さらにウイルスの感作時間を短縮できることが予想される。今回の成績を基盤として、さらなる改良を加え、実用化を目指していく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。狂犬病ウイルスに対する中和抗体価を迅速、安全に測定する方法が示された点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、知的財産権の確保やイヌ臨床検体を用いた確認実験が必要である。今後は、さらに改良を加え実用化に向けた研究を推進することが望まれる。
真空紫外線によるチタン表面改質とMPCポリマーのコーティング 岐阜大学
神原信志
岐阜大学
安井秀夫
MPCポリマーは優れた抗血栓性を有することから、医療デバイスへのコーティング技術が切望されている。しかしながら、生体用チタンの表面は疎水性であるため、親水性のMPCポリマーをコーティングすることは容易ではない。さらに、実用においては、生体内安定性(体内で溶出しないこと)が要求される。
本研究では、生体用チタンに波長172nmの真空紫外線を照射し、チタン表面に水酸基(-OH)を修飾して表面を親水性に改質し、MPCポリマーの側鎖を強固に化学結合させ、さらにコーティング膜厚を制御する方法を見いだしたことで生体内安定性を実現した。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転に繋がる可能性が高まった。特にMPCポリマーのチタン表面へのコーティングに関する基盤技術は、ある程度、達成されており評価できる。一方、技術移転の観点からは、生体適合性に関しても、他の評価項目も加えて、網羅的に調べる必要がある。今後は、企業や医学部との共同研究が期待される。
クロロキンの神経保護作用を利用した神経変性疾患治療薬開発のための基礎的研究 岐阜大学
平田洋子
岐阜大学
丸井肇
既存のシグマ1受容体アゴニストについて神経保護効果活性を評価した結果、一部のシグマ1受容体アゴニストが保護効果を示し、当初の目標は達成した。シグマ受容体には複数のリガンド結合部位が存在することが示唆されており、今後、これらと神経保護活性を示すシグマ1受容体アゴニストの関連性について検討する必要がある。また、酸化ストレスを抑制する細胞内標的分子を探索する目的で、アジドチロシンを部位特異的に導入したシグマ1受容体を発現させた。アジド基を利用してナノ磁気ビーズへ固定化し、シグマ1受容体と相互作用するタンパク質を捕獲し質量分析により解析中である。これら一連の実験にはさらなる時間が必要であり、目標は部分的に達成できたが、シグマ1受容体の全構造の発現には至らなかったことは今後の課題である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にクロロキンと同様な神経保護活性を持つシグマ1受容体のアゴニスト候補として、ハロペリドールを同定した点、およびシグマ1受容体の構造の一部を利用して結合タンパクを同定したことは高く評価できる。一方、技術移転の観点からは、神経保護活性の定量的評価法の開発によるクロロキンとハロペリドールの神経保護作用の定量的比較や、大腸菌発現システム以外の方法を用いたシグマ1受容体タンパクの精製法の開発が必要と思われる。今後は、初期の目標を目指して、クロロキンと同様な神経保護活性を持つシグマ1受容体のアゴニストを同定することと、シグマ1受容体と相互作用するタンパク質を同定することを期待する。
中鎖脂肪酸による抗がん活性の評価とがん特異的脂質代謝阻害 岐阜大学
赤尾幸博
岐阜大学
小田博久
がん細胞は酸素、栄養成分が充分でもグルコースから酸化的リン酸化を伴うTCAサイクルを使用せず、もっぱら解糖系でATPを獲得していることがメタボローム解析から明らかになった(Warburg効果)。
我々は3-デセン酸(中鎖脂肪酸)ががん細胞にオートファジー(自食作用)を誘導して増殖を抑えることを見出した。その機構としてPyruvate kinaseの発現障害を来たし、解糖系および脂肪酸代謝阻害からTCAサイクルを介して活性酸素の上昇させ、細胞死を誘導していることが示された。本研究の目標はほぼ達成された。今後、3-デセン酸誘導体がさらにどの酵素を標的にしているか、更なる機序の解明、新規な作用を持つ抗がん剤候補として製薬企業などに向けキャンペーンをする。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にオートファジーを誘導する抗がん剤の開発は新規性に優れ、一定の抗腫瘍効果を持つことが示された点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、さらに高い活性を持つ化合物の開発を進める必要があるとともに、in vivoでの抗腫瘍効果において、さらなる詳細な検討が必要である。今後は、研究開発において、コンパニオン診断薬となり得るバイオマーカーの探索研究についても並行して進めることが望まれる。
イソフラボン代謝腸内細菌の遺伝子マーカーの開発 岐阜大学
鈴木徹
岐阜大学
馬場大輔
イソフラボンは、エストロゲン活性を持ち、更年期障害等の症状を抑えるとされ注目されている。しかしイソフラボンは腸内細菌によりEquolやO-DMAに代謝され、生理活性が大きく変化する。このため、イソフラボンの効果を正しく知るには、腸内フローラの個人差を把握する必要がある。本検討ではゲノム情報を元にO-DMA代謝に関わる遺伝子群を解明することにより、O-DMA生産菌特異的な遺伝子マーカーを構築し、その個人差を判別する検査法の開発を目的とした。今回、新たなO-DMA生産菌1株、中間代謝物ジヒドロダイゼイン(DHD)まで代謝する株1株の分離・同定に成功した。現在までに得られた4株のO-DMA生産菌とDHD生産菌菌について比較ゲノム解析を進行中である。これらの情報をもとに、個々人の腸内におけるO-DMA生産菌の存在ををPCRにより評価することが可能になると考える。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、比較ゲノム解析に有用な新たなO-DMA生産菌と中間代謝物の蓄積菌を取得できた点については評価できる。一方、早急にゲノム解析を完了するなど、有用性の高い遺伝子マーカーを確立するための技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。新規O-DMA産生株を取得する手法は確立できているので、今後は、比較ゲノムを行える株を少しでも増やし、解析精度を上げることが望まれる。
鉄(II)イオンを選択的に検出できる蛍光プローブ分子の開発 岐阜薬科大学
平山祐
公益財団法人名古屋産業科学研究所 中部TLO
大森茂嘉
体内において最も多く存在する遷移金属種である鉄イオンを選択的、かつ高感度に検出可能な新しい蛍光プローブ分子の開発を行った。本研究では、プロトタイプであるN-オキシドを用いた鉄(II)イオン蛍光プローブ分子RhoNox-1の構造展開により、様々な新しい機能を有する鉄(II)イオン蛍光プローブ分子の開発を行ない、蛍光検出感度の向上、細胞内局在の制御、および多波長展開を達成した。本研究で得られた化合物と知見を基に、現在RhoNox-1に興味を示している企業と協力し、簡便な鉄(II)イオン測定キットへの実用化へと展開していく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、細胞内の鉄(II)イオンを蛍光検出するにあたり、検出感度の向上、プローブ分子の細胞内器官への局在化および蛍光プローブの多色化に関して、それらの目的にかなう新たなプローブ分子の合成に成功した技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、技術的な課題に関しては進捗があったことから、技術移転を目指した産学共同等の研究開発ステップにつながる可能性は高まったとは考えられる。当初の研究目標であった鉄(II)イオンとの反応速度が大きく、かつ検出感度のよい蛍光プローブ分子の開発を行うことで実用化が望まれる。今後は、鉄(II)イオンとの反応速度が大きな蛍光分子プローブを開発するため、これまでの研究成果を踏まえ、具体的な研究計画の検討されることが期待される。
高い生体親和性を付加するためのレーザーによる立体造形と表面加工技術の研究 光産業創成大学院大学
沖原伸一朗
本件の目標は、数kw程度のピーク出力を有するレーザーと粉体チタンを用い、任意の医療用途のパーツ製作を行うための3次元造形技術の研究を行うことである。特に、本研究主目的は、生体親和性が高く、難加工材料であるチタン合金の立体造形を可能とする技術開発とこれを実現するレーザーヘッド開発である。 
達成度については、レーザーヘッド開発が出来たこと、及びこれを用いた造形の実現性が確認できたことで、60%である。本研究手法による立体造形については、パラメータ数が多いこと(レーザー照射条件、粉末条件)及びそれらの制御についてより詳細な検証が必要である(課題)。
今後についても、目標達成に対して検証を展開して行く。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもチタン配合材料の供給装置に関しては評価できる。一方、チタンとポリマーの配合及びその材料供給の最適化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、チタンにこだわらずに金属のレーザークラッディング技術を完成されることが望まれる。
抗腫瘍薬7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン内封脂質微粒子製剤の製造法確立とその臨床応用研究 静岡県立大学
板井茂
本研究では、高難溶性抗腫瘍薬SN-38の新規キューボソーム製剤の開発を目標として研究を進め、粒子径が腫瘍細胞への特異的送達が期待できる大きさであり、SN-38内封率が約94%と高いキューボソーム製剤の製造方法を確立した。この粒子物性および製剤特性は目標としていた値にほぼ達している。さらに、本キューボソーム製剤は、SN-38の溶解度を約16倍に向上させ、SN-38の活性型分子種を高い割合で安定的に保持する特長を有しており、既存技術および従来製剤よりも優れている。今後、in vivo実験系において抗腫瘍効果を定量的に評価する検討を進めることで、臨床応用への技術移転を目指した開発研究を継続していく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に内封率ならびに粒径について当初の目標を達成するとともに、SN-38の活性が高度なレベルで維持される製剤処方が確立された点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、既存の抗がん剤CPT-11に比べての有効性を、少なくとも動物実験で検証する必要がある。また、実際に臨床応用する場合は、製剤に使用する素材も創薬材料として認可されている材料を使う必要がある。今後は、国内・国外の特許調査を踏まえ、本研究の知財ポジションを明確化することが重要である。
人工内耳音階を用いた人工内耳装用者のための音楽聴取支援装置の開発 静岡大学
北澤茂良
静岡大学
伊藤寛章
人工内耳装用者が楽しめる音楽を提供する研究はなかった。人工内耳装用者の音楽聴取の強い要望を背景に、申請者はMIDI 音源を用いて電極対応に音楽を編曲して人工内耳装用者が聴取可能な音楽を生成する人工内耳音階の着想を得て、人工内耳装用者が「楽しめる音楽」を提供して彼らのQOLの改善を図ってきた。本研究は、選択した曲にこれまでの経験値や人工内耳音階の理論から推奨設定を提示できる、音量・テンポ・聞取り易い音の高さの設定が人工内耳装用者自身で容易に操作可能で、良く知られた童謡唱歌を楽しめる装置を開発し、人工内耳装用者に試用していただき、好評価を得た。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも人工内耳音階の理論に基づいて構成された、人工内耳装用者が容易に調整可能な音楽聴取支援装置については評価できる。一方、「人工内耳装用者が容易に調整可能な音楽聴取支援装置」や「小型磁気ループ」は既存技術に対して先行しており、更に実用化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、インタフェース等に関するより詳細な評価とそれに伴う改良点の抽出が望まれる。
リン糖骨格を基盤としCdc25Bの発現抑制を誘導する新しい分子標的抗腫瘍剤の開発 静岡大学
山下光司
静岡大学
斉藤久男
リン糖TBMPPの水溶性化(内包化)を達成し、夫々の抗腫瘍活性を評価した。TBMPPの異性体分離・精製及び単結晶X線構造解析によりanti型構造を明らかにした。単離異性体のin vitro評価では、最高の抗腫瘍活性体構造解明には至らなかった。リン糖JYは白血病細胞に対してIC50≒100 nMの高い抗腫瘍活性を示した。
前臨床研究のラットに対するTBMPP水溶液の経口投与では、急性毒性及び慢性毒性共に問題なく、K562細胞を移植したヌードマウスによるin vivo評価で腫瘍の寛解を認めた。
当該研究結果により、リン糖抗腫瘍剤の有効性の実証目標を達成(達成度約75%)できた。今後の更なる高い抗腫瘍活性体探索、高活性異性体の選択的・特異的調製、臨床研究への展開を経て「単剤によるがんの化学療法の革新」を実現する新規な抗腫瘍剤を実用化する。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。当初の目的の内、構造活性相関以外の諸点についておおむね目的を達成しつつあり、順調であると言える。一方、技術移転に至るまでには薬剤の作用機作について十分な細胞学的な解析を行う等さらなる研究の進展が必要である。また、知的財産権の確保が必要である。今後は、薬理効果の分子的な解析を研究の焦点の一つとして重点的に取り組む必要がある。その過程で構造活性相関を知る手がかりが得られると思われる。
脳神経疾患の解明と早期診断を指向したニコチン受容体α7サブタイプイメージングプローブの開発 浜松医科大学
間賀田泰寛
浜松医科大学
阿部紀里子
脳神経疾患の解明と早期診断を指向して、ニコチン受容体α7サブタイプイメージングプローブの開発を計画した。申請者らが既に得ているイメージングプローブである(R)Me-QAAの化学構造を基礎として、コンピュータシミュレーションにより構造活性相関研究を行い、より有用性の高いと期待される化合物探索を行った。そのような候補化合物の中から合成可能な化合物をいくつか選択し、ラジオレセプターアッセイを実施し、ニコチン受容体α7サブタイプに対するより高い親和性を有する化合物を見出すことが出来た。今後さらに詳細について検討されなければならないが、同様の手法により製品化し易いF-18を導入可能な化合物探索の道筋を確立した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、受容体への高い親和性と選択性を有するイメージングプローブの有用性の高い基本構造を見出し、化合物を合成した技術に関しては評価できる。一方、放射性標識体の合成法確立を進めるとともに、フッ素導入化合物の合成や、安全性試験用の試薬の大量合成に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、フッ素置換技術の確立とともに化合物評価を行い、イメージングプローブを完成されることが望まれる。
アルツハイマー病の超早期診断に有用な脳内分子動態画像化技術の創出 浜松医科大学
植木孝俊
浜松医科大学
小野寺雄一郎
本研究開発では、アルツハイマー病(AD)の早期診断、創薬に有用なMRIによるγセクレターゼのイメージング技術の創出をねらいとした。研究開発期間において、ADの病態生理に掛かるγセクレターゼ酵素活性の賦活を、AD病態モデル細胞培養系にて生細胞でNMRを用いて画像化、定量解析することができるMRI機能プローブを新たに創製した。また、当該プローブでは、paramagnetic relaxation効果によりγセクレターゼ酵素活性依存的に、MRIシグナルを生じる。今後、創製したプローブに血液脳関門透過性を持たせることにより、AD病態モデルにてγセクレターゼ酵素活性をin vivoで画像化することで、ヒトでのADのMRIによる早期診断システムの開発、γセクレターゼ酵素活性を阻害するAD治療薬への応用が見込まれる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、MRIを用いて細胞レベルでガンマセクレターゼ活性を定量的に画像化できたことは、新しい技術として評価できる。一方、実用化には動物モデルで画像化ができるか否かが大きな鍵になるが、本研究は細胞レベルでの結果に留まっている。本方法は放射線障害がなく試薬も安価になると考えられることから、研究成果が応用展開されたときには、社会的にも大きな意義がある。早急に動物実験に向けた技術的検討やデータの積み上げが必要と思われる。今後は、アルツハイマー病モデルマウスに開発試薬を投与して画像化できることを示すことが望まれる。
エントロピー顕微鏡法のメディカルフォトニクス展開 浜松医科大学
早坂孝宏
浜松医科大学
小野寺雄一郎
本研究開発は3次元PETおよびMRSデータの各点において情報エントロピーを計算し、画像として可視化するソフトウェアを開発し、脳内におけるトレーサーの複雑な振る舞いを俯瞰可能にすることを目標とした。PETで得られた三次元画像の時間変化に対して情報エントロピーを計算し、可視化することでベンゾジアゼピン受容体とアセチルコリン受容体に対するトレーサーの異なる蓄積パターンを捉えることに成功した。MRSデータの抽出方法を改善する課題が残った点を除いて、目標を達成することが出来た。今後の展開としては、メーカーへの技術移転を進め、多くのユーザーの評価と改善を経て、新しい診断技術として臨床現場へ展開することを目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、 疾患の検出感度および特異度など医学的見地からの解析結果が全く示されていないが、2種のトレーサを使った既存のデータにプログラムを適用したことについては評価できる。一方、MRSの企業化について具体的な企業名が挙げられており技術移転の可能性はないとは言えないが、MRSに関する検討が行われていない等、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、得られた画像をどのように解釈するのか、また作業仮説をよく立ててから研究を開始するべきである。医学的見地に基づき、専門家の意見をよく参考にして計画立案されることが望まれる。
顎骨骨梁評価ファントムの開発 愛知学院大学
内藤宗孝
愛知学院大学
藤村信隆
歯科用コーンビームCTは、歯や顎骨の詳細な三次元画像が得られ、被曝線量が少なく高解像度であるという特長から、国内において1,000台以上が配備され、その数は増加の一途を辿っており、歯科インプラント治療での応用が進んでいる。
インプラント体を埋入する箇所の顎骨骨密度を、術前に計測することで安定した治療が行えるが、この装置の最大の欠点は、ボクセル値がマルチスライスCTで得られるCT値ではなく、相対値であるため、顎骨の骨密度を正確に計測することができない。
開発した顎骨骨梁ファントムは、顎骨骨密度評価が容易となり、安全性の高い歯科インプラント治療を提供し得る。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ファントム作成の使用材料に関して、新たな開発の必要性が明らかになっているので、次のステップへ進めるための技術的課題が明確になったことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、臨床において重要となる歯科インプラント埋入時の状態をどのように評価するかの問題をはっきりと把握しているので、今後の研究開発について具体的に検討されている。 産学共同で試作品の作製が検討されているようで実用化が望まれる。今後は、被曝線量に対する測定評価をするとともに、異なる材質を用いたファントムによる比較評価で最良の開発を行うことに期待したい。
骨粗鬆症治療薬候補化合物デストラキシンEを量産する基盤技術の確立 中部大学
中川大
中部大学
中津道憲
破骨細胞の発生や生存を妨げることなく破骨細胞が備える骨溶解機能の発動を阻止できる「デストラキシンE」を「骨粗鬆症を完治できる薬」として開発するために、第一に解決すべき課題「デストラキシンEを量産する基盤技術の確立」を達成することを目指した。生合成と有機合成の手法を切り口にしてデストラキシンEを量産する方法を検討した結果、目標を大幅に上回る10倍以上の収量でデストラキシンEを得ることを可能にする「有機合成の基盤技術」を確立した。デストラキシンEをg単位で調達できる基盤技術の確立に成功したので、今後は、実験動物を用いた薬理学的解析を早期に実施し、薬として開発できる可能性を含め、技術移転の可能性を見定める。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特にデストラキシンEの全合成ステップの詳細な検討により、目標をクリアする十分な量の目的化合物の合成を達成しており、その成果も英文誌に公表している点は高く評価できる。一方、技術移転の観点からは、合成法に関する知的財産権を確保することが重要である。今後は、製薬企業の支援等を受け、デストラキシンEを用いたin vivoでの薬効評価、毒性評価を行うことが期待される。
小型・低コストおむつ用排尿・排便検知センサーシステムの開発 中部大学
田橋正浩
中部大学
木本博
超小型かつ低コスト・低消費電力の排尿・排便検出システムの開発を行った。排尿・排便検出部には半導体式においセンサーを、データ送信および受信部にはbluetoothを、センサーおよび送信部への電源管理と信号制御には超低消費電力マイコンチップMSP430を採用した。システムの電源を最適な条件で制御することで、市販のボタン電池(CR2032:3V、電流容量220mAh)1つでシステムを3日以上稼働させることができた。その一方で、センサー部での消費電力、におい成分の検出濃度の限界などの問題点が課題として顕在化した。今後は、消費電力を極力抑えることが可能なセンサーを開発もしくは市場から見出す必要がある。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、研究成果に基づき新規特許出願が行われなかったが、低消費電力化やセンサーの感度向上の課題が明確になった。市販されている装置の活用によるシステム化、実用化を図り、企業化に向けた可能性が示されたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、ネックとなる「臭センサー」の感度向上や消費電力の削減等に専門家を加えることで早急な実用化が望まれる。今後は、企業と連携を図り、改善を遂行して行くことが期待される。
人工シデロフォアによる革新的高感度微生物センサーの開発 名古屋工業大学
猪股智彦
名古屋工業大学
岩間紀男
本申請では、私共が開発した人工シデロフォア修飾基板による微生物検出システムに関し、従来103個 / mL程度の検出感度であった本技術を数百個 / mLにまで改良することを目的とした。本申請では、現行法の改良、センサーの変更、シデロフォア分子修飾法の改良、の主に3つのアプローチを用いて検出感度の上昇を目指した。その結果、現在の微生物検出システムと人工シデロフォアが修飾された微粒子を併用することで、検出感度を10倍以上向上させることに成功し、申請時の目的であった100〜500個 / mLの微生物を確実に検出可能となった。人工シデロフォアの修飾法の改良にも成功しており、今後は両者を組み合わせる事で10~100個 / mLの検出感度の達成を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、検出感度の向上などの当初目標は十分に達成し、検出感度だけでなく、シデロフォア分子構造に依存する細菌との得意的相互作用の存在なども見出していることは評価できる。
一方、技術移転の観点からは、センサーとしての完成度はまだ低く、実用的にはさらに感度を上げる必要がある。さらに感度を一桁上昇させるとともに、再現性の問題を解決することで実用化が望まれる。今後は、測定法だけでなく細菌との相互作用を利用した多くの応用が期待できるので、新規応用分野の開拓を含めて研究の進展が期待される。
脳波を利用した重度肢体不自由者用の電動車いすの開発 名古屋工業大学
船瀬新王
名古屋工業大学
沖原理沙
本研究は、脳波、特にSSVEPと呼ばれる脳波を使用した重度肢体不自由者用の脳波インタフェースの開発を目指した。
本研究開発においては、特に3つの課題、1)適切な視覚刺激の提示方法、2)視覚刺激の点滅周波数の分別、3)実際の重度肢体不自由者での検証を用意した。
その結果、第1の課題においては、適切な刺激周波数と刺激提示位置を明らかにすることに成功した。第2の課題においては、離散フーリエ変換のみで点滅周波数の推定が可能なことを明らかにした。第3の課題においては、ヒアリングし現システムにおいては問題が生じることを指摘されたため、新システムの構築の準備実験を行った。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも脳波、特にSSVEPと呼ばれる脳波を使用した重度肢体不自由者用の脳波インタフェースの開発に関し、マトリクスLEDを使用したSSVEPの検出や識別による効率的なBCI技術の展開については評価できる。一方、実際に電動車いすにどのように刺激装置を配置するかや、最適刺激強度や形状、インターフェースの改善をに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、周波数解析結果から、かなり照度の高い刺激が提示されているように感じられることから使用感に関する評価や、アイトラッカー等を利用したインターフェースとの比較検討されることが望まれる。
新規膜蛋白質研究試薬の開発 名古屋工業大学
水野稔久
名古屋工業大学
沖原理沙
本研究では、膜蛋白質研究に利用可能な新規界面活性剤の開発を、リポペプチドベースのジェミニ型界面活性剤(PG-Surfactant)を元に行うことを目標とした。まず、膜蛋白質を安定に導入可能な新規の二分子膜形成PG-Surfactantの開発に成功した。次に、膜蛋白質可溶化試薬として利用可能なPG-Surfactantライブラリーを作製し、個々の膜蛋白質に対して有効な可溶化試薬のスクリーニングが可能であることを示した。従来市販されている可溶化試薬(〜20種類)と異なり、非常に大きなライブラリーが構築可能であるため(〜10万種)、今後、新規の膜蛋白質可溶化試薬キットの開発に於いて有効と期待される。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。PG surfactantを用いてリン脂質代替の膜タンパク質可溶化試薬ライブラリーを作製することを示した点は評価できる。一方、得られた成果は学術的価値は非常に高いが、技術移転の観点からは、界面活性剤の鎖長やペプチド部分の構造など、検討課題の進展が必要である。今後は、より多くの膜蛋白質での実証を期待したい。
核酸デリバリーシステムのための新規カチオン性脂質の合成と機能評価 名古屋工業大学
出羽毅久
名古屋工業大学
太田康仁
核酸医療を目的とし、核酸(遺伝子,siRNA)を高効率に細胞内に導入(デリバリー)および機能させるため、(1)細胞への高い取り込み能および(2)細胞内環境下で高い核酸放出能を有する新規カチオン性脂質の合成を行い、その細胞内核酸送達能の評価を行った。高い細胞透過性を有するカチオン性部位と脂質を結合させることにより(1)を実現した。また、その結合に細胞内環境で開裂する結合を用い、細胞内での高い核酸放出能(2)が付与されることにより遺伝子送達活性の増大が認められた。今後、(1)および(2)の機能をあわせ持つ分子の設計・合成により、高効率な核酸デリバリーシステムへと繋げる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。カチオン部位の違いにより遺伝子送達活性に違いがあることが見出され点、高活性に向けて改善工夫されている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、次のステップとして分子構造を詳細に検討することにより高活性なカチオン性脂質を開発することなど実用化を意識して企業側とのコンタクトを積極的にすすめることが望まれる。今後は、連携企業を探し、共同研究を実施して成果を社会還元できるような体制で研究開発を進めることを期待する。
コンプライアントメカニズムによる柔軟一体型構造を有する低侵襲手術ツール 九州大学
荒田純平
九州大学
三角可恵
従来の低侵襲手術ツールには、リンク機構、ワイヤ機構などが用いられているが、構造が複雑なため、「滅菌消毒の容易性が低下」・「操作が煩雑」・「より高度・微細な操作への発展が困難」などの問題がある。本課題ではこれらの問題を解決するため、コンプライアントメカニズムを導入した低侵襲手術ツールを開発した。試作機として開発した腹腔鏡用低侵襲手術ツールは、機構を柔軟変形要素のみにより構成し、直径3.2mmと細径でありながら、把持と屈曲の2自由度を手元ハンドルにより直感的に操作可能である。本課題では、本試作機の機械的試験と、実際的な臓器把持実験を実施し、有用性を明らかにした。このことから、コンプライアントメカニズムの柔軟一体型構造の手術ツールへの適用の有効性が示され、そのフィージビリティが明らかになった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目標とした柔軟一体型構造を有する低侵襲手術ツールに適合した新たなメカニズム創出と繊細動作のための高い操作性実現について、試作機を完成させ操作実験も良好な結果が得られており、当初の目標が達成されたと評価できる。一方、技術移転の観点からは、知財戦略と市場ニーズの整理をおこない、最適な共同開発先を見つけて、実用化を進めることが望まれる。今後は、試作機が作製され、仕様がはっきりしており、将来的な社会還元は十分期待される課題であるので、早急に製品化を進めることが期待される。
膵癌の治療開発モデル動物を用いた抗癌剤治療効果判定法の検討 名古屋市立大学
深町勝巳
公益財団法人名古屋産業科学研究所 中部TLO
羽田野泰彦
申請者らは、開発が困難であった膵管癌モデル動物の作製に成功し、血清診断マーカーも同定している。本研究では、この膵管癌モデル動物と血清診断マーカーを用いて、治療効果を判定可能か検証し、ヒト膵管癌の治療モデル動物としての有用性を確立することを目指した。ラットに発生させた膵管がんの大きさと同定した血清診断マーカー値が有意に正に相関したことから、血清診断により腫瘍の大きさを推定可能であることが明らかとなった。また、膵癌細胞を移植したマウスにおいて、抗癌剤の効果と血清診断マーカーの値がよく相関したことから、血清診断マーカーにより治療効果を客観的に評価可能であることが示唆された。目標はほぼ達成でき、今後、実際に本モデルで治療効果の判定が可能か治療法も含め検討したい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に多くの重要課題をもった膵管癌をターゲットにした発想は評価できる。一方、技術移転の観点からは、実験モデル動物は企業との産学共同課題につながる可能性を秘めているが、腫瘍形成能をある程度一定にしないと実用化は難しい。 動物モデルの腫瘍の大きさなどの形成能に関する問題点など精度を上げること、また血清診断マーカーの評価法を明確にすることなどが望まれる。今後は、本モデルを用いて多くの治療方法を検討することが期待される。
グリップのユニバーサルデザイン化のための表面形状の最適設計 名古屋市立大学
横山清子
公益財団法人名古屋産業科学研究所 中部TLO
羽田野泰彦
本研究は、1)表面凹凸の深さ、密度、形状を変化させて作成したグリップを介して、静的に(支える)、あるいは、動的に(捕まえる)荷重を変動させ、筋負担、心理的な握り心地の変化を実験により測定する、2)静的・動的各荷重負荷に対する最適なグリップ表面形状の設計要件を抽出する、3)設計要件に適合するシャワーヘッドを試作し、効果の検証を行う、ことを目標とする。凹凸の深さ0.1mm、凸部が9mm×9mmの矩形の模様において、身体負担低減と握り心地向上の効果が得られた。この表面形状は滑りやすさが大きい欠点があるため、表面形状を均一にせず、手の圧感度が低い部位で握る部分のエッジを増やすなどの工夫が必要で、これについて、具体的な製品を対象とした詳細な実験を今後実施する予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目標とした実験の実施、結果の分析等を行い、成果が得られているので、当初の目標は、達成されていることは評価できる。また、実用化につながる分析が行われているので、技術移転につながる研究成果は得られている。一方、技術移転の観点からは、グリップは目的、使用者の属等多様なファクターを持つので、特定の目的に限定した場合には技術移転の可能性は高いが、他の用具に対しても、一般化することが可能かどうかの見極めが、重要と考えられる。今後は、グリップの目的等をもう少し明確にタイプ分けし、タイプ毎の特性を明確にすることが期待される。
特発性間質性肺炎に対する新規薬剤スクリーニング受託試験の上市を目指した研究 名古屋市立大学
金澤智
公益財団法人名古屋産業科学研究所 中部TLO
團迫裕
平成24年シーズ探索研究等の助成により、D1CCホモ型マウス(間質性肺炎モデル動物)の販売契約を中部TLO・オリエンタル酵母工業(株)間で進めることができた。本申請では次のステージとして、特発性間質性肺炎に対する新規薬剤スクリーニング受託試験の上市を目的とした3つの課題検討を行った。1)間質性肺炎の発症時期の制御を試みた、2)間質性肺炎マーカーのモニタリングを正確に行うため、溶血を抑えたより簡便な血清採取方法を確立した、3)薬剤スクリーニング試験を上市する際の「基本マニュアル」を作成した。これらの研究開発結果を利用し、難治性疾患である特発性間質性肺炎に対する創薬スクリーニングへの貢献を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもモデルマウスを上市させた点については評価できる。一方、IP発症をコントロールする具体的な方法を明確にする必要がある。実用化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、間質性肺炎の治療に取り組む製薬企業と連携し、開発を推進することが望まれる。
ウイルスの転写活性化因子Tatを標的とする新規抗HIV薬の開発 名古屋市立大学
岡本尚
公益財団法人名古屋産業科学研究所 中部TLO
團迫裕
現行の各種抗HIV薬を組み合わせて用いる「カクテル療法」はHIV感染者中の検出可能なHIV量を検出不可能なレベルにまで低下させることを初めて可能にしたが、HIV感染は感染者体内で数年から数十年の間にわたり慢性で潜伏感染する。この間に蓄積する遺伝的変化のために薬剤耐性ウイルスの出現は不可避である。本研究計画では (1)潜伏感染しているHIVに有効で、(2)HIV複製の律速段階を直接標的にする治療であり、(3)従来の薬剤との併用が可能である薬剤の開発を試みている。これまでの研究で標的分子の詳細な立体構造解析が終了し、シード化合物を同定した。研究達成度はほぼ50%程度と自己評価している。今後の展開の中で、さらに阻害化合物の構造最適化を進めたい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。CycT1の立体構造解析を解析して化合物#54の阻害効果を確認したことは評価できる。一方、既同定化合物の構造最適化を行う必要がある。また、研究成果に基づいた新規特許出願等に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後、競合薬剤との差別化のため、さらに抗ウイルス効果の高い化合物へと最適化することが望まれる。
消化管癌の超高感度内視鏡診断を目指した新規光線力学的診断法の開発 名古屋市立大学
片岡洋望
公益財団法人名古屋産業科学研究所 中部TLO
團迫裕
癌細胞が糖を特異的に取り込む性質は、PET-CTなど高感度の癌診断に今日利用されている。我々は糖鎖を光感受性物質クロリンに連結した高腫瘍集積性光感受性物質、糖鎖連結クロリンを開発した。
これまでの成果で優れた腫瘍集積性を示すことから、極めて高感度の腫瘍イメージング、光線力学的診断が可能と考えられる。現在、5mm以下の超早期消化管癌を内視鏡下に確実に診断することは困難である。「癌細胞のみを光らせる」、すなわち糖鎖連結クロリン静脈注射後、420 nmの特定波長光を照射し、癌細胞より励起される赤色蛍光を高感度に内視鏡で感受することにより超早期消化管癌診断を可能とする光線力学的診断法開発を目指す。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に複数の糖を導入するというアイデアは優れており、開発したMクロリンに関する新たな特許出願に至った点や、関連して既にメーカーとの具体的連携が始まっている点も評価できる。一方、技術移転の観点からは、今後の研究開発の方向性については、薬剤の水溶性の向上、薬剤排出速度の改善、PDDに関する安定性の向上等、課題が具体的に記されている。代表者らにより既に公表されているGクロリンの方が、本研究で開発したMクロリンよりも、腹膜播種モデルではよい成績となっており、MクロリンにGクロリンを上回る有効性が認められないのであれば、必要な改善を加える研究を加速して特許内容を強化していくことが求められる。今後は、順調に進捗すれば、機器メーカーに加えて製薬企業との連携も必要となるとみられる。その際、体系的で強い特許構築がなされているか否かが重要な要素の一つとなる。経験ある優れたアドバイザーを得て、開発されることが期待される。
RNAを利用した新奇ダニ防除法の開発と応用 名古屋大学
新美輝幸
公益財団法人名古屋産業科学研究所 中部TLO
羽田野泰彦
家屋に出現する衛生害虫に対する殺虫剤の使用への安全性は極めて重要である。しかし、既存の殺虫剤は毒劇物である化学薬品を用いたものがほとんどである。また、有効な殺虫剤に対する耐性害虫の出現は未解決の難題となっている。このような状況の中、申請者らは化学農薬に依存した既存の殺虫剤の限界を打破する画期的な新技術の開発に成功した。申請者らは、害虫の生存必須遺伝子由来の二本鎖RNAが殺虫効果を示すことを明らかにした。本研究開発では、農業害虫および衛生害虫としてダニ類を対象に、殺虫剤として有効なRNAの効率的利用法に向けた基礎的データの取得を行った。今後は、本開発結果をもとに産学共同の研究開発を実施する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ダニ類においてjap遺伝子のクローニングに成功したことについては評価できる。一方、技術移転の要となるであろう長期間安定なRNA農薬の開発を目指した、RNAの修飾方法等の技術的検討検討や農薬登録に必要な、対象外生物への作用の予測などの安全性評価などのデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、ダニでの防除効果を実証すると共に既存のダニ用殺虫剤の現状分析に基づき本技術の有用性・優位性を再考されることが望まれる。
CD8+制御性T 細胞の新たな研究展開とそれに基づいた創薬ターゲットの探索 名古屋大学
鈴木治彦
公益財団法人名古屋産業科学研究所 中部TLO
羽田野泰彦
目標:CD8+CD122+制御性T細胞(Treg)の活性を薬剤によって調節し、自然に近い免疫制御を行うことで、免疫原性疾患に対処する道を切り開くことが可能となる。その基礎的段階として、このTregのTCRの多様性を調べ、その認識する抗原を同定することを目指した。
達成度:このTregのTCRβ鎖のCDR3領域の配列には通常のT細胞には無い多様性の偏りが見られた。この発見は大いなる達成であったが、Tregの集団決定そのものに疑惑が生じたため、抗原同定に進むことは見送られた。その代わりとして、in vitroおよびin vivoでのTreg活性を調べる信頼性の高いアッセイ法を確立し、IL-10ではなくFas/FasL系がこのTregの制御能発揮に重要であることを証明した。
今後の展開:新たに確定したTreg細胞集団について、その認識する抗原の同定を目指す。その抗原刺激によってFas/FasL系が起動し、細胞傷害によって制御が実行されるプロセスを明らかにしていく。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。他の研究グループが取り組んでいない課題に挑戦しており、技術革新につながる可能性があることについては評価できる。一方、CD8 T細胞の抑制活性が、ヒトの自己免疫疾患やがん患者の抗腫瘍活性にどの程度関与しているか明らかにする必要がある。今後は、CD8+CD122+細胞解析の実験系を構築するなど基礎研究を進めて、ピンポイントで開発課題を絞ることが望まれる。
球脊髄性筋萎縮症の新たな混合抗アンドロゲン療法の開発 名古屋大学
足立弘明
公益財団法人名古屋産業科学研究所 中部TLO
團迫裕
球脊髄性筋萎縮症(SBMA)は成人発症の下位運動ニューロン疾患であり、アンドロゲン受容体(AR)遺伝子内のCAG繰り返し配列が異常延長している。SBMA患者への異なる抗アンドロゲン療法の二重盲検試験が日本と米国で行われたが、主要評価項目では有意な改善効果は認められず、リュープロレリン投与後のSBMA患者の剖検神経組織では変異ARの蓄積が残存していた。そこで、さらに強力な病態抑止治療の開発のために、AR二量体形成抑制薬の効果をマウスモデルで検討し、治療効果を得た。今後は、AR二量体形成抑制薬とリュープロレリンの併用効果を明らかにして、その実用化へ向け企業へのアプローチを進める。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に当初の目標どおり、混合抗アンドロゲン療法の効果を確認できている点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、モデルマウスでの知見を臨床の場にどのように展開するかの検討、知的財産権の確保、企業へのアプローチを進めることが望まれる。今後は、臨床的にヒトで有用であることを確認し、積極的な展開を大学の知財部門などと協力し、研究を推進することを期待する。
誘電体バリア放電プラズマ・液体界面によるマイクロ流路内機能創発技術 芝浦工業大学
山西陽子
名古屋大学
安田匡一郎
本研究ではマイクロ流路内にプラズマ・液体界面を有するマイクロナノ気泡列を発生させ、プラズマ状態の気泡を輸送し悪性細胞の殺菌・死滅技術・3次元加工等に役立つ技術を目標に研究を行った。まずマイクロチップ内に低温プラズマを安定に生成する空間としてプラズマリザーバを設け、そのリザーバ領域からマイクロ流路内に向かって離散化したプラズマ状態の気泡を放出することに成功した。プラズマ気泡が後流まで輸送される距離は最初数百μm程度であったが、プラズマ発光が消滅した後もラジカル活性状態の気泡が後流部へ輸送されることが試薬の反応でわかった。その後、電極配置を見直し、第3番目の電極を下流部に設け、より遠くにプラズマ状態の気泡を輸送すること成功し、従来比30倍もの距離で輸送できることがわかった。また内視鏡等への組込みなどの実用化へ近づくために従来の2次元から3次元プローブ内に誘電体バリア放電を発生させプラズマ状態の気泡をチューブ内に輸送することに成功した。現在発生したプラズマ気泡が照射される領域の位置制御を行っており、今後の実用化へ向けてプラズマ気泡の小型化と合わせて開発を行っていく予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、プラズマ気泡を従来比で大きく輸送距離を伸ばすことが出来たことから実用を目指すには優位な状況が生まれたことは、評価できる。一方、技術移転の観点からは、もう一つの目標であるマイクロカプセル作成についても、具体的な解決策を定めて研究開発を進めることが望まれる。今後は、実用化機器の試作と生体照射・治癒効果の実験には多くの費用がかかると予想されるので、早急に共同研究の企業を見つけて、応用開発に進むことが期待される。
動物実験用生体埋め込み型気流センサの開発 名古屋大学
式田光宏
名古屋大学
押谷克己
新薬開発時における「安全性薬理試験ガイドライン」に適合する「唯一の呼吸器系測定技術」の確立を目指し、実験動物の気道に埋め込みが可能な気流センサを開発した。具体的には、MEMS技術を駆使して、(1) 気道内に中長期間に渡り埋め込みが可能な気流センサデバイスの開発、(2) 中期信頼性評価と実証データの取得、の二つの課題に挑戦した。(1)に関しては、気流センサに高湿度環境下対策を施すとともに、気管内への留置に適したアンカー付き気流センサの試作に成功した。(2)に関しては、中期計測を実現するには、高湿度下環境対策のみでは不十分であり、アンカー付き気流センサの開発が必要であることを明らかにした。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、中長期連続埋め込み実験の実施には至らなかったが、想定していた課題に対する解決策を実施し、次ステップでの中長期埋め込み実験に向けた準備が整った点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、医学部との連携した動物実験も行われており、実用化に向けて着実な前進が見られた。実用化された場合の波及効果は明確かつ大きいので実用化が望まれる。今後は、広く海外にもアピールするとともに、本技術を発展させ、医学域、工業用センサ分野などに拡大するコーディネータの積極的活動が期待される。
放射線治療時の線量モニタリングを可能とする超小型光ファイバ線量計 名古屋大学
渡辺賢一
名古屋大学
押谷克己
これまで開発を進めてきた輝尽性蛍光体であるBaFBr:Euと光ファイバを組み合わせた小型線量計において、輝尽性蛍光体部を従来のBaFBr:Euより人体組成に近いものに変更することで、その応答を人体内の線量測定により適したものとなるよう改良を進めた。モンテカルロシミュレーションにより、KBr:EuあるいはCaF2:Ceを用いることで、検出器応答が改善されることを見出した。また、実際にKBr:Euを用い、直径約1 mmの線量計を製作し、検出下限線量として従来の小型線量計であるMOS-FETと同程度の8mGyを達成した。また、CaF2:Ceもより人体組成に近い輝尽性蛍光体として、今後の更なる検出器応答改善に向け、有力な候補材料となることを見出した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に超小型光ファイバー線量計の開発に取り組み、既存の輝尽性蛍光体よりも設置依存性の優れた材料ができた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、高効率の小型線量計を達成する計画の検討と、新たな材料開発が望まれる。今後は、低線量領域を測定できる超小型線量計は、患者の被ばく低減にも有効なので、実用化が期待される。
高出力ファイバレーザーを用いた長波長帯高感度超高分解能OCT 名古屋大学
西澤典彦
名古屋大学
押谷克己
本研究課題では、散乱の小さい新しい波長帯として注目を集めている波長1.7um帯において、高出力な超広帯域光源(スーパーコンティニューム(SC)光源)の開発し、それを用いることで超高分解能OCTの高感度化を図ることを目標とした。まず、高繰り返し超短パルスファイバレーザーを開発し、光増幅器、そして光ファイバの非線形効果を用いて、光強度が従来の約2倍の60mWで、スペクトル幅242nmの、低雑音でガウス型に近いSC光源を開発した。更に、開発した光源を光干渉システムに用い、深さ分解能が生体中で3.0um、感度105dBの高感度・超高分解能OCTを実現した。更に、開発したOCTを用いて、イメージングを行い、水分の含有率が低い生体サンプルにおいて、これまでの光源と比較して、明らかな侵達度の向上を確認した。今後、企業との共同研究を進め、光源やOCTシステムの実用化を進めていく予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、光増幅器の改良によって光源を高出力化し、OCTの高感度化・高分解能化を達成している。実際に、生体サンプルをもちいてこれらの効果が確認されており、技術移転の可能性が高まっていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、技術移転に際しての道筋は記載されているが、現時点でのさらなる技術的課題は明らかにされていないので、先行して課題を明確にすることにより実用化が望まれる。今後は、技術移転の検討と平行して、早急に特許出願を検討されることが期待される。
脂肪由来間葉系幹細胞が分泌するマイクロべジクルを用いた新規治療法の開発 名古屋大学
丸山彰一
名古屋大学
山本鉱
今回研究対象を、マイクロベジクル(MV)だけでなく、更に小さく、複雑な分泌様式をもつExosomesにまで広げた。LASCが分泌するMV/Exosomesを、従来の超遠心法を用いるのみならず沈降法によって安定的に回収することが可能となった。また、含まれるmRNA, miRNAの標準化(normalization)は、一般に、MV/Exosomesに対するhouse keeping geneが定まっていないため困難であったが、回収の際に線虫由来のmiRNAを生成過程で混入することで、可能となった。
限られた種類のmiRNAに関して、LASC, HASCのMV/Exosomes に含まれている種類を検討したが、検出されないもの、大きく変わりないものに別れ、大きな違いを見出すことは出来なかった。今後はmiRNAアレイなどを用いて、より網羅的にLASCの分泌するmiRNAを解析していく予定である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、課題の新規性、独創性はあるものの、MV(Exosomeにまで拡大)の精製ならびに実用化にはまだまだ基礎的な研究が求められるが、調整法の簡便化、MVの標識による細胞への取り込み、線虫のRNAによるMVの標準化等の検討は評価できる。一方、申請者らのグループはLASCを用いた腎炎をはじめとする治療の基礎実験を終え、臨床試験を進めている。ただし、その有効性はまだ基礎研究段階であり、克服する課題が多い。MVが有する成長因子や抗アポトーシス作用等の作用の技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、MVの標準化、高性能化のチェックがしやすくなるものと思われるので、MV大量調整が一歩進展することが望まれる。
タンパク質のDNA様構造解明による自己免疫疾患治療薬の開発 名古屋大学
内田浩二
名古屋大学
松谷悦哉
脂質酸化により修飾を受けたタンパク質の2本鎖DNA様部位が、全身性エリトマトーデス(SLE)発症の機序であると考え、その部位の構造を解析・決定することを目標とした。研究の結果、SLEにおける自然抗体IgMの過剰産生や、自然抗体の多重交差性の分子機構として陰性荷電分子への親和性を認めた。一方、核酸染色試薬を用いて、自己抗体が認識するタンパク質構造に関する化学的知見を得た。これらの知見は、自己抗原の構造や、SLEの新規特異的治療薬の探索に基盤を与えるものと考えられる。今後は、抗原分子と相互作用する抗体以外のタンパク質(血清タンパク質など)の同定により、阻害剤の開発などの応用面での展開が期待される。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。SLEモデルマウスに見られる抗DNA抗体が、脂質酸化物修飾を受けたタンパク質に対して交差反応性を示すという発見に基づき、これらの修飾タンパク質がSLE発症の原因となる可能性を想定し、タンパク質にDNA様構造を持たせるハプテンとしての脂質酸化物修飾の可能性が示され点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、産学協同の研究開発ステップに至るには、もう一段の進展が必要である。今後は、基礎研究としてさらなる展開が期待されるが、企業等への技術移転に至るまでには、スクリーニング系構築、阻害剤の探索、知的財産権の確保などいくつかのステップをクリアーすることが望まれる。
化膿性関節炎の骨関節破壊に対する、高分子ヒアルロン酸の予防適応の検討 名古屋大学
高橋伸典
名古屋大学
松谷悦哉
化膿性関節炎は乳幼児で発生頻度が高く、骨軟骨破壊による永続的な関節障害を伴うことから、予防的治療法の開発が強くのぞまれる。外科的洗浄と抗菌剤という標準的治療に、高分子ヒアルロン酸投与による骨軟骨保護効果を加えることで、後遺障害を予防することが目標である。ヒト滑膜線維芽細胞において、LPS刺激による軟骨基質分解酵素(MMP)、骨基質分解酵素(カテプシンK)、および破骨細胞活性化因子(RANKL)の発現亢進は高分子ヒアルロン酸添加により抑制されることが確認された。化膿性膝関節炎モデルラットの作成に成功したため、今後in vivoでの関節破壊抑制効果の検討を開始する。ヒアルロン酸注の化膿性関節炎に対する新規適応取得と、小児の変形性関節症の予防という社会的目標を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも当初予定したヒアルロン酸の効果が得られたことと、それを評価する病態モデルを確立したことについては評価できる。一方、このモデルを用いて、病態モデルの妥当性や投与法などの検討を行い、産学共同に向けた技術的検討やデータの積み上げが必要と思われる。炎症や化膿がある程度進行するとヒアルロン酸の効果が出てこない場合、どう対処するのかも重要な課題である。今後は、in vivoの実験回数を増やすこと、また、異なった動物を対象として実験を試みることが望まれる。
心不全の発症予防を目指す治療薬および診断マーカーの開発 名古屋大学
坂東泰子
名古屋大学
松谷悦哉
心不全は5年生存率30-40%と予後不良で、患者数も多く発症予防の開発が急務である。収縮能が低下する収縮不全の前段階には、拡張不全性心不全の病期が存在する。申請者らは、心臓毛細血管内皮に発現するセリンプロテアーゼDPP4の活性異常が、糖尿病による拡張不全性心不全発症の一因であることを見出した。
本研究の目標
DPP4阻害剤投与が、糖尿病合併症としての心不全発症を抑制しうるか、更に、DPP4活性のモニタリングが糖尿病及びそれ以外の原因による拡張不全心発症を予測しうるか、を検証する。
本申請分における達成度
前臨床試験はほぼ完了し、心不全の原因によらず、DPP4阻害という介入が心不全予防・改善効果を示す事が検証された。現在、糖尿病合併心不全患者合計50例に対する医師主導型前向き臨床研究(登録症例数50症例)を開始した(臨床研究登録番号:UMIN000006836、UMIN000012209)。
今後の展開
本申請期間内に時間的及び資金的に達成できなかった 患者検体における血管内皮機能障害・DPP4活性と拡張不全の関係の検証の実施をめざす。また、研究開始した糖尿病合併心不全患者合計50例に対する医師主導型前向き臨床研究(登録症例数50症例)を完了する(臨床研究登録番号:UMIN000006836、UMIN000012209)。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。新たな概念による心不全治療戦略を提唱する研究であり、その独創性は高く評価できる。また、血清DPP4活性の測定によって心不全の重症度のパラメーターとなる可能性も示された点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、知的財産権確保が望まれる。糖尿病治療薬として臨床で用いられているDPP4阻害薬が心不全の改善にどの程度寄与できるかという臨床研究がポジティブであれば、今後、薬物の適応追加として承認されるべく研究を推進することが期待される。
「PLAタグ」を利用した異種タンパク分泌発現システムの開発 名古屋大学
岩崎雄吾
名古屋大学
大住克史
本課題では組換え大腸菌を用いて異種蛋白質を菌体外に分泌発現させることを目的とした。種々各種酵素や単鎖抗体をホスホリパーゼA2タグ(PLAタグ)との融合蛋白として発現させ、それらの分泌発現に成功した。しかし、更なる検討の結果、これらの蛋白質はPLAタグを融合せずとも菌体外に分泌されることが判明した。そこで、酵素の生産を最適化したところ、1リッターあたり数百mgもの発現量を達成した。またPLAタグ-単鎖抗体融合タンパクに関して、PLAタグを検出タグとしても利用することで、二次抗体を用いない簡便な酵素免疫検出系を構築することができた。 当初目標とした成果が得られていない。中でも、異種タンパク質(Candidaリパーゼ)がPLAタグに依存せず大腸菌から分泌されたことの原因や他のタンパク質等との相違点などの技術的検討や評価が必要である。今後は、種々の既存の抗体の検出用タグとの性能面とコスト・価格面などからの比較をされることが望まれる。
使い捨て可能なポリマー製ナノデバイスによる感染症診断 名古屋大学
安井隆雄
名古屋大学
渡邊真由美
本研究開発の目標は、ポリマー製ナノデバイスの作製技術を開発し、実用化可能なナノデバイスを用いた感染症診断技術を確立することであった。今回、達成したこととして、冷却下で長時間ドライエッチングに成功し、ポリマー製ナノデバイスの作製に成功した。また、感染症の診断技術においては、感染症の一つである結核菌由来DNAの増幅に成功し、ナノデバイスを用いた感染症由来DNAの無標識検出を実現した。今後の展開としては、本システムの実用化を目指し、持ち運び可能な感染症診断システムの開発を目標とする。そのために、無標識検出を行うデバイス・検出系を含めたシステム全体の小型化を行う予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ガラス製に代わってより安価なポリマー製のナノデバイスを開発利用するための研究は有用性は高く、高感度なナノデバイスの構築が可能なことが示されたことは評価できる。一方、加工に時間コストを要する方法であり、従前の研究から利用の観点で進歩があるとはいいがたい内容である。安価なデバイス政策を目指すべき研究において、冷却下、長時間のドライエッチングと言う方法を選択すること自体がそもそも不適切である可能性が高く、さらなる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、計画を見直し、目的に合致した方法論を選択されることが望まれる。
フラボノールの金属還元―空気酸化によるアントシアニンの大量合成法の確立 名古屋大学
吉田久美
名古屋大学
渡邊真由美
アントシアニンは、各種機能性が期待されるポリフェノール色素である が、従来その供給は天然からの抽出に頼っており、合成も多段階を要し容易で はない。本研究では、申請者等が開発した配糖化フラボノールの金属還元-空 気酸化の2段階反応によるアントシアニンへの変換反応の条件討と色素精製法の改良を行った。汎用性が高く、簡便かつ高収 率での各種フラボノールおよびフラボンからアントシアニンへの変換法を確立 した。現在、数gスケールの反応が可能となり、純度90%以上の色素を70%以 上の収率で得ている。さらに、メチル化フラボノールの合成とメチル化アントシアニジンへの変換も実行した。今後 は、本法の適用による多種類の非天然型を含むアントシアニンの多量供給が実 現し、抗がん、抗動脈硬化、眼精疲労の緩和など各種の薬理作用、サプリメン ト作用の研究、色素増感太陽電池の色材研究の展開が期待できるものと考えている。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に起案者独自のアントシアニン合成法をラボスケールで最適化することに成功していること、また誘導体についてもいくつか合成に成功していることに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、既存技術との比較により、アントシアニン類が優位性をもつ分野を見つけることが必要である。Znが10倍量必要なことや最終物の純度が90%であること、発熱量のコントロールなど大量合成にむけて解決すべき問題が残されている。知的財産権の確保も重要である。今後は、安価な還元剤のみを用いたワンポット合成の反応条件、特に還元反応のブレークスルーを期待する。
抗NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)作用を有する食品の開発 名古屋大学
小田裕昭
名古屋大学
武野彰
NASHは、メタボリックシンドロームを背景に持つことが多く、肝硬変、肝臓癌へと進行する。本邦でも100万人が罹患していると推定され、更なる増加が予想されるが、治療法は確立されていない。申請者は、肝障害モデルに対し、シジミの脂質が肝障害の指標であるAST,ALTの上昇を抑制し、肝障害を改善することを見出した。また、ラットにシジミを摂食させると脂質代謝の中心的な転写因子SREBPが低下し肝臓中性脂肪を低下させることを明らかにしている。これらの知見に基づき、シジミ脂質中に含まれる脂肪性肝炎を抑制する化合物、またその作用メカニズムを明らかにし、シジミの脂質から特定保健用食品などエビデンスに基づいた機能性食品を開発することを目指したものである。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、シジミの脂質成分から新たな機能を見出そうとする着想と、脂質代謝改善のメカニズムの解明を目的に代謝経路を追跡した点については評価できる。一方、シジミ抽出物とその脂質画分の症状改善のメカニズムの解明に向けた技術的検討や有効成分のシジミ中の含有量など特に定量的データの積み上げなどが必要と思われる。今後は、企業との連携を早急に図ると共に有用成分の合成も検討されることが望まれる。
フォトカソードを使用した、クライオ電子顕微鏡法に適したパルス電子銃の開発 名古屋大学
成田哲博
名古屋大学
野崎彰子
対象を真に生理的な条件で観察するクライオ電子顕微鏡法は、現在の生物学において必要不可欠なツールである。しかし、100 K以下の低温下で観察するため、温度ドリフトが起こりやすく、スループットと高分解能観察を制約している。このドリフトは、数ミリ秒で電子顕微鏡写真を撮影できるようなパルス電子銃を使用することで克服できるが、そのような電子銃は存在しなかった。本開発では、可視光を照射することで電子を放出する半導体フォトカソードを用い、パルスレーザーと組み合わせることで、パルス電子銃を実際に試作。パルス幅2 msecで電子顕微鏡写真を撮影するのに十分な1nCの電子線量が発生することを確認した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、パルスレーザーとフォトカソードの組み合わせによるパルス電子源の開発の原理的検証はなされたことは評価できる。また、パルス幅1ms、エネルギー幅0.5eV以下、パルスあたり電子線量10nCの目標値に対して、電子線量以外はほぼ達成しており、数年後のこの分野の大きな核となる成果を含んでいる。一方で、技術移転の観点からは、パルス当たりの電子線量の改善のための光電表面の有効な活性化法を早急に取り組むことが望まれる。今後は、新たな特許出願を早期に実施し、本技術に関心を示す国内大手電子顕微鏡メーカーとの共同研究開発により、電子顕微鏡による「生きた」生体の観察技術の飛躍をもたらすことが期待される。
液中プラズマ方を用いた金属ナノ粒子の作製と呼吸器系ガンの非侵襲スクリーニング基板の開発研究 名古屋大学
八木伸也
名古屋大学
野崎彰子
肺や気管支などの呼吸器系に発生したガンを非侵襲検査できるキットの開発を最終目標としているが、その心臓部である「金属ナノ粒子」の作製と「基板」の開発を目標とする。これまでには大腸や直腸ガンに関する非侵襲検査については、Rhナノ粒子基板により、患者らから採取した生体ガスの吸着量に有意な差が認められた。さらには、Rh以外のナノ粒子で金ナノ粒子を新規な作製手法である液中プラズマ法で作製し、その表面が非常に活性であるという知見を得るに至った。また、この金ナノ粒子は細胞膜に見立てた人工リポソーム表面に容易に吸着するという事実も分析できた。達成度としては7割と考えている。今後は、Rhナノ粒子に代わる金ナノ粒子の有用性やさらに安価な金属ナノ粒子の適応について研究を展開することを予定している。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にがんに特異的な生体ガスを金属ナノ粒子に吸着させ、がんの非侵襲的検査キットを作製した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、癌に特異的に結合するとされる生体ガスの性質を見極め、本研究で得られた金属ナノ粒子を用いた基板による生体ガスの捕捉に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、非侵襲スクリーニング基盤が開発されることが期待される。
閉鎖系培養法による低血清培養脂肪由来間葉系幹細胞の新たな培養技術開発 名古屋大学
尾崎武徳
名古屋大学
鈴木孝征
我々は脂肪由来間葉系幹細胞が骨髄由来間葉系幹細胞と比較して臓器再生能および免疫抑制能に優れ、その効果は特に低血清培養(LASC)で増強されることを報告した。しかしLASCを培養するには専用の施設が必要である。この治療を広く普及させるためには閉鎖系培養法の開発が必須である。本課題ではLASCを閉鎖系で培養するシステムを開発することを目的とし、最適なデバイスの検討を行った。当初はマイクロビーズ上でのLASCの培養を目指していたが、ビーズへの接着・増殖がすぐれなかったため、新たな構造のビーズを作成可能かどうか模索している。同時に閉鎖系培養法の異なる手段として接着細胞用の細胞バッグを用いてのLASC培養について検討を始めた。今後はまずLASCの閉鎖系培養法の特許出願を目指し、LASCによる治療法を普及させることを目標としていく。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、脂肪由来間葉系幹細胞の閉鎖系にける新規大量培養を目的とした提案で細胞接着用バッグを用いて閉鎖系培養の可能性に明かりが見える結果を出した。脂肪由来間葉系幹細胞の低血清培養培地での閉鎖系培養において一定の成果を上げたことについては評価できる。一方、細胞バッグを用いた培養法において、本報告における成果ではすぐに技術移転に結びつく研究に発展する段階に至っていない。まだ基礎的研究が必要で、医療現場で用いられるには、成分既知培地での閉鎖系大量培養システムの開発がに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、マイクロビーズの最適処理条件の検討、細胞バッグ培養におけるシート状剥離細胞の細胞分散法の開発をされることが望まれる。
脂肪由来間葉系幹細胞による新しい前立腺癌治療法のフィージビリティ研究 名古屋大学
武井佳史
名古屋大学
鈴木孝征
本課題は、ヒト脂肪由来間葉系幹細胞(Ad-MSC)を細胞製剤として扱い、「がん治療」に応用する、「前例のない全く新しい試み」である。ヒトのがん、とくに前立腺がん細胞に対して、本細胞製剤が「抗がん効果」を示す事をすでに見出しており(特許査定済み)、今回の課題申請において、その分子メカニズムの解明を目指した。その結果、Ad-MSCとヒト前立腺がん細胞(LNCaP)を混合培養すると、がん細胞側の細胞接着因子の発現が有意に低下することを見出した。また、Ad-MSCによる細胞製剤が、一部のヒトがん細胞株においても、抗がん効果を示すことを新たに発見した。今後のさらなる研究継続によって、まったく新しいスタイルの「がん治療製剤」が創製される可能性を示した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ヒト脂肪由来間葉系幹細胞Ad-MSC による前立腺癌の増殖阻害という研究はユニークであり、今回、ヒトがん細胞の一部にも有効であることが示されたことについては評価できる。一方、産学協同に進むには、まだ知見が少なく本研究の有用性はまだ明らかではない。ただ、本研究は、ヒト脂肪由来間葉系幹細胞を再生医療に用いる場合の製剤化や安全性の検討などにおいても有用な情報を提供しうると考えられ、データの積み上げなどが必要と思われる。今後は、次のステップに進むためには、Ad-MSCの抗腫瘍効果のメカニズムの解明が望まれる。
タンパク質接着酵素反応の可視化システムの多面的活用 名古屋大学
人見清隆
名古屋大学
鈴木孝征
高等動物の生体内では、トランスグルタミナーゼという酵素群が、タンパク質を接着(架橋)させる反応を通じ多彩な生命現象に関与する。異常な活性レベルは疾患症状をもたらすため、より有効な活性の検出方法は関連疾患での診断方法の開発に寄与する。これまで本酵素に対する高反応性な基質ペプチドを見出しており、さらなる活用法として、①蛍光共鳴現象を用いた活性測定系の確立、②関与すると推定される疾患診断をめざしたより効率的な活性の可視化を、蛍光標識した基質ペプチドを用いて試みた。試験管レベルで①の系の確立に成功し、今後は細胞内での検出系確立をめざす。また②については線維症モデルマウスでの可視化検出系を確立しており、今後は高感度化や他疾患モデルでの応用をめざす。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に細胞内トランスグルタミナーゼ活性モニター用の基質配列ー蛍光タンパク質融合タンパク質の作製とそれらによるFRETシグナルのin vitroでの検出に成功している点は評価できる。
一方、技術移転の観点からは細胞レベルでの反応系の測定や定量化と感度向上が望まれる。今後は、研究が進展しトランスグルタミナーゼの関与する疾患の診断への応用などが期待される。
筋肉痛の診断と治療効果を可視化・可聴化する医療デバイスの開発 名古屋大学
田口徹
名古屋大学
鈴木孝征
本研究では、肩こりや腰痛患者の筋組織内に限局して生じる過緊張を電気生理学的に検出して可視化・可聴化し、そのポイントのみを限局して治療できる医療デバイスのプロトタイプを開発した。その安全性と有効性を動物実験で確認した。これにより、筋肉痛の効果的診断や治療が可能である。今後、特に鍼治療分野での普及を図る。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、改良点は残っているが和ニスコーティングによる絶縁鍼電極は作成できた。また、性能評価は不十分だがSEA記録装置としての医療デバイスのプロトタイプは試作された。その結果、新規特許出願等は行われていない。ニーズがあり、社会還元につながる研究課題であることについては評価できる。一方、絶縁鍼電極の実用性の向上、記録・刺激装置の小型集約化を図り、ヒトでの実用性試験の検討が必要と思われる。今後は、安全性から治療効果までをふくめた基礎結果を性能評価として実施されることが望まれる。
細胞接着装置タイトジャンクションを制御する低分子シード化合物探索 名古屋大学
廣明秀一
名古屋大学
鈴木孝征
細胞接着装置タイトジャンクション(TJ)は上皮細胞の細胞間バリア機能や血液脳関門の機能を担っているタンパク質複合体であり、生体内において、形成と分解のバランスによって制御されている。本研究では、TJ形成を促進する因子、ZO-1/ZO-2のPDZドメインを阻害する薬物を合理的に設計できれば、特に脳疾患に対する薬物治療の際の血液脳関門透過補助剤を開発できると考え、その候補物質を合理的に探索した。ソフトウェアeF-Seekにより予測された2化合物がZO-1-PDZ1のポケットにKd=0.7 mM / 1.5mMという非常に弱いアフィニティーながら結合することを実証した。また、24万件の化合物DBのインシリコスクリーニングを完了した。今後、ZO-1・クローディン間相互作用の阻害活性を試験管内・細胞内で検証し、高活性の化合物について特許出願を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。血液−脳関門の基脳を制御する可能性を着実に高めた点は評価できる。一方、クローディンと ZO-1/ZO-2 との結合を特異的に阻害する低分子化合物の発見および補助薬の探索には、NMR技法は優位であるがそのNMRの低いスループットもあり、阻害活性測定のハイスループット化が望まれる。今後は、薬理学的パラメーターを実験的に確立することが必要と考えられる。
内耳気圧センサーの制御による慢性痛・うつ病の革新的予防治療法の開発 名古屋大学
佐藤純
名古屋大学
鈴木孝征
慢性痛、うつ病のように天気変化で症状が悪化する疾患(気象病)のメカニズムに内耳前庭器の気圧センサーが関与するという先行研究結果に基づき、気象病を予防・治療できる効果的な内耳刺激法を確立し、装置の開発につなげることが本研究の目的である。本研究によって、気象病の患者群は対照群に比べて前庭器の反応性が有意に高く、前庭器刺激に対する自律神経応答においても特異な反応様式を示すことが明らかとなった。前庭器の感受性の変化が気象病のメカニズム因子であることが示唆されることから、前庭器の感受性を調整することで気象病を予防・治療できる可能性が示された。しかしながら一方で、一部の被験者においては前庭器刺激がかえって症状の悪化を引き起こしたことから、装置の開発に進むためには刺激量、パターンについて更なる検討を必要とすることも分かった。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、今後の研究展開への一つの方向性がみられたことは評価に値する。まだ刺激法やシステムの開発という課題があるが、このような研究を積み重ねることで、装置のプロトタイプ仕様が決まり、知財権の取得や製品化につながるのだと思う。難しい分野で果敢に臨床研究を進めて次につながる一定の成果を得たという本研究の志の高さは評価できる。一方、結論を得るまでの方向性が明確化された段階で、今回の成果を活用して大きい研究費の獲得などに努力して研究継続すべきである。プロトタイプ作成に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、地道に症例数を増やしながらより、有効なプロトタイプ技術の開発につなげることが望まれる。
遺伝子治療実用化に向けた高分子ナノデバイス粉末製剤の開発 名城大学
岡本浩一
名城大学
伊藤和男
噴霧急速凍結乾燥法により、確実かつ容易に溶液製剤化でき(易溶性)、保存時の遺伝子構造が安定に保たれ遺伝子発現能を維持できる遺伝子粉末製剤の開発を行った。得られた製剤はHEPES緩衝液添加後5秒以内に溶解し、十分な易溶性を備えていた。粉末の分散補助剤であるロイシンを添加することで、3ヶ月保存後にゼータ電位がやや低下した以外は粒子形状、粒子径に変化はなく、遺伝子の高次構造も保持されていた。冷所保存した粉末製剤でのルシフェラーゼ活性は3ヶ月保存後においても当日調製した溶液製剤に匹敵し、高い安定性を保持しており、目標はほぼ達成された。ロイシンの効果について、引き続き大学から支給される研究費を用いて研究を継続する予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に易溶性や3ヶ月保存後の遺伝子導入効率の保持など、高分子ナノデバイス粉末製剤の実用化に向けて望まれる基本的な特性を持つ製剤の調製を達成できた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、少なくとも3ヶ月程度の保存に耐える易溶性の高分子ナノデバイス粉末製剤の調製には成功したことから産学共同等の研究開発ステップにつながる可能性は高まったと言える。本技術単独で直ちに医療応用ということにはならないが、遺伝子医薬開発が進めば、本研究で得られた技術が活用され社会に還元されることが期待されることから、実用化が望まれる。今後は、開発しようとする製剤が、注射剤なのか吸入剤なのか、やや曖昧な面もあるため、焦点を絞っ研究開発されることが期待される。
骨粗鬆症予防に対する「顕在的な」機能性効果を評価する新手法の開発 三重県農業研究所
松田智子
NPO法人東海地域生物系先端技術研究会
前川哲男
腸管上皮細胞と骨代謝に関連する破骨細胞・骨芽細胞・免疫系細胞をそれぞれ組み合わせた系を構築した。腸管細胞と破骨細胞の系では、茶抽出物を直接破骨細胞に添加した場合とは異なる結果が得られ、また、その結果は腸管透過率を反映していることが示唆された。これは本研究の目的である食品の「顕在的な」機能性評価に大きく近づくものであるが、茶のスクリーニングには最適ではなかった。そのため、さらに腸管細胞と骨芽細胞、腸管細胞と免疫細胞を組み合わせた系を構築した。本研究で、茶の「顕在的な」骨粗鬆症予防効果を評価する系を完全に構築することはできなかったが、完成までの道筋、すなわち
a. 茶について、腸管細胞+骨芽細胞+破骨細胞の共培養系を構築したうえで、顕在的な骨粗鬆症予防効果を評価し、有用性の高い茶製品を開発する。
b. 破骨細胞のみへの効果を有する食品群において、本研究で構築した腸管細胞+破骨細胞の評価系で顕在的効果を評価し、有用性の高いものを見出す。
を明確にすることができ、あと一歩のところまで到達することができた。
概ね期待通りの成果がえられ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、3つの独立した因子である 「機能性成分の含有量」、「生体利用率」、「活性の強さ」を用いた新しい評価系は、骨粗鬆症の予防に効果的な茶葉のスクリーニング法として利用できる。企業化に向けた課題も明確にされており、地場産業への技術移転はもちろん、飲料メーカー等へ技術移転により新製品の開発が期待できる。
干渉色発現をコントロールする養殖技術開発 三重大学
古丸明
珠の結晶厚は移植した細胞貝の影響を 受ける事が明らかになった。安定した養殖環境下では細胞貝の使い分けによって結晶厚を制御できる。薄い結晶厚を好むのならば青い干渉色を持つ細胞貝を、厚い結晶厚を好むのならば赤い干渉色を持つ細胞貝を選択することによって、得られる真珠の干渉色を制御することが可能になることが判明した。また、水温などの環境要因や貝の成長にともなう要因は、細胞由来の要因よりも強い影響力をもつ事、貝殻真珠層の結晶厚は成長とともに薄くなるが、貝殻の部位によって度合いは異なる事等が明らかになった。これらの結果により、細胞貝(ピース貝)の選抜育種により、真珠品質の制御する技術開発への道が開かれた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、真珠の結晶厚が移植した細胞の影響を受け真珠の干渉色が遺伝的要因によることと光沢の良い真珠を作るには外的ストレスを防ぐことが重要であることを明らかにしたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、真珠養殖における外的ストレスの影響を評価して養殖の実管理の改善に結び付く形での実用化が望まれる。今後も、細胞貝の改良など、真珠の養殖管理の改善に一層尽力されることが期待される。
超好熱菌酵素を用いた免疫賦活多糖の合成 三重大学
磯野直人
株式会社三重ティーエルオー
齋木里文
4種類の超好熱菌から耐熱性β-1,3-グルカンホスホリラーゼを発見した。すべての酵素は80℃以上でβ-1,3-グルカンを合成する能力を有していた。Fervidobacterium pennivorans由来β-1,3-グルカンホスホリラーゼを用いた合成反応の条件検討を行い、重合度30-70の範囲で酵素合成β-1,3-グルカンの鎖長をコントールする方法を確立した。耐熱性β-1,3-グルカンホスホリラーゼを用いて合成した重合度55以上のβ-1,3-グルカンには高いマクロファージ活性化能があることを見いだした。このように、当初計画した本課題の技術的目標は達成された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、好熱菌由来のβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ(BGP)を用いて80℃以上でβ-1,3-グルカンを合成する方法を確立したことと、合成したβ-1,3-グルカン(重合度55以上)が高いマクロファージ活性化能を持つことを確認したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、安価な原料入手の方策も見据えるなどでの実用化が望まれる。今後は、不溶性であるβ-1,3-グルカンの可溶化技術を開発するなどプロセス全体の生産性を把握されることが期待される。
がん幹細胞移植ゼブラフィッシュを用いたin vivoスクリーニング技術開発 三重大学
島田康人
三重大学
伊藤幸生
がん細胞にわずか0.1〜3%程度含まれている「がん幹細胞」は、抗がん剤抵抗性・遠隔転移・長期再発に非常に重要な役割を担っており、近年新たな治療標的として注目されている。しかし、がん幹細胞はその低含有量や取扱いの困難さから、動物個体を用いた実験はおろか、培養細胞系でのスクリーング研究も難しいのが現状である。本研究はこれまでに確立したがん移植ゼブラフィッシュの系を改良し、試験化合物のがん幹細胞に対する作用を、動物個体を用いたハイスループット系で評価する技術を開発した。今回の研究開発では当初目標をすべて達成できた。今後、開発した本技術を用いてがん幹細胞特異的阻害薬の探索研究を民間企業との共同で実施する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、本課題はこれまでに確立したがん移植ゼブラフィッシュの系を改良し、試験化合物のがん幹細胞に対する作用を、動物個体を用いたハイスループット系で評価する技術を開発した。がん幹細胞移植率を改善することできたことにより、今まで培養細胞系や動物での評価困難ながん幹細胞の薬物のハイスループットのスクリーニングを可能にしたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、開発した本技術を用いてがん幹細胞特異的阻害薬の探索研究を民間企業との共同で実施の展開は十分期待できる。抗癌剤の開発には抗体ライブラや核酸ライブラリーのハイスループット化の検討は必要になるが、実用化が望まれる。今後は、海外でも同様な手法を用いて創薬ターゲットバリデーションを行われているので、早めに民間企業との共同で実施する展開が期待される。
ヒマシ油系抗コレステロール新規機能性食品化合物の開発研究 三重大学
八谷巌
三重大学
横森万
当初掲げた光学的に純粋なジガラクトシルジアシルグリセロール誘導体3種全ての合成は達成することはできなかったが、[H23年度探索タイプ ヒマシ油系新規機能性食品化合物の開発研究]採択の成果である図1に示した合成経路にしたがって得たジオール中間体14から、目的の光学的に純粋なヒマシ油から得られるリシノール酸由来のジガラクトシルジアシルグリセロール誘導体17(DADAG)を初めて合成することができた。さらに、抗コレステロール作用を、三重大学メディカルゼブラフィッシュ研究センターでゼブラフィッシュを用い検証を行った結果、10mM濃度以上では稚魚体内TG含量は有意に低下することを明らかにした。今後、目標であった残り2種の誘導体合成の達成、および過去に報告されている比較対象誘導体を合成し、ゼブラフィッシュを用いた抗コレステロール活性の検証と共に、大量スケールでの合成を達成する予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、今後の展開に期待がもてる。特に、合成については今後につながる可能性が見られ評価できる。今後は今回得られた成果を基に、食用、あるいは食品添加物として認可を得るための膨大な時間と費用をかけて、果たして製品として成り立つかどうかを検討する必要がある。また、コレステロールの合成阻害を目指しているが、今後は、吸収阻害との優位性について検討してもよいと思われる。
乳房腫瘤病変のリアルタイム超音波診断支援システムの開発 三重大学
中山良平
三重大学
加藤貴也
本研究の目的は、ハンドプローブによる乳房超音波診断装置上でリアルタイムに腫瘤病変の可能性のある箇所を検出し、その位置を医師に提示する検出支援システムを構築することである。腫瘤病変の自動検出アルゴリズムの基礎となる円形強調処理において、腫瘤病変(直径0.5cm〜2cm)を効果的に検出できるよう、円形・線状パターン検出フィルタバンクをスケールが大きくなるに従いフィルタ幅が倍となる構造に変更した。また、リアルタイム処理を実現するため、マルチコアCPU とGPGPUによる並列処理で検出支援システムを実装した。目標とした検出率80%以上(偽陽性数1.5個以下/患者)に偽陽性数が到達できなかったが、検出率82.7%(偽陽性数3.83個/患者)を得た。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、超音波診断技術の弱点を前回プロジェクトの改善も含め、きちんと理解して、確かな技術力で医療現場の多忙を改善しようとしていることに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、まだ処理速度が遅いことや、折角の前後の近接フレーム画像を活かす(臨床医の目はそれを十分活用している)など改善の余地がある。しかし、技術移転を目指した産学共同等の研究開発ステップにつながる可能性は高く、超音波診断装置のメーカーによる実用化が望まれる。今後は、民間企業の出資による共同研究で、従来法では成し得ない検出精度を持つアルゴリズムを開発されることが期待される。
脊椎固定術において臨床成績を大幅に改善する新型スクリューの開発 三重大学
稲葉忠司
三重大学
加藤貴也
本研究では、現状の片側ペディクルスクリュー(以下PS)固定法の問題点であるスクリューの空転を防ぐ具体的な機構を考案・開発するとともに、開発したスクリューの固定力を力学試験により検証した。空転防止機構としては、大腿骨頸部骨折治療用インプラントの先端部開口機構を参考にし、スクリュー形状や開口寸法等を脊椎用に最適化することにより、椎体内での空転防止機構を付与したPS(先端部開口機構付き脊椎固定術用PS、以下EPS)を開発した。力学試験の結果、開発したEPSは、引抜き試験およびねじり試験における種々の評価項目において従来のPSよりも高い固定性を示すことが分かった。特に、ねじり試験においては、従来のPSに比べ、最大トルクに関しては6.5倍、回転エネルギーに関しては9.0倍もの値を示したことから、本EPSの先端部開口機構は、現状の片側PS固定法の問題点であるスクリューの空転を抑制する上で極めて効果的であることが示唆された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、強度面での脆弱性を克服するための技術課題が残るが、簡単な構造で、従来のスクリューと骨(擬似骨)との固定性を大幅に凌駕するの性能を有するスクリューを実現できる技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、課題は明確で、形状だけでなく、金属材料なども検討対象になる。簡単な構造ゆえ、量産が可能であり、技術移転による実用化が望まれる。今後は、FEMなどによるシミュレーション、ならびに金属材料評価も併用し、固定性と強度の両立を目指した形状設計をされることが期待される。
臭素酸電解水製造装置の開発 鈴鹿工業高等専門学校
甲斐穂高
鈴鹿工業高等専門学校
澄野久生
本研究では、次亜塩素酸電解水では完全殺菌できなかった枯草菌や緑膿菌を完全殺菌できる臭素酸電解水が安定して生成する電解槽を開発し、臭素酸が次亜塩素酸よりも強力な殺菌力を持っていることを明らかにした。しかし、メダカを用いた実験では、臭素酸電解水は次亜塩素酸よりも生体に与える影響が大きく、使用する際の臭素酸の濃度には注意が必要であった。連続的に臭素酸電解水が生成できるフロー式電解槽の確立まで取り組んだが、電解槽中の流水フロー構造と流速の調整がうまくいかず、連続しての臭素酸電解水の安定生成の条件確立が今後の課題である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、滅菌し難い枯草菌や緑膿菌の殺菌を、より身近なシステムにして、衛生的な環境をより簡単に実現する取り組みは評価できる。一方、技術移転の観点からは、既に企業と連携して電解槽の検討を行い、さらに特許出願検討中であることから、より安全、安心で安価なシステムとして実用化されることが望まれる。今後は、多くの有害微生物に対する殺菌効果を明らかにするとともに、人体皮膚への影響などにも配慮して、実用化による社会貢献につながることが期待される。
アームレス移動型ロボットを用いた上肢リハビリ支援システムの開発 鈴鹿工業高等専門学校
打田正樹
鈴鹿工業高等専門学校
澄野久生
超高齢化社会においてロボット技術によるリハビリ支援は必要不可欠である。この背景から、上肢リハビリ支援システムの開発を行っている。しかし、従来のシステムは大型、高コストであり、その普及は困難である。この問題を解決するためアームレス移動型ロボットを用いたリハビリ支援システムを提案した。本申請の目的は試作機を製作し、操作性や安全性などの評価を行い、有効性を検証することであり、試作機を製作し、評価を行った。その結果、現場に置いて種々の問題点が明らかになったためその問題点を改善する試作機を新たに設計し、製作を行った。今後は、この試作機の評価を行い、その知見をもとに提案システムを実用化することである。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、2次試作機の製作並びに評価を実施するとともに、オペレーション用アプリケーションを製作している。高齢者での評価において、技術的課題は明らかになっており、既にそれを改良する3次試作機を完成させている。移動ロボットを用いた新しい負荷抵抗運動用リハビリロボットシステムで、実用的にも期待できるシステムで技術は評価できる。一方、技術移転の観点からは、試作を重ねるにつれ、機能は着実に高まっており、今後の産学協同等の開発ステップにつながる可能性は高まったといえるので、実用化が望まれる。今後は、多くの現場での試験を通して、実用化に向けた開発を進めていくことが期待される。
冠動脈疾患危険因子スフィンゴミエリンの超高感度血中濃度測定法の確立 滋賀医科大学
森田真也
滋賀医科大学
江田和生
本研究課題において、我々が開発した酵素蛍光定量法(特許出願済み)を用いて、血漿、リポタンパク(LDLならびにHDL)および血球細胞中に含まれるスフィンゴミエリン(SM)の定量測定を可能にすることを目標としていたが、わずかな量の血漿ならびに血清、密度勾配超遠心法により分離したLDL・HDL、さらには細胞内に含まれるSMの高感度かつ高精度な定量を実現できた。このことから、当初の目標は、ほぼ達成できたとみなせる。今後は、実用化に向けて、企業と共同で本酵素蛍光定量法のキット製品化ならびに受託測定サービス化を進めていく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、スフィンゴミエリン(SM)の高感度酵素蛍光定量法を、血漿・血清中LDLあるいはHDL中のSM定量、HEK293細胞内SM定量あるいはトランスポーター機能解明におけるSM定量など、研究用試薬キットとしての商品化に向けて成果を得たことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、研究用あるいは診断用試薬キットとしての商品化に対する意欲は認められる。 研究用試薬キットとしての商品化には、産学共同の研究開発としての成果を期待できる状態になっており、本研究課題の本命である診断用試薬キットとしての応用に向けた具体的計画をたてることで実用化が望まれる。今後は、本研究課題の本命である心疾患診断用試薬キットとしての速やかな技術展開に、循環器内科医あるいは検査部研究者との研究協力が必要と思われる。
自走式片手用パワーアシスト車椅子の開発 滋賀県東北部工業技術センター
酒井一昭
滋賀県東北部工業技術センター
宮川栄一
介護なしで、自ら操作することで快適な走行を実現する自走式片手用パワーアシスト車椅子の開発を目的に、申請者がノウハウを有する車椅子のハンドリム操作から簡易な機構で精度良くトルク検出できる新機構を検討し、最大検出操作力を200Nに設定した設計により操作トルク検出機構付ハンドリムを試作した。これを用いて負荷実験を行ったところ、操作トルクの出力電圧が高精度に得られる方法を見出した。また、車椅子の制御性を向上させる観点から3本ハンドリム式の駆動軸部を簡易な機構に改良した。今後は実用化に向けて、自走式片手用パワーアシスト車椅を完成させて、その適用効果を実証していく予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ハンドリムの構造解析を行い、ひずみ検出部の形状を決め、試作したハンドリムの実験から、操作力の良い推定ができることを示したことは評価できる。一方、車椅子への実装までに進んでいなので、車椅子に組み込むことを早めに実施し、実用化への課題・問題点の整理が必要と思われる。今後は、自走式片手用パワーアシスト車椅子の使い勝手の良さの向上や安全性の追求を十分検討されることが望まれる。
看護師・介護士の腰痛予防のための携帯型姿勢改善システムの開発 滋賀県立大学
伊丹君和
滋賀県立大学
安田昌司
看護(介護)現場の腰痛は深刻で、腰痛対策は急務である。本研究課題では、「膝を曲げ上体の前傾を減少させた腰部負担の少ない看護動作」を習慣化して、看護師や介護士自らが腰痛を予防することを実現するシステムを開発した。システム主構成要素である携帯型姿勢改善装置は、常時、前傾姿勢角度を計測して、腰部負担が大きな姿勢をリアルタイムで警告できる。さらに、記録された前傾姿勢角度結果を「前傾姿勢可視化システム」に転送し、ビジュアル提示することにより、看護(介護)動作のさらなる改善を実現できる。今後は、社会的な要請の大きい「看護師・介護士の腰痛を予防するシステム」製品化のために企業との連携を強化していく 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、看護・介護職員の労働環境における介護負担から生じる腰痛予防のための携帯型姿勢改善システムを開発した。看護、介護職の労働環境の整備と腰痛予防につながる点が評価できる。一方、技術移転の観点からは、特許出願を視野に入れた研究計画が予定されており、既に企業との共同研究が進められていることから、さらなる小型化・軽量化により実用化が望まれる。今後は、アウトカムを「腰痛の出現」として研究調査していくことが期待される。
良い入眠・起床を促すLED照明環境の開発 滋賀大学
大平雅子
滋賀大学
山本卓
独自に開発・改良した睡眠時唾液採取装置を用いることにより、メラトニンが主観的には無自覚であってもLED光の暴露に応じて分泌が変化すること、したがって体内において生理学的機能が影響を受けることが明らかになった。これは、光環境を制御することにより、良い入眠・起床を喚起させるという本課題の最終目標の基盤となる成果である。しかしながら、本課題では「色相・輝度環境を制御した光環境の検討」までは、到達することが出来なかった。今後は、色相や輝度等を調節したLED照明環境下における主観的な睡眠感評価及び心拍数や唾液バイオマーカーによる客観的な睡眠感評価の検討を実施して、更なる研究開発を進めていく。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、‘良い目覚めが得られる色相・輝度評価’については検討出来なかったが、睡眠中における唾液中メラトニン分泌の継時的変化を観察し、LED光刺激による変化を明らかにした。唾液採取装置の改良がなされたことにより回収率の改善が得られ、また、LED光によるメラトニン過剰分泌のメカニズム解明という新たなテーマが明らかとなったことについては評価できる。一方、今後の研究開発計画については具体的に示されておらず、商品評価の指標としては不十分である。本来の目的である‘良い目覚めが得られる色相・輝度評価’については全く検討できていないので技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、唾液中メラトニン分泌のLED光による分泌増加の生物学的意義の解明されることが望まれる。
炎症性腸疾患治療用の経口投与用モノクロナールIgA抗体医薬の開発 動物効果試験 長浜バイオ大学
新蔵礼子
長浜バイオ大学
堀伸明
野生型マウス腸管部のB細胞由来のハイブリドーマが生産するあるIgAモノクロナール抗体は、多数の腸内細菌に強く結合した。体細胞突然変異が行えないことにより強い結合力のある抗体を作れず、炎症性腸炎を自然発症するマウスに、このIgA抗体を投与したところ、腸炎の治癒(慢性炎症の前段階であるパイエル板胚中心B細胞の過形成の正常化、および大腸腺管構造萎縮像の消失)が観察された。また、抗体投与前後において、腸内細菌の菌叢が変化することも確認した。本実験により、経口投与用IgA抗体が炎症性腸疾患の新規な治療薬になることが示された。この結果に基づき、特許を出願し、現在共同開発会社を探している。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。IgAモノクローナル抗体の経口投与がG23Sマウス腸炎モデルで治療効果を示すことを明らかにした点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、in vivo 評価のための十分量の抗体の調整が必要となる。モノクローナルIgA抗体大量生産の目途をたてるために、技術移転可能な企業と議論することが望まれる。今後は、分泌因子付加型IgA抗体のG23Sマウス腸炎での効果やDSS誘発マウス腸炎モデルでの効果を明らかにするとともに、抗体の大量生産を達成するために共同研究先企業の早期選抜が重要と思われる。
直径1mmカテーテル把持鉗子の一体構造設計と金属射出成型による高安全低コスト製作 立命館大学
野方誠
立命館大学
橋本敏信
内視鏡やカテーテルの治療で用いる細径把持鉗子の一体構造設計と金属射出成型による製作の融合により、分解による部品の体内残留のない一体構造設計と低コスト製作のディスポーザブル術具による治療の高安全をもたらすマイクロ把持鉗子の実現を目指した。金属射出成型で製作した試験片実験により金属粉末の粒子径や熱処理条件を探索し、把持開閉構造を3D-CADで詳細設計し、開閉把持の変形における応力解析を行った。その結果、開口部0.6mmの開閉の変形のために必要なワイヤ接合部16Nで、降伏応力を超える部分が発生した。そのため、Ti-Ni形状記憶合金材料をワイヤ放電にて加工製作した。ワイヤ張力3.6Nのときに、先端部が閉じ、除荷しても塑性変形なく元の形状に戻ることを確認した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、研究目標は達成出来なかったが、低侵襲手術用極細径鉗子を3D-CADで設計し、金属射出成型(MIM)法で大量生産を行うことを目標として、その実現条件を探索したことは、安全性および経済的に意義ある研究であり評価できる。一方、目標自体の意義は高く、目的仕様を満たす材料の探索に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、産学連携をより広く、かつ強力に行うことが重要で産学共同で研究開発されることが望まれる。
生体音分離技術に基づくビジュアル電子聴診器システムの開発 立命館大学
福水洋平
立命館大学
安川竜二
マイクアレイを備えたセンサーヘッドを備え、音源分離によって取得した生体音から心音/呼吸音/血流音を取り出し個別にヘッドフォンから出力し、その波形をモニタ表示するという特徴をもつ電子聴診器システムの開発に取り組んだ。単一センサーからの音源分離が可能なアルゴリズムを導出することができ、市販の電子聴診器よりも小さなセンサーヘッドにより取得した生体音の分離を実現した。また、実際の呼吸循環器患者による臨床データより、心拍周期や血管狭窄に起因する疾患検出法を導出した。臨床において使いやすいアルゴリズム開発に重点を置いたためリアルタイムな分離波形表示は間に合わなかったが、実用化に向けて課題点が明確になった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、演算量削減による信号分離処理のリアルタイム化や実際の患者に対する臨床データの取得は十分ではなかったが、ビジュアル電子聴診器システムのプロトタイプシステムの製作を実現できたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、開発したビジュアル電子聴診器システムは優れた性能を有しており、呼吸循環器医療への応用を視野に含めた技術移転において有利な要素と成り得る。医師が本当に必要とするシステムを想定しているか?など使用する側の医師の意見を十分に取り入れることで実用化が望まれる。今後は、臨床データを取得することで臨床応用の可能性を明確に示し、さらに技術移転に結びつけられることが期待される。
筋内性ホルモン増加による新規糖尿病治療・予防法開発 立命館大学
家光素行
立命館大学
中尾亨
【目標】本研究の目標は、長期的な運動および性ホルモン様栄養成分の経口摂取による内因性性ホルモン合成の促進が2型糖尿病のインスリン抵抗性を改善させるか否かを検討することである。
【達成度(成果)】高血糖状態の糖尿病モデル動物に長期的な運動あるいは性ホルモン様栄養成分を経口摂取させた結果、性ホルモン濃度の増大とともに血糖値およびインスリン感受性が改善した。また、骨格筋の糖代謝シグナル経路の活性化も認められた。さらに、性ホルモン合成阻害剤の投与により、性ホルモン様栄養成分摂取によるこれらの効果は抑制された。
【今後の展開】今後、ヒトへの検討を進めることにより、生活習慣病に対して予防・改善効果が期待できるサプリメントの製品開発を目指す。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に糖尿病モデル動物に対するジオスゲニン摂取の効果が確認できたこと、ヒトへの応用の可能性が示唆されたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、既存のサプリメントとの相違を明確にすることが望まれる。ジオスゲニン含有サプリメントは既に上市されていることから、用途発明等による特許出願の可能性について検討することが望まれる。ヒトを対象とした場合、当該サプリメントの摂取量・摂取期間などの介入プロトコールについての検討が必要と思われる。今後は、研究開発計画について、国内外の研究者・企業等による追従も予想されることから、特許出願・製品化についてより積極的かつスピーディーな開発が期待される。
ヒトiPS(induced pluripotent stem)/ES(embryonic stem)細胞特異的新規単クローン抗体の再生医療への応用を目指す基盤研究 立命館大学
川嵜敏祐
立命館大学
矢野均
iPS/ES細胞などを利用した再生医学において、細胞マーカー抗体が、規格化、標準化のツールとして利用されている。ところが、これらの抗体のほとんどがEC(embryonal carcinoma cell、胎児性がん細胞)を免疫原として得られたものであり、iPS/ES細胞に特異的な抗体ではない。そこで研究責任者らは、より厳密な細胞特異性を持つ抗体が必要と考え、ヒトiPS細胞を抗原として動物を免疫し、細胞スクリーニング法によりiPS/ESに結合するがEC細胞とは結合しない2種の抗体(XおよびY)の開発に成功した。本課題では、この内Yについて、エピトープの解明、生物活性の有無を中心に研究を推進し、これらの抗体が再生医療において新しいツールとして社会的に重要な役割を果たす可能性が高いことを示した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ES/iPS細胞に特異的な新規抗体を同定した独自性が高く評価できる。加えて、細胞障害活性を有する抗体を同定できたことは、応用への大きな期待が持て評価できる。一方、技術移転の観点からは、YのES/iPS細胞に対する細胞障害特性は再生医療分野での応用の可能性を高く有するものであり、事業化に結びつく可能性が大きく、産学共同の研究開発につながるもので実用化が望まれる。今後は、申請者も自ら記載しているが、アポトーシスでない細胞死誘導の分子機構を早急に解明しないと、proof of conceptに到達することが難しいかと思われ、今後の研究が期待される。
蛍光で簡便に評価できる乳酸脱水素酵素診断キットの開発 龍谷大学
宮武智弘
龍谷大学
筒井長徳
臨床検査でも利用可能な血液中の酵素活性検査キットの開発を目指し、逸脱酵素として知られている乳酸脱水素酵素を蛍光発光により簡便に評価できるシステムの開発を目指した。ここでは、膜透過性の分子と蛍光色素を内封したリポソームを利用して、肝機能障害等の検査に活用できる乳酸脱水素酵素の活性を評価できるキットの開発を行った。その結果、本システムにより乳酸脱水素酵素の生成物を高感度で検出することに成功し、また同酵素の活性を蛍光で検出することができた。また、実用化にむけた課題として、酵素の検出感度向上、ならびに血液中で評価できるシステムの構築の2点を抽出することができ、今後は課題克服に向けた試験を継続して行う。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、 申請者の開発した系での乳酸脱水素酵素(LDH)の検出は、目標としていた検出感度には到達していないが、高濃度では成功した。申請者によるLDHの活性を蛍光で簡便に測定できる系で検出できたことは成果の一つで評価できる。一方、感度の向上と妨害物質の回避という2つの最重要課題で課題解決に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。
今後は、多様な試みをされて2つの重要課題を克服されることが望まれる。
カイコ機能性絹糸の効率生産に向けたウイルス由来転写産物調節因子の開発 京都工芸繊維大学
小谷英治
京都工芸繊維大学
行場吉成
細胞増殖因子を安定に保ち、さらに放出性を持つカイコ絹糸、すなわち機能性絹糸は、細胞増殖を調節できる機能性担体として期待される。カイコ宿主のウイルスのRNA結合タンパク質を利用して、効率的に機能性絹糸を生産するカイコの作出を目指した。ウイルスmRNA調節因子は、培養細胞内でイントロンレスmRNAからのタンパク質生産効率を上昇させることが分かった。このmRNA調節因子を組み込んだカイコを作り出したが、現在このカイコにおける細胞増殖因子効率生産の実効性については検討を行っている。絹糸腺において作られた細胞増殖因子はガンマ線滅菌処理にも耐え、絹糸組織片から放出され、細胞増殖を促す活性も示したことから、本プロジェクトの成果より、物理的に安定な細胞増殖因子を放出できる機能性絹糸を生み出す可能性も示された。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、カイコ培養細胞でイントロンなし遺伝子の発現が2種のタンパク質で促進されることを実証したことについては評価できる。一方、実用化に向けた技術的問題が山積しているので、それらを整理した上での技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、基礎研究としても研究の方向性を見直されることが望まれる。
産業利用に供する麹由来ケラチン分解酵素の機能評価 京都市産業技術研究所
泊直宏
公益財団法人京都高度技術研究所
遠藤達弥
本課題では、化粧品材料としてのケラチン分解酵素の機能解析を実施すべく研究開発を行った。目標として化粧品材料として適した麹の選抜、新規な活性測定法の確立、及び活性に関与する物質の同定を掲げたが、結果として12種類の麹から3種の麹を選抜し、活性に関与する候補物質としてこれまでケラチン分解活性が報告されていない新規のペプチダーゼを同定した。活性測定法についてはISFETを用いた測定条件を確立し、ヒト表皮由来のケラチンについても活性の出力を得ることができた。今後は、本課題で選抜された麹の基本的な特性データをもとに、角質や真皮などの皮膚細胞への影響を評価する研究へと展開していくことが課題となる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも角質成分(ケラチン)を分解する活性が強く、真皮成分(コラーゲン、エラスチン)を分解する活性の弱い麹抽出物を見つけた点は評価できる。一方、化粧品のための酵素剤という観点からは高価であっても基質としてヒトケラチンによる選抜を行い、選抜された麹と酵素が角質除去に効果があるデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、化粧品企業を中心とした連携の構築し、ニーズを踏まえた開発されることが望まれる。
医学用語シソーラスを応用したタブレット情報端末ツールの開発 京都大学
金子周司
最先端医療では、多様かつ複雑な専門用語を日本語と英語でシームレスに扱えること、また、情報端末を用いて最新の医学情報を的確に検索できるスキルが求められる。しかし我が国の医療現場において携帯情報機器の活用は始まったばかりであり、例えば専門用語の先読み入力や、英語の翻訳、あるいはシソーラスによる一括検索などを携帯端末で可能にしたソフトウェアは少ない。本課題では、これまで独自に構築してきた23万語の日英「ライフサイエンス辞書」を医療や医学教育の場で活用するため、スマートホンやタブレット型端末に最適化した「医学用語予測提示辞書」と「英和・和英シソーラスアプリ」を開発した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に医療文書で出現頻度の高い基幹語と、その複合語のセットを作成しており、スマートフォンやタブレット端末で専門用語の入力を可能にするデータを完成させ、10万語を超える専門用語を数文字の入力で選択肢から選べるシステムをパソコンで完成させている技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、スマホとタブレットへの実装OSメーカーと入力システム販売会社へのアプローチがなされており、産学共同研究の成果が企業化に向けての活動が進められている。今後は、重要性が増す研究内容で、医療情報は急速に電子化し、類似した研究が多数出てくると想像できるので、他の商品と差別化できる強みを明確にされることが期待される。
微生物ラッカーゼの新機能を応用したポリフェノールバイオセンサーの開発 京都大学
小川順
微生物ラッカーゼの新機能と高感度信号累積型ISFETイオンセンサー(AMIS)を活用して、特定保健用食品認可食品等に含まれるポリフェノールを測定しうる新規バイオセンサーの開発を試みた。測定に関わる様々なパラメータを検討し、特に、酵素濃度、緩衝液、攪拌条件の最適化を行った結果、没食子酸をモデル化合物とする分析において、濃度依存的な出力を得る基本条件を確立した。また、市販のお茶を対象とした茶カテキンの定量分析に適用し、カテキン含量と相関する出力を確認した。その結果、適切な換算式を導入することにより、本装置を用いた茶カテキンの定量分析が可能となることを示すことができた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、微生物ラッカーゼの新機能と高感度信号の累積型JSFETイオンセンサー(AMIS)を組合せたポリフェノール測定の基盤を確立したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、実用的な感度、出力、精度を達成し企業との共同研究でスケールアップの課題を解決するなどでの実用化が望まれる。今後は、ポリフェノールの含量測定の社会的なインパクトは不透明なので化合物の適用範囲を広げることが期待される。
解糖系代謝シフトによる寿命調節効果を指標とした加齢生活習慣病の新規診断・治療法の開発 京都大学
近藤祥司
私近藤は10年間、一貫してストレス老化予防において重要な、解糖系酵素ホスホグリセリン酸ムターゼPGMの基礎老化研究に従事し、その抗老化・抗酸化ストレス効果に注目し、今後PGM研究を中心として、老化予防の観点からの生活習慣病診断・治療応用を目指したいと考えている。今後のPGM研究の問題点は、PGMが具体的にどのような加齢性習慣病と関連し、その治療ターゲットとなりうるかの解明であると我々は考えた。よって昨年度採用のJST A-STEP探索タイプにて、標的候補として、ある生活習慣病Xに焦点を絞り、PGM値と生活習慣病Xとの相関を認め、特許申請を行った。さらに、PGMモデルマウスの解析よりTGマウスで、生活習慣病悪化を一部確認できた。さらにPGMのユビキチン化に関する論文の発表につい最近成功した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に本来の目標である新規創薬ターゲットとしての有用性の確立にはいたっていないが、創薬ターゲットとしての実験モデルとしての技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、特許が出願されパートナー企業が決まっているが、創薬ターゲットに対する研究計画を絞り、妥当性を明確にする研究内容にして実用化が望まれる。今後は、現在既に確立できているモデル動物で各種病態の修飾に対する作用をまずは調べ、どのような創薬につなげる可能性があるのかを再度検討することがが期待される。
高濃度タンパク質を封入した細胞サイズ脂質膜小胞:アクチン骨格による安定化と大量生産システムの構築 京都大学
市川正敏
京都大学
井内浤二
生体濃度タンパク質溶液を封入した細胞サイズの人工脂質膜小胞(リポソーム)の作製は、ドラッグデリバリーのみならず、より細胞に近い人工モデル系を実現する意味で非常に重要な目標である。しかしこの高濃度のタンパク質を取り込んだ細胞サイズリポソームの作製は、現在まで主流となっているリポソーム作製技術では実質的に不可能であった。そこで、界面透過法というリポソーム作製手法を発展させることで、生体濃度タンパク質溶液を封入した細胞サイズリポソームの作製手法の確立を目指した。本研究では、安定な透過を設計する指針となる物理化学的なメカニズムを実験・理論の両面から解明した。今後、これを生かして、生体濃度でのタンパク質封入、人工赤血球などへの応用を試みる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、界面透過とアクチンフィラメント封入についてはすばらしい成果が出ている。まだ特許出願はなされていないが、問題意識は明確にもっているので、技術が完成した段階で早期に出願することが望まれる。独創的な材料を基礎から築き上げた研究成果は高く評価できる。また、この材料の応用可能性は大変大きく技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、すでに企業との共同研究の実績もあり、実用化に向けた計画ももっている。この技術は単に化粧品、製薬などの分野だけではなく幅広い業界での応用が期待される技術であるので、大量生産の方法の確立で実用化が望まれる。今後は、技術の基本的なところはできているので、特許出願と早めの企業連携を進めることが期待される。
試料固定化層一体型金属周期構造を持つバイオセンサーの開発 京都大学
小川雄一
京都大学
吉川信久
本研究では、アレルゲン等の生体高分子や大腸菌などの微生物を高感度に計測できる新しいセンサの開発を目指し、試料固定化層を開口部に持つ金属周期センサの開発を行った。時間領域分光法により得た試料固定化層の物性を用いて電磁界解析を行った結果、金属周期構造の開口部に充填することで、表面に密着させる場合以上の感度が得られることが明らかとなった。また、実際に開口部に充填した多孔質体に抗体固定を行い、反応層一体型の金属周期構造を作製した。懸濁液中の大腸菌を定量した結果、菌数に応じた周波数特性のシフトが見られ、反応層の固定により感度の向上が示唆された。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、大腸菌数と周波数シフトの相関を明らかにしたことについては評価できる。一方、モノリスの均一な固定に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、例えば大腸菌は菌数が10?1000程度のセンシングが極めて重要と考えられるので、この領域での検討を優先されることが望まれる。
グルタミン酸とアスパラギン酸を主骨格に持つ新規アミノ酸及びその誘導体の合成 京都大学
吉村智之
京都大学
荒川弘
不斉触媒や不斉補助基等の外部不斉源を用いることなく不斉合成ができる分子内及び分子間不斉記憶型反応を活用し、官能基密集型新規アミノ酸誘導体の合成法の確立に成功した。アスパラギン酸-グルタミン酸ハイブリッドアミノ酸への変換は困難であったものの、本ハイブリッドアミノ酸のカルボン酸部とアミン部に異なる保護基を持つアミノ酸誘導体への変換法を確立できた。得られたアミノ酸誘導体から種々の官能基変換を行うことで天然物合成へ応用しキラルビルディングブロックとしての有用性を示すことができた。今後、分子内共役付加反応で得られた beta-ラクタムは抗菌剤として、官能基密集型アミノ酸誘導体はキラルビルディングブロックとしての更なる展開を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、不斉記憶型反応の結果は、不斉収率、化学収率ともに概ね良好であること、基質に関する制約はあるものの、不斉マイケル反応の結果も概ね良好であることについては評価できる。一方、技術移転のためには生成物の精製が必須であり、出発物質の保護基の検討等を十分に行う必要があると思われる。今後は、生成物の精製という問題点を克服して技術移転にまで繋げることが望まれる。
小分子蛍光化合物プローブを用いた内在性RNAイメージングキットの開発 京都大学
佐藤慎一
京都大学
町田尚子
本研究では、小分子蛍光化合物プローブを用いた内在性RNAイメージングキットの開発を目標とした。申請者は自身が見出したRNAアプタマーと蛍光化合物プローブを利用したイメージング法を、任意のRNAの生細胞内イメージング可能な方法へと改良した。現在、本研究期間で得られた実験データを基にした学術論文を投稿準備中である。今後の展開として、本研究により得られた成果を新たなRNAイメージング法として特許取得後、RNAアプタマー発現用のDNAベクターと蛍光化合物プローブをセットとしたRNAイメージングキットとしての実用化を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、独創的なRNA検出原理を考案し、RNAアプタマーと蛍光分子とを組み合わせたRNAイメージングプローブの開発は、培養細胞を用いて実用性を示すことに成功し、新規性は評価できる。一方、感度の問題や再現性の検討など、まだまだ実用化には課題が多いことが推測される。汎用性やロバストネスなど検討すべき課題が多く残されているおり、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。
今後は、特許申請を早期に行い、連携企業等との開発ステージへの飛躍することが望まれる。
ヒトiPS細胞由来xeno-free間葉系幹細胞作製技術の開発 京都大学
池谷真
京都大学
町田尚子
本研究開発では、細胞移植治療に有用な間葉系幹細胞を、ヒトiPS細胞から、他の動物由来成分を含まない条件で分化誘導する技術の開発を目標とした。開発の結果、数種類の標準的ヒトiPS細胞株から血清不含の化学合成培地で、神経冠細胞を短期間(7日間)で高効率(50〜90%)に誘導する方法の開発に成功した。また誘導された神経冠細胞を少なくとも20回以上継代する維持培養条件を見出した。さらに得られた神経冠細胞から血清不含培地を用いて間葉系幹細胞様細胞を誘導することに成功した。今後は真のxeno-free条件に移行するため、培地の各成分について検討を加え、細胞移植治療に応用可能な間葉系幹細胞の分化誘導技術の開発を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、予定株数より少なく、誘導効率も目標の80%には届かなかったが、様々な方法で樹立したiPS細胞株や標準的ヒトES細胞株について、Xeno-free 化学合成培地で安定高効率な神経冠細胞への誘導に成功したことについては評価できる。一方、本研究からは既存の発想や既存製品の比較の域を出ず、先導的な取り組みを生み出すためのアイディアに欠いている。再生医療の実用化において、リソースの規格化、培養・操作過程の標準化、スケールとコストの適正化は必須の要件であり、本研究はそれらを大きく進めうる基点となり得るものであり、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、研究成果が海外に先行されたことからも明らかなように、iPS細胞研究所として目先ではなく大きな成果に向けた取り組みに臨むことが望まれる。
細胞をターゲットとした簡便なα線の局所照射システムの開発 京都大学
川本卓男
京都大学
町田尚子
我々は、α線の細胞影響を分子・細胞レベルで解析するのに必要な時空間的解析(ライブイメージング)が可能なこれまでにない簡便な細胞の局所照射システムを実用化・製品化するため、α線源をPt芯線先端に電着した微小線源用いたα線細胞照射装置の開発を行っている。本申請課題では、この装置が、標的細胞に照射可能といったあいまいなレベルではなくマイクロメートルのスケールで照射範囲を正確に制御でき、照射イオン数も制御できるような照射システムとなるよう改良・最適化を図った。
その結果、照射野を直径20μm以内に限定することや、30秒間照射で、照射イオン数を10個程度にすることに成功した。しかし、照射イオン数を正確に制御することはまだできておらず、そのためにはリアルタイムでイオンを検出できる系の開発等が必要と考えている。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、Po-210の電着技術は素晴らしいものであり、α線細胞照射システムを用いた技術は細胞照射において照射野直径を限定可能なことや照射イオンを制御することに成功した成果で評価できる。一方、医療病理機器メーカーとの共同研究が必要と思われるが、製品化とニーズの関係から具体的な協力体制構築は容易ではないと思われる。照射イオンをリアルタイムに検出する技術開発の検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、汎用型のα線局所照射装置の試作品をもとにして、企業との共同開発されることが望まれる。
糖尿病創薬を目指した植物由来dual functional agonistの開発 京都大学
宮前友策
京都大学
藤森賢也
本研究課題は、新規糖尿病創薬への応用を目指し、PPAR gamma並びにGPR40の両者に作用するdual functional agonist候補化合物の、(1)合成法の確立、(2)生物活性評価、(3)内在性因子に対する作用評価を行うことを目的とするものであった。当初計画していた化合物について、その合成法の確立(3段階総収率56%)には成功した一方で、dual agonist活性は認められなかった。そのため、他の化合物の開発への方針転換を余儀なくされたものの、新たに着目した化合物について、4段階総収率34%での合成法の確立、一過性発現細胞系を用いた解析によるdual agonist活性の確認、内在性PPAR gammaに対する作用を明らかにすることができた。特に類縁化合物を用いた活性比較により明らかにされた、リガンド構造の微細な差異によるdual agonist活性の変化は、薬剤の構造を設計する上で重要な情報になると考えられる。今後は、内在性GPR40に対する作用評価を完了させdual agonistの概念を確立するとともに、産学連携に向けた研究開発を継続して行きたい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。糖尿病創薬の分子標的としてPPARγ及びGPR120/40の両者に作用するdual agonistの発想は評価できる。一方、daphnolon化合物に関して十分な検討をすること、GPR120の化合物の評価系をさらに検討することが必要である。今後、さらになるPPAR gamma とGPR40dual agonistの薬効メカニズムが明らかにすることで、新たな創薬コンセプトの確立に繋がることが期待される。
ストレスフリーを目指した肥育牛の血中ビタミンA推定用瞳孔計測装置の開発 京都大学
近藤直
京都大学
藤森賢也
高品質牛肉の生産のため、肥育牛農家はビタミンA(以下VAと称する)を制御する給餌方法を採用している。本研究ではVAモニタリングのため、牛の瞳孔の色、光反射強度等を取水中に自動的に計測し、血中VAの推定を行う画像入力システムの開発を最終目標とする。本開発期間では装置の基本的構成および仕様、計測時間および頻度、ならびに牛へのストレスを最小限とする方法等を決定し、毎日の計測結果に基づいて推定精度の高い検量線が作成可能なシステムの開発を行った。その結果、画像の自動入力が可能となったものの、睫毛が瞳孔を隠すことがあったことより、数多く入力された画像から適当な画像の選択方法を検討し、検量線の作成を行うことが適当と考えられた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも瞳孔部の画像の取得を自動で行えることを構築した点は評価できる。一方、装置の小型化、簡便化等のコスト削減に向けた技術的な検討や、データの積上げが必要と思われる。今後は、実用に至る問題点を熟慮して確実なデータを収集することと、多様な対象にしても適応できる技術的問題の解決が望まれる。
亜鉛欠乏予防効果のある食品因子の同定と効果の実証 京都大学
神戸大朋
京都大学
藤森賢也
亜鉛は、味覚や免疫、神経機能に必須の役割を果たす微量栄養素である。現在、潜在的な患者を含め、日本人の2〜3割が亜鉛不足の傾向にあると試算されており、特に高齢者においては、亜鉛の不足はQOLを著しく損なう。したがって、超高齢社会を迎える我が国においては、その予防法を確立することが、緊喫の課題となっている。研究責任者は、食事由来の亜鉛の吸収に機能する亜鉛輸送体ZIP4の発現を促進する因子の探索スクリーニング系を構築し、これまでに、複数の食材にZIP4発現促進活性を認めている。本研究は、これら食材からZIP4の発現促進因子を単離同定し、亜鉛吸収促進因子としての機能を実証することを試みた。その結果、強力にZIP4発現促進活性を示した大豆抽出物から活性因子として同定したソヤサポニンの作用機序を詳細に明らかにすると同時に、その情報をもとに新たな活性因子を見出した。精製が必要な食品抽出物については、精製を進めており、その最終段階にきている化合物においては、速やかに構造決定を行う予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、大豆抽出物などから活性成分を抽出し、その有効性を実証していることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、亜鉛欠乏のモデル動物をも用いた動物実験による効力評価やヒト試験など今後の課題を整理した上での長期の取組みに基づく実用化が望まれる。今後は、先ずは粗製物を用いた動物実験で亜鉛吸収の促進効果の有無を確認されることが期待される。
低アレルゲン化小麦実用品種の特性調査 京都大学
遠藤隆
京都大学
藤森賢也
いわゆる小麦アレルギーは、コムギ製品の摂取後の運動などにより誘発されるI型アレルギーの特殊病型であり、小麦1B染色体にその遺伝子が座乗しているω-5グリアジンが主要抗原である。本研究では、この遺伝子領域が欠失した実験系統から育成した実用品種ホクシンの低アレルゲン化系統を大規模に栽培し、収量、他殖率、ω-5グリアジンを調査した。この結果、収量は若干低下するものの、他殖は認められず、ω-5グリアジンも検出されなかった。今後は、島根大学医学部、島根県中山間地域研究センター及びグリコ栄養食品と共同して、低アレルゲン系統の栽培方法の改良、加工特性の調査、実験動物や患者への投与における臨床研究を継続する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、日本の実用品種「ホクシン」について、1BS-18 染色体が置換った系統を大規模に栽培し通常とほぼ変わらない栽培特性を示すことを確認したことは評価できる。一方、アレルギー低減効果に係る技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、製粉企業や食品企業、アレルギーの医学研究者との連携により低アレルゲン化の効果が見られない理由を解明し、特性を活かす品種の改良を進めることが望まれる。
HIV-1 Vif を標的とした新規抗ウイルス薬の開発 京都大学
新堂啓祐
京都大学
樋口修司
申請者らは、HIV-1 Vifの機能発現に必須の補助因子としてCBFβを同定したが、本研究ではCBFβとVifの相互作用を標的とした新しい抗HIV-1薬の開発を目的として、高スループットで化合物スクリーニングを可能にする系の構築を目標として研究を行った。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。申請者らが見出したVifとCBFβの相互作用に着目した新たな抗HIV-1薬の開発は、独自性が高い。創薬研究の第一段階としてBiFC法によるアッセイ系の確立を検討していることについては評価できる。一方、BiFCが確認できない原因が特定できていないのは技術的な課題であり、専門家からアドバイスを受けるか共同研究などを考えるのがよいと思われる。今後は、標的としての妥当性や、他の作用機序に対する優位性が証明されたのかどうかを明らかにする必要がある。
マイクロRNA-126の徐放化を応用した新規冠動脈ステントの開発 京都大学
尾野亘
京都大学
樋口修司
近年、冠動脈疾患および末梢血管疾患治療には薬剤溶出性ステントを用いることが多いが、血栓症や慢性的な再狭窄を起こすことが問題となっている。そこで、今回我々は、血管内皮細胞再生、抗炎症作用のあるマイクロRNAをステントから徐放化し、局所に安全に作用させるシステムの開発を行った。その結果、ウサギ腸骨動脈モデルにおいて良好な新生内膜抑制効果を示した。さらに臨床応用をめざし、前臨床試験を行う予定である。マイクロRNAの局所徐放化は癌などの他の疾患への治療応用も十分に考えられるため、今後も幅広い研究展開が可能となると考えられる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ウサギ腸骨動脈内にステントを留置し、miR126の徐放化に成功し、血管内膜抑制効果を得たことにより研究開発目標を概ね達成している。ステント上を血管内皮で早期に被覆できたことは、既存ステントの問題点である血栓形成の問題の解決にも繋がる成果であると考えられ評価できる。一方、技術移転の観点からは、miRNA徐放に使う乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)ナノ粒子を開発した企業と共同で臨床応用へ向けて具体的に研究が進められている。病態モデルにおいて有効性が確認できたら臨床応用することが計画されており、心筋梗塞・狭心症の患者の治療に大いに貢献することが期待でき可能性があり、実用化が望まれる。今後は、miR126以外のmiRNAについての検討も合わせて行うことで応用範囲の拡大に繋げることが期待される。
BMP拮抗分子USAG-1とBMP-7の歯数制御による歯牙再生 京都大学
高橋克
京都大学
樋口修司
In vivoで歯胚の数を増加させるシステムを確立するところまでは至らなかったが、局所でのBMP7の機能亢進により歯数の増加が再現できるシステムをin vitroで確立することはでき、申請時の目標の半分は達成することができた。ヒトにおいても、本来なら退化・消失していく第3生歯と考えらえた多発性の過剰埋伏歯の症例を見出した。更に、新たに、CEBP/β欠損マウスにおいて、切歯周囲に複数の過剰歯を認め、歯原上皮幹細胞に由来すると考えられた過剰歯を確認し、ヒトにおいても、歯原上皮幹細胞に由来すると考えられた過剰歯の症例も見出し、同様な歯数が増加するメカニズム有する可能性が示唆され、今後、歯数制御による歯牙再生の臨床応用への今後の新たな展開を示すことができた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。マウスで観察された変化がヒトでも起こり得る可能性を示すことができたことは、評価できる。一方、in vitroではUSAG-1変異マウスでBMP7の投与により歯数の増加が観察されたが、これら遺伝子の制御により歯数制御が行える知見までは得られなかった。基本的な技術確立に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、目標を再度検討し、医療に役立つ成果をどのように達成していけばよいか、計画の検討が望まれる。
樹状細胞によるインターフェロン-α産生を抑制するキナーゼ阻害薬の標的同定 京都大学
門脇則光
京都大学
樋口修司
形質細胞様樹状細胞(pDC)は、外来性の DNAを早期エンドソームに滞留させることにより、TLR9シグナルを介して大量のIFN-αを産生し、炎症性疾患の発症・進展に重要な役割を果たす。われわれは、キナーゼ阻害薬ダサチニブが、「pDCにおけるDNAの早期エンドソームへの滞留を阻害する」ことにより、IFN-αの産生を抑制することを見出した。本研究は、この阻害作用における標的キナーゼを同定し、炎症性疾患の新たな創薬標的を見いだすことを目的とした。pDC細胞株P716でsiRNAによるノックダウンの実験系が機能することを確認した後、複数のキナーゼ阻害剤を用いてIFN-αの産生に必要な候補キナーゼを絞り込んだ。今後siRNAを用いた解析により、創薬標的となるキナーゼを同定する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。pDCによるIFN-αの産生に必要なキナーゼをキナーゼ阻害剤を用いて同定を試み、候補キナーゼを絞り込んだ点については評価できる。一方、候補キナーゼの同定、阻害薬の開発、抗炎症作用の確認に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、候補キナーゼをP716細胞のsiRNAによって確認することや候補キナーゼがさらに絞られた段階で抗体を作成することが望まれる。
ラットを用いた新規生殖細胞毒性試験系の開発 京都大学
篠原隆司
京都大学
樋口修司
近年、多くの化学物質や薬剤が生産され、これらの人体への毒性を調べる簡便な方法が必要とされている。生殖毒性の検定には一般に動物実験が広く用いられているが、動物実験ではそのばらつきに加え、他臓器への影響があるため、必ずしも正確にその毒性を調査できない。本研究ではラット精子幹細胞からの精子形成を誘導する実験系の開発を目指した。完全な分化細胞を期間内に得ることはできなかったが、既存の器官培養法よりも安定な培養系を開発した。また通常セルトリ細胞は増殖しないと考えられていたが、試験管内で増幅することが確認した。このセルトリ細胞の培養系の改善を行うことが試験管内精子形成系の完成に必須であると考えている。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、研究計画に記載されたすべての実験が精力的に実施されていて、関連する研究成果として、マウス・セルトリ細胞をフィーダーとしてマウスGS細胞を培養することによって精子幹細胞の微小環境の再構築に成功した点は学術的に評価できる。一方、技術移転をめざした次の研究開発ステップにつながる可能性が高まったとは言えない。ラットとマウスの種差を感じさせる実験結果であり、種差を決定する因子に関する多角的検討が必要で、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、ラットでの今回の研究から克服されるべき課題が判明したことに鑑みて、より効率の高いマウスの系の確立をめざされることが望まれる。
血中ペルオキシレドキシン6のメチルグリオキザールによる翻訳後修飾を標的とした糖尿病合併症の早期診断法の開発 京都府立医科大学
伊藤友子(大矢友子)
京都府立医科大学
羽室淳爾
激増する糖尿病患者の合併症罹患率は7割を超え、治療満足度は低く、治療に貢献する薬剤も十分でない。現在の診断マーカーであるHbA1cは有効性が示唆されているが、適用できない患者も存在する。糖尿病では高血糖や酸化ストレスによりメチルグリオキサール(MG)がタンパク質特に抗酸化酵素ペルオキシレドキシン6(Prx6)を修飾する。我々は、合併症の発症進展に強く関与するMG修飾Prx6を認識する抗体を保有しており、これを利用して簡便なMG修飾Prx6の測定系の確立を試みた。ヒト赤血球を利用した有用性検証を終え、キット化の最終段階へ至った。目標は概ね達成し、引き続きELISAを利用してMG修飾Prx6の定量化を図ることと、MG修飾Prx6の合併症進展における意義について、糖尿病罹病期間や腎症、網膜症の進行度が明らかとなっている臨床検体を対象として解析を試みている。一方で、LC/MS/MSシステムを利用した定量的フォーカストプロテオミクスを開始しており、今後HbA1cやグリコアルブリンと比較してMG修飾Prx6が糖尿病合併症の早期診断に役立つ最善のマーカーであることを実証する。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に多数の微量サンプルを、簡便で再現性よく、一度に測定可能なMG修飾Prx6の評価系を開発し、試作品作成の目途がついた点が高く評価できる。一方、技術移転の観点からは、競合診断法との差別化し、糖尿合併症や生活習慣病と言った漠然としたターゲットではなく、本方法でしか成しえない、より絞った課題への展開が期待される。今後は、市場戦略・コスト戦略を中心とした開発が期待される。
感覚神経を標的としたホルモン制御による中枢性鎮痒薬の探索 京都府立医科大学
高浪景子
京都府立医科大学
羽室淳爾
女性のライフサイクルにおいて、エストロゲン濃度の変動する妊娠期間や更年期などに痒みを生じることが知られているが、その機序は不明である。申請者はこれまで、モデル動物を用いて、体内エストロゲン濃度に依存して痒みの指標となる掻破行動が有意に変化することを見出してきた。本研究では、エストロゲン受容体のうち、どのサブタイプのエストロゲン受容体が痒み感覚の調節に関与するか、行動薬理学解析と組織学解析を実施した。各種エストロゲン受容体アゴニストと末梢性起痒物質を投与した結果、あるサブタイプのエストロゲン受容体アゴニストを投与時に、掻破行動が有意に変化した。今後は、このエストロゲン受容体サブタイプを介した痒みの調節経路を明らかにし、中枢性鎮痒薬の開発につなげる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に痒みの薬理学的実験、免疫組織学的検討を行い、エストロゲンの痒覚制御作用がみられ、後根神経節での局在を明らかにした点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、初代培養系だけでなく、慢性掻痒動物モデルを用いて中枢作用をみることが必要である。また痒覚制御作用を見るのであれば、エストロゲン受容体作動薬でなく、拮抗薬も検討する必要がある。セロトニン以外の起痒物質に対する作用ではどうなのか、急性作用と慢性作用では作用点が異なるか等、解決すべき問題がある。今後、技術移転し創薬に繋げるための展開について、具体的な計画が必要である。
高品質でフィージブルな褐色脂肪細胞の製造 京都府立医科大学
松田修
京都府立医科大学
羽室淳爾
褐色脂肪細胞は、食物由来の余剰エネルギーを熱として散逸し、エネルギーホメオスタシスを司る。肥満、糖尿病、脂質代謝異常症等の患者では数と機能が著しく低下しており、これら疾患の遺伝的感受性の探索、治療薬の開発等に、褐色脂肪細胞は極めて有用と考えられる。我々は、UCP1発現レベルが極めて高い、高品質なヒト褐色脂肪細胞を作出する技術を確立した。そこで本研究では、本細胞の機能解析と網羅的遺伝子発現解析等を行って、その研究用マテリアルとしての有用性を示すことに成功した。本研究は、国民的疾患ともいえる糖尿病、肥満、メタボリック症候群等に対する創薬研究に有用であるのみならず、将来的には新しい再生医療を提供する可能性がある。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、 褐色脂肪細胞が脂肪滴蓄積量、褐色脂肪細胞特異的遺伝子群の発現量がともに高く、高いエネルギー散逸能をもつなどの高品質な特性を示すことが明らかになり、特許出願に結びついた。ダイレクト・リプログラミングを利用する本方法は、iPS細胞を経由せずに高効率で高品質な褐色脂肪細胞が得られる点で極めて優れている技術で評価できる。一方、技術移転の観点からは、 創薬のための研究用ツールとしての用途と、生活習慣病関連の再生医療への応用の両面が考えられる。新たに作製された褐色脂肪細胞が生活習慣病関連の再生医療に応用できれば、極めて大きな社会還元となることが期待され、実用化が望まれる。今後は、皮膚繊維芽細胞以外の種々の細胞からの誘導法についても更に検討を続けるとともに、細胞の品質向上も検討する必要がある。また、生体内に移植した場合の機能評価も今後に残された課題で検討されることが期待される。
ヒト間質液pH連続測定法の開発: 糖尿病予防・病態管理を目的とする体液環境管理法の開発 京都府立医科大学
丸中良典
京都府立医科大学
羽室淳爾
本研究開発の目標としては、今まで臨床レベルでの情報が全くなかった組織間質液pHの低侵襲的・連続的測定法の開発を行い、疾患予防上重要な意味を持つ体液pHの測定・管理法を確立し革新的診断技術を提供することにある。本研究開発の当初の目標である2日間連続での組織間質液pH測定の内、電極留置後6時間の安定した結果を得たことから、目標の60%程度は達成できたと考えられる。この結果をもとに、更なる長期間の電極留置による安定した計測結果と得るために電極の最小化を目指して研究開発を続ける所存である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、新規にアンチモン製電極を導入した点は、pH測定の安定性の面で大きく改善し評価できる。一方、技術移転の可能性が窺えるが、実用化には測定電極の大きさと質の両面からの一層の検討が必要である。企業化には、電極の耐用時間とpHの日内変動の問題、各種病態と間質液pHとの関連性など臨床的有用性を示す成果の蓄積が重要でデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、各種段階の糖尿病動物、摂食状態、測定対象の組織とpHとの関連性について検討されることが望まれる。
患者が自己体内で作製する自家結合組織小口径代用血管の応用 京都府立医科大学
渡辺太治
京都府立医科大学
羽室淳爾
我々は生体の持つ自己修復力に注目し、宿主体内で形成される自家結合組織管をバイオチューブと名付け代用血管として用いることを目標とした研究を行っている。本研究では作製したバイオチューブの保存用代用血管として応用するため、異種移植(ウサギ⇒犬)を行った。移植は異種グラフトであっても特に大きな問題なく施行可能であった。今後は移植実験を継続し、良好な開存性、再現性を証明するとともに、最適な保存方法を模索する予定である。また耐久性加速試験として、動静脈シャントモデルを作成した。今後は症例数を増やし、シャントとして用いた際の組織学的変化を評価するとともに、穿刺に耐えうるか否かについて検討する必要がある。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、5年間のフォローアップができており、長期間の観察については良好な結果が得られたと言える。論文発表、特許出願等行っていないが、生体内で再構築した組織の評価という点は新しく、その可能性はある。着眼点は興味深い。患者自身の体内で再構築させるという新しい移植概念については評価できる。一方、もう少し治癒のメカニズムや、材料の適正化等、分析的に評価に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、最適な材料を見つければ他との差別化が可能となり、企業も参入しやすくなると考えるので、材料特性について詳細に検討することが望まれる。
汽水域放線菌ライブラリーを用いた新規オートファジー誘導物質の探索 京都府立医科大学
田中雅樹
京都府立医科大学
羽室淳爾
本研究はパーキンソン病に適用できる新規オートファジー誘導物質の探索を目的としており、培養細胞を用い汽水域放線菌ライブラリーからスクリーニングを行った。EGFP-LC3のオートファゴソーム分布を指標として、誘導剤候補728株中7株でオートファゴソーム形成の誘導が認められた。これら7株についてオートファジーの誘導性を詳細に確認するため、さらにウエスタンブロットにて修飾型LC3(LC3-II)の発現量も調べた。その結果、1株が非常に強く、そして3株で中程度のオートファジー活性化能を有することを確認した。今後この4株については大量培養し、逆相クロマトグラフィーなどで精製を行い、同様のスクリーニング方法でオートファジー誘導物質を単離後、NMRスペクトルの測定を行って、構造決定をめざす予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。1200株の汽水域放線菌ライブラリーのうち728株の培養に成功し、一次スクリーニングを行ってオートファジー誘導活性を示す菌株4株を選別できた点は、評価できる。一方、技術移転の観点からは、知的財産権の確保が望まれる。今後は、細胞レベルでの疾患モデルで、病的ミトコンドリアを除去できるような効果を示すことができれば、産学共同等への研究開発にはずみがつくと考える。早急に申請時の計画に示した二次スクリーニングを行うことが期待される。
血小板の機能抑制によるアトピー性皮膚炎のプロアクティブ治療外用剤の開発 京都府立医科大学
峠岡理沙
京都府立医科大学
羽室淳爾
アトピー性皮膚炎は再燃を繰り返す難治性慢性疾患であり、再燃予防のために湿疹がない寛解期に外用薬を使用するプロアクティブ治療の重要性が指摘され始めた。既存の外用剤はステロイドと免疫抑制剤であり、副作用が問題であってプロアクティブ治療の隘路となっている。そこで、既存外用剤でみられる副作用を随伴しないアトピー性皮膚炎の再燃予防の新治療法の開発をめざし、本研究では、アレルゲン繰り返し塗布によるアトピー性皮膚炎モデルマウスを用いて、マウス皮膚にアレルゲンを塗布する前に抗血小板薬を外用することにより、抗炎症効果を検討した。本研究により、一部の抗血小板薬外用により皮膚炎部位への白血球浸潤が抑制されることが解明され、抗血小板薬外用がアトピー性皮膚炎におけるプロアクティブ治療に適用できる可能性を見出した。今後は、他の同系統薬剤も含めて臨床応用を視野に解析を進める予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。アトピー性皮膚炎に対する新規外用療法は、既存のステロイド、タクロリムスのみでは十分ではなく、開発が必要である。チロフィバンをはじめとするGPIIb/IIIaインヒビターが外用薬候補としての可能性を示した点は評価できる。一方、濃度、投与時期、回数などの条件など具体的な技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は皮膚炎モデルを用いてGPIIb/IIIaインヒビターの詳細な検討と特許化を行うことが望まれる。
自己免疫疾患の治療を目指したKDAC9選択的阻害薬の創製 京都府立医科大学
鈴木孝禎
京都府立医科大学
羽室淳爾
KDAC9選択的阻害薬の創製を目指し、Cu(I)-catalyzed Azide-Alkyne Cycloaddition (CuAAC) を用いて、短時間に665個のトリアゾール体ライブラリーを構築した。続いて単離・精製なしに直接KDAC蛍光アッセイを行った結果、強いKDAC9阻害活性を示す化合物を見出した。本阻害薬は、KDACを10-8オーダーのIC50値で阻害する一方、KDAC1/2を多く含む核抽出液中のKDACsは10-5オーダーでもほとんど阻害せず、KDAC9選択的阻害薬であることが分かった。また、本阻害薬をマウスに投与したところ、制御性T細胞の誘導が確認された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。クリック反応を活用した効率的なライブラリー構築を用いて短期間で多数の化合物を合成すると共にスクリーニングを行い、高活性・高選択性の候補化合物2種を得ることができた点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、予め、出来上がった化合物の毒性や溶解性等の物性面、またADME予想などを推定してライブラリーのユニットを選択できる方法やノウハウを確立する必要がある。今後は、FTY720の例にもあるように、良い活性が出た場合、どの自己免疫疾患への適用を目指すかが重要で、そのためにも企業との良い形の共同研究が産まれることが期待される。
高安定性・高結合力をもつ糖結合モジュールを用いた糖精製カラムの創製 京都府立大学
織田昌幸
京都府立大学
市原謙一
対象蛋白質の糖結合モジュール(CBM-DK)には、3か所の糖結合部位(α、β、γ)が存在する。CBM-DK野生型では、αが優位な糖結合力を有し、同αでTrpが重要な役割を果たすことから、βやγの対応部位にTrpを導入することで、糖結合能を向上させ、さらにカラム樹脂に固定化し糖精製カラムとして活用できると考えた。大腸菌発現系を利用して各変異体を作製し、糖結合能を評価した結果、結合力の増加は認められなかったが、CBM-DK1分子あたりの結合量の増加は認められた。さらにCBM-DK固定化カラムを作製し、多糖の1つラミナリンを添加後、pH 4の緩衝液を用いる事で、吸着したラミナリンの溶出を確認でき、糖精製カラムとして活用しうる知見を得た。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、新規特許は出願されていないが、固定化カラムの繰り返し使用が可能であることを証明し糖精製カラムとして活用できることを示している。さらに実用化のためのコスト削減が次のステップへ進む際の問題点として明確に示されていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、カラム生産コスト削減のためにCBM-DKを含むグルカナーゼ産生菌株からの取得が具体的に検討されている。カラムの有効性が示されたので、産学協同の研究開発ステップにつながる可能性は高まったと言える。コスト削減できる技術の確立により実用化が望まれる。今後は、新規特許出願とともに、製品化へ向けての関連企業との積極的な連携をされることが期待される。
アシルジュグロンを母核とした抗炎症・抗アレルギー剤の開発 京都府立大学
倉持幸司
京都府立大学
市原謙一
がんや炎症性疾患の治療において、強力な薬理活性を持ち、副作用が少ない新薬の開発は急務の課題である。研究代表者らは、植物由来成分であるプルンバギンの5 位水酸基をアシル化したアシルプルンバギンの化学合成に成功した。合成したアシルプルンバギン10物質のうち、8物質は新規物質であり、そのいくつかに優れた抗腫瘍活性、抗炎症活性、抗アレルギー活性を見出した。特に抗炎症活性は市販の抗炎症剤であるグリチルレチン酸よりも1.5倍、抗アレルギー活性は市販の抗アレルギー剤であるトラニラストよりも2倍以上強力であった。またアシルプルンバギンは、ヒト正常細胞には毒性を示さず、ヌードマウスへの投与でも体重減少は確認されなかった。ラットへの単回大量投与試験においても急性毒性を示さなかった。これらの結果からアシルプルンバギンは副作用が少ない理想的な抗がん剤・抗炎症剤の有力候補と判断できる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。創薬研究を意識して、活性、安全性、安定性等多方面から化合物を評価する姿勢が見られる点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、作用機作等の基礎的研究で本シリーズの化合物の優位性、対象疾患等を明らかにすることが必要である。作用機作的の検討をより深め、既存薬剤に対する新規性、優位性を明確にして企業との連携に結びつけることが望まれる。今後は、企業が取り上げるべき特徴や、医薬品としての存在価値が明らかにし、活性向上、体内動態検討と共に、他剤との差別化が必要である。
新規ビタミンC誘導体-亜鉛錯体による膵β細胞保護治療薬の開発 京都薬科大学
安井裕之
京都薬科大学
内田逸郎
申請者は亜鉛錯体およびビタミンC誘導体が、独立した経路によって膵臓の発生と分化に関連する転写因子であるPdx-1の遺伝子発現を上昇させ、タンパク質Pdx-1のリン酸化・活性化を促進し、インスリンの発現および分泌作用を示すことを培養細胞系から見出した。そこで、最初に選択したアスコルビン酸を配位子とした亜鉛錯体Zn(ac)2は、1型糖尿病モデルマウスの血糖値を有意に低下させたが、その作用点は膵臓よりむしろ肝臓における転写因子Foxo-1の活性化によるものと示唆された。今後は、標的臓器とターゲット分子、およびそれらの治療効果への寄与率をより明確にできれば、知財権確保の動機(用途特許を目指した特許出願)が生じると考えられ、その時点でより具体的な創薬戦略を樹立する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。研究のコンセプトおよび化合物Zn(ac)2の薬効評価を行われた点は評価できる。一方、膵臓特有の転写因子であるPdx-1は必ずしも最優先的な標的分子にならないことなど、研究のproof of concept自体が疑われる結果が得られているため、研究戦略の抜本的な見直しが必要かもしれない。ただし、臓器に分布しやすく脂溶性のより高いパルミチン酸アスコルビンエステルを配位子としたZn(palace)2が有望な候補物質となる可能性を見出していることから、今後の展開を期待したい。
糖尿病発症サルを用いたタミバロテンによるC型慢性肝炎治療効果の探索 京都薬科大学
小暮健太朗
京都薬科大学
内田逸郎
日本人慢性C型肝炎(CH-C)患者の7割は、既存療法によるウィルス排除が困難なgenotype 1bのC型肝炎ウィルス感染者である。さらにこれらの患者では、インスリン抵抗性や肝鉄蓄積による酸化ストレスが既存療法の治療効果を抑制することが指摘されている。 申請者は、白血病治療薬として認可されている合成レチノイド、タミバロテンが、インスリン抵抗性と肝鉄蓄積を同時に改善する可能性をマウスで見出した。しかしCH-C患者への適応拡大へと技術移転する上で、より詳細な薬理効果の確認および種差の解決は必要不可欠である。 そこで本研究では、タミバロテンによるインスリン抵抗性改善作用ならびに肝鉄蓄積軽減作用について、糖尿病発症サルを用い探索・実証を行った。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。サルを用いた実験において、タミバロテンの投与によって、C型肝炎の増悪に繋がる症状の改善が認められたことについては有益な結果であると評価できる。一方、技術移転の観点からは、様々な抗HCV薬剤の開発が進み、慢性C型肝炎の治療法が一変しつつある現在、タミバロテンの治療薬としての開発の意義を改めて明確にしておく必要があると思われる。サルを用いた実験は、薬剤を評価する上で問題点も多いので、今後はC型肝炎ウイルスコアタンパクトランスジェニックマウス(HCV Core Tg マウス)などの扱いやすい疾患モデル動物を用いた薬剤評価実験を行うべきであると思われる。
カラーコード変異識別法の創成を指向した分子構造自己転移性DNAプローブの開発 同志社大学
橋本雅彦
同志社大学
松井健一
本研究では、リガーゼ検出反応(Ligase Detection Reaction; LDR)によって生成された一塩基変異の存在を示すDNA断片に選択的に応答し、分子構造が自己転移することで蛍光シグナルを発するようになる特性を具えた蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescence Resonance Energy Transfer; FRET)プローブを開発することを試みた。作製されたプローブは、生成されたLDRプロダクトに特異的に応答し、FRETのオン/オフの状態の違いでシグナル強度に約27倍の差が表れ、一塩基変異の迅速かつ高感度な検出が達成された。本研究で得られた技術的基盤を発展させることにより、最終目標とするカラーコード変異識別法の実現が期待される。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも目標ではON/OFFで1000倍の差を得て、また、異なる蛍光プローブを用いることで、変異の種類についても情報をカラーコードとして得ることを目的としたが、ON/OFFのFRET比率は27倍にとどまり、また、カラーコードは断念された。ただし、カラーコードを用いなくても塩基種の特定は可能であることは示された。基本的に有望なアイデアであり、その実用化に向けた詳細な検討が行われ、問題点が明確にされたことについては評価できる。一方、基本的なアイデアについては産業化の価値があるものであるが、ただ、技術的なブレークスルーがないと現実的ではない。目標自体はシンプルで貴重な情報を提供できる価値があり、カスタマイズドメディスンに通じる社会的価値が高く、FRETプローブ自体の開発に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、本課題名となったカラーコード化は産業化に向けても魅力的であり、引き続きぜひ検討されることが望まれる。
血漿セレノプロテインPに対する抗体を用いた新規テーラーメイド2型糖尿病治療薬の研究開発 同志社大学
斎藤芳郎
同志社大学
尾崎安彦
セレノプロテインP(SeP)は、血漿中の重要な抗酸化蛋白質として活性酸素の消去に機能している。インスリンのシグナル伝達では、一時的に発生する活性酸素が必要である。最近、2型糖尿病患者で血漿SeP濃度の増加が見られた。SePが過剰だとインスリンシグナルに必須な活性酸素が消去され、インスリン抵抗性の悪化、糖尿病のリスクが高まる。故に、SePは糖尿病の治療標的である。本研究では、現有するSeP特異的抗体からSePの細胞表面への結合を阻害する抗体を同定する。更に、細胞・動物レベルでの検討から、結合阻害抗体によるインスリン抵抗性の改善効果を検証する。以上より、血漿SePを標的とした新しい2型糖尿病治療薬を開発することを目的として行った。
現在保有している全11種類のモノクローナル抗体を用い、SePと培養細胞との結合を阻害する抗体が存在するか検討した。培養細胞としては、骨格筋由来C2C12細胞およびTリンパ球由来Jurkat細胞を用いた。スクリーニングの結果、SePと細胞の結合を阻害する抗体を複数同定した。特に、糖尿病の標的となる筋肉細胞に対して特異的に強い阻害活性を示す抗体を同定した。この結果は、本抗体を用い、筋肉特異的にSePの活性を阻害できる可能性を示唆している。阻害活性を持つ2種類の抗体について、シークエンス解析を行い、その遺伝子配列を特定した。さらに、エピトープマッピングにより、阻害抗体の認識部位が明らかとなった。同部位は、糖尿病治療の分子標的となると考えられる。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に抗体のエプトープの同定等、薬剤としての効果検証に不可欠な技術を有し、その技術を応用して、SePに対して有効性の高い抗体の推定をin vitroで検証可能にしていることに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、動物実験による効果を実証することが、重要な課題である。今後予測される問題点や効果がなかった場合に、確立した技術をどう生かすかについて十分に検討しておく必要がある。今後は、他の研究施設や製薬会社と共同開発する研究グループ構築を急ぐべきである。
高齢者の生活習慣病・認知症予防改善作用を期待される新リン脂質(PI)食材の開発(ヒト臨床テストによる効果の検証) 関西医科大学
北川香織
関西医科大学
三島健
高齢者の生活習慣病や認知症予防が期待される大豆由来のリン脂質:ホスファチジルイノシトール(略称PI)を配合した食品摂取による効果をヒト臨床試験により確認し、基礎実験では神経細胞に対するPIの作用機序を解明することを目標とした。
食品として摂取する臨床テストでは短期間でも、認知テストの前頭葉機能試験の検査5(抑制課題)と情動のやる気の項目に有意なプラス傾向が認められ、基礎実験での神経細胞保護効果が有効である可能性が得られた。
今後、臨床テスト期間の延長(1年間)と被験者数の増加を行ったうえで、来春の試験開始を予定しており、試験の評価法には脳機能関連のマーカーの追加を検討する。基礎実験ではPIの作用機序の解明にさらに取組んでいく。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。モデルマウスの繁殖状態が悪かったためにマウスを用いた試験が未実施であったが、他は計画通りに研究開発が実施され、成果が得られた点は評価できる。一方、モデルマウスでの試験を早期に実施し、臨床テストにおけるPhase I の1日当たりの摂取量(出来れば摂取量の異なる試験群を設定するなど)を詳細に検討する必要がある。今後は、商品化へ向け、高齢者用施設の補助食、特定保健用食品、健康食品等を想定し、商品単価、PIの製造コスト等について事前に検討することが望まれる。
ヒト造血幹細胞の陽性分子マーカーの同定と特異抗体産生システムの開発 関西医科大学
薗田精昭
関西医科大学
三島健
本課題研究では、ヒト未分化CD34-HSCの新規陽性分子マーカーの同定と特異抗体産生システムの開発を目指した。独自に開発したヒトCD34-HSCの高度純化法を用いて、既知分子CD133が有用な陽性マーカーであることを明らかにした。次に、18Lin-CD34-CD133+細胞を標的細胞としてBalb/cマウスを免疫し、18Lin-CD34-細胞と結合するモノクローナル抗体を産生するhybridomaを約500クローン作製した。その後、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(DP MSC)との共培養系におけるCD34+CD38-CD90+細胞の効率的産生を指標としてスクリーニングを行ない、有望なクローンc11を見い出した。研究開発は途上にあるが、抗体クローンは作製済みで方法論も確立していることから、本研究を継続することで新規有用分子の同定及び特許申請という当初の目標を達成できると考えている。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に独自に開発したヒトCD34HSCの高度純化法を用いて、既知分子CD133が有用な陽性マーカーであることを明らかにした点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、なるべく早く技術移転につながる研究成果をあげて、その研究成果に基づく新規特許出願等を行うべきである。今後は、次のステップに進める技術的課題は明確であり、有望と思われるクローンc11を得ているので、早急に免疫沈降を行い、MS解析で抗原を同定し、保有抗体クローンの解析を可能な限り早期に完了させることが望まれる。
DNAオリガミデバイスを活用したウィルスの単粒子検出法の開発 関西大学
葛谷明紀
関西大学
柴山耕三郎
ウィルス粒子の捕捉にともなうDNAオリガミペンチの構造変化を光学的に検出する手法として、(1)金ナノ粒子のプラズモン共鳴を動的に制御する手法及び、(2)蛍光標識したDNAオリガミペンチを全反射蛍光顕微鏡に固定化して蛍光のスイッチングをする手法の確立を目指した。構成DNAの配列を工夫することで、DNAオリガミペンチが取り得る3種類の形状のうち、任意の2形状間を自在に直接行き来できるような機構を設計し実証した。また、レバー部に金ナノ粒子を固定化したDNAオリガミペンチを調製することにも成功したが、ウィルス粒子の実際の結合と検出に関しては、リガンド修飾DNAの調整遅れにより実施出来なかった。達成度は70%程度と考える。今後はDNAのシアル酸修飾を引き続き検討し、一日も早くウィルスキャプシドの単粒子捕捉を実現する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、DNAオリガミペンチの新たな光学的検出法や、オリガミペンチの構造変化の制御に関する成果は、独創性・新規性が高く、基盤研究としてついて評価できる。一方、基礎的な研究段階であり、特許申請の段階には至っていない。現段階では企業との共同研究は可能性があるかもしれないが、当初の目標である「検出できるターゲットの大きさの上限を探ること」また「複数種ウィルス混合物から目的ウィルスの検出を実現すること」に対する技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、技術移転につなげるために、早急にリガンド修飾DNAを調製し、当初の目的を達成することが望まれる。
蚊を模倣した中空微細針の開発と液体吸引・吐出性能の評価 関西大学
青柳誠司
関西大学
上畑滋
生体適合金属(タングステン、ステンレス)を材料として、蚊の口針を模倣した無痛微細針を開発した。この微細針は、1) 精密機械加工技術、または 2) MEMS加工技術を用いて作製され、蚊の口針と同等の大きさ(直径数10マイクロメータ)を有している。専用工具を用いたマイクロ加工により針側面に数マイクロメータピッチのギザギザ形状を付加することで、針の穿刺抵抗力を低減することに成功した。極薄の円形刃を用いて微細針に幅15マイクロメータの溝を形成することで、液体や血液を吸引・吐出可能な中空微細針を作製することにも成功した。また治具を用いることで、作製した微細針を座屈することなく対象(人工皮膚)に穿刺することにも成功した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、生体適合性金属を主材料とする低侵襲性の微細針を開発するという目標を達成したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、吐出量の改善、座屈対策など、微細針の特性向上に関するさらなる検討は、再現性、信頼性を含めて検討されることが望まれる。今後は、企業と共同して開発を進めており、製品化を常に念頭にした開発を行っているので、社会還元につながることが期待される。
自律駆動型マイクロバルブを有する真空吸着ロボットハンドの開発 関西大学
高橋智一
関西大学
上畑滋
対象物の形状、大きさ、材質、姿勢に依らず把持できるハンドの開発を研究目的とし、接触すると開くバルブをもつ真空吸着ハンドを提案した。接触したバルブが開くことにより、対象物に凹凸があっても吸着できる。またハンドを柔軟にすることにより、曲面に倣い吸着できる。本課題ではハンドを作製しその性能を評価した。提案したハンドによる研究目的の達成には課題が多いため、新たに吸盤をもつ吸着ハンドを提案した。作製した吸盤型ハンドの最大吸着力34 Nであった。さらに平板、曲率半径15 mmの球体や30度傾いた瓶(0.8 kg、曲率半径38 mm)などを把持することに成功した。吸着時、ハンドを対象物に押し付けるが、それに必要な力は6 Nと低い。また吸脱着の切換には約1秒かかった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、自在に機能するマイクロバルブという着想を実現した点はロボットハンドへの応用で自由曲面、柔軟物など現状では難しい対象物をつかむことに貢献できる点で、評価できる。一方、技術移転の観点からは、バルブ材質の検討は、バルブ部の柔軟性、曲面ワークに対する追従性の点から材料選択が重要な要素であるので、早期に再検討することが望まれる。今後は、製品化に至るまでの特性の安定性、耐久性、経済性なども意識した内容による研究開発を、企業との連携により進めることが期待される。
カチオン性オリゴペプチド固定化高分子を用いた粘膜投与型インフルエンザワクチンの開発 摂南大学
佐久間信至
インフルエンザなど粘膜感染するウイルスに対する免疫手法として、投与したウイルス株以外の株に対する交差反応性を示し、感染を広く防御することが期待される分泌型免疫グロブリンA(IgA)を粘膜上に誘導する粘膜投与型ワクチンの開発が待望されて久しい。本研究開発を通して、カチオン性オリゴペプチドの一種のD-オクタアルギニンを固定化した高分子はインフルエンザウイルス抗原の膜透過を促進して分泌型IgAを鼻粘膜上に誘導すること、並びに同IgAは同じサブタイプの異なるウイルス株に交差反応性を示すことが実証された。今後、免疫誘導の強度や確度を上げるため、D-オクタアルギニン固定化高分子の品質の安定化やアルギニン鎖長の最適化等を行い、抗原キャリアとしての同高分子の実用化を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもインフルエンザワクチンの増強効果が再確認できたことは評価できる。一方、研究段階レベルの知見ではあるが、粘膜ワクチンとしての発展性を秘めており、産学協同の研究開発の展開に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、カチオン性オリゴペプチド固定化高分子の化学的な検討ばかりでなく、免疫学専門家との共同研究などを通じてこの高分子による免疫誘導機構の細胞・分子レベルでの解明が望まれる。
筋委縮性側索硬化症治療の創薬標的分子としてのapelin/APJに関する研究 摂南大学
前田定秋
摂南大学
上村八尋
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動神経細胞が選択的に障害される進行性の神経変性疾患であり、現在、治療薬がなく、その原因究明とともに病態進行を抑制する効果的な治療薬の開発が求められている。申請者らは、現在までに遺伝性ALSのモデルマウスである変異SOD1(G93A)導入マウスとapelin-KOマウスを交配させてダブルミュータントマウスを作製し、ALSにおける脊髄での運動神経細胞死に伴う病態進行に対してapelinが抑制作用を有する可能性を示してきた。本研究において培養脊髄運動神経細胞であるNSC34細胞を用いて検討した結果、apelinが本培養細胞において、生存シグナルであるAkt及びERKの活性化を介して生存延長作用を有することを明らかにした。
今後は、当初の目標に挙げていたALSのモデルマウスへのapelin脊髄内投与により、脊髄運動神経細胞の保護作用及び生存延長作用がみられるか否かについて検討する計画である。
当初目標とした成果が得られていない。4項目の研究実施内容のうち、変異SOD1(G93A)導入アストロサイトにおける細胞内シグナルの変化に関する事項を除いて、他の3項目は技術的困難さのために当初の目標が達成出来なかった。 課題そのものは大変有意義な内容を含んでいるので、今後は、技術的問題を克服して基礎的なデータを揃え、応用展開の機が到来することを願っている。
新規パーキンソン病治療薬としてのβ3受容体アゴニストの開発 摂南大学
吉岡靖啓
摂南大学
上村八尋
【目標】神経変性疾患であるパーキンソン病の進行を抑制する薬物は存在せず、その開発は喫緊の課題である。申請者は、アドレナリンβ3受容体アゴニストにその可能性を見出し、疾患モデルマウスを確立するとともに治療薬の開発を試みた。【達成度】疾患モデルマウスの作成までには至らなかったが、その評価系はほぼ確立し、順調にデータを重ねている。また、有力な候補化合物を見出したが、水溶性が高いため、化学修飾により脂溶性を上げ、脳内移行性を改善する予定である。さらに、神経保護作用の機序として、薬剤排出タンパク質の一つであるMRP1の誘導が神経細胞へのグルタチオン供給に重要であることを見出した。【今後の展開】脂溶性の高いアゴニストを合成し、疾患モデルマウスでのドパミン神経保護作用を示すことを目標に検討を重ねる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。in vitroの系ではあるが、化合物A が強力なグルタチオン誘導活性を有し、アストロサイトと神経細胞の共培養系において神経細胞内のグルタチオン量を著明に増加させることを見出しており、高く評価できる。一方、ノルアドレナリン神経脱落パーキンソン病モデルマウスを作成し、化合物Aが実際に発症を防ぐかどうかを確認することが必須である。今後は、ノルアドレナリン神経脱落パーキンソン病モデルマウスの作成が成功しない原因を明らかにすることが重要である。
ディスポーザブル針関節鏡の開発 大阪市立大学
池渕充彦
社会の高齢化・スポーツの普及などにより、変形性関節症、肩腱板断裂や前十字靱帯損傷などの関節内病変は増加傾向にある。関節内病変に対し、関節鏡による関節内直視は診断上有用であるが、現行の関節鏡は直径5mmと口径が大きく、麻酔下に手術室で使用することが必要であり、より低侵襲な関節鏡の開発が望まれている。
我々は用途を関節内の観察のみに特化させ、また光ファイバーを用いることでコストダウンを図った、極細径・ディスポーザブルの関節鏡の開発を計画し、これを申請した。本開発は、直径1mm未満、0,94mmを目指す。これは日常診療において関節注射に用いられる穿刺針の内径と等しく、実現すれば無麻酔で切開を加えることなく、日常の外来診療において用いることが可能となる。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、成果に基づき特許出願を行い、実用化にかなり接近している。カメラ部、光源・レンズの再選択による照明の改良、 取得画像の画像補整処理、光ファイバーの問題、穿刺針との一体化、ディスポーザブルユースが可能になるようなコスト等良く検討され、画像の鮮明度、照明光における光源、ディスポーザブルする際の挿入・取り外し方法等の課題も明らかになり評価できる。一方、技術移転の観点からは、公益財団法人 大阪産業振興機構が運用するプロジェクトにも採択され、産学共同研究開発ステップにつながり、スポーツ医学のみならず、高齢者関節疾患に多いな恩恵を与えることが可能で実用化が望まれる。今後は、診断可能なレベルの画像取得がkeyであり、達成することが期待される。
椎体再建用骨置換型リン酸カルシウムセメントの開発 大阪市立大学
横川善之
大阪市立大学
田中豪太郎
生分解性キトサン添加により最大圧縮強度、破壊エネルギーの増大ならびに硬化後多孔化するリン酸カルシウムセメント開発を試みた。異なる粒径のセメント粉を混合して用いることにより、非混合と比べ硬化体の圧縮強度が最大1.5倍に増大することを見出した。硬化液にリンゴ酸と生分解性多糖類キトサンを添加すると、良好に水和硬化可能な範囲内で添加量に伴い硬化体の圧縮強度および破壊エネルギーが増大した。また、添加するキトサンについて分子量を高いものを用いると、硬化時間が長くなる傾向が見られた。得られた硬化体は細胞培養試験で良好な生体親和性を示した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、リン酸カルシウムセメントにキトサンとリンゴ酸を配合し、高靱性材料を実現すると共に、硬化後に生分解による多孔質化を図る技術は評価できる。一方、技術移転の観点からは、強度の維持など臨床医との連携から得られる新たな課題への対策を加えるなどでの実用化が望まれる。今後は、動物実験等による生体親和性、骨形成マーカーの評価など、実用化に向けた臨床現場との共同での検討を推進されることが期待される。
国際比較から推進する児童虐待予防のための母子健康システムの基礎研究ーフィンランドと日本の比較分析からー 大阪市立大学
横山美江
大阪市立大学
田中豪太郎
児童虐待の発生が極めて少ない育児環境を有するフィンランドとの国際比較研究により、日本の育児環境の問題点と特徴を明らかにし、かつ虐待予防強化のための効果的な母子保健システムの開発を行うことを目標に本研究に取り組んだ。日本における3,000人規模の調査は終了した。しかし、フィンランドにおける育児環境の調査は、調査開始が遅れたため、現在も調査途上にある。調査終了後、比較分析を実施する予定である。一方、日本で実施した調査から、父親の虐待的子育ての実態に関する分析を行った。その結果、父親は母親に比べ、子どもに対し虐待的な対応を行う頻度は低いことが明らかとなった。虐待的子育て項目は、父親の「叩く」と母親の「叩く」の間に最も強い相関が認められた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、当初計画されていたフィンランドでのデータ収集が終了していないが、日本における3000人規模のデータが収集し日本において虐待の現状を示すデータが得られた。日本において、児童虐待の状況を比較的多数の集団において明らかにしたことは評価できる。一方、フィンランドでのデータ収集が終了していないので今後開発計画を具体的に検討する必要がある。さらに、いまだ基礎資料の段階であり、具体的な開発にはさらなる研究が必要である。データ収集後、当初研究者が考えていた分析をすみやかに行い、今後のシステム作りに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後、フィンランドでの予定した多量のデータ収集が難しい場合には、得られた日本のデータで、何が虐待傾向と関連するのか検討することが望まれる。
特異な機能を有するアスパラギン結合型糖鎖遊離酵素の応用開発 大阪市立大学
伊藤和央
大阪市立大学
渡邉敏郎
本研究申請者が発見したアスパラギン結合型糖鎖遊離の供給システムを構築した。そして、本酵素を用いて、ヒトなど動物由来糖タンパク質糖鎖を多様な化合物へ転移導入し、様々なアスパラギン結合型糖鎖配糖体を合成することができた。また、本酵素を用いてアスパラギン結合型糖鎖を付加した生理活性配糖体を合成することができた。さらに、糖鎖転移効率を高める条件を見出した。また、本酵素を用いて細胞からの糖鎖を遊離することができた。このため、本酵素は、糖タンパク質の糖鎖操作用酵素として実用化が切望される。今後、本酵素を用いて合成した糖鎖導入配糖体の大量調製とその機能評価を行なうことによって、その実用化が期待できる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、糖タンパク質製剤のような有用配糖体の調製において、応用範囲の広いコンプレックス型糖鎖を基質にする酵素を発見して利用した点については評価できる。一方、大量調整法とそれにより得られる糖転移配糖体の機能評価に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、さらに多様な物質への糖鎖導入と産物の機能の評価を検討されることが望まれる。
新たな天然系薬剤排出ポンプ抑制剤による食品・化粧品用防腐剤の低減化 大阪市立大学
藤田憲一
大阪市立大学
渡邉敏郎
アネトールは、それ自身弱い抗菌活性を示すが、薬剤の排出を抑制することから、特に、他の薬剤と組み合わせた場合、相乗的抗菌活性を示す。本研究の目的は、アネトールと食品および化粧品用防腐剤を組み合わせた場合、実際に防腐剤の使用を低減できるかどうかを、より実用に近いレベルで評価することである。アネトールと種々の防腐剤との組み合わせにおける相乗的抗菌活性を検討した。その結果、化成タイプおよび天然系食品用の防腐剤と組み合わせた場合、相乗効果が判明した。次いで、化粧品用の防腐剤との相乗作用を調べたが、相乗効果は認められなかった。以上の結果より、アネトールを添加補助剤として用いることによって、化成タイプ不含の天然系食品用防腐剤の開発が可能になると期待される。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、出芽酵母に対する抗菌作用ついて、アネトールとの相乗効果を示す有機酸類を見出したことについては評価できる。一方、出芽酵母以外の細菌などについてのスクリーニングや作用メカニズムの解明、実食品での試験、防腐剤の軽減効果の確認に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、応用展開を見据えた計画に基づく研究開発を継続されることが望まれる。
1,5-アンヒドログルシトールの高純度・大量精製方法と多機能性食品素材の開発 大阪市立大学
小西洋太郎
大阪市立大学
渡邉敏郎
1,5-アンヒドログルシトール(AG)は、低濃度であるが自然界に広く分布している。本研究は、生薬オンジ(イトヒメハギ科植物の根)に高含量(約5%)含まれるAGの精製方法を確立するとともに、未だ十分に明らかにされていないAGの生理機能や利用法を検討することを目的とする。AGは生薬オンジ粉末から酸で抽出後、活性炭処理し、加熱濃縮後、イオン交換カラムクロマトグラフィー法で高収率(3.6〜5.2%)・高純度(95.4%)に精製することができた。AGの生理機能性面では、ラットにおいて、グルコース負荷による血糖値上昇を用量依存的に抑制したことから、肥満を予防する新規機能性糖として期待される。AGのもう一つの利用面において、酵素法で、抗酸化活性、抗褐変活性、抗菌活性など種々の機能性を有する1,5-アンヒドロフルクトース(AF)へ転換させる反応条件を見出した。今後さらに改良を加え、大量精製に向けて検討して行きたい。また、AG/AFの生体への影響(吸収、分布、代謝、排泄)について検討して行きたい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、伝統中国医学の素材であるオンジに着目し1,5-アンヒドログルシトール(AG)の精製方法の確立と生理機能の検討を所定通りに行ったことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、オンジからのAGの抽出技術のみならず、その機能性の絞り込みやオンジの栽培や調達、糖質抽出滓の副産物化等、全体システムを俯瞰した開発による実用化が望まれる。今後は、他者との連携によりAGの機能性素材としての認知度を高めることが期待される。
潜在性結核のバイオマーカー探索と診断法への応用 大阪市立大学
岡真優子
大阪市立大学
樋口堅太
潜在性結核菌感染者および健常者を対象として、潜在結核に対して特異的抗体価が上昇する結核菌特有の抗原を検索し、潜在性結核菌感染を正確かつ迅速に診断する方法を確立する。これまでに我々は、潜在性結核のバイオマーカーとして、4種類の休眠期抗原としてMycobacterial DNA-binding protein 1 (MDP1)、Acr、Antigen 85 (Ag85)A、およびAg85Bを見いだしでおり、これらを新規診断法へ応用するため、4種の抗体レベルと増殖期抗原に対するインターフェロン-gamma(IFN-gamma)産生量を比較した。潜在性結核の血清中抗体レベルを経時的に測定した結果、20検体中8検体でMDP1またはAcr抗体レベルが上昇した。健常者では、IFN-gamma量と抗体レベルに正の相関がなかった。今後、4種の抗体レベルと休眠期抗原に対するIFN-gamma産生との関係を明らかにし、新規診断法の開発を実施する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、特許申請は行なわれていないが、新規バイオマーカー候補も見出しており、技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは患者血清の検索、さらにケニア人を用いた計画など期待できるが、まだ連携企業は模索中のようでキット化には時間がかかりそうである。成果が表れた場合には、充分に社会還元は期待できるので実用化が望まれる。今後は、できるだけ特異度の高い系を確立するようにしていただきたい。ケニアとの共同研究は発展させていただくことが期待される。
禿頭自然発症ラットを用いた育毛ペプチドの機能評価による治療法の開発研究 大阪大学
勝谷友宏
WKYの近交配系にて禿頭を自然発症するラットを用いて、育毛剤などの負荷試験を通して禿頭の機能解析を行い、禿頭の発症機序や効果的な治療法の開発を目的としている。禿頭発症ラットの汎用性の確立と販売を併せてSPF化に取り組んでいるが、SPF化に際して禿頭の発現が見られない状況が認められたので再交配およびF2世代の観察を行い原因の検証を行っている。これに伴い育毛剤負荷による比較試験は遷延している。一方で禿頭ラットの遺伝子解析により禿頭発症に関連する遺伝子および変異を検証してオントロジー解析やパスウェイ解析から禿頭に関連すると考えらえる遺伝子を絞り込んでおり、今後はこれら候補遺伝子の機能解析を行うとともに動物のSPF化を遂行する。今後はAG30およびその関連したペプチド群を用い、絞り込みを行った候補遺伝子の発現変化を来すような候補ペプチドを同定し、育毛剤としての最適化を図る。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に禿頭症関連する可能性のある遺伝子の絞り込みができた点、疾患関連遺伝子の可能性を提示出来た点、早急に問題点が明確になった点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、禿頭ラットのSPF化が進まなかったために薬剤の効果判定ができず、特許出願に至っていない。他の薬剤の可能性についても検討し知的財産権を確保することが望まれる。今後は、候補遺伝子について禿頭部分でのmRNA解析を行えばより遺伝的背景が明らかになると思われる。また、SPF化されていないラットでも良いので薬剤効果判定を行うことで治療法確立の可能性を確認することが期待される。
ER流体を用いた立位での下肢の等速度運動装置の開発 大阪大学
木村佳記
本研究の目的は、我々が開発したトレーニング装置の試作機における制御および計測システムを確立して、立位での下肢の等速度運動トレーニングを可能にし、技術移転の可能性を見出すことである。我々は試作機のER流体ブレーキトルクと制御性を向上し、配線の改修とPCソフトのプログラム開発により等速度・等負荷抵抗下の運動に最適な制御系を構築した。さらに、試作機で健常人の等負荷・等速度運動の解析を行い、従来のトレーニング器具より高い運動効果が得られることを示し、当初の目標を達成した。今後、最大ブレーキトルクと速度制御性を更に向上してアスリートにも適用可能な性能を目指しつつ、新たにアクティブ型制御(装置が能動的に力を発揮する力制御)が可能なシステムを開発して臨床的に有用性の高い多彩な運動負荷が実現可能なトレーニングシステムへ発展させる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、摩擦面の表面粗さに注目し、細かな凸凹をつけることで摩擦の強さを向上させたこと、試作機ではあるが、等負荷運動、等速運動条件でのトレーニング効果を示したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、多様な運動が可能であるので、高齢者からアスリートまで広い利用が期待できるが、企業が本当に使いたいものになっているかどうかを、調査、確認することが望まれる。今後は、実際に使われる機能を明確にして、産学協同による開発に進むことが期待される。
磁場と磁性ナノ粒子の相互作用を利用した酵素機能制御技術の開発 大阪大学
古賀雄一
磁気印加によって酵素の活性化が可能なハイブリッドナノ粒子の開発を行った。交流磁場の印加により局所的に加熱することが可能な酸化鉄粒子に金ナノ粒子を担持させた金/酸化鉄複合ナノ粒子を合成し、粒子の二次粒径、表面処理の有無などが酵素固定化与える影響について検討した。また、金ナノ粒子に特異的に吸着するメチオニンタグを付与した酵素を作成し、高固定化効率で固定化酵素の比活性への影響がない固定化法が確立された。また、得られた固定化酵素に交流磁場を印加した場合、粒子の局所的な発熱による酵素活性の増加のためには、熱の拡散防止の必要性が明らかとなった。今後、本ハイブリッドナノ粒子を用いた反応系全体の最適化によって実用化が可能になると見込まれる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ナノ粒子の高機能化の視点から、金酸化鉄複合ナノ粒子を温度応答ナノ粒子へと開発する試みは画期的で,メチオニン導入酵素を金表面への固相化へと利用する技術はは評価できる。一方、粒子の熱拡散の制御技術課題が解決されれば、医療機器メーカーや洗浄剤メーカなどと連携して、タンパク質分解酵素を利用した医療器具洗浄用途への応用展開は可能であると思われるので、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、高機能ナノ粒子の完成をめざすことは重要であるが、酵素活性化の温度感受性を遺伝子工学的に制御することで、技術開発を加速することをが望まれる。
リポソーム内蛋白質合成系を用いた 多剤排出トランスポーター阻害剤スクリーニング技術の開発 大阪大学
松浦友亮
研究責任者らは、これまでに開発した膜蛋白質スクリーニング技術(特願2012-145795)を改良し、多剤排出トランスポーターの薬剤排出活性を阻害するペプチド、もしくは抗体製剤(バイオ医薬品)のスクリーニング技術を開発することを目指している。そのため、本研究課題では、(1)ペプチドライブラリーをデザインし、(2)多剤排出トランスポーターの一つであるEmrEのEthidium Bromideトランスポート活性のセルソーターを用いた評価系を構築することに成功した。これにより、生細胞を一切用いることなく直接EmrEのトランスポーター活性を阻害するペプチドをスクリーニングすることが可能となった。今後、本技術を用いて新規ペプチドの創生を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。ペプチドライブラリーをデザインし、多剤排出トランスポーターの一つであるEmrEのEthidium Bromide トランスポート活性のセルソーターを用いた評価系を構築することに成功し、生細胞を一切用いることなく直接EmrEのトランスポーター活性を阻害するペプチドをスクリーニングすることが可能となった点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からはハイスループットスクリーニングに供する利便性などでの実用化が望まれる。今後は、本システムで得られた候補ペプチドが実際の大腸菌に対して、排出ポンプ阻害作用があるか検証されることが望まれる。
新規デバイスを用いた簡易迅速抗菌薬感受性測定法の開発 大阪大学
松本佳巳
大阪大学
安原利正
臨床検査室における細菌検査の中で菌種同定に比べて迅速化の遅れている感受性測定を専用のデバイスと顕微鏡により3時間以内に迅速化する技術の開発を目指し、臨床評価を進める中でデバイスのデザインを改良し、目視判定基準を設定した。さらに緑膿菌の評価法をマニュアル化した。今期はまた、実用化に向けデバイスの製造方法を改良してコスト削減を追求した。加えて、判定用画像解析ソフトの構築を試みた。今後は、画像解析データを集積し、標準法による判定結果と比較して自動判定の基準を設定する。デバイスの製造関係を共に検討している企業と共同して、さらに臨床で使い易い製品に仕上げる予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、試作デバイスによる臨床試験データの蓄積には至らなかったが、感受性測定条件の検討や画像解析ソフトの開発など当初目標をほぼ達成した研究は、新規的、独創的で評価できる。一方、技術移転の観点からは、画像解析の自動化など、実用化にむけてはかなりのハードルがある。また、まだすべての段階で高価であり、如何に安価にあげていけるかも、今後の実用化に向けた鍵となるが、社会的還元の高い技術であるので実用化が望まれる。今後は、実用化のためにポリマー器材で精密金型を用いた射出成型なので安価、大量生産が出来る技術開発されることが期待される。
上皮バリア構成タンパク質を標的とした創薬シーズの創製 大阪大学
近藤昌夫
大阪大学
金允政
上皮は、多くの病原性微生物の侵入門戸となっていること、悪性腫瘍の90%が上皮由来であることから、創薬ターゲットとして注目されている。本研究では、独自に作製した上皮バリア構成タンパク質に対する抗体に関して、創薬シーズとしての可能性を検証した。まず、相補性決定領域のアミノ酸配列、エピトープ解析などを行うことで抗体の生化学的性状を詳らかにした。次に、細胞系を用いて感染防御活性および抗癌活性を解析したところ、複数の抗体で感染防御活性および抗癌活性が認められた。当該成果を基に特許出願を行い、創薬シーズとしての顕在化に成功した。今後は、安全性情報の収集を図ると同時に企業への情報提供を進めることで産学連携体制の構築を進めていく予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。上皮バリア構成タンパク質結合モノクローナル抗体のアイソタイプ決定、可変部アミノ酸配列と上皮バリア構成タンパク質結合特異性の相関解析、HCV感染阻害活性などの薬効検討ということに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、薬効などを根拠に抗体医薬へと開発を続けるのであれば、ヒト化が課題となるであろうし、HCV感染阻害薬の開発に繋げるのならば、単に相補性決定部位のアミノ酸一次配列を明らかにするのではなく、抗原結合部位全体の立体構造を解析し、クリティカルなアミノ酸残基を明らかにしなければならない。今後は、抗原結合部位の立体構造に関するデータを取得することが期待される。
miRNAを利用した尿路上皮癌,腎癌の診断・治療薬の創製 大阪大学
辻川和丈
大阪大学
金允政
尿路上皮癌(腎盂尿管癌、膀胱癌)や腎癌に対する診断・治療標的分子を探索する目的で、non-coding RNAであるmiRNAに着目した。その結果、腎癌ではmiR-629が顕著に高発現しており、腎癌細胞の遊走や浸潤を促進していることを認めた。一方miR-130ファミリー分子が、腎盂尿管癌とともに膀胱癌においても表在性癌と比べ浸潤癌で高発現していること、またそれら分子の機能を共通して阻害できる架橋型人工核酸オリゴDNAを創製し、膀胱癌の悪性化表現型を抑制できることを突き止めた。今後これらの成果に基づき、架橋型人工核酸を利用した腎癌や尿路上皮癌の非侵襲性診断法確立、革新的治療薬創製へと進める。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特にmiR-629とmiR-130ファミリー分子がそれぞれ腎癌と膀胱癌の悪性化を抑制する治療薬となる可能性が示されたことは高く評価できる。一方、技術移転の観点からは、選択的な局所投与法が開発されれば、分散及び蓄積の問題が解決される可能性もあり、今後miRNAをベースにした安全な抗がん剤を創出する可能性が期待される。今後は本研究内容を基に民間企業との共同製剤研究を推し進めることが期待される。
難治性網膜疾患に対する分子標的再生誘導治療法の開発 大阪大学
山下俊英
大阪大学
金允政
本研究の最終目標は、緑内障、虚血性網膜疾患、加齢黄斑変性による視神経節細胞の変性を阻止し、再生を促進する分子標的治療薬を開発し、臨床応用を実現することである。これまでにSHP siRNAの投与により、障害を受けた視神経細胞の機能再生が促進されることを見いだした。SHP siRNAは、再生阻害作用を阻止するとともに、細胞保護効果を有していることが分かっている。本研究では、SHPのメカニズムを明らかにし、適切な分子標的を見いだすことを到達目標とした。研究の結果、SHPに結合する2種類の蛋白質を単離した。これらの因子が分子標的となる可能性を示し、到達目標を達成できた。今後は、in vivoにおけるSHPの血管新生抑制効果を検証するため、レーザー誘発脈絡膜血管新生マウスを用いた評価を行う予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもSHP siRNAの投与により、障害を受けた視神経細胞の機能再生が促進されることを見いだし、予備的な結果ではあるが、標的分子として、p75およびMAP1Bを同定したことは評価できる。一方、これらの分子が創薬の新しい分子標的として認められるために技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、課題を明確にしていくことが重要で、少なくとも眼球関連視神経の局所部位だけでも創薬の新しい分子標的として研究成果につながることが望まれる。
劇症型心筋炎の画期的診断技術の確立 大阪大学
南野哲男
大阪大学
金允政
劇症型心筋炎は予後不良の疾患であり、的確な早期診断に基づく治療開始が望まれるが、その特異的診断方法は存在しない。申請者らは、ラット自己免疫性劇症型心筋炎モデルにおいて、心筋炎心臓では血管透過性が著しく亢進し、ナノ粒子が同部位に集積することを見出した。粒子径が大きい既存のマイクロバブルでは集積不可能であるが、ナノバブルであれば心筋炎部位に集積し、心臓超音波検査で心筋炎の早期診断が可能になる。本事業では、心筋炎部位に集積するバブルのサイズを同定し、また、特殊なガスを内包することにより、超音波の反射効率が約2倍に高まることが明らかにした。心筋炎の早期診断をめざしたナノバブルの開発が期待できる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に劇症型心筋炎を造影剤、蛍光剤などをリポソームに内包して、既存の方法よりS/Nの良い超音波の反射効率が得られた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、劇症型心筋炎の発症初期の早期発見に向けた「エコー画像と疾患部位との照らし合わせによる技術精度の検証」を可能とする技術などでの実用化が望まれる。今後は、製品の標準化、一般化の工程を考慮した研究がなされ、早期に実用化につながることが期待される。
がん特異的アミノ酸トランスポーター阻害物質のハイスループットスクリーニング系の開発 大阪大学
永森收志
大阪大学
金允政
がん特異的アミノ酸トランスポーターであるLAT1は、細胞増殖に必須なアミノ酸をがん細胞に供給する役割を担い、がんの悪性度と関わり予後不良因子の一つとなる。LAT1阻害物質は、抗腫瘍効果を示すことが動物実験で実証されており、LAT1はがん治療の新たな分子標的として期待されている。本研究では、新しい抗がん薬シーズとなる阻害物質の探索に向けた化合物ライブラリースクリーニングのため、LAT1阻害活性を迅速に評価するハイスループットスクリーニング(HTS)系の開発を進めた。その結果、LAT1により効率よく細胞に取り込まれ、感度良く検出できるHTSに適切な基質が見いだされた。今後は周辺化合物も含めた形で知的財産権を確保し、さらにHTSの実用化、それによる新しい抗がん薬シーズ探索を進める 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にがん特異的アミノ酸とランスポーターLAT1の阻害物質を探索するためのハイスループットスクリーニング系(HTS)を開発しようとするもので、本研究ではHTS用基質の有力候補物質を同定し、細胞培養系の問題点も明らかになった点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、スクリーニング系だけでは難しいと思われるので、できれば化合物あるいは抗体の検索までを行うことによる実用化が望まれる。今後は、技術的な改良を加えて優れたHTS系を確立され、創薬に貢献することが期待される。
癌悪性化タンパク質Wnt5aと受容体の結合を阻害する化合物のスクリーニング法の確立 大阪大学
菊池章
大阪大学
金允政
Wnt5aはWntシグナル経路を活性化する細胞外分泌タンパク質(リガンド)であり、その発現が種々の癌で浸潤転移と相関することを私共は報告している。本研究では、Wnt5aシグナル阻害化合物のスクリーニング法の確立を目標として、2種類のWnt5a受容体を固相化することにより高感度でWnt5a-受容体を検出するアッセイ系を確立した。試験的に2000化合物のスクリーニングを行ったところ、3化合物がWnt5aと受容体の結合を阻害した。今後は、今回開発したCell-free ELISAアッセイ系を基盤として、精度や感度をさらに改善したハイスループットアッセイ系を構築し、製薬会社との共同研究によりスクリーニングを行いたいと考えている。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にWnt5aの細胞表面上の受容機構としてFz受容体以外にRor2などの共役受容体や糖タンパク質のGlypicanに覆われている中で、Fz2-Fc, Ror2-Fcを固定して行うアッセイ系の提案は、その問題を解決するための方法論として評価できる。一方、技術移転の観点からは、現状の理論だけでは実用化は非常に難しいと予想され、アッセイ系の精度を高めるなどスクリーニング法を改良が望まれる。今後は、抗がん剤候補化合物の発見につながることことが期待される。
低酸素適応がん細胞に対する新規分子標的抗がん剤スクリーニング法の開発 大阪大学
荒井雅吉
大阪大学
金允政
本課題では、がん細胞の低酸素適応に関わる新規責任分子factor AおよびBについて、その薬剤標的としての有用性の検証、各factorを標的とする新規阻害剤探索のための評価系構築を目的に研究を実施した。薬剤標的としての有用性については、各factorの安定ノックダウン細胞が、低酸素培養選択的な増殖阻害を受けるという知見を得ることに成功し、その有用性を実証した。さらに現在、樹立した細胞株のin vivoでの性状解析を計画している。一方、評価系の構築についても、各factorの安定高発現細胞株を樹立し、これを利用する技術移転可能な評価系の構築を達成した。また今後は、評価系の技術移転を目指すとともに、学内外のライブラリーを利用してスクリーニングを実施する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。狙い通りのノックダウン細胞株の樹立に成功し、スクリーニングの基礎となる部分の開発が着実に進んだ点は評価できる。一方、動物に移植された状態でこれらのノックダウン細胞が、同様に固形ガン内部の低酸素部分で増殖が抑制されているかどうかを確かめること等、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。細胞のスクリーニング系は、種々の毒性化合物に対しても感受性を示すので、今後より簡便な系と思われるプロモーターなどを利用する系の開発も視野にいれるべきと思われる。
病原体由来リン酸化酵素阻害剤の開発による新規抗トキソプラズマ薬の探索 大阪大学
山本雅裕
大阪大学
松村晃
本研究開発では、ヒトにおいて致死的な脳症を引き起こすトキソプラズマ原虫の病原性に関与する必須エフェクタータンパク質であるROP18の構造を予測して、その阻害剤を開発することを目的とした。この研究期間中に、我々はROP18のリン酸化酵素ドメインの構造をin silicoで予測し、その立体構造を元に既知の宿主側リン酸化酵素であるDAPK1、Aurora KinaseやTTKなどに相同性が高いことを見出した。またAurora Kinaseの阻害剤が入手可能であることから、in vitroでROP18の活性を抑制できるかについてルシフェラーゼを用いて検討できる系を構築した。今後は構築したin vitroの系を用いて、阻害剤存在下でROP18活性を検討し、阻害できるのであれば生体レベルでトキソプラズマ症の発病を抑制できるかどうかを検討する予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもROP18の構造予測から、阻害剤として用いることが出来る部位を同定している点は評価できる。一方、まだ基礎研究段階であり、本研究を技術移転に持って行くためには時間を要すると思われる。産学共同研究に進むためには、さらなる成果の蓄積が必要と思われる。特に阻害剤の候補の同定に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、阻害剤の候補を同定して、産学連携体制を整えることが望まれる。
挿入的クロマチン免疫沈降法 (iChIP) による1コピーの標的ゲノム領域に存在する分子の同定技術の開発 大阪大学
藤田敏次
大阪大学
松村晃
近年、エピジェネティック制御機構と癌をはじめとする難病との関連が指摘されており、ゲノム上でエピジェネティック制御機構に関与する分子が同定できれば、難病の分標的薬の開発につながる。本研究では、申請者らが発明した新しいゲノム結合分子の網羅的同定法である挿入的クロマチン免疫沈降法(iChIP法)を利用し、細胞あたり1コピーの標的ゲノム領域に存在する蛋白質ならびにDNAを同定できる技術の開発を進めた。iChIP法と定量的質量分析法を組み合わせることで、解析対象とする1コピーのゲノム領域に結合している蛋白質を43個、次世代シーケンシングを組み合わせることで、解析対象とする1コピーのゲノム領域に結合しているゲノムDNA領域を41領域同定することができた。今後、iChIP法によるRNAの網羅的同定や、iChIP解析による創薬のターゲットの探索とシード化合物の探索を進めていく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に一定の数のタンパク質やゲノム領域が検出できたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、検出したタンパク質やゲノム領域が再現性があり、特異的なものであり、生物学的な意味を反映していることを実験的に示す必要がある。今後は、一度の実験にかかる作業と時間を効率化して、早急に実験例を十分に蓄積することが期待される。
in silicoファントムによる脊髄機能イメージングの評価と高度化に関する研究 大阪大学
鈴木貴
大阪大学
宮川勝彦
【目標】神経の発する磁場信号から、神経電流の位置と強度を推定する逆源探索法の数理的研究の一環として、脊磁計の磁場源解析に適用し、脊髄機能イメージングを実現する開発を進めている。脊髄機能イメージングの評価のためには、脊髄とその周囲の導電率分布を模したファントムが必要であるが、脊椎の構造が複雑なため、精密なファントムの実現は物理的に困難である。そこで、本研究では計算機内に脊椎とその周囲の導電率分布を再現し、逆源探索アルゴリズムの評価などに利用できるin silicoな脊髄ファントムの研究開発を目的とした。【達成度】標準骨格モデルの3次元データと拡散MRIから抽出した神経経路の位置情報を基にしてin silicoな脊髄ファントムを開発した。開発したin silico脊髄ファントムを利用して逆源探索による電流源解析アルゴリズムの最適化が可能になることを示した。また、解析時間を短縮するノイズ除去アルゴリズムを新たに提案した。【今後の展開】今回開発したin silicoファントムを用いて、末梢神経刺激によるより複雑な磁場パターンの解析法についても評価、最適化を行い、脊髄機能イメージングのさらなる高度化を推進する。また、脊磁計の医療機器としての事業化に向けた取り組みを引き続き行う。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、脊髄機能を磁場源を計測することで評価する診断手法において、ファントムが開発され、かつ磁場源の特定が2mm程度で行えることを確認したことから、概ね期待通りの成果が達成されたと評価する。一方、技術移転の観点からは、特に、脊磁計の医療機器としての実用化においては、技術移転を目指した産学共同等の研究開発ステップにつながる可能性が高まった。ファントムについても制作法を標準化することで実用化が望まれる。今後は本事業の成果に基づく特許出願されることが期待される。
新規術後癒着防止材の開発 大阪大学
田谷正仁
大阪大学
有馬健次
本課題では、術後の臓器間癒着を阻止するための新しい術後癒着防止剤の開発を目指し、体液中のグルコースと接触するとゲルを形成するヒアルロン酸誘導体を用い、繊維芽細胞の接着性抑制、ゲル化時間の制御可能性、術後癒着モデルを用いた検討から、その有効性を実証することを目標とした。実施した検討からは、得られるゲルには細胞が接着しないこと、ゲル化時間も約5〜60秒程度で制御できることに加え、癒着も防止することができることが明らかとなり、目標とした項目をほぼ達成することができた。今後は、手術時に損傷を受けた上皮細胞層を積極的に修復するような機能を付与することで、さらに付加価値を高めることを目指した検討を行う。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、アルギン酸ではなくヒアルロン酸に変更して、異物性を低下させた事やゲル化時間の制御が可能である事などの技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、癒着防止材の開発は、大いに待たれている分野である。癒着防止効果による、創傷治癒の遅延や粘膜上皮の進展阻害などの影響が解決できれば、再手術時の癒着組織の機械的剥離に伴う出血量の低下、癒着による消化器運動制限などの(イレウスの危険性増大)副作用の防止などに繋がり、実用化が望まれる。今後は、消化器領域のみならず、軟部組織、硬組織への有用性の検討を外科領域と共同研究されることが期待される。
細胞間相互作用存在下で評価可能かつ再現性に優れる薬効評価ツールの開発 大阪大学
境慎司
大阪大学
有馬健次
本課題では細胞間相互作用存在下で評価可能かつ再現性に優れる薬効評価ツールの開発を目指し、独自の手法によって球状組織体の表面に相互作用を再現したい細胞層を形成させた組織体を作製し、上市されている薬剤を用いた評価と液体窒素中での凍結保存可能性の評価から、その有用性を実証することを目標とした。検討は株化がん細胞より作製した球状組織体表面に血管内皮細胞層を形成させた組織体を用いて実施し、各検討項目に関して、ほぼ期待通りの結果を得ることができた。今後は、さらに研究を発展させて薬効評価ツールとして実用化することを目指し、そのために必要な製薬企業などのパートナー獲得を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも癌細胞と血管内皮細胞を有する組織体をその機能を保持したまま凍結保存可能な事を明らかにしたことについては評価できる。一方、技術的課題を明確にするためには、本システムを評価するにふさわしい薬剤を選択する必要がある。癌細胞と血管内皮細胞の関係を詳細に検討できる実験系であるので、使い方によっては十分優れた薬剤評価技術になる可能性がある。この系を正しく評価できる薬剤を選択して検討し直すことなどが必要と思われる。今後は、マイクロカプセルの技術を応用して癌組織と血管内皮細胞以外の細胞の関係を検討できる系の確立や、血管内皮細胞は管腔を作ることが必要なので、管腔形成を評価する方法の確立も重要である。
元素複合機能を活かした動的錯形成に基づく革新的化学物質捕捉剤の開発 大阪府立大学
小川昭弥
イオウ、リン、フッ素を有する固定化剤の合成を行い金属配位能について調べ、切れやすい炭素-窒素結合を持ったジチオカルバミン酸塩ではなく、より強い炭素-炭素結合を持ったジチオカルボン酸塩の重金属固定化剤を、新たに水溶媒中で合成することに成功した。またこの薬剤は鉛の他、カドミウム、水銀、銅、亜鉛、クロムについても高い捕捉性能を有することが明らかとなった
本薬剤を用いた試験では、残余鉛は 0.00952% で、水溶液中のほとんどすべての鉛を取り除き、規制値を十分にクリア可能であった。フッ素系溶媒を用いた回収については、フルオラスアルキル基の導入反応について検討したところ、4回までの回収、再利用が可能であった。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもジチオカルボン酸塩の重金属固定化剤を合成することに成功し、鉛、カドミウム、水銀、銅、亜鉛、クロムについて捕捉できたことは評価できる。
一方、技術移転の観点からは、既に産学連携体制が構築されており、今後は水溶液中での回収実験のみならず、実際の土壌・地下水浄化や廃水などを用いた実用評価などの技術検討やデータの積上げを企業とともに進め有害金属捕捉剤として実用化されることが望まれる。
本研究は様々な元素の除去・回収に広範囲利用されるものであり、今後実用化できれば、社会的意義は大きく実用化が望まれる。
生体適合に優れたリン脂質による難水溶性薬物の溶出性改善 大阪府立大学
綿野哲
大阪府立大学
阿部敏郎
リン脂質ポリマーは、細胞膜を構成するリン脂質と同様に親水基と疎水基を合わせもつ両親媒性を示し、優れた生体適合性と吸・保湿性を有している。我々は、このポリマーのもつ特性に着目し、難水溶性薬物の溶出性改善の可能性を見出した。本研究では、難水溶性を示す鎮痛解熱剤であるエテンザミドおよびインドメタシンを対象薬物とし、それらの溶出性改善をリン脂質ポリマーを用いた湿式粉砕により試みた。その結果、薬物をサブミクロン領域まで微細化でき、また、初期溶出速度を1オーダー以上改善することに成功した。さらに、湿式粉砕による比表面積の増加とリン脂質の界面活性効果が、溶出特性の改善に寄与することを解明した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。リン脂質ポリマーと薬剤を混合粉砕により溶出速度を格段と早めた薬剤開発の可能性が示された点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、ナノ粒子の取り扱いや薬剤を非晶質化した場合との比較検討が望まれる。今後は、非晶質化した薬剤、本手法を用いた薬剤、ナノ油滴に溶解した薬剤等比較検討して、どの薬剤が最も応用することが最適か比較検討することが期待される。
キラル分子を分析するための小型のイオンモビリティ装置の開発 大阪府立大学
岩本賢一
大阪府立大学
阿部敏郎
イオンモビリティ装置は、移動度の違いを利用して、物質の同定、構造情報を取得する。イオンモビリティ装置の分解能は飛行距離に依存するため、分離能力が高い装置は大型である。今回、小型のマルチポール型イオンモビリティ装置を開発した。開発中の装置は、イオン軌道シミュレーション結果により、高い透過率を持つことを示した。また、真空中での放電現象を利用した低温プラズマイオン源の開発を行い、イオンの生成を確認した。真空中での低温プラズマを用いたイオン化が可能となったことから、異性体の情報を保持したイオンの生成が期待できる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも,新たなイオン源の開発や高周波と直流パルスの重畳を可能にした電気回路を完成したことについては評価できる。一方、今の技術をそのまま移転するには無理があるが、真空内LTPイオン源の開発や高周波と直流パルスの重畳が可能な電気回路の開発は産学共同等の研究開発ステップにつながる可能性は高く、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後、キラル分離分子の開発は無機および有機合成化学の研究者との共同研究が必要である。共同研究により、計算だけでなく実際の物質を合成することで、応用が広がることが望まれる。
アルカリ金属との電子移動を利用した新規負イオン源の開発 大阪府立大学
早川滋雄
大阪府立大学
阿部敏郎
申請者がアルカリ金属を導入した装置で実験中に偶然発見した負イオン生成の現象を新規負イオン源として利用できる可能性を実現するための装置開発を行った。 本現象の負イオン生成の基礎となる真空中でアルカリ金属蒸気をしみださせることが可能なシステムを作成した。 新規負イオン源の設置を予定していた質量分析装置の真空排気系での不調が起こり、取り付ける質量分析装置を変更した。その質量分析装置に設置が可能な形のシステムに改良し、イオン源として取り付けを行った。 現在、アルカリ金属を導入し表面で非解離型負イオン生成に取り組んでいるが、条件設定がまだ不明なため充分な負イオン強度が得られていない。今後条件の設定を明確にすることにより、新規負イオン源としての実用性を明確にしたい。 装置故障と云う不運に拠ることではあるが、当初目標とした成果が得られていない。中でも、再現性が取れる非解離型負イオン生成についての技術的検討や評価が必要である。今後は、テーマを再設定されることが望まれる。
導電性磁性マイクロビーズを用いたワンステップ免疫検査法の開発 大阪府立大学
椎木弘
大阪府立大学
阿部敏郎
金ナノ粒子を用いる導電薄膜形成技術により磁性ビーズを被覆することで、バイオプローブとの高い親和性を利用したプローブ導入量の向上および迅速な免疫検査法の開発を目指した。金ナノ粒子被覆により磁性ビーズへの導電性(1.2Ω)の付与およびプローブのワンステップでの高効率導入(従来比10倍以上)が達成された。これらの結果に基づき、微量試料からのターゲットの分離、濃縮と高感度な検出、定量とが同時に可能な新しい検査法の構築が達成された。本法によれば、免疫検査において、更なる迅速化、高感度化が可能となるため、インフルエンザ、口蹄疫ウイルス感染症などのワンステップ検査への応用展開が可能になる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に 、金ナノ粒子を用いる導電薄膜形成で磁性ビーズを被覆することによってバイオプローブとの親和性を利用して迅速な免疫検査法を開発した技術に関しては評価できる。
一方、技術移転の観点からは、従来手法との性能や費用等を比較できる免疫検査の評価実験を行い、本法の有用性を確認することにより実用化が望まれる。今後は、従来手法との優劣を明確にして研究展開されることが期待される。
新規GAPDH凝集阻害剤によるアルツハイマー病治療薬開発の更なる展開 :ペプチドミミックによる非ペプチド性低分子化合物の創製 大阪府立大学
中嶋秀満
大阪府立大学
下田忠久
研究開始時のシード化合物であるGAPDH凝集阻害剤オリゴペプチドから、更なる活性向上と非ペプチド性低分子化合物への展開を目的に、複数のペプチド合成とスクリーニングを実施し、最適化ペプチドの同定に成功した。また、最適化ペプチドを含む複数のオリゴペプチドの構造活性相関から、非ペプチド性低分子化合物SH-001の創出に成功した。今後の展開として、SH-001をリード化合物とする合成展開と低分子での特許出願に注力し、また、アルツハイマー病モデルマウスを用い、病態モデルでの有効性評価を実施していく予定であり、技術移転および製薬メーカーとの共同開発の可能性が充分に期待される。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に的確、堅実なスクリーニングを進め、最適化合物を決定した点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、in vivoにおける解析の比重を増やすことが望ましい。今後は、臨床応用に向けての前臨床試験を着実に実施していくことが期待される。
マルトトリオース生成アミラーゼを用いたマルトトリオシル配糖体の酵素合成 大阪府立大学
炭谷順一
大阪府立大学
柴野裕次
G3Amyは澱粉をマルトトリオース(G3)単位で切断するアミラーゼである。本酵素は糖転移活性が高く、しかも水酸基を有する各種化合物にG3を特異的に転移することから、これまでにない新しい配糖体の合成が可能となる。そこで、G3Amyを用いて有用な配糖体を合成するシステムの開発を目指した。G3Amyの生産性は目標に達しなかったが、高い収率で回収できる精製システムを開発した。糖転移反応をさらに効率的に行うためにG3AmyのX線結晶構造解析を行い、変異導入することで糖転移とG3特異的生成に関与するアミノ酸を同定した。その過程で転移反応が増大する変異酵素が十数種類得られ、G3配糖体合成システムの実現に見通しが立った。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、構造情報に基づき変異酵素が作成されて、変異の組合せによる改良が期待できることについては評価できる。一方、目的の配糖体が既存のものへの優位性と変異の組合せによる改良に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、基質結合型の結晶構造の解析や先行させることができる化合物の生産の実用化を検討されることが望まれる。
がん−ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)のホウ素送達分子として最適化されたホウ素クラスターアミノ酸類の開発 大阪府立大学
服部能英
大阪府立大学
西村紀之
本研究は、がん-ホウ素中性子捕捉療法 (BNCT) の最重要課題である腫瘍選択性・集積性に優れた新規ホウ素薬剤の開発を目指すものである。そこで、腫瘍細胞のアミノ酸輸送系に対して高い親和性を持ち、腫瘍細胞内に高集積するα置換型ドデカボレートアミノ酸(DBAA)の分子設計・合成・評価を行った。
その結果、設定した目標値を満たす有望な新規化合物を8種類開発し、現行の臨床薬より腫瘍集積性の高い化合物を見出した。しかし、真に実用的な薬剤を開発するためには、より多様なα置換型DBAAのライブラリー構築が必要であると考えられる。今後、より効率的な合成法を検討するとともに化合物ライブラリーを拡充し、実用的なBNCT用ホウ素薬剤の開発を目指す。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にホウ素剤の合成法が確立できたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、企業化に必要なデータや化合物性能を明らかにする必要がある。実用性向上のため関連化合物の創製や国内外特許出願も必要である。今後は実用化にむけた取り組みを整理し、研究を推進することが期待される。
抗癌剤創成研究:オーロラキナーゼA阻害活性をもつ人工ペプチドを用いた医薬品リード開発 大阪府立大学
藤原大佑
大阪府立大学
西村紀之
本研究課題では、抗癌剤開発の標的分子であるオーロラキナーゼAを特異的に制御する抗癌剤リード開発を目指す。最初に、これまでの研究で得たオーロラキナーゼA阻害活性をもつ人工ペプチドの標的分子特異性の向上を試みた。このペプチド阻害剤にATP競合性の低分子阻害剤を繋げる手法を確立し、二価阻害剤を設計して化学的に合成した。次に少量の試料で一度に多くの阻害剤について評価が可能なキナーゼ活性阻害試験法を確立した。合成した阻害剤について評価をしたところ、オーロラキナーゼA阻害活性は顕著に向上した。今後は、標的分子特異性の向上に加え、研究期間内に達成できなかった細胞膜透過性の付与と腫瘍細胞増殖阻害試験を行う。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも実際に候補化合物Adc-betaAla3-54を合成し、in vitro aurora阻害活性を調べたことについては評価できる。一方、コンジュゲート化合物の大量生産、動物実験に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。細胞内導入法の確立が本研究の実用化における最も重要なポイントの一つと考えられ、今後は、細胞内移行ペプチドやリポソームなどの検討により、早期の手法確立が望まれる。
新しい食品加工・発酵食品のためのダイズ一段階液化法の開発 大阪府立大学
笠井尚哉
大阪府立大学
西村紀之
ダイズの難分解繊維とされる二次細胞壁可溶化酵素や細胞内ボディ構造体可溶化微生物生産酵素及び単細胞化処理などの知識・技術を併せて醤油、味噌、割砕ダイズ、ダイズペースト、低変性脱脂ダイズについて可溶化を試み評価した。醤油では単細胞化処理できなかったため大きな差は認められなかったが、その他では細胞壁群は容易に可溶化できオリゴ糖が生成された。難分解性細胞内組織であるボディ構造体は、脆くすることができたが完全な液化は未達成となった。これらの結果、味噌では褐変が約1.8倍に促進され液化部が生成された。ダイズタンパク質は低分子化されダイズアレルゲンは約1/25になり、ACE阻害ペプチドもよく産生された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ダイズを一段階で全可溶化するという困難なテーマに挑戦し、部分的ではあるが可溶化できたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、ダイズ組織の可溶化について詳細な酵素化学的検討を進めるなどでの実用化が望まれる。今後は、分離したBacillus sp. が産生する酵素の種類、酵素力価、分解特性について既存のものと比較検討を行い応用展開を図るることが期待される。
小動物用リポソームを用いた非侵襲点眼ワクチンの開発 大阪府立大学
渡来仁
大阪府立大学
西村紀之
涙液中で安定性を持たせ涙道吸収能を示すリポソームを開発し、小動物医療の感染症予防において期待される点眼ワクチン用デリバリーシステムの確立を目的とした。その結果、涙液中での安定性と涙道吸収能を示す最適なリポソーム粒径ならびに脂質組成、さらに高い免疫誘導能を示すリポソーム粒径について明らかする事ができた。本研究の成果は、点眼ワクチン用デリバリーシステム確立のための涙道関連リンパ組織(TALT)への抗原デリバリーを可能にするリポソームを構築するという当初の目的を達成した。今後は、ワクチンの最適なアジュバントについて検討し、犬を用いた免疫誘導実験により実用化に向けたリポソーム点眼接種ワクチンの有用性について評価を行う。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、安定したリポソーム組成と免疫能の高いリポソーム径を決める技術は評価できる。一方、技術移転の観点からは、低コストの脂質リポソームの組成比、リポソーム粒径の検討、点眼接種後の免疫誘導能を高めるアジュバントの最適化等の課題を解決するなどでの実用化が望まれる。径粘膜免疫ではI型アレルギーを惹起する可能性もあるので、今後は、スギ花粉など抗原の種類を広げてIgE産生もモニターされることが期待される。
情報収集型サーバにおける目標スループットを指向したトランスポートセッション間連携制御 大阪府立大学
戸出英樹
大阪府立大学
田中政行
本課題では、IP網環境下での妊婦の胎児心拍など生体センシング情報の遠隔診断や介護映像の監視システムにおいて、所定の目標スループットを要する重要性の高いクライアントに対して当該目標に沿った性能を提供することが困難であるという問題を解決するため、多対1型のトランスポートセッションを連携制御するプロトコルの研究開発を行った。具体的には、目標達成のために、(1)情報収集サーバにおけるTCPバッファの目標値に応じた遅延・帯域幅積に基づく動的協調配分規律を具体的に設計し、(2)対地別TCPセッション数を目標値の達成状況に応じて迅速に変更させる動的加減制御を設計した。多面的な環境における性能評価を通じて物理的容量限界を超えない範囲内で要求スループットを適切に提供できることを実証した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもIP網環境下での妊婦の胎児心拍など生体センシング情報の遠隔診断や介護映像の監視システムにおける「コネクション数調整制御」および「バッファサイズ調整制御」のアルゴリズムの洗練化については評価できる。一方、「FEC-TCP連携制御や「高品質伝送制御」について技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、生体情報の通信システムにおける品質上の全体的な要求仕様や要素技術の仕様を明らかにされることが望まれる。
ミミズ脂質のアトピー性皮膚炎軽減素材への応用開発 大阪府立大学
山本公平
大阪府立大学
鈍寳宗彦
ミミズ脂質構成脂肪酸から各種クロマトグラフィーを組み合わせて高度不飽和脂肪酸以外を分画した。分画した脂肪酸をエチルエステルとブチルエステルに変換してマウスへの塗布試験用サンプルとした。塗布試験用サンプルの人工皮脂としての効果を明らかにするため、マウスへの急性炎症誘発作用を検討した。その結果、両者に差はなくマウス背部上皮に炎症性変化は認められなかった。さらにアレルギー性皮膚炎モデルマウスの耳介にアトピー性皮膚炎を誘発させた後、塗布試験用サンプルを塗布し、抗炎症および抗アレルギー作用を観察した。その結果、炎症抑制および炎症治癒作用があることなどを確認した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ミミズ抽出残渣由来の脂肪酸混合物をエステル化したサンプルをマウスに塗布した場合急性皮膚刺激性は認められず、NC/Ngaマウスのアトピー性皮膚炎モデルで抑制作用を示すことを明らかにしたことについては評価できる。一方、アトピー性皮膚炎の治療薬としては副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬タクロリムの塗布剤に高い有効性が認められていることから、臨床試験でこれらの薬剤を上回る有効性を示すデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、早急な特許出願と、サンプル調製法構築と各種薬理評価を実施するために共同研究先企業を早期に選択されることが望まれる。
インテリジェンス型エクソソームを用いた癌指向性核酸デリバリーシステムの開発 大阪府立大学
石橋宰
大阪府立大学
鈍寳宗彦
癌指向性ペプチドを付加したヒトβ-macroglobulin(hB2M)であるhB2M-iRGD、およびhB2M-RGDの発現プラスミドを作製し、エクソソーム高分泌細胞であるヒト前立腺癌細胞株PC-3に導入した。続いてウェスタンブロット法により、目的蛋白質が強く発現されていることを確認した。さらにその培養上清からエクソソーム(iEXO)を回収し、同様にウェスタンブロット法で解析した結果、当該蛋白質を検出することができたが、シグナルはきわめて微弱であった。そのため、期間内には、当初の計画していた細胞・生体レベルでのiEXOの抗腫瘍効果の評価には至らなかった。しかし、現在、iEXOの効率的な回収・濃縮に成功しつつあるため、今後も研究を継続し、別の方法で調整したiEXOも含めて、残りの実験計画を遂行する予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。癌指向性環状ペプチドiRGDを表面に露呈するインテリジェンス型エクソソームによるDDS確立のアイディアは十分に評価できる。一方、産学共同の検討に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、人口エクソソームの作製について高い技術を有している企業との共同研究をできるだけ早く実現することが望まれる。
障がい児の体幹-足部運動連鎖型補装具の開発 大阪府立大学
米津亮
大阪府立大学
鈍寳宗彦
今回、障がい児の体幹運動をトリガーとして、足部の運動を制御・調整できる補装具の開発に向け活動を展開した。今回の研究を通して、障がい児と健常児の計測データを基に人間モデルを作成し、開発しようとする補装具利用時の運動解析を実施した上で、補装具の制御系設計を行った。そして、有線利用のセンサーを利用した補装具の試作品を作製するに至った。試作した補装具の有効性については、障がい児を対象とした実証実験などを通して検証を重ね、実用化に向け活動を継続する必要性がある。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも立ち上がり動作における体幹−下腿の運動の関連について明確に確認することができ、下腿運動の補助により運動改善が生じることが示唆されたことは、評価できる。一方、センサ、駆動系を含めたハードウエアの開発を早い段階で実施し、装置を早く完成させ具体的な実験により実用上の課題を抽出することが必要と思われる。今後は、目的のシステムが実現できれば、障害児の行動自身の幅が広がることから、障害児のQOL向上に大きく貢献できるものと思われるので、早い段階で企業と結び付くことで開発を進めることをが望まれる。
抗菌剤を利用しない自己抗菌性繊維の開発 地方独立行政法人大阪市立工業研究所
大江猛
地方独立行政法人大阪市立工業研究所
高田耕平
食品に含まれているメラノイジン色素は、単に色物質としての役割だけでなく、抗菌作用や抗酸化作用を示すことが知られており、食品の長期安定性に深く係っている。そこで、本研究では、食品の糖質として還元糖を、タンパク質としてポリアミド繊維を用いて、繊維上に人工的にメラノイジン色素を生成させた。還元糖で着色させた羊毛繊維の抗菌活性を評価したところ、黄色ブドウ球菌、大腸菌、さらに、緑膿菌に対して高い抗菌活性(殺菌性)を示した。興味深いことに、黄色ブドウ球菌の中でも、医療現場での院内感染に深く係っているMRSAに対しても高い抗菌性を示した。本研究で得られた成果を応用することによって、低刺激で安全性の高い抗菌性繊維の開発が可能となる。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、繊維自体に構造的に自己抗菌性を持たせ、対応する菌種をも明確にした成果が顕著である。一方、技術移転の観点からは、使い捨ての製品用途だけではなく、繰り返し使用の製品に必要な、抗菌性の持続性や洗濯への耐久性を向上させるなどでの実用化が期待される。今後は、抗菌性の要因がメラノイジン色素ではない可能性が示唆されているので、抗菌のメカニズムの解明も検討されることが期待される。
皮膚常在菌制御によるアトピー性皮膚炎増悪化予防に役立つ新規な脂肪酸素材の開発 地方独立行政法人大阪市立工業研究所
永尾寿浩
地方独立行政法人大阪市立工業研究所
高田耕平
皮膚常在の善玉菌と悪玉菌の不均衡が、アトピー性皮膚炎を増悪化させる原因の1つである。そこで、皮脂中に元来から備わっている脂肪酸の抗菌活性に着目し、天然油脂を原料として、悪玉菌を抑制し善玉菌を抑制しない脂肪酸素材の開発を目的とした。その結果、種々の脂肪酸の構造と抗菌活性の関係を解明し、目的とする脂肪酸の種類とその条件を明確にした。また、微生物法を用いることにより、植物油中に豊富なオレイン酸から、目的とする脂肪酸素材の製造が可能なことが分かり、当初の目標が達成できた。得られた素材は、アトピー性皮膚炎の増悪化予防に役立つ新規で独創的な医薬・化粧品の原料として利用が期待できる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に微生物が生産する特定の脂肪酸に、ヒト皮膚常在菌中の善玉菌と悪玉菌の比率を適性に保つ潜在的な効果を示した点は評価できる。アトピー性皮膚炎増悪化予防のための医薬・化粧品の原料として有望である。一方、技術移転の観点からは、特定有効脂肪酸を主成分とする脂肪酸混合物を、効率よく安価に生産できる方法の開発が課題である。特に混在する構造類似脂肪酸が効果を妨害することが示されており、この問題の解決が望まれる。また、知的財産権の確保も重要である。今後は、酵素リパーゼの基質特異性を利用して、脂肪酸混合物の組成を都合よく制御できればその有効性が高くなることが期待される。
タンパク質リン酸化酵素SIK3を標的とした抗肥満薬の創製 独立行政法人医薬基盤研究所
竹森洋
独立行政法人医薬基盤研究所
松田岳彦
タンパク質リン酸化酵素塩誘導キナーゼSIK3の遺伝子破壊マウスは痩身で血糖値が低い。SIK3抑制の生活習慣病における有用効果を示すという目標の元、SIK3抑制低分子化合物の探索、大量精製法の確立、マウスでの検証実験を行った。その結果、ワラビ成分のプテロシンがSIK3シグナルを抑制し、糖尿病モデルマウスの血糖値を低下させた。作用機序を解明したところ、プテロシンには糖尿病薬メトホルミンと同様に、細胞内ATP量を低下させる作用があることが判明した。また、副作用を伴わないことも明らかとなり、計画目的を達成した。本研究成果を元に出願した特許を活用すべく企業との共同研究にも移行したことから、今後は実用化研究に重点を置く。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。ワラビ由来のプロテシンBが新たな血糖降下薬となる可能性を提示し、従来薬のメトホルミンよりも効果が大きいことを示した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、創薬までの道筋を十分検討し、臨床現場と連携して行くための努力が望まれる。 副作用の評価は、血液生化学的検査に加えて行動薬理学的試験を加えることが望ましい。今後は、臨床利用を目指した、研究グループの構築や多角的な副作用スクリーニング法の開発を実施し、研究のスピードを加速することが望まれる。
自己組織化を誘導する脱細胞化バイパスグラフトの開発 独立行政法人国立循環器病研究センター
馬原淳
独立行政法人国立循環器病研究センター
大屋知子
本研究申請では、自己組織化を誘導する脱細胞化バイパスグラフトの開発を目指して、大腿動脈への移植とそれによる開存性、組織再生について評価した。採択時において目的とする多くの項目において滞りなく成果を得ることができていたため、さらなる研究の展開として、疾患モデル動物に対する組織再生型脱細胞化バイパスグラフトへの評価へと展開した。その結果、臨床での使用が想定される高脂血症を発症した血管組織においても、開発した脱細胞化バイパスグラフトが有効に機能し、血流を維持させることに成功した。今後、本申請で得られた人工血管やその評価方法について特許申請を通して公表すると共に、現在参画しているJST戦略的イノベーション創出推進プログラムへと統合し、成果の実用化へ向けて研究・開発を進めていきたい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、自己組織化を誘導する脱細胞化バイパスグラフトの開発をめざして、移植後の化血管科依存性、組織再生を検討し、機能が保たれ血流維持されることを確認した技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、長期成績、病的状態における機能維持など検討が必要である。産学共同などの研究開発ステップは具体的にはまだであり、今後、積極的なアプローチがが望まれる。今後は、機能として安全かつ有効であることの長期観察(5〜10年)がされることが期待される。
降圧および抗炎症による高血圧性腎障害治療薬の開発 独立行政法人国立循環器病研究センター
内藤由紀子
独立行政法人国立循環器病研究センター
大屋知子
P2X7受容体阻害による腎障害抑制の背景機序を調べるため、P2X7遺伝子欠損(KO)マウスにDOCA食塩負荷し、連続血圧測定、尿および病理組織検査を行ったところ、KOマウスでは血圧上昇と腎障害が抑制されることがわかり、その背景に抗炎症作用が認められた。以上の結果から、P2X7が腎障害の治療ターゲットとして有効であることが明らかとなった。したがって、目標としていた有効性の判断に至ることができ、さらにその有効性の背景にある抗炎症作用メカニズムも解明したことから、達成度は高い。また今後の展開として、産学協同での研究開発が可能であるのか否か、本研究開発結果と、既に論文として公表している研究結果を併せて検討する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。マウスでの基礎研究成果が出た段階であり、仮説が証明されたと評価できる。一方、技術移転の観点からは、まだデータが不足していると思われる。人の腎蔵を使った具体的な研究について示すべきであろう。また、どうすれば企業が興味を持つか、関係者間で検討することが望まれる。今後は、人の腎臓でマウスと同じような研究成果が得られることが期待される。
鶏卵バイオリアクター化を目指したニワトリ生殖巣キメラ率改善技術開発 独立行政法人産業技術総合研究所
大石勲
独立行政法人産業技術総合研究所
堀野裕治
本課題はニワトリ遺伝子組換えにより、鶏卵をバイオリアクターとして活用し、抗体医薬等の有用蛋白質を安価に生産することを目指した技術開発研究である。本研究では内在性の始原生殖細胞を減少させることで、ヒヨコ生殖巣キメラ率を従来の10%程度から90%程度に大幅に向上した。また、成鳥精巣内キメラ率も50%以上に達した。一方、精液内細胞のキメラ率は0.1-0.5%に留まり、組換え後代もこれまでの所得られていない。鶏卵バイオリアクター技術のボトルネックである低い生殖巣キメラ率を本研究によって大幅に改善し、効率の良い組換え後代獲得に向けた技術開発が達成されるとともに、移植始原生殖細胞の分化不全の事前評価や解決等次の課題を明確にした。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、内在性始原生殖細胞の不活化により、レシピエント生殖巣内の移植始原生殖細胞のキメラ率を目標の80%まで大幅に向上させるなどにより生殖巣キメラ形成システムとして有用なレベルに達したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、リソースとなる始原生殖細胞の取得・培養・操作の技術を確立するなどでの実用化が望まれる。今後は、精子キメラ率の高い始原生殖細胞のラインを探索・樹立し、高効率の遺伝子組換えニワトリの作出技術として確立されることが期待される。
経皮吸収剤の開発に向けた皮膚角層構造解析手法の確立 関西学院大学
中沢寛光
関西学院大学
丸本健二
皮膚バリア機能に重要な役割を果たすと考えられる角層の構造解析について、様々な応用測定が可能な試料セルの開発を目的とし、当研究を開始した。試料セルの構造は、物質が経皮吸収する過程で生じる角層の微細な構造変化を検出しうるもの、角層内の水の移動をモニターしつつ構造解析しうるもの、力学的刺激を与えた際に角層に生じる構造変化を解析しうるものとし、実際にこれらの測定が実現可能な試料セルの開発に成功した。当試料セルを用いることで、エステル油剤や水の角層内での挙動と角層構造の関係性(温度特性)を明らかにすることができ、さらに、角層への力学的刺激が角層の構造や溶液の浸透特性に影響することも確認できた。今後、当試料セルを用いた様々な経皮吸収型製剤の開発研究が加速すると期待される。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、斜め入射セルの高精度化を目標としたs値領域の角層構造変化の抽出については従来の精度を改善する成果が得られており、評価できる。
一方、産学協同の研究開発ステップにつなげるには、まだ多くの課題が残されている。 本研究成果が応用展開された場合には経皮吸収型製剤の開発研究に利用される可能性があり、斜め入射セルをを用いた力学的刺激による角層構造の変化、製剤等の経皮浸透に関する技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、技術移転、産学共同の研究につなげるための具体的な計画立案をされることが望まれる。
車椅子使用者の自発的漕ぎ動作に基づく走行支援装置 関西学院大学
中後大輔
関西学院大学
丸本健二
本研究は、パッシブシステム技術と人間工学に基づく漕ぎ動作判定技術を統合することにより傾斜路走行時の走行安定性と直進性を確保できる手動車椅子用走行支援システムの実現を目的とする。本研究により、(1)ブレーキのトルク出力特性の解析から、ブレーキの応答特性を改善し、(2)車椅子移動の典型(室内、屋内廊下、屋外道路)に対し、システムの推定パラメータと軌道推定誤差の関係を実験的に明らかにし、環境に応じたパラメータ設定を可能とした。さらに、これらの成果を用い、傾斜 8%の切り下げ勾配面を、傾斜下方に片流れ現象を起こすことなくユーザが安全に横断できることを実証した。今後は、走行環境の自動検出など本研究から見出された技術課題の解決を含め、実用化に向けた開発を継続する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、一定の条件下で、手動車いすにサーボブレーキ、センサ、制御装置を取り付けることで、傾斜面の安定走行を支援する基本システムの開発が行われ、ほぼ目標を達成したことは評価できる。人が操作する車椅子にパッシブ制御を組み込むことで、安定した走行性を確保する意義は大きい。一方、技術移転の観点からは、ブレーキ特性のモデル化の方策をさらに具体的に検討し検証、ブレーキ制御方法また環境推定方法の導出と検証を進め、トータル的な装置構築方法の提供し、実用化に進めることが望まれる。今後は、進む高齢化など社会のニーズに一致しており、実現すれば大きな社会還元が期待できるので、メーカからの技術協力や共同研究などの取り組みを積極的に進めることが期待される。
がん細胞特異性のより高いがん細胞傷害性組換えアデノウイルスの開発 関西学院大学
大谷清
関西学院大学
勝又隆
がん細胞特異的に存在するRBの制御を外れたE2F活性に特異的に反応するARFプロモーターに細胞傷害性遺伝子としてHSV-TKを接続した細胞傷害性組換えアデノウイルスを作製し、従来から使用されているがん細胞で亢進したE2F活性に反応するE2F1プロモーターを用いたものと細胞傷害活性を比較した。正常細胞においてARFプロモーターを用いたものはE2F1プロモーターを用いたものよりも低い細胞傷害活性を示し、がん細胞株においてはほぼ同等の細胞傷害活性を示した。従って、ARFプロモーターを用いることにより、従来のE2F1プロモーターを用いたものよりもがん細胞特異性の高い細胞傷害性組換えアデノウイルスが作製されたと考えられる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ARFプロモーターを用いてがん細胞に存在する制御を外れたE2F活性を利用することにより、既存のE2F1プロモーターを用いた方法よりもよりがん細胞特異的にアプローチすることが可能であること、また制御を外れたE2F活性に特異的に反応するERE73およびEREKを用いることによりさらにがん細胞特異性を上げられることが明らかとなった。基礎データの取得が着実に行われている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、アデノウイルス以外のウイルスを使用する可能性の検討も含め、粘り強く活動する必要がある。がんの治療法としては、興味深い方法であるが、倫理観が障害になると思われる。企業へのアプローチや企業側のニーズを取り入れることで実用化が望まれる。
今後は、早い段階で、企業へのアプローチや企業側のニーズを取り入れ、基礎研究に終始することが無いように考慮することが期待される。
架橋反転型糖供与体を用いたα−グリコシル化法の開発−超立体選択的グリコシル化法の拡充− 関西学院大学
山田英俊
関西学院大学
山本泰
超立体選択的グリコシル化法の拡充を目的とし、既に確立済みの超β選択的グリコシル化法に続き、相補的手法となる「架橋糖を用いたα−グリコシル化の開発」を行った。その結果、3、6-O-[ビベンジルビス-2、2'-(メチレン)]-1-フェニルチオグルコースを糖供与体とし、コレスタノールを糖受容体とする系において、98/2のα立体選択性を得た。また、反応溶媒の検討による更なるα選択性の向上も期待できることが分かった。
今後、汎用手法「架橋糖を用いた立体選択的グリコシル化法」の実用化・事業化を目指し、本研究中に発見した、糖の立体配座スイッチングを活かした超高α選択性の実現、グルコース以外の各種ピラノース化合物への展開による技術移転を目指す。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にα選択的グリコシル化の達成のための架橋戦略、脱離基の最適化、添加するルイス酸や溶媒の絞込みが行えた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、さらに選択性を高めることや、オリゴ糖などでも高選択的反応を達成し、架橋型の糖の架橋基としての商業的な有用性を示すことが望まれる。今後は、関連企業の方との情報交換で、現状どの型の糖鎖の供給が期待されているのかを明確化することが望まれる。
リアルタイム可視化可能な蛍光ディジタルホログラフィック顕微鏡の作製 神戸大学
的場修
神戸大学
大内権一郎
従来の光学顕微鏡では計測不可能な3次元的に動きのある複数の細胞イメージングをリアルタイムに可視化することのできるツールとして蛍光ディジタルホログラフィック顕微鏡の開発を行った。試作した蛍光ディジタルホログラフィック顕微鏡では、20倍の対物レンズとフレネルレンズを用いて蛍光分子から発する蛍光の空間コヒーレンスを利用して干渉信号を発生させる。4μm径の蛍光分子を用い、その記録と再生に成功したが再生像の解像度に関して改良する余地がある。リアルタイム可視化に関しては、3台のGPUを用いて、512×512ピクセルの再生計算を33ミリ秒に60面行えることを実証した。また、透過型ディジタルホログラフィック顕微鏡において、面内分解能2.2μm、被写界深度2mmを達成した。この実施研究によりシステムの改良点が明らかになり、実用化に向けた研究・開発の方向性を得た。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、蛍光分子の3次元イメージングに成功し、基本原理を確認できたことは、評価できる。一方、技術移転の観点からは、蛍光ホログラフィック顕微鏡の面内分解能と奥行き分解能の実証を継続することが望まれる。今後は、まだ企業活動に移管できる段階ではないので、是非とも動いている対象を鮮明且つ瞬時の動きがわかるレベルでの実用化を目指す基礎データの蓄積をおこなうことが期待される。
カビ毒汚染食品の浄化処理技術の開発 神戸大学
今石浩正
神戸大学
西原圭志
本事業では、アフラトキシンB1汚染食品に対してアフラキシンB1解毒化P450分子種を適用することを目標とした。大腸菌発現用カセットプラスミドを用いてCYP3A4酵素を発現する系を作製した。その結果、OmpA配列をN末端に付加した大腸菌発現用カセットプラスミドが最も良好な結果を与えることを明らかにした。また、AFB1の解毒活性を評価した結果、代謝物のLC-MS解析により本代謝物はAFQ1であることが判明した。さらに、本AFQ1についてUmuテストによる変異原性評価を行った結果、AFQ1は変異原性を消失していることが判明した。よって、本系は食品中のカビ毒の解毒的分解へと応用できると考えられる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、毒素に汚染された食品を救済する手段として注目に値する、大腸菌を用いたCYP3A4酵素の発現系が構築され、予備的な実験ではあるが汚染濃度の低減化に一定の効果が得られたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、東アジア圏内からの標的試料の入手も考慮し、当初計画に沿った検討による実用化が望まれる。今後は、解毒反応条件の最適化と実サンプルでの解毒効果の検証を行うことが期待される。
血清に置き換わる安全なタンパク質安定化剤の開発 神戸大学
大谷亨
神戸大学
高山良一
本研究では、我が国からの次世代医療として期待の高い再生医療や抗体医薬などに使用する生理活性タンパク質の安定化剤の開発を目的とし、非動物性由来であるポリグリセロールデンドリマー(PGD)に着目してタンパク質活性の安定化への効果を検証した。PGD存在下における水の状態をNMR法より解析し、PGD水酸基あたりの水和水を規格化ことができた。そこで、熱処理した細胞増殖因子を添加した細胞増殖活性におけるPGD添加効果を評価したところ、水和数と細胞増殖活性に相関が見られたことから、熱処理条件にてPGDがタンパク質を安定化し、細胞増殖活性の低下を抑制していたものと考えられた。今後は、種々のタンパク質の安定化剤としての更なる定量評価を進めることが見込まれる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、PGDのFGF安定化に関する評価は、少なくとも目標の一部を達成したものと評価できる。FGF等の因子の不安定性が故に、細胞培養における培地交換が毎日必要となっているケースも存在し、そうした因子の安定化剤の開発に関する技術は評価できる。一方、技術移転の観点からは、FGF以外の複数の因子でも、PGDの蛋白質安定化効果の再現性を確認することが必須だが、行われていない。蛋白質安定化剤としてのPGDの今後の研究開発計画は不明である。PGDの蛋白安定化作用の普遍性と汎用性が示されれば、社会還元につながる可能性はある。PGDの蛋白質安定化効果の再現性・普遍性を、様々な因子を対象として検証することで実用化が望まれる。今後は、蛋白質安定化剤としてのPGDと抗血栓性材料としてのPGDの開発は、区別して実施されることが期待される。
PKC及びDGキナーゼをターゲットとする新規抗ヒスタミン薬の開発と分子標的機能性食品への応用 神戸大学
白井康仁
神戸大学
鶴田宏樹
ヒスタミン分泌におけるPKCbeta及びDGKgammaのサブタイプ特異的阻害剤をスクリーニングし、新規抗ヒスタミン薬のリードとすることを目的として研究を行った。しかし、両酵素の特異的阻害剤のスクリーニングには至らなかった。一方、コントロールとして行ったDGKalphaについては、1万化合物の中から2種の特異的阻害剤を得た。また、DGKgammaはマスト細胞内のカルシウム流入を調節することにより、ヒスタミン分泌を正に制御していることを明かにした。今後、常時活性型変異体や異なる化合物ライブラリーを用いてPKCbeta及びDGKgammaの特異的阻害剤のスクリーニングを行っていく予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもDGK-γ阻害剤のスクリーニング手法については改良点や留意点が明らかにされ、今後の抗ヒスタミン薬開発に有用な情報も得られた点は評価できる。一方、信頼度の高いスクリーニング系の確立に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、使用する酵素タンパク質の改良、スクリーニングする化合物ライブラリーを増やす等、質的・数的にスクリーニング手法を高めることが望まれる。
免震機能付き高度管理医療機器専用スタンドの開発 神戸大学
松浦正子
神戸大学
立岡敏雄
免震機能を装備した高度管理医療機器専用スタンドを実用化するため、走行性に加え、転倒防止機能の強化、微量輸液の中断阻止、さらには、不測の状況や災害対策も見据えた免震機能を装備した生命維持のため複数のポンプを使用し微量輸液管理する重篤病状患者などの高度管理医療機器専用点滴スタンドに繋がる改良型点滴台の試作品を完成させた。
試作品の耐震実験を院内で行った結果、ほぼ想定通りの耐震性が確認された。
今後は、完成した試作品の性能評価と検証を病院内で継続的に実施しつつ、専門機関での耐震試験を行う。
また、医師や患者にもその評価を求めて、実用化に向けた要件・材料を収集すると共に、量産化に向けて提携できる企業や共同研究を行う他機関を模索する。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の目標である試作機の製作を期間内に完了し、簡易的ながら耐震機能の性能評価を行った点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、医療現場の関係者からの要望を反映させるというトップダウン的な面と、機械系の技術者による耐震性能の評価、耐震・免震機能の改善というボトムアップ的な面の両方から検討していく必要があると思われるので、工学系との連携をはかり、実用化に向けて発展させることが望まれる。今後は、スタンド本来の有用性を含めた操作性と利便性、耐震性の検証を多角的なデータを集めて行い、実用化を目指すことが期待される。
薄膜干渉流動画像法(FIFI法)を応用した,電気泳動マイクロレオメトリーによる革新的生体液検査法の確立に向けた基盤構築 神戸大学
日出間るり
神戸大学
西原圭志
本研究はヒトの関節に含まれる滑液などの生体液を、微量で定量的に診断する装置の開発に繋がる基盤技術の構築を目指すものである。そのために、生体高分子を含む溶液をマイクロ流路に流し、溶液の流動挙動を可視化することで、高分子濃度や溶液の性質を推定する技術を開発した。生体高分子の濃度を変え、正常な滑液(高濃度)を模擬した溶液および異常な滑液(低濃度)を模擬した溶液を調整し、流動挙動を可視化したところ有意な差が現れた。また、流動挙動の違いが明確に出る流速の範囲についても検討した。また流動挙動を解析するための画像解析手法を進展させた。今後は溶液駆動に電気浸透流を用い、さらに少量の溶液でも測定可能な装置開発を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、本研究により、マイクロ流路で高分子の濃度を推定する技術の基盤が構築され、商品化に向けて次に解決すべき技術的な課題は明確となった。医療機関で実施されている間接液検査法は定量性に欠け、計測に必要な量が多いが、マイクロ流路を用いた可視化の方法は少量で計測できるので評価できる。一方、企業との連携の時期はもう少し研究が進んでからであると考えられ、商品化に向けて基礎評価実験を継続して行う必要があるが、商品化の可能性は高まった。現在の方法に比べ、定量的に計測でき有用な計測方法であり、社会に還元できるので、計測できる溶液の範囲を広げる工夫や安定的な計測に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、新規性のある計測方法なので、継続して研究開発を続けてられることが望まれる。
関節リウマチ分子治療薬候補分子miR-124aのラットでの破骨細胞分化抑制効果を組織学的・臨床的に明らかにするための研究 神戸大学
河野誠司
神戸大学
古川久夫
ヒト関節リウマチ滑膜組織では、miR-124aが減少している。本研究ではmiR124aのラットにおけるホモログであるmiR-124のラット実験関節炎に対する抑制作用を組織学的・血清学的に明瞭に証明することを目標とする。まずラット実験関節炎において、miR-124投与により滑膜増殖、軟骨破壊、炎症性細胞の浸潤の範囲が、50%以下となることを明らかにした。また、滑膜組織で実際に関節注射投与したmiR-124 が関節炎症局所に十分到達していることを、RT-PCRにて量的に証明した。以上より、当初の今年度の目標はほぼ達成した。今後の展開としては、miR-124投与後の血清マーカーの変動を明らかにすることにより、より治療的効果の客観的証拠を集めて技術移転への可能性を高めたい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。ラット実験関節炎に対するmiR-124の効果は検討した実験の範囲において、顕著であり、今後有望な関節リウマチ治療薬シーズとしての展開が期待される。一方、技術移転の観点からは、核酸修飾かDDSに絞った研究など、より具体的な次の目標設定が重要である。既存の関節リウマチ薬や抗炎症薬などとの作用点や有効性の比較、あるいは併用などの視点を検討することで、より新規性や独創性を明確にし知的財産権の確保につなげることが望まれる。今後は、スピード感をもって、産学連携などを有効に使って研究を推進することが望まれる。
糖鎖修飾核酸を用いたインフルエンザ感染診断システムの開発 神戸大学
江原靖人
神戸大学
八浪公夫
課題では、インフルエンザウイルス上のヘマグルチニン(HA)のシアリルラクトース結合部位に多点で効率よく結合するような糖鎖修飾3量体核酸の設計、および合成を行った。赤血球凝集阻害実験より、この糖鎖修飾3量体核酸は種々の亜型のインフルエンザウイルスのHAに対して108 M-1オーダーの結合定数を有していることが確認された。またこの核酸を担体に固定化することにより、既存のイムノクロマトグラフィー法と同等の感度で、種々の亜型のインフルエンザウイルス量を検出することができた。インフルエンザウイルスが変異してもHAのシアリルラクトース認識能は維持されることから、この糖鎖修飾3量体核酸は、あらゆる型のインフルエンザウイルスを検出する材料として応用可能である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。
特に、本課題のシーズである糖鎖修飾3量体核酸が、種々の亜型のインフルエンザウイルスのHAに対して108 M-1オーダーの結合定数を有していることが確認され、インフルエンザ感染診断システムの開発にめどをつけてたことは評価できる。
一方、技術移転の観点からは、新しいインフルエンザウイルス検査法の確立に向けコスト面や、感度などで、既存方法との競争力に耐えうるかどうかの検証が必要である。臨床材料を用いた検証を行うことで、実用化が望まれる。
今後は、将来の診断薬へのとしての位置づけを目指して、コスト削減と測定機器の簡素化を企業と共に取り組むことが期待される。
血管内皮細胞を標的とした新規抗体がん治療法の開発 神戸大学
村田陽二
神戸大学
八浪公夫
本研究開発では血管内皮細胞特異的に発現する受容体型チロシンホスファターゼVE-PTPを分子標的とし、抗VE-PTPモノクローナル抗体を利用した新たながん治療法の開発を目指した。本研究開発では、実施内容に一部変更が生じたが、概ね予定通りの実験を行った。その結果、腫瘍モデルマウスを用いた解析から抗VE-PTPモノクローナル抗体が腫瘍排除に有効である可能性が示唆された。今後、抗VE-PTPモノクローナル抗体の投与法の確立、有効性・副作用の更なる検証、抗体の腫瘍排除機構の解明、また、ヒト型化抗VE-PTPモノクローナル抗体の作製を行い、最終的に新たながん治療薬としての抗VE-PTPモノクローナル抗体の作出と特許取得に向け研究開発を進める予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも抗腫瘍薬剤の新たな分子標的としてVE-PTPを考えたことについては評価できる。一方、現有の抗VE-PTPモノクローナル抗体には十分な抗腫瘍効果がないことを今回の実験結果は示している。再検討が必要と思われる。今後は、血管内皮細胞の機能(増殖または運動)を抑制する抗VE-PTPモノクローナル抗体を新たに作製することが重要と思われる。また、VE-PTPの活性化機構に関する検討も必要である。
スフィンゴシン-1-リン酸の非侵襲的生体イメージング法の開発 神戸大学
梶本武利
神戸大学
鶴田宏樹
研究では、蛍光共鳴エネルギー移動法によるスフィンゴシン1-リン酸(S1P)イメージングプローブを用いたマウスレベルでのS1P脳内分布の非侵襲的イメージングを目標とした。非侵襲的生体イメージング用にS1Pイメージングプローブを新たに構築し、試験管レベルおよび生細胞レベルでの動作確認を行ったところ、いずれにおいてもS1Pの有為な検出に成功し、非侵襲的生体イメージング用S1Pイメージングプローブの構築および評価において当初掲げた目標を概ね達成することができた。ただしプローブ動作のダイナミックレンジは非侵襲的生体イメージングに用いるには不十分なものであった。今後は本研究結果から明らかとなった問題点を踏まえより大きなダイナミックレンジを発生する生体イメージング用S1Pプローブを新たに合成し、生体レベルでのS1P脳内分布の非侵襲的イメージング法の開発を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、当初目標として掲げていた、S1Pの非侵襲的生体イメージングに向けて、新しいタイプのイメージングプローブを開発することができ、このプローブの細胞レベルでの有用性を確認できたことについては評価できる。一方、開発したプローブは、そのまま用いたのでは生体でのイメージングで十分な信号が得られないことが判明し、S1Pプローブとして新たな化合物を開発しなければならないことが判明したので、更なる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、基礎技術の発展よりも上手く動いている部分についての実用化を優先すべきである。また、知財化の準備と上手くバランスを取ってエビデンスを残されることが望まれる。
がん抑制遺伝子TFL発現解析によるDLBCLの新しい予後予測システムの確立 神戸大学
皆川健太郎
神戸大学
河口範夫
悪性リンパ腫の予後予測法は、改良が望まれる。リンパ腫患者検体より我々が同定した新規がん抑制遺伝子TFLはリンパ球に発現し、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)で、その発現低下が予後不良のリンパ腫群とよく相関する。本研究課題で、DLBCLでのTFL発現を100例追加検討し予後不良群との関連を検討した。詳細な解析は現在進行中である。さらに、TFLはサイトカインを制御する転写後調節分子であることを明らかとした。このことはTFL発現低下に伴うサイトカイン制御異常とリンパ腫発症の関連を示唆する知見であり、今後はマウスリンパ腫モデルでの検討と合わせてTFLのリンパ腫発症にかかわる機能を明らかとすることで、TFLを用いた予後予測の妥当性が明らかになると考える。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、TFLノックアウトマウスを用いてTFLのサイトカインに対する作用をある程度明らかにできた点、TFLがいくつかのサイトカインをドライブする分子であることを明らかにした点、染色体FISH法を確立し、特許出願にいたった点については評価できる。一方、バイオマーカーとしての可能性に関する科学的データーがまだ得られない。免疫染色の結果をどのようにバイオマーカーとしての可能性に結び付けられるかが課題と思われ、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、基礎実験は進んでいるので、臨床試験でのバイオマーカーとしての可能性の追求を研究の中心にすえることが望まれる。
水蒸気プラズマを用いた大豆粉の安全低温滅菌法の開発 公立大学法人兵庫県立大学
永田正義
本研究において、安全性の高い大気圧プラズマ放電を用いた新しい低コスト食品滅菌技術の開発を行った。芽胞菌を植菌した大豆粉に水蒸気プラズマを照射することで滅菌効果が確認され、本滅菌法の有用性を明らかにすることができた。本研究開発では円筒ガラス放電管を回転振動させる装置改良の考案により、大豆粉が十分撹拌され、プラズマが粉体内部にまで浸透したことが成果につながった。大豆粉に含まれる油性分が熱で表面に析出することで変色するなどいくつかの解決すべき課題は残されているものの、プラズマ滅菌装置の実用化に向けて大きく前進した。今後、豆腐製品だけでなく、香辛料を含め幅広い粉食品製造へ適応できる本格的な滅菌装置システムを開発する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、回転振動を加える装置工夫により、枯草菌数未検出の結果が得られ、大豆粉の滅菌に対し回転振動の有用性が確認できていることは評価できる。一方、食品の保存試験がなく、滅菌かどうかの判断ができない(損傷菌が生残している可能性が否定できない)。また、タンパク質の変性・コゲの発生・変色・脂質の酸化など加熱に伴う悪い変化が生じており、食品への発展には、この問題の克服が必要と思われる。今後は、連携企業の食品への目標ははっきりしているので、まずは本技術が食品・食品素材の成分や組織に対して非熱的滅菌に効果があるかについて、必要があれば生体成分系に造形の深い研究者(大学や企業)の協力を得ながら、知見を蓄積することが望まれる。
平衡・運動機能に対する平衡代行システムの効果検証と実用化 奈良県立医科大学
山中敏彰
奈良県立医科大学
大野安男
スポーツ分野におけるヒトの運動機能の向上を目的に、姿勢保持が重要となる弓道競技者に対して、本システムを用いたバランストレーニングを行うことにより、競技者の運動機能が高まり、弓道競技の上達ができるかを調査した。その結果、重心動揺と自覚的視性垂直位で表される平衡機能は、有意ではなかったが、トレーニングにより改善する傾向にあった。実際の行射的中率は、全平均で比べると有意な違いはなかったが、トレーニング前の的中率が50%以下である場合にはすべての競技者で改善が認められた。個人差が認められるも、経験が浅い習熟途上にある競技者にとっては、競技技術向上の可能性が示唆された。
今後、この成果を基盤にして、直線や回転の加速度を感知できるようにしてあらゆる運動に対応できるシステムを構築していくことを目標とする。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、トレーニング対象者の熟度や平衡感覚を代行させるプロセッシングの感度や刺激部位の改善が必要とされるが、舌触感を用いた平衡代行システムをバランストレーニングに利用する発想は独自性があり、優れていると評価できる。一方、発想自体はユニークであるが、被検者全体での効果に有意差が認められなく、根本的な問題と思われる。システムの改良や訓練方法以外に原理的な再検証が必要と思われる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、本手法を実務的に利用できるようにするため、トレーニングシステムの高機能化や訓練方法の改良などを大幅に見直すことが望まれる。
肺高血圧症における血中マーカーの開発 奈良県立医科大学
染川智
奈良県立医科大学
大野安男
肺高血圧症の発症機序の一つとしてTGFβスーパーファミリーのBMPR2やALK1受容体を介したシグナルの機能低下が報告された。我々は、それらのシグナルの上下流で肺高血圧の発症に関与する鍵分子を検索している。その中で、ALK1/BMPR2受容体への結合性が特異的に高いリガンドBMP9とBMP10のmRNA発現が肺高血圧動物モデルの肝で増加していた。そこで、ヒト肺高血圧症患者におけるBMP9やBMP10の血中濃度測定のため、特異抗体作製とELISA系の構築を試み、多様なタイプの肺高血圧患者の血清を収集した。部分ペプチドやGST融合全長タンパクを用いて数種類の抗体を作製したがBMP9とBMP10血中濃度をサンドッチELISAで計測し得る抗体の作製には至らなかった。現在、引き続き哺乳類細胞系で作製したタンパクを抗原として抗体作製を試みELISAの作出を継続している。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ペプチドを抗原としてBMP9, 10抗体作成を行ったものの、サンドイッチELISAで血中BMP9, 10を検出・測定することはできなかった。より感度の高いELISAを作るための抗体作成、という課題が明確になったことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、リコンビナントタンパク質を作成して抗原として用いるなど方向性は的確であるが、実際に測定できなければBMP9, 10がマーカーとして適当かどうか評価できない。測定が可能になり、かつBMP9, 10が肺高血圧症のマーカーとして使えることがわかれば、診断薬としての応用展開が期待されるので実用化が望まれる。今後は、血清と血漿では濃度が大きく異なることがあり、また凍結融解回数が影響することもあるので気をつけて研究開発されることが期待される。
照度ロガーの開発とその実用化試験−光曝露量が健康に及ぼす影響に関する大規模疫学調査における実施− 奈良県立医科大学
大林賢史
奈良県立医科大学
大野安男
本課題において視覚レベル照度・短波長ロガーを制作し、343名の対象者に従来の据置型照度計と視覚レベル照度・短波長ロガーを用いて夜間光曝露の測定調査を実施した。据置型照度計で測定した照度と視覚レベル照度の間に中等度の正の関連を認め(相関係数 0.66)、視覚レベル照度と視覚レベル短波長の間に強い正の関連を認めた(相関係数 0.94)。さらに夜間光曝露量と健康指標(睡眠障害、肥満症、夜間血圧)の間の関連は、視覚レベル照度・短波長ロガーで測定した照度・短波長の方が据置型照度計で測定した照度より回帰モデルの適合度が高かった。このことから、従来の据置型照度計よりも視覚レベル照度・短波長ロガーの方が精度よく生体への影響を及ぼす夜間光曝露を測定することができると考えられた。今後、さらにロガーの小型化・商品化を目指すと同時に、昼夜連続して光曝露量を測定できるモデルを制作する予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、2件の特許出願され、視覚レベル照度・短波長ロガーが据置型照度計よりも精度よく生体への影響を及ぼす夜間光曝露を測定することができることが明らかにされた技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、視覚レベル照度ロガーについては、技術移転が考えられている。夜間光曝露を精度よく測定することができることは商品開発に応用でき、昼夜連続して光曝露量を測定できるモデルの開発によりさらなる実用化が望まれる。今後は、身体への影響を精度良く反映する小型化された照度ロガーが商品化されることが期待される。
負荷の少ない癌治療法実現のための粒子分散型磁気ハイパーサーミアビーズの開発 奈良工業高等専門学校
児玉謙司
奈良工業高等専門学校
芳野公明
がん治療中において、毎日に喜びや楽しみを感じ、生きる希望に満ちた生活をおくることができるよう、身体的、精神的に負荷の少ないがん治療法を実現する。
本課題では発熱によりがん細胞を選択的に死滅させる磁気ハイパーサーミア治療ための、体内埋め込み発熱ビーズを開発した。ビーズは直径0.8mm以下であり、磁性粒子分散コア球体を耐食性にすぐれた層でコーティングした。高周波磁場中に置かれたビーズのヒステリシス損による発熱で、患部組織を20分以内に43℃に昇温できる磁気-発熱特性を付与した。
ビーズ作製、加熱・温度計測装置立ち上げ、模擬生体での発熱特性の検証を行った。熱によるタンパク質変性分析の結果から、ビーズはがん細胞を温熱により死滅させる発熱能力を有していることが証明された。本研究により、磁気ハイパーサーミア治療に利用可能な発熱ビーズを開発することに成功した。
今後の展開として、幅広い普及を実現する人体用治療システム開発を計画している。その要素技術として、小型電源、コイルの開発が必要である。患部を挟みこむように人体の腹側、背側の2か所にコイルを設置し、磁界を形成するサンドイッチ型のコイルの開発を行う。また、家庭用電源で運転でき、卓上サイズに収まる電源システムの開発を行う。現状のハイパーサーミア温熱治療システムは、億単位の資金が必要である。そのため現在では全国に80か所しか導入されていない。今後の開発によって、その費用を百分の一程度にし、広く普及を促す。そして、多くの患者に温熱治療の機会を提供することが目標である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、 磁気ハイパーサーミア治療に利用可能な発熱ビーズを開発することに成功し、国内特許申請が行われたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、卓上サイズの治療システム開発を進める上で必要な技術は企業との連携を進めているが、ビーズ量産化のための成型処理技術開発を実施する企業は探す必要がある。身体的、精神的に負荷の少ないがん治療法として、体内埋め込み発熱ビーズによる磁気ハイパーサーミア治療が実現することは治療分野の発展に大きく寄与すると期待され、実用化が望まれる。
細菌の細胞膜を攻撃する無毒性・広域スペクトルポリマー抗菌剤の開発 奈良先端科学技術大学院大学
安原主馬
奈良先端科学技術大学院大学
戸所義博
本研究課題では、細菌の細胞膜を攪乱することで作用する抗菌性ポリマーを開発することを目的とした。従来の抗生物質に対して耐性を獲得した細菌による感染症の拡大が近年深刻化しており、全く異なる機構で作用する新規な抗菌剤の開発が急務である。本研究で開発したポリマーは、細菌に対して天然の抗菌ペプチドを凌ぐ高い抗菌作用を示す一方で、溶血毒性を全く示さなかったことから、極めて高い選択活性を示すことが明らかになった。また。分子構造をチューニングすることによって、バイオフィルムの形成抑制効果も確認された。今後は、食品分野や衛生用品ならびに医療器具コーティング剤としての応用について製品化をめざした検討を継続したい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、大腸菌に対する抗菌活性が高く、動物に対する溶血毒性が低い抗菌性ポリマーの合成に成功し、亜鉛イオンの添加・除去によりその抗菌活性が制御できることを見出したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、従来材料にはない細菌類に対する高い抗菌活性と宿主に対する低い毒性の両立を実現した点で、 医薬方面の応用だけでなく、食品や衛生用品、医療用器具等への幅広い適用が期待できることで実用化が望まれる。
今後は、抗菌性だけでなくバイオフィルム形成に対する抑制効果をも示すポリマーの開発についても研究を続けていただくことが期待される。
接着性を光で制御できる幹細胞足場材料の開発 奈良先端科学技術大学院大学
谷原正夫
奈良先端科学技術大学院大学
藤井清澄
胚性幹細胞やiPS細胞の培養にはフィーダー細胞やゼラチンなどの足場が必要である。また、幹細胞の分化を開始するために一旦足場から脱着して胚葉体様凝集体を形成させる必要がある。本研究責任者は環状骨格を持つ接着ペプチドを結合した基材が胚性幹細胞の接着と未分化性を支持できることを見いだし、特許出願を行った。本申請では接着ペプチドを光で基材から切断することにより、幹細胞の増殖と胚葉体形成を同一の足場材料上で可能にする。これにより、動物由来の材料を使用しないメリットに加えて、細胞の脱着操作や培養容器の交換が不要になり、幹細胞の生存率の低下や感染のリスクを大幅に低減でき、再生医療の実現に貢献できる。
幹細胞増殖基材としては必要十分な性能を達成し、光切断を利用した本基材のコンセプトが妥当性は検証されたが、光照射による幹細胞の脱着制御は不十分であった。
光脱着率の向上と、脱着した幹細胞の分化を確認後、提携企業の調査と共同研究を実施する。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、光による細胞脱着は、フィブロネクチンの基材への非特異的吸着や細胞のECM産制などによる基材への付着が原因と思われ、当初の目標は残念ながら未達であったが、阻害実験などにより、インテグリンを介した接着であることを明確化したことについては評価できる。一方、非特異吸着の制御技術をどのように具体化してゆくかは明確にされていない。当初目標の光による切断が達成できておず、今後新たな技術を盛り込み改良に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、競合技術に対する競争力をベンチマークを行い適正に評価していくことが望まれる。
新規妊娠性高血圧症モデルマウスの開発 奈良先端科学技術大学院大学
岡千緒
奈良先端科学技術大学院大学
塚本潤子
我々はHtrA1遺伝子とHtrA3遺伝子の両方を破壊したダブルノックアウト(DKO)マウス(遺伝的背景は129/B6) がヒトの妊娠性高血圧症(Pregnancy Induced Hypertension, PIH)のモデルマウスになるかどうかを検討した。HtrA1/HtrA3 DKOマウスは妊娠後期に野生型に比べ明らかな高血圧を示し、出産後高血圧は改善した。また、DKOマウスの胎盤では母体脱落膜のらせん動脈周囲に存在する胎児栄養膜細胞の数の減少と母体血管の血管内腔径の低下が認められた。以上のことから、胎児栄養膜細胞の母体脱落膜への遊走の異常(abnormal trophoblast invasion)とそれによる母体血管のリモデリングの障害がDKOマウスのPIHの原因であると考えられ、有用な新規モデルマウスとなりうる可能が濃厚となった。今後は遺伝的背景をB6またはBalb/cに純化し、安定してより重篤な症状を呈するモデルマウスの確立を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも妊娠中に血圧が上昇する所見を得たことは評価できる。一方、開発を考えるにはPIHの診断基準を再度明確にし、高血圧や尿蛋白出現が安定に再現できる系ができる様に技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、ヒトPIHの病態に如何に類似しているか、またどのように異なるのか詳細に解析することが望まれる。
動物の糞を用いる新規組換えタンパク質生産技術の開発 近畿大学
岸上哲士
近畿大学
鈴木義彦
近年のバイオテクノロジーの進歩により、医療用蛋白質の必要性が高まり、組換えタンパク質の生産のため遺伝子組換え技術を用いて微生物、昆虫、植物など様々な生物において生産方法が開発されてきた。申請者は、毎日動物個体から排出される糞に取り込まれる組換えタンパク質を精製する新規組換えタンパク質生産技術の開発を行ってきた。特に本研究では、実用化を目指し、マウスの1)糞中の組換えタンパク質のタンパク質の質量分析による解析、2)糞中の組換えタンパク質の取り込み過程の解明、3)組換えタンパク質の生産能力の検討を行った。その結果、各課題において基礎的なデータを取ることができた。今後は、さまざまな機能的タンパク質の生産の可能性を検討していく予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、糞中の組換えタンパク質の解析や産生場所、性差について検討したことは評価できる。一方、糞中のタンパク質の具体的応用例を見出すに向けた技術的検討や産生場所などに関するデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、研究計画を現実的に管理されることが望まれる。
新しい静菌性材料の開発 近畿大学
古薗勉
近畿大学
鈴木義彦
当該研究課題では細菌増殖の制御に着目し、新規な長期留置型カテーテルに用いる微弱な抗菌性(静菌性)素材を創出することを目的とした。具体的には、銀ナノ粒子が銀イオンソース(源)となり得る特性に着目した。官能基を導入した銀ナノ粒子を1段階法により合成し、反応液中へのキャッピング試薬の添加量によって官能基導入銀ナノ粒子の粒径制御および大腸菌に対する抗菌性制御を達成した。またカテーテル基材であるシリコーンに当該ナノ粒子をコーティングする方法を確立した。今後は、官能基導入銀ナノ粒子をコーティングした高分子基材を用いて、多種類の細菌により抗菌性制御を実施し、静菌性を有するカテーテル素材の開発を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。
特に、新規特許出願も完了しており、研究の成果である銀粒子の粒子径の制御方法に関する技術に関しては評価できる。
一方、技術移転の観点からは、動物試験や病理組織学的評価、安全性評価試験など長期的視点に立った研究計画について具体的な検討を進めることで実用化が望まれる。
今後は、医療機器の開発においては、巨額な開発費が必要となってくるため、研究資金計画についても具体的に検討されることが期待される。
生体イメージング可視化技術を用いた県特産果実由来機能性素材の探索と生理機能の検証 和歌山県立医科大学
井原勇人
和歌山県立医科大学
前河早希
和歌山県の特産品うめぼし生産の際に生ずる梅酢原体に含まれる主な構成成分である4種類のヒドロキシ桂皮酸について、その生理機能について検討した。梅酢より調整したポリフェノール抽出物(混合物)には、二糖類水解酵素阻害効果があることを、In vitro 及びIn vivo で明らかにした。また、単一成分を用いた培養細胞実験において、カフェ酸には、インスリン抵抗性惹起因子レジスチン遺伝子発現抑制効果があることを明らかにした。現在、レジスチン転写調節領域/ルシフェラーゼレポーター遺伝子導入安定発現株を作成し、ヌードマウスに移植後、ルシフェラーゼ活性を指標にカフェ酸の効果を検討している。また、p-クマル酸には、肝臓の脂質代謝を改善する効果があることも明らかとなった。我々のシーズに対し興味を示した県内食品企業と産学連携共同研究を行うこととなった。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。地域特性を生かし、梅酢ポリフェノール等の果実由来機能性素材に着目して、全く新しいメタボリック症候群の予防効果を有する有効成分を同定することにより、科学的根拠に基づく特定保健用食品として食品企業等への速やかな導出を目指している点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、すでに共同研究先の企業が確保されており、さらには競争的研究資金や企業への助成事業も獲得しているなど、計画準備は的確である。医学的なエビデンスを明らかにし、県特産果実由来の機能性素材を基にした抗肥満効果を有する特定保健用食品を開発するという具体的な研究計画も決定している。今後は、in vivoイメージング可視化技術を用いた梅酢ポリフェノールやその他の果実由来機能性素材の有効成分の特定や、p-クマル酸のin vivoでの作用機序を解明すべく、脂質代謝関連遺伝子の発現制御についても検討されることが期待される。
拡張現実感を用いた耳介を中心とした再建外科手術のシミュレーション技術の開発 和歌山大学
原田利宣
関西ティー・エル・オー株式会社
山本裕子
本研究ではEar Positioning Template(EPT)を正確な再建位置に示すことができ、 術後の再建イメージも確認できるシステムの開発を目的とした。 具体的には、1)直感的に医師が操作でき、 また顔側面にEPTを表示するために、 拡張現実感技術を使用して現実環境に重ねてEPTを表示するシステムの開発、2)患者の正常な側の耳介や肉親の耳介画像を使用した術後の再建イメージの確認が行えるシステムの開発を行った。その結果、研究協力医師による、1)に関するシミュレーションを行い、応用に耐える精度(誤差2mm以内)が確保されていることが確認された。2)に関しては、適当な耳介再建手術がなかったため未実施である。今後、精度向上のためのマーカー認識の工夫を行い、実際の手術にシステムを適用し、2)も含め検証を行う予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、患者の顔面寸法や健常な耳介、もしくは近親者の耳介の曲線に合わせテンプレートを創成(修正)するシステムを開発し、拡張現実感(AR)の技術を用いて術前、術中に患者の顔側面上に術後の耳介の創成/表示と、手術デザインに必要なメルクマールおよび耳介位置を表示できるシステムを開発し、精度評価実験までを行ったことは評価できる。一方、医師による評価が十分とはいえず、時間がかかると思われる。開発したシステムを使用するには準備時間がかなりかかると予想され、システムの改良に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、耳介形状で誤差が大きいので、誤差が少なくなるようにシステムを改良されることが望まれる。
発達性読み書き障害に対する指導プログラムの開発 鳥取大学
小枝達也
鳥取大学
加藤優
発達性読み書き障害(以下、ディスレクシア)は、音韻処理障害を基盤とする発達障害で、発生頻度は約1%である。学習全体に遅れをきたし、不登校などの二次障害へと進展するリスクが高いため、小学校早期からの対応が求められている。ディスレクシアの子どもに対する有効な指導とは、国語の指導ではなく、音声言語学的な視点からの指導法であり、これまでの研究により、表示された文字を音に変えるという「解読の促進と自動化」が指導のポイントとなることを解明した。その原理を応用した音読指導プログラムの開発とその汎用性を高めるプログラムの開発を行った。さらにそのプログラムが発達性読み書き障害だけでなく、平賀の音読の習得に困難を抱えている児童(外国人子女)に対してもその効果を確認した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、音読指導プログラムを、従来のPCだけでなく、多機能型情報端末においても使用できるようにしており、異なる情報環境に対応できるようにしたことは優れた点である。またこれを用いて、発達性読み書き障害の学童を対象にその効果を確認していることも評価できる。一方、技術移転の観点からは、すでに産学共同研究がなされている。本指導プログラムの原理を応用した「音声自動認識機能」を加味した音読指導装置に展開し、指導教員無しでも効果が上がるシステムに向けて計画がなされているなど実用化が望まれる。今後は、音韻処理障害によるディスレクシアを音読指導による改善で行っているが、聴覚入力の初期過程に異常があるのか、視覚との統合に問題があるのかと言った神経機構の原因を解明されることが期待される。
病原性細菌の感染診断ツールの開発 鳥取大学
山崎良平
鳥取大学
山岸大輔
開発の目標
 「細菌糖鎖を認識する抗体のフェムト・ピコレベルでの検出」を目標とした。
研究の達成度
 「フェムト・ピコレベルでの検出」を下記の二種の方法で確実に達成した。
 1.ヒト抗体の結合を、数百フェムトモルのレベルの抗原量で検出可能なことを明らかとした。
 2.LOSの特有な糖鎖に結合するヒト抗体が存在することを見いだし、更に、これらのLOS糖鎖に結合するヒト抗体の検出を、十フェムトモルレベルで達成した。
今後の展開
 確立した検出条件を使用して、感染患者の血清を用いた分析と検出デバイスの商品開発を目指す。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、研究の達成度「フェムト〜ピコレベルでの検出」を二種の方法で確実に達成した技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、産学共同等の研究開発ステップにつながる可能性が高まったので、論文投稿と特許出願を急ぎ、さらに具体的実用化に向けてさらに企業との連携の強化することで実用化が望まれる。今後は、髄膜炎菌による感染後、どの程度抗体価が上昇するかを確認し、可能であればキット化を目指されることが期待される。
人工染色体ベクターを用いた血友病の新規遺伝子治療法の開発 鳥取大学
黒崎創
鳥取大学
山岸大輔
タンパク産生には動物細胞に遺伝子を導入し、強い発現を示すクローンを選択、大量培養することで目的タンパク質を効率よく採集する方法が広く使われている。従来法では生じている様々な問題を克服するため、本研究ではFⅧタンパクとその保護タンパクを同時に発現可能なコンストラクトを作製した。同時発現細胞において単独FⅧ発現よりも保護機能付与させることができ、安定に機能させることができた。よって今後も人工染色体を用いて無血清培養条件においても血清存在下と同様な発現機能を示すような、安定に効率よく産生できるシステムの開発を行っていきたい。 概ね、当初の期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性も高まった。特に、血友病に関連するFⅧタンパクと保護タンパクを同時に発現可能なコントラクトを作成したことが大きな成果として評価出来る。一方、技術移転の観点からは、タンパクの発現制御、タンパクの純化など、不明な点があるが、これらの課題を明らかにし、実用化が望まれる。今後、製剤、医薬品開発技術として展開が期待される。
新規素材キチンナノファイバーによる作物病害防除資材の開発 鳥取大学
江草真由美
鳥取大学
山岸大輔
キチンおよびその誘導体であるキトサンをナノレベルの繊維に調整したナノファイバーを、病害防除を目的とした農業資材へ利用するため、その植物病原菌に対する抗菌性、植物への抵抗性誘導能を調査した。従来、加工性に乏しかったキチン・キトサンのナノファイバー化により、適用法の選択幅を広げることが可能となった。本研究では、改質したナノファイバーシートによる複数種の植物病原糸状菌に対する抗菌性を確認し、さらに液剤として植物へ処理した際の、病害抵抗性誘導能を明らかにした。今後は実用化に向けて、ナノファイバー配合試作資材を作製し、適用病原菌および植物種の範囲同定と適用(処理)方法などを含めた機能評価を行う。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、キトサンナノファイバーについて、供試した12菌類すべてで胞子発芽の抑制活性を確認した成果が顕著である。一方、技術移転の観点からは、農業資材・農薬メーカーや農業現場との連携で圃場試験で実証するなどでの実用化が期待される。ここで、農薬ではなく、病害が出にくい植物工場向けの資材として開発することも考慮されたい。今後は、抗性遺伝子の発現メカニズムや宿主植物体への影響についても検討されることが期待される。
人工染色体を活用する化学物質の高感度発がんリスク検出法 鳥取大学
井上敏昭
鳥取大学
山岸大輔
内在遺伝子を含まない人工染色体(HAC)の数の変化を指標とした、迅速で高感度の染色体不安定性検出系開発を進めた。薬剤耐性遺伝子、GFP発現カセットを搭載したHACを構築し、FISHでの染色体解析が容易なマウスA9細胞に導入した。CENP蛋白過剰発現による異数体化誘導で高頻度でHAC増幅を確認でき、これが染色体不安定性の検出系として有用なことを明らかにした。A9細胞以外にもヒト細胞を含む、宿主の異なる多数の資材樹立に成功した。今後FISHではなくHACに由来するGFP蛍光強度の差、薬剤耐性濃度の差、コロニー形成アッセイでHAC増幅を簡便に検出できることを証明し、これらの資材が染色体不安定性をもたらす化学物質のHTSに利用可能なことを示す。 本研究は、当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。特に、CIS系の測定系の開発は評価できる。一方、今後の研究の方向性も明らかであるので、残された課題を着実に進行させ、データを積み上げることが必要である。得られた成果は、現在、評価・期間・コストがかかっている非毒性発がん物質を効率的かつ簡便に評価が可能であり、社会に対するインパクトも大きいので、食料、医薬品、化粧品の安全性確認技術としての今後の進展が望まれる。 
エキソペプチダーゼを活用したタンパク質結晶化促進技術の開発 鳥取大学
日野智也
鳥取大学
清水克彦
本研究では、タンパク質のペプチド鎖末端から順次アミノ酸を分解する酵素エキソペプチダーゼを用い、タンパク質の結晶化の阻害となりうるフレキシブルなペプチド鎖末端を消化し、結晶化を促進するための手法を開発することを目的とした。ペプチド鎖のN末端側から消化するアミノペプチダーゼを数種類併用することで、モデルとして用いた水溶性タンパク質の機能を損なわせること無くN末端を消化させること条件を見出した。さらに、N末端を消化したモデルタンパク質を結晶化したところ、N末端未消化の試料と比較して、結晶化の効率を高めることができた。一方、膜タンパク質について同様の処理を行ったところ、N末端の消化は行うことができたが、結晶化効率や分解能の変化はみられなかった。今後、N末端構造がフレキシブルであり、かつ、結晶化できていない、結晶はできるものの分解能が向上しない膜タンパク質について本手法を適用し、その効果を確認していきたい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、エキソペプチダーゼ処理によるタンパク質末端除去技術を開発し、この技術が、結晶作製において有利に働く可能性が示唆されたことについては評価できる。一方、フレキシブルなペプチド末端の除去という技術的な課題を解決することに成功したものの、すでに結晶が得られているタンパク質にこの技術を適用しても当該タンパク質の構造解析における分解能の向上に寄与しないとの結果を得た。末端処理が完全でないことによる結晶化の効率への影響の調査、タンパク質末端処理により結晶作製の効率化が一般的であるかの判断ができていないなどの技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、様々な事例を積み上げることで本技術の一般性の提示を行うことが望まれる。
キチンナノファイバー/アパタイト複合体を用いた骨再生材料の開発 鳥取大学
伊福伸介
鳥取大学
清水克彦
申請者はカニ殻に含まれるキチンを幅がおよそ10nmの超微細な繊維として単離することに成功している。本研究ではこのキチンナノファイバーの優れた形状と物性、生体への機能に着目し、ヒドロキシアパタイトの足場として複合化した材料を開発した。この複合新素材を骨再生材料として実用化するためには、強く操作性に優れていた。今後は、炎症を誘発することなく骨欠損部の再生を促すこと、治癒後はキチンナノファイバーが生体内で速やかに消化されることの評価が課題となる。本課題が解決されることによりキチンナノファイバーの有効な用途として付加価値の高い医療用材料が具現化し、ひいては鳥取県内で大量に発生する廃カニ殻の有効利用につながると期待している。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。
中でも、十分な強度を得られなかったために、技術移転に繋がるような研究成果がまだ得られておらず、新規特許出願にも至っていない。しかし、キチンナノファイバーは生体親和性に優れており、その潜在的可能性は高くその開発については評価できる。
一方、骨補填材として、先行材に対する優位性を明らかにするための技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。
今後は、キチンナノファイバーの医用材料としての可能性(生理機能)を基礎的に検証し、高強度が求められる硬組織用材料だけでなく、他の用途への活用を検討されることが望まれる。
創薬のための遺伝子改変ラット作製技術の向上 鳥取大学
中村和臣
鳥取大学
清水克彦
ラットの初期胚を、体内と同等に体外発生させること、かつ体外発生させた胚を子宮に戻して高効率に産仔を得ることのできる新規ラット胚用培養液を開発することを目標として研究を進めた。本研究により、培養液に含まれる塩類、およびエネルギー源物質の濃度検討の結果、約90%の体外発生率(2細胞期胚〜胚盤胞)を達成する培養液を作製することができた。さらに、体外発生させたラット胚を子宮に移植し、約70%の出生率が得られた。これは既存のラット胚用培養液(R1ECM)と比較しても体外発生率、出生率ともに高率であった。さらに、より卵管内の環境に近づける培養液の開発を目的として、ラットの卵管液を分析し、卵管内のアミノ酸含有量を明らかにした。今後の展開としては、このアミノ酸分析結果を基に、より生体内(卵管内)の環境に近い培養液の開発を狙う。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ラット胚培養液の開発に於いて、体外発生率90%、子宮移植後の出生率70%の目標をほぼ達成するものを開発する事に成功した事に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、この培養液が企業に技術移転され、培養液が市販される様になると、ラット胚の培養がこれまでより簡便に行える様になり、研究が促進される事が期待できるので実用化が望まれる。
今後は、培養液中の微量の重金属の影響を排除したり、活性酸素や酸素濃度の制御など、更なる改良が望まれる。また、培養液のパッケージング法の開発もされることが期待される。
哺乳類細胞を用いたin vitro遺伝毒性試験の世界的標準法の開発 鳥取大学
平塚正治
鳥取大学
増田紳哉
ヒト11番染色体短腕・長腕部位それぞれに様々なマーカー遺伝子を搭載させた改変染色体を作製し、この改変染色体を移入した細胞株を用いることにより、新たな遺伝毒性評価法の開発を目指した。改変ヒト11番染色体は作製過程であり当初の目標を達成出来なかったが、改変ヒト21番染色体を用いて、遺伝毒性モニター用改変染色体の有用性を検証した。標本作製・核染色や顕微鏡観察が必要であった従来法に比べ、より簡便で迅速な評価が可能であることを示唆する結果が得られたことから、今後、改変ヒト11番染色体を完成させ、評価薬剤を増やしたバリデーションスタディを実施し、評価系の確立を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。特に、短期間に作製される予定であった11番染色体の改変は当初の計画通りに進まず、その代替として、既に作成されていた改変21番染色体を使った研究は成果が上がっている故、この点に関しては、評価が出来る。一方、技術移転に関しては、この成果を活用して、本来の改変11番染色体の作製を早急に進め、データの積み上げなどが必要である。今後は、遺伝毒性モニター用ヒト染色体を用いた新遺伝毒性迅速評価法の開発の発展性に向けて展開されることが望まれる。
DNA2本鎖切断損傷を誘発するがん化学療法剤スクリーニングのためのバイオセンサーシステムの開発 鳥取大学
栗政明弘
鳥取大学
増田紳哉
PARP阻害剤は、BRCA遺伝子欠損の乳がんに高い治療効果を有し、また乳がん以外でもトポイソメラーゼ阻害剤の抗がん作用を高め、放射線治療での増感作用を有する。その薬効評価は、リーディング化合物からの新規薬剤の創成に重要である。本研究では、BRCA1変異のある乳がん細胞株HCC1937を入手し、培養条件の検討とセンサータンパク質の導入を行った。細胞周期判定のためのDsRed-PCNA蛍光融合タンパク質の導入に成功した。さらにDNA損傷検出のためのGFP-53BP1の導入を試みた。乳がん細胞株は相同組換え修復(HR)を部分的に欠損し、53BP1はその残存HR活性を抑制するため、その導入はかなり困難であった。現在、最終段階としてGFP-53BP1発現をコントロールするシステムを構築し、センサー細胞の開発を達成しつつある。また同時に画像解析に関するアルゴリズム構築をすすめた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、新たなバイオセンサー細胞の樹立および多次元自動画像解析ソフトの構築も、現時点では当初の目標が達成されたとは言い難いが、新たなバイオセンサー細胞の樹立および多次元自動画像解析ソフトの構築の礎が築かれた点については評価できる。一方、良いスクリーニング系が完成すれば、企業化に向けた可能性は広がる。当初の目標である複数のバイオセンサー株の樹立および多次元自動画像解析ソフトの完成の早期実現に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、研究全体として、どのような種類の細胞、遺伝子ターゲットなど、集中させる戦略が望まれる。
発癌物質の短期・簡易定量検出系への改良開発 鳥取大学
岡田太
鳥取大学
増田紳哉
これまでに培養細胞と動物実験を融合させて発癌物質を短期間内に検出できる系を確立してきた。しかし、添加期間が短いため陽性に判定されない物質の存在も浮き彫りとなった。本研究開発の目標は、使用細胞株の発癌性を遺伝子レベルで迅速かつ定量性をもって評価できるよう改変することにある。研究代表者が同定済みの当該細胞株の発癌責任遺伝子を用い、この遺伝子プロモーター領域に発光遺伝子を結合させ、発光量により発癌性を評価できる細胞株を確立した。本成果は当初目標の7割程度達成されたと考えられる。今後は、残された課題を遂行し、得られる成果をもとに知的財産権の取得を図る。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、マウス退縮型細胞株に特徴的な発癌責任遺伝子を活用し、このプロモーター領域に発光遺伝子を結合させることで発光量により発癌性を評価できる改良型細胞株の確立に成功したことについては評価できる。一方、産学共同の研究開発にはまだ多くの課題が残されている。ただ、本研究の目標が真に達成されれば、発がん物質の検出が容易となるので、課題解決に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、複数の発癌物質および非発癌物質の添加による検証実験が行われていないので、これを行う必要がある。また具体的な産学共同研究開発を推進されることが望まれる。
薬物代謝と膜透過性試験が同時に可能な細胞システムの開発 鳥取大学
押村光雄
鳥取大学
増田紳哉
医薬品の小腸での吸収率評価をin vitroで簡便に行うことは医薬品開発過程で非常に重要である。ヒト大腸癌由来細胞株であるCaco2細胞はin vitro経口吸収評価のために製薬企業等で汎用的に利用されてきた。しかし、Caco2細胞はヒト小腸上皮細胞に発現しているCYP3Aなどの薬物代謝酵素の発現が低いことが課題であった。これまでに我々は外来遺伝子を安定に高発現させることができるヒト人工染色体ベクター(HAC)を開発してきた。本研究ではHAC技術を用いて、薬物代謝酵素を安定に発現するCaco2細胞を作製し、薬物代謝能を維持した状態で膜透過性試験が可能な細胞システムの開発を行い、CYP3A4で代謝される化合物に関して、ヒト小腸での吸収率評価が可能な細胞系であることを示した。今後は民間企業との共同研究体制で細胞のバリデーションを行っていく予定である。 概ね、期待通りの成果が得られ、技術移転の可能性が高まった。特に、CYP3A4及びP450酸化還元酵素を同時に組み込んだHACベクターを導入したCaco2細胞の作製に成功し、作製したベクター導入細胞について、予備的な代謝活性評価を達成していることは評価できる。一方技術移転の観点からは、産学共同研究体制を構築し、製薬会社等で実用化が望まれる。今後は、基本特許が既に成立しているが、今回の成果を特許出願することを検討し、複数遺伝子が搭載可能と言うHACベクターの利点を活かし、次のステップへ展開していくことが期待される。
筋活動電位に基づくリハビリ時の適正負荷決定に関する研究 鳥取大学
櫛田大輔
鳥取大学
和田肇
本研究課題は、筋力回復リハビリテーションにおける最適な負荷決定手法の確立を目指し、リハビリ患者の"筋疲労"を定量的に評価する仕組みの開発を目的としたものである。本課題では、筋活動電位(EMG)がもつ中央周波数の時間的変化と筋負荷の関係が一次近似で表現できることを見出し、その近似係数を個人毎に異なる疲労係数として定めた。また、EMGの周波数成分を筋繊維毎に分類することで筋繊維の使用割合を算出し、解糖系代謝と酸化系代謝の切り替わりから客観的な疲労の指標を見出すことができた。本課題の達成度は8割程度であり、今後は疲労係数と被験者の自己申告による主観的な"疲労感"との関連性を見出すことが課題である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、EMG測定値から患者の主観的な負担感を推定するという目標は達成できていないが、その代り負担感と関連がある可能性が高い筋肉の疲労係数を推定することはできている。また、負担感から適切な筋負荷の決定方法に関しては実施されていないが、その代りに筋疲労の評価精度の向上の研究を行っている。負担感と関連がある可能性が高い筋肉の疲労係数を推定するモデルの開発、ならびに、筋電から遅筋、中間筋、速筋の割合の変化から負荷の重い軽いを判断できる可能性の発見については評価できる。一方、疲労感の筋電からの推定方法の開発に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、医療福祉関係者との連携により現状の技術レベルで活用可能な装置の開発がされることが望まれる。
PETイメージングによるがん遺伝子治療評価モデルの構築 岡山大学
黄鵬
本申請課題は、PETイメージングによる遺伝子治療の可視化に基づく遺伝子治療の有効性、安全性の評価法の確立を目指したものであり、その目標を概ね達成できたと考える。腫瘍マーカーとイメージング装置IVISでin vivoでトレース可能なRM9細胞を用いて免疫正常マウスで皮下担がんモデルを作製し、その腫瘍内および静脈内にAd-HSV1-tk剤を投与、3日後、5日後、7日後に、PET・IVIS撮像を実施した。特に、PETイメージングによるがん遺伝子治療評価モデルの構築のために、遺伝子治療で用いるHSV1-tk遺伝子に特異的なPETレポータープローブ: [18F]FMAUを合成し、その遺伝子発現の可視化に成功した。今後、これらの遺伝子発現の可視化条件を最適化する研究を継続して行う。 研究目標に沿って、きちんと研究が進められ、概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、この研究のポイントである”RM9-Luc-PSA細胞を用いた免疫正常マウスでの担がんモデルの作成”に関しては評価できる。技術移転の観点からは、遺伝子発現の可視化条件を最適化し、がん治療遺伝子を用いた新規の抗がん遺伝子治療の安全性評価法の確立が望まれる。更に研究を進展させ、今後は分子イメージン分野の関連する企業との連携に進めていくことが期待される。
多置換インドロ[2,3-b]キノリン誘導体の構造活性相関による高活性抗ガン剤の開発 岡山大学
井口勉
岡山大学
梶谷浩一
5-メチルインドロ[2,3-b]キノリン骨格を創薬リードに用いて、既存の抗ガン薬ドキソルビシンを凌駕する活性を目標とした。母核のC2, C9, C11位で置換基を変化させて構造活性相関を行った。白血病、肺がん細胞、結腸がん細胞のガン細胞に対する増殖阻害作用および正常マウス繊維芽細胞株に対する細胞毒性を調査した。C11位の置換基として、特に3-アミノプロピルアミノ基が最も効果的であった。また、C2, C9位にメチルエステル基の導入は、ハロゲン基の導入と同等以上の効果が見られた。該化合物はドキソルビシンに比べ肺がん細胞、結腸がん細胞に対して好結果が得られ、白血病細胞に対しては活性が弱かった。また、正常マウス繊維芽細胞に対して、同等の細胞毒性であった。今後は細胞親和性の高い置換基、アミド基等、を導入して、構造活性相関をさらに検討する予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。研究計画に記載したことをしっかり実験されたことは評価できる。一方、当初の研究目標達成に向け、具体的にどのような方策を取るべきか、論理的に方策を練ることが必要と思われる。今後は、Cyclenの効果が出なかった理由を考察し、今回検討した骨格の化合物がドキソルビシンの持つ問題点をどの程度解決できるものか、慎重に検討されることが望まれる。また、in vivo での活性試験も視野にいれた展開が必要である。
薬剤輸送トランスポーターをターゲットとしたハイスループットスクリーニングシステム 岡山大学
森山芳則
岡山大学
梶谷浩一
トランスポーターは薬物輸送を通じて薬物の体内濃度を決定する重要な因子であり、その輸送解析は新薬の開発において必須の項目となっている。本研究の目的は我々が開発したトランスポーターの再構成による活性測定系を改良し、タンパク質の安定化・簡易化など一般の研究者が利用する際の利便性を向上させる事である。
ヒトの薬物輸送体であるhMATE1を用いて、再構成、安定化とSPA法を用いた活性測定条件スクリーニングを行った。安定化剤を用いて、輸送体の安定化に成功し、SPAビーズへのリポソーム吸着条件を確定した。今後は、SPA法での活性測定条件を最適化するとともに、企業と相談しながらキット化の方法を検討する。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に凍結融解後の活性保持、SPA法によるビーズと再構成リポソームの結合など基本的要素技術に目途がついた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、凍結融解後のさらなる活性向上、SPA法の確立などが望まれる。今後は、今回の成果の特許化を検討すること、キット開発企業と研究開発の具体的な進め方を検討することが期待される。
相同組換えによるrpoB変異導入法の開発と核酸系抗生物質増産への応用 岡山大学
田村隆
岡山大学
梶谷浩一
核酸系抗生物質は社会的需要が高いにも関わらず、生産量が微量で工業生産が困難という理由で活用されていない。核酸系抗生物質の飛躍的増産を可能にするrpoB変異法を実施する上で、最後の技術的課題として残されていた「ゲノム上でrpoB遺伝子を改変する技術」を完成することができた。この内容は優先権出願して特許公開まで至った。これと並行して20通りの多重変異を導入するためのライブラリベクターも構築した。研究期間内にそのすべてを導入して検証することは出来なかったが、本発明の実施に必要とされるスキルはすべて確立できた。現在、増産効果の高いrpoB変異を探索しており、生物資源の眠れる宝である核酸系抗生物質の産業利用の扉が開かれる日が近いと期待される。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に実用に展開できるライブラリーが作製されている点は今後の実用化研究への期待が持てるので評価できる。一方、技術移転の観点からは、本技術の具体的成果としてシネフンギンの生産性を比較・検討する点は記されているが、他の有用物質の増産にも効果があるかどうか具体的な計画・研究を行うことが望まれる。今後は、具体的な応用例を企業との連携で研究することが望まれる。
生活習慣病の病態解析に資する特異抗体による精製プロセスと質量分析による酸化脂質プロファイルの作成 岡山大学
小林和子
岡山大学
桐田泰三
動脈硬化に起因する脳血管疾患、糖尿病などの生活習慣病は、生体構成成分であるタンパク質、脂質、核酸などの酸化変性による構造や機能の乱れが蓄積し発病に至ると考えられる。本研究では、動脈硬化における脂質の酸化に着目し、酸化脂質の代謝解析のための特異抗体を用いた新規精製法の確立と、MALDI-TOF-MSによる酸化脂質プロファイルの作成を目標とした。最終的には、血液検体を用いた動脈硬化の新規体外診断法の開発をめざしている。脂質代謝異常を発症する動脈硬化モデルマウスの血中より超遠心法およびHPLC法により各種リポタンパク質分画を精製し、動脈硬化の病態解析に資する一連の酸化脂質のMALDI-TOF-MSによる検出、同定に成功し、それら酸化脂質の動脈病変部での存在が確認でき、質量顕微鏡を用いた視覚化に成功した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、モデルマウスを用いた研究はかなりの成果が出ていると判断され、評価出来る。一方、患者検体を対象とした解析は実施出来ておらず、関連の技術検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、技術移転に向かって、患者検体を対象とした研究まで広げ、企業との共同研究も視野に入れ、進展させることが期待される。
PET・SPECT画像診断に最適な放射標識低分子抗体バリアントの製造開発 岡山大学
松浦栄次
岡山大学
桐田泰三
抗体PETイメージングによるがん、血管新生、動脈硬化などの非侵襲的可視化の実用化を目指す上で優れたイメージング製剤原体の開発が不可欠である。本課題研究では、生体内で安定な64Cu標識法の検討を行い、それを用いた全長抗体および低分子化抗体によるPETイメージングへの応用可能性を検討した。in vitroおよびin vivoの結果から、全長および低分子化抗体に対して良好な結果が得られるキレート剤を見出した。本応募課題から得られた知見は抗体PETイメージングの実用化を目指す上で有用であると考えられる。 概ね、当初の計画通りに研究開発は進展しており、目標通りの成果が得られ、技術移転の可能性が高まった。特に、見出されたキレート剤は、全長及び低分子抗体に対して良好な結果が得られ、且つ、それらを用いた全長及び低分子化抗体によるPETイメージングも良好な結果が得られたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、低分子抗体を用いての検討は不十分であり、これらの研究を継続し、産学共同研究体制を構築し、実用化に結びつける事が望まれる。今後は、既述のように、低分子抗体の標識技術の積み上げ等を着実に実施し、最終目標である早期臨床試験のける薬剤製造に展開されることが期待される。
スプライシング因子の操作による抗体ライブラリーからの特異的抗体産生細胞の単離の効率化 岡山大学
金山直樹
岡山大学
平野芳彦
これまでに変異能力を有したニワトリB細胞株DT40を用いたin vitro抗体作製技術を構築してきた。本研究では、DT40抗体作製技術において目的クローンの選択を効率化する技術の開発を行った。スプライシング因子を用いた細胞選択技術を用いることによって、標的抗原の培養系への添加のみで抗原特異的な抗体産生細胞を選択的に生存させて抗体ライブラリーから効率的に濃縮する方法を検討した。その結果、スプライシング因子および変異関連因子の発現量ならびに選択に用いる抗原の処理濃度、処理回数について最適化することに成功した。本技術は、DT40抗体作製技術よる目的抗体の取得を効率化すると考えられる。今後、各種抗体の取得に本技術を応用して実用化を図る。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、一部達成されていないものがあるが、抗体遺伝子への変異導入のためのSRSF1-3およびAID遺伝子の導入効率の検討、また抗原刺激による抗体産生細胞の生存数の増加を確認できたのは評価できる。一方、今後の研究開発について、具体的な計画が記載されているとは言いにくく、モデル抗原でも良いので、その成果を待って、実用化に向けた今後の研究計画を立て、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、モデル抗原としては、一般的なタンパク質でも良いので、本方法が原理的に有効であることを早急に実証して、特許化を目指すことが望まれる。
装着者の体重を利用した空気式歩行支援シューズの開発 岡山大学
高岩昌弘
岡山大学
薦田哲男
高齢者の歩行において躓きを能動的に予防する機能を備えたシューズを開発する。具体的には、立脚時に装着者の体重により足底部のフットポンプを踏むことで、空気の圧縮エネルギーを、コイルバネの位置エネルギーとして一旦蓄え、遊脚になる瞬間にコイルバネの復元力を利用して足関節部にモーメントを作用させ、爪先を上に持ち上げる動作を支援する。電気エネルギーを一切使用しないため、装置の簡易化や低コスト化が可能である。本研究では試作した支援機構を用いた支援性能の定量的検証と、フットポンプやパイロットバルブ等の空気圧駆動回路を完全に収納可能な靴底を作成した。本歩行支援シューズは、今後さらなる高齢化が予想されるわが国において、高い需要と大きな市場性が期待される。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、目標の達成を目指して技術的改良を行い、装置の有用性をデータで客観的に評価していることは評価できる。一方、目標とした軽量化、長距離実験、高齢者実験がなされていないので、早急な実施が必要と思われる。今後は、実用化へ向けた技術的課題を明確にし、今後の計画を具体的に明らかにして、さらなる改良が実施されることが望まれる。
胃X線診断用腹部圧迫移動装置の開発 岡山大学
脇元修一
岡山大学
齋藤晃一
腹臥位での胃X 線検査では明瞭な胃壁・ひだ像を得るため拳大に折りたたんだタオルを腹下に挿入する圧迫撮影が行われているが圧迫量や圧迫位置の調整に苦慮するケースも多い。
効率的な圧迫撮影を実現するためには圧迫量と圧迫位置を遠隔で調整できる機構が有効である。本研究開発では遠隔操作可能な圧迫量可変装置を構築し集団検診への介入試験を実施するとともに、圧迫量可変装置を移動させることで圧迫位置の調整を可能とする空気圧駆動機構を開発した。前者の試験では約71%の被験者に対して圧迫量可変装置の有効性を確認し、後者の機構では3.2mm/s以上の速度で圧迫量可変装置を移動させることが可能であった。今後、より簡便な機構で圧迫量と圧迫位置が同時調整可能な駆動システムを開発していく予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、胃X 線検査において効果的な胃壁圧迫機構の具現化を目指していて、X線に対する吸収が少ない材料が選択されており、実用性が高いと思われる。また、被験者での臨床評価もなされ成果を確認していることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、臨床評価がなされており、良好な結果が得られたことから技術移転を目指した産学共同等の研究開発ステップにつながる可能性が高まっているので、実用化が望まれる。今後は、安全性について被曝線量など一定のプロトコルで評価する必要がある。効率的に医療機器としての承認申請を実施できる企業を見出すことが期待される。
即効性抗てんかん剤の製品開発研究 岡山大学
大守伊織
特定非営利活動法人メディカルテクノおかやま
佐藤寿昭
わが国では約100万人、世界で5,000万人以上のてんかん患者が存在する。てんかん発作が長く続く場合は知能障害や運動障害などの後遺症のみならず生命に危険が及ぶ為、可能な限り早く発作を抑えることが必要である。即効性にてんかん発作を抑制する抗てんかん剤の基盤研究、および、患者や患者家族でも取扱いができる携帯用又は在宅治療用、救急救命士用治療機器の製品化に向けた応用開発研究を実施した。
即効性抗てんかん剤の基盤研究として、 てんかん発作に対して即効性のある混合ガスの組成を検討した。ヒトに応用するにあたって、安全性の確保の観点から、可能な限り二酸化炭素濃度が低い方が望ましいと考え、動物実験により、混合ガスの至適組成を決定した。また本治療剤の発作抑制機序には、血液pHの変化により機能が変動するHCNチャネルの関与が推測された。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも当初の目標のうち、ラットを用いた動物実験の部分はほぼ達成できている。また、目標としていた、ラット用のマスク型装着部分の試作品については、有意な結果は得られなかった。しかし、今後の機器開発の方向性が明確になったことについては評価できる。一方、機器に関する開発が検討されているが、やや抽象的なレベルにとどまっているので、具体的な方向性を検討すべきである。また、ヒト(患者)における治験をどのような手順で進めるべきか、具体的な方向性を検討すべきである。臨床研究に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、安全性や倫理面に十分な配慮をした上で、ヒトにおける混合気の投与方法の開発と臨床試験を進めることを考慮されたい。作用機序に関しての基礎研究もさらに進められることが望まれる。
細胞内オルガネラを標的するカチオン化タンパク質導入技術の開発 岡山大学
村田等
特定非営利活動法人メディカルテクノおかやま
佐藤寿昭
我々が独自に開発を行ったカチオン化による変性タンパク質の可溶化とタンパク質細胞内導入技術を組み合わせ、細胞内オルガネラに目的タンパク質を送達し、機能させる技術開発に取り組んだ。はじめにミトコンドリアや小胞体を標的するタンパク質群の発現・精製に取り組んだが、配列中に含まれる疎水性アミノ酸の影響で大腸菌内での発現が誘導されず、タンパク質の精製が困難であった。細胞核を標的としたタンパク質群は高い発現レベルが確認され、高純度にタンパク質を精製することができた。特に細胞分化を制御する転写因子群の精製を行い、カチオン化による転写因子の細胞導入によって標的遺伝子の発現が誘導された。今後はタンパク質導入の利点であるゲノムへの影響のない完全一過性のタンパク質機能発現の特徴を活かし、ウィルスベクターなどを用いた従来法よりも安全かつ効率的な細胞分化転換の技術を確立し、再生医療分野への応用を目指す。 当初目標とした成果が得られていない。中でも本研究内容は基礎研究的要素が強く、技術移転のための評価がさらに必要である。今後は、特定のオルガネラで着実にタンパク質を導入・機能制御できる技術を確立することが望まれる。
低価格平面パッチクランプシステムの開発 岡山大学
高橋賢
特定非営利活動法人メディカルテクノおかやま
佐藤寿昭
本研究はてんかんや不整脈などの治療薬開発に必要なイオンチャネル電流記録を行う平面パッチクランプ装置の開発を行った。既存の平面パッチクランプ装置は高価であるが、本研究はシリコーン樹脂を用いて平面電極を作成する方法の確立によりその低価格化に成功した。平面電極の性能の重要な指標であるギガオームシール率は、既存の製品を上回る37%を達成した。本研究装置は3種類の細胞からイオンチャネル電流の記録に成功した。さらにcell attach法のみならずperforated patchによる記録にも成功したことにより、本研究装置のアプリケーションの幅は飛躍的に拡大した。今後は企業との共同研究を開始し、製品化へと着実に進めていく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、電極抵抗値誤差に関しては、目標値に及ばなかったものの、安定性については実用的製品としての精度が確保された。また、ギガオームシール形成率については、目標値には及ばないが、良好な数値を得た。技術的課題については、本開発研究を通じてある程度明確になり、実用性に関する見通しも立っていることに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、コストについては優位性があり、また特に困難な技術はないため、技術移転に支障はない。てんかんや不整脈の治療薬の開発に寄与することが期待でき実用化が望まれる。今後は、製品化に向けた企業選択を早急にすることが期待される。
人工核酸切断酵素を用いた遺伝子ノックイン治療法の開発 岡山大学
大内淑代
特定非営利活動法人メディカルテクノおかやま
佐藤寿昭
ヒトゲノム解析が容易に実施できる時代に入り、ヒト疾患の原因となる遺伝子異常の同定が可能となったことを受け、異常部を精度良く修復する方法として人工核酸切断酵素によるゲノム編集法(遺伝子ノックアウト法と遺伝子ノックイン法)を利用した遺伝子治療法が注目されている。本申請課題では、このゲノム編集法のうち遺伝子ノックイン法を効率よく行う方法の開発を目標とした。人工核酸切断酵素としてTALEN(テイレン:TALEヌクレアーゼ)を用いた。本研究開発により、標的遺伝子配列認識部位であるTALEの部分を対象動物に適したものを用いることにより劇的にゲノム編集効率が改善されることが明らかになった。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、TALENシステムは、検索機能と切断・修復(ノックアウト)機能の結合により構成され、本申請は組換え機能(ノックイン)の付与を目標としていたが、当初目標についてはほとんど達成されていない。ただし、検索機能の改善は組換え効率を改善するベースとなるもので技術移転のコア技術となりうる点は評価できる。一方、本申請で求めたTALENのノックイン技術開発については未着手で終わり技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、ゲノム編集技術は次々と新しい方法が登場しており、激烈な競争状態にある。ポイントを絞って開発に臨むことが望まれる。
果樹栽培における上肢作業補助を目的としたパワーアシスト装具の開発 津山工業高等専門学校
井上浩行
津山工業高等専門学校
柴田政勝
本研究では、果樹栽培に代表される腕(上肢)を上げての作業負担を軽減する、軽量で低価格なパワーアシスト装具を開発した。パワーアシスト装具は、一つのアクチュエータで腕の動きを補助するため、平行リンク機構を用いて構成した。まず、装具の動きは構成されているリンク長によって決まるため、リンク長が装具の動きに与える影響を明らかにした。次に、具体的な作業としてぶどうの摘粒作業を対象とし、腕を上げた状態での消費電力を抑えるためにセルフロック機能を有するパワーアシスト装具を試作した。最後に、試作したパワーアシスト装具を被験者が装着して腕を上げる作業を行い、筋活動量から作業補助の効果を検証した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、パワーアシスト装具を装着することで、肩および肘間接の屈曲動作における筋活動量を半分以下にすることができ、目標をクリアしており、特許も出願されていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、提案のリンク機構方式、アクチュエータ半減が目的に合致し、従来機構に対しトレードオフが無いかを、複数人の実農家での検証をされることが、望まれる。今後は、ユーザにとって使い勝手の良い道具になるように、軽量化と装着性の良い商品を目指した開発が期待される。
複素誘電率測定プローブの実用化に向けた研究 呉工業高等専門学校
外谷昭洋
呉工業高等専門学校
繁村龍彦
現在提案されている誘電率の分布測定法は解像度が5mm程度で、ガン検出や細胞観察等の微小物質の観察が行えないことや、測定が煩雑になるなどデメリットを有する。申請者は、微細な物質の誘電率分布を高解像度で観察するために、集積回路上でアレイ化したプローブ端子と集積回路を応用した観察手法を提案している。本申請ではそのアレイ化技術についてシミュレーションと測定を元に実証を行い、CMOS集積回路技術を用いて発振回路を構築し実用化への目途を立てる。目標は既存技術を上回る1mm以下の解像度であり、得られた研究成果は、低侵襲のがん治療やバイオ分野の新たな観察手法となりうる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもインダクタのアレイ化の技術の開発に成功し、検出方法の有効性が確認された点については評価できる。一方、詳細なデータとして、分解能、距離、アレーの影響を詳細に調査することが必要と思われる。今後は、シミュレーションによる詳細な解析と、高誘電体材料や生体に近い材料を用いた実験的検証がされることが望まれる。
遠隔健康診断システムへの応用を目指した咀嚼(そしゃく)認識アルゴリズムの開発 広島市立大学
谷口和弘
広島市立大学
野村啓治
我々は表情の変化による外耳(耳の中)の動きを光学式距離センサで計測し、その結果を用いて電子機器を操作する装置(愛称:みみスイッチ)の研究開発を行っている。本申請課題では、みみスイッチで認識した食事の間隔から使用者の健康や生活のリズムを分析し医療機関にその情報を伝えることで遠隔健康診断等を行う見守り支援・健康診断システム(みみスイッチを応用した装置)の実現に必要な「咀嚼認識アルゴリズム」の研究開発を行った。具体的には、新たな咀嚼認識のためのハードウェア(センサシステム)およびソフトウェア(プログラム)の開発を行い、目標の90%以上の咀嚼認識率を実現した。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、当初の計画の目標を達成できたこと、研究成果を特許出願されたことが高く評価できる。ただし、今後の技術課題についてより明確に検討すべきだが、咀嚼と会話の区別が出来る技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、技術移転を目指した産学共同等の研究開発ステップにつながる可能性が高く評価できるが、今後の研究開発計画について具体的かつ的確に検討すべきである。研究成果の社会応用が期待でき、今後の技術課題についてより明確に検討することにより実用化が望まれる。今後は、咀嚼と会話だけでなくくしゃみ、咳、あくび等との区分がされることが期待される。
末梢血由来DNAのメチル化解析による精神疾患の診断法の開発 広島大学
瀬川昌弘
広島大学
田井潔
脳由来神経栄養因子(BDNF)遺伝子の、エクソンI上流のプロモーター領域にあるCpG island のシトシン・メチル化率を、MassARRAY(r)(SEQENOM)を用いて我々が考案した解析法にて計測し、うつ病及び統合失調症の診断バイオマーカーの開発を行った。メチル化率のクラスター解析の結果、BDNF遺伝子のメチル化プロフィールは、うつ病群・統合失調症群・健康者群を100%の感度で分類でき、上記精神疾患の診断バイオマーカーとなりえる事が分かった。今後は今回メチル化を解析した29箇所のCpGの中で、バイオマーカーとしてクリティカルな部位の同定を行い、臨床検査レベルで行える簡便な解析法の開発が必要と思われる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、症例数に不足はあるものの、未治療うつ病者、統合失調症者、健常者をBDNF遺伝子エクソン1のプロモーター領域のメチル化率によってきれいに分類できたという結果は評価できる。一方、技術移転の観点からは、研究成果の信頼性を高めるため症例数を確保し検証することである。増加の一途をたどっているうつ病の、バイオテクノロジーに基づく客観的な定量評価法の開発は、社会的ニーズの高いものであり、実現されれば社会還元につながることは明白であり、実用化が望まれる。今後は、症例数を十分に確保してデータの信頼性を高めたうえで、論文化することが急務と考える。そのうえで技術移転の具体的進め方を検討されることが期待される。
ステントグラフトアウターサック及び新型ステントグラフトの開発 広島大学
末田泰二郎
広島大学
田井潔
1)腹部大動脈瘤に対するステントグラフトの合併症であるタイプIIエンドリーク(動脈瘤内への分枝動脈からの逆流血流)を防止するアウターサックと2)弓部大動脈瘤治療用の頸部動脈閉塞を防止する開窓型ステントグラフトおよび3)急性A型解離治療用の上行大動脈のエントリー閉鎖用のステントグラフト開発を目的に基礎研究を行った。1)アウターサックは既存の薄膜人工血管の改良では作成が困難で本研究期間では試作に至らなかった。2)弓部大動脈瘤用ステントグラフトは中枢端に半舌状の開窓を行い同部はベアステントで被覆する工夫を行い平織ダクロン人工血管とZianturco Zステントで試作品を作成して、30Fフレンチシースデイリバリーシステムで弓部大動脈瘤部に持っていくことが可能なことをプラスチックの動脈瘤モデルにて確認した。3)急性A型解離上行大動脈部亀裂閉塞用ステントグラフトは既存のステントグラフトで中枢、末梢端がベアステントになっているステントグラフトの形状を洋梨状に拡大させるとバルサルバ洞部に固定が可能と考えられた。研究の継続で実用化に繋がると思われる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、製品開発の基礎的研究としては試作品完成まで行き着き、成果をあげた。期間中に共同研究会社と国際特許を出願し、事業移転に成功し、製品開発に向けての共同研究が進んでいる。製品の早期臨床応用が期待できることに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、企業と共同して研究開発計画を具体的に検討している。技術開発に必要な課題を明確に把握しているので、次のステップに向けて具体的に臨床応用するにはどうすれば良いかについて、よく考えながら開発を進めており、実用化が望まれる。今後は、迅速な開発のために製造会社との早急な事業提携をされることが期待される。
ELISA法によるヒト汗抗原特異的IgEの測定と臨床応用 広島大学
秀道広
広島大学
田井潔
アトピー性皮膚炎患者の多くは汗により症状が悪化し、特異的IgEを介して自己汗に対する即時型アレルギー反応を示す。我々は、ヒト汗中に含有される即時型アレルギーを起こす主要な抗原がMalassezia globosaから分泌され汗に含有されるMGL_1304であることを同定した。本研究ではより簡便で定量的に汗アレルギー診断を可能にすべく、ELISA法によるMGL_1304特異的IgE測定方法を確立した。さらに、それらの値と臨床データの相関の解析により、血清MGL_1304特異的IgE値はアトピー性皮膚炎患者において有意に上昇しており重症度と相関することがわかった。今後は、MGL_1304特異的IgE測定の臨床検査キットの商品化が期待される。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、汗抗原特異的IgE測定ELISA法の検出感度・特異度の改善、アトピー性皮膚炎やコリン性じんま疹などの患者検体で汗抗原特異的IgE値を測定し、臨床的な意義のあるデータが得られた技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、汗に対するアレルギーを診療の場で明らかにできれば、アトピー性皮膚炎の悪化因子の検索が進み、シャワー浴を勧めるべき患者が分かるなど、社会への還元が期待でき実用化が望まれる。今後は、患者数を増やしてさらに検討するとともに、現存する他のキットと比較して優位性や意義を示すことが期待される。
Serum-freeおよびfeederlessでの口腔顎顔面遺伝性疾患由来ヒトiPS細胞の樹立と人工ヌクレアーゼを用いた遺伝子改変法の確立 広島大学
岡本哲治
広島大学
田井潔
ヒトiPS・ES細胞は一般的にフィーダー細胞上で、血清添加条件で培養されており、ロット差による不安定性や異種抗原や感染性因子の混入等の不定要素により、各種制御因子の同定、比較検討、医療応用は困難であった。本研究においてヒトES・iPS細胞の未分化性と多分化能を維持可能なフィーダーレス無血清培地hESF9を用いて、ヒトiPS細胞の樹立および継代維持可能な条件の確立に成功した。また、同結果をもとに、腫瘍形成能を持たない、安全なヒトiPS細胞の樹立を目標として、腫瘍化の原因と成り得ないセンダイウイルスベクターを使用した、フィーダーレス、無血清培養条件下でのヒトiPS細胞樹立および維持に成功した。さらに、本研究では、遺伝性疾患の発症メカニズムを明らかにし、その診断・治療法を確立することを目指し、鎖骨頭蓋異形成症(CCD)患者、Turner症候群患者、Noonan症候群患者、ミトコンドリア症患者由来細胞を用いてヒトiPS細胞の樹立に成功した。また、鎖骨頭蓋異形成症患者より誘導した疾患特異的iPS細胞を用いて、変異原因遺伝子を正常遺伝子と置換する人工ヌクレアーゼによるゲノム編集技術を応用し、発症メカニズムの解明および機能解析を行った。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。多くの目標が立てられ、豊富な研究が実施され、成果が発現している。特に、無血清培地(hESF9)を用いて、ヒトiPS細胞の樹立および/または継代維持可能な条件の確立に成功したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは技術的な面を含め再現性、精度や安全性等の検討を行い、今回開発されたiPS細胞用フィーダーレス無血清培地等の事業化が望まれる。今後は、残された課題である、ヒトiPS細胞の機能解析、この細胞を用いたCCD発症のメカニズム及び原因究明などへ研究を進展させ、創薬研究、再生利用への応用などへ展開させていくことが期待される。
G2チェックポイントを阻害する新規抗がん剤スクリーニング法の開発 広島大学
上野勝
広島大学
田井潔
我々は、分裂酵母のG2チェックポイント蛋白質であるChk1の阻害が、ある生育阻害剤存在下でのある分裂酵母変異株の生育を回復することを発見した。本研究ではこの発見を利用して、分裂酵母の生育の回復を指標にした新しいChk1阻害剤のスクリーニング法を開発するために、ある分裂酵母変異株に薬剤超感受性変異を導入することを目的とした。本研究ではこの目的は達成された。さらに分裂酵母を用いてChk1阻害剤をスクリーニングする条件の検討に関する予備実験も終了しているので、本研究の当初の目的は90%達成したと言える。今後はこの新しい方法で特許を申請し、製薬企業と共同で実際のスクリーニングを行うことを試みる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。Chk1に特化してスクリーニング系を開発するという方向性は優れている。中でも三重変異株(pot1 rqh1 rav1変異株)の構築が達成され、本株がChk1阻害剤の探索に適した株であることを示した点は評価できる。一方、スクリーニングの条件設定をより綿密に行う必要がある。目的外の効果を持つ化合物と明確に区別するための多重変異株の作製も期待される。今後は、企業との連携に関する模索をすでに始めているが、スクリーニング系の開発では、豊富な化合物ライブラリーを有する企業などとの連携が必須である。システムの有効性を実証しつつ、改良して行くことが望まれる。
脳障害血液バイオマーカーとしてtransmembrane protein 95の検証とその中枢神経系における働きの検討 広島大学
細見直永
広島大学
田井潔
目標:本検討は、脳障害に伴い血中に増加する中枢神経障害に特異的な液性因子としてtransmenbrane protein 95(以下「TMEM95」と言う)の検証を行い、この血中TMEM95を定性・定量的に検出することにより、急性期脳障害血液診断を可能とする液性因子を確立すること。
達成度:TMEM95蛋白に対する抗体作成を行った。作成した抗体を用い、TMEM95蛋白の検出を血液中、脳蛋白抽出液にて行ったが、作成した抗体では検出されなかった。また、人の脳組織においてTMEM95蛋白の免疫染色にて、特異的な染色性を得られていない。
今後の展開:TMEM95による細胞死の機序の解明、血液中、脳蛋白抽出液、脳組織からのTMEM95蛋白検出法の確立に向け検討を行う。
初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、中枢神経障害のバイオマーカーとして想定したTMEM95の脳内局在の証明と血中レベルの測定の開発により、TMEM95の中枢神経障害における役割と診断法の確立を目指した研究であったが、本研究ではTMEM95の検出や定量に用いることができる抗体を作成できず、研究成果は得られなかった。ただ、中枢神経障害のバイオマーカーとしてTMEM95に注目した点については評価できる。
一方、抗TMEM95抗体の作成について、抗原提示部位の再検証を含めて技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、TMEM95の病態生理学的役割についても、より幅広く解明を続けられることが望まれる。
肺・肝腫瘍に対する機能画像を用いた高精度放射線治療法の開発 広島大学
木村智樹
広島大学
田井潔
医療技術が進歩した現在においても肺癌及び肝細胞癌は難治癌であり放射線治療の成績は十分とは言えず、その原因として放射線治療の安全性が挙げられる。申請者は各患者の残存肺・肝機能に応じて、肺・肝腫瘍に対し正常肺・肝への線量低減による安全性の向上のために肺・肝機能画像を用いた放射線治療計画法を開発した。下記の結果に示すとおり、本研究で用いた肺・肝機能画像は有害事象の発生割合に有意に相関することが明らかになり、これにより各患者の状態に応じたオーダーメイド放射線治療が施行できる可能性が高まった。今後は本研究で明らかとなった課題(機能画像作成の簡便化、機能画像の精度向上など)を引き続き検証し、最終的には放射線治療計画の新たなソフトとしての実用化及び既存の装置への採用を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、肺・肝機能画像作成の簡便化において1〜2時間の短縮可能とした。また、画像の検証を臨床において実施し、有意差を顕著とし精度を向上させた。透視画像の処理時間短縮を実現しつつもさらに高精度を目指しているてん、臨床画像を検証するなど実質的な対応をしている点については評価できる。一方、技術移転の観点からは、放射線治療機器メーカーとの研究協力が必要だが、臨床機器に搭載するには多くの困難が存在する。研究成果を放射線治療の臨床機器に搭載することへの障害を打開することで実用化が望まれる。今後は、放射線治療機器メーカーとの連携を密にし、臨床データ取得に努めてほしい。また、規制の関係から海外医療機関との連携も有効と思われ期待される。
ダイナミック心臓CT画像を用いた心筋血流様態の解析 広島大学
檜垣徹
広島大学
田井潔
ダイナミック心臓CT画像を用いた心筋血流様態を精度よく解析するための検討および開発を行った。従来から用いられている最大傾斜法は、絶対的な精度は高くないものの、病変検出能としての最低限の性能は担保されることがわかった。より高精度なPerfusion解析を行うために、全身の血流をシミュレーションするソフトウェアを新たに開発した。これを用いてPerfusion解析ソフトウェアの精度検証を行った結果、既存のソフトウェアでは正確な解析を行うにはモデル化が不十分であることがわかった。改良した解析ソフトウェアの開発は研究期間内には行えておらず、今後、ソフトウェア開発元の企業と共同で研究開発を行う。 当初目標とした成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。特に、従来の方法と比較して、CT画像のみで心筋血流様態を解析は期待の持てる手法として開発した解析シミュレーションは、評価出来る。一方、実用化していくには、血流解析ソフトウェアの改良など、技術的検討やデータの積み上げが必要である。今後は、産学共同等で研究を進め、技術移転、実用化に結び付けて行くことが望まれる。
ヘテロな系への応用できるAFM−EM相関顕微鏡法の開発 宇部工業高等専門学校
島袋勝弥
宇部工業高等専門学校
黒木良明
生命のように、多種類の分子が含まれるヘテロな系で、ある特定の分子の動態を高い空間分解能、かつ高時間分解能で解析できる技術が求められている。これを可能にする手段として、AFM-EM相関顕微鏡法の開発を提案する。この方法は、分子の挙動を鮮やかに映像化する分子間力顕微鏡の強みと、分子の識別を得意とする電子顕微鏡の特徴を組み合わせたもので、生体分子の機能をナノメートル・ミリ秒の精度で解析を可能にできると期待される。まず我々は、本プログラムの支援を受けて購入した真空蒸着装置(サンユー電子)を用いて、特定のパターンで金蒸着したカバーグラスを作成することに成功した。このカバーガラスの金蒸着パターンは、走査型電子顕微鏡、および透過型電子顕微鏡で識別することができ、このため、光学顕微鏡から2種類の電子顕微鏡へのシームレスな観察が可能になった。カバーガラスの蒸着パターンは、高速原子間力顕微鏡に付属の対物レンズを介して観察することもでき、AFMでカバーグラスのどの位置をカンチレバーで走査しているのか把握することも可能になった。実際、このカバーガラス上にアクチン線維と呼ばれるタンパク質が重合して形成したできた線維状構造体がガラス表面に付着していることを確認した。現在は、このカバーグラスを電子顕微鏡観察のための処理を行なっており、近日に結果が得られる予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもAFM-EM相関顕微鏡像の取得に向けた、研究については評価できる。一方、実現の可能性について技術的な検討を行い、明確にして行くことが必要と思われる。今後は、相関像が早期に取得され、実際に評価ができるようになることが望まれる。
Znポルフィリンを用いた新規ガン診断・治療薬の開発 宇部工業高等専門学校
廣原志保
宇部工業高等専門学校
黒木良明
本研究課題では、胃癌に適応できるガン診断(PET)薬の開発として、糖が2分子トランス配向したtrans-2置換糖連結ポルフィリンに、半減期の長い62Zn核(半減期= 9.3時間)を導入した62Zn-trans-2置換糖連結ポルフィリン亜鉛錯体の短時間でかつワンポット反応法を確立した。この開発した62Zn-trans-2置換糖連結ポルフィリン亜鉛錯体は、胃癌細胞(RGK)を移植した担癌マウスのPET試験において腫瘍部位に高濃度に集積することも見出した。
また亜鉛の安定同位体元素を用いたZn-trans-2置換糖連結ポルフィリン亜鉛錯体についてRGK細胞株を用いたガン治療(PDT)試験を行った結果、市販品よりも高い薬効を示した。
このように本研究課題で開発したtrans-2置換糖連結ポルフィリン亜鉛錯体は胃癌用診断(PET)薬および治療薬(PDT)として期待できる。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、研究成果に基づき新規特許出願が行われ、RGK-36細胞由来の担癌マウスにおいて目的とする亜鉛同位元素で標識したイメージング化合物の動態が観察されていて、イメージング評価もなされている点については評価できる。一方、癌の種類を変えて評価がなされるとさらに説得力が増すと考えられる。特に種々のステージングにおいて、診断化合物の集積の程度とがんの進行の関係が明らかするために技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、胃壁は薄く、部分容積効果により描出は容易ではない。MRI形態画像などと合わせた診断技術についても検討されることが望まれる。
光刺激の点滅への意識状態の制御による閉眼脳波の変化を用いた意思表示・計測システムの開発 山口大学
西藤聖二
山口大学
森健太郎
閉眼状態で使用可能な脳波による意思表示・計測システムの開発を目的として、(1)意識集中に伴うSSVEP(同調脳波)の変化の再現性の検証、(2)脳波変化の検出に要する脳波データ長の短縮化の試み、(3)意思表示システムの試作と評価を行った(対象:21〜23歳の健康男性18名)。(1) では意識集中時の脳波振幅の被験者平均は全試行で頭部全体(13部位)でリラックス時の試行平均よりも20%以上低い値となり、再現性が確認された。 (2)では複素復調法等により検出の高速化を図ったが、脳波の非定常性などのため、判別性能を維持した上でのデータの短縮化は困難であり、今後一層の検討を要する。(3)では意思表示を24回繰り返した時、被験者平均で80%の判別性能を得た。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも閉眼状態で使用可能な脳波による意思表示・計測システムの開発において、意識集中‐非集中の繰返し計測再現性確認、脳波計測時間短縮下限の見極めについてのシステム化が達成されている技術については評価できる。一方、ボンヤリ状態の特定につながる可能性があるので、継続的システム化を期待それぞれ単独計測が優位なタスク、併用計測が優位なタスクがあるものと思われ、ハイブリッド計測システムが必要になるタスク条件を示して独創性を強化することに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、ハイブリットまたはSSVEPとα波切り替えによる測定手法(閾値)の特許化検討を行うなど、継続的システム化を期待されることが望まれる。
ジャイロセンサーと統合した超音波探触子による小型関節疾患の診断装置の開発 山口大学
森浩二
山口大学
森健太郎
関節軟骨変性を非侵襲的に超音波で評価することを目指し、ジャイロセンサーと統合した超音波探触子による小型関節疾患の診断装置を提案した。それを実際に試作し、その測定条件について検討した。実際の関節軟骨試料に、コラゲナーゼ酵素を用いて模擬的な変性を与え、その変性程度を評価した。その結果、20度程度の角度範囲で測定プローブを傾けることによって、関節軟骨変性を定量的に評価できることを明らかにした。1回の測定時間については約10sec程度で実施できることを明らかにした。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、関節軟骨変性を有する関節軟骨試料の識別を装置を手動で走査し、関節軟骨変性を定量的に評価できることを明らかにし、十分な成果をあげている。具体的な目標に向かって検討を行い、将来の実用化が期待できる成果を上げたことについては評価できる。一方、技術移転の観点からは、実用化の直前にある技術開発であり、早急に特許申請など知的財産化することが望まれる。今後は、臨床機器として実用化するために、共同研究医療機関・企業を選択し、現在の技術的問題が解決されることが期待される。
脳冷却機能を持つ術中モニタリング用硬膜下留置式多機能センサの開発 山口大学
野村貞宏
山口大学
殿岡裕樹
本研究の目的は、術中脳モニタリング技術を新たなステージへ導き、脳外科手術後の脳機能維持・回復に繋げることであった。「脳腫瘍・てんかん・脳血管障害」における外科的手術では、術後の脳機能維持を目的として、脳波電極を用い運動関連誘発電位や体性感覚誘発電位による術中モニタリングが実施されている。このような確立されたモニタリング手法のさらなる機能向上のため、本研究では、局所脳冷却や脳血流・脳温度計測を同領域にて実施可能な多機能センサの開発を進めた。フレキシブルプリント基板技術を用いることで、水路の作製から、微小素子の実装を基板上に配置することを達成した。今後は、すべてのセンサを1つの基板上に実装することで当初の目標を達成すべく研究開発を進める予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、特許出願はされていないが、要素技術して冷却パッド、脳温・脳波センサおよび脳温・脳血流センサは目標を達成する小型化・薄型化に成功しており、評価できる。一方、科研費で来年度からの研究を推進する計画であり、まだ研究は基礎研究的な要素が強い。成果からは基礎研究の段階と判断されるので、企業化のためにはさらなる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、ものづくり系の企業と臨床試験レベルのプロトタイプの作製を目指すことが望まれる。
癌のプロテオミクスにおけるバイオインフォマティクスを用いた高精度解析手法の開発 山口大学
石野洋子
山口大学
田口岳志
本探索研究では、癌のプロテオーム解析の精度向上を目標に掲げた。近年、大規模なプロテオミクスでは、液体クロマトグラフィーと質量分析を組み合わせた測定方法(LC/ESI-TOF MS)で発現タンパク質由来のペプチドを網羅的に測定することがよく行われる。本研究では、LC/ESI-TOF MSによるプロテオーム解析の精度向上を第一目的とし、質量分析測定後のタンパク質同定の際に、インフォマティクスで理論的・計算的に誤差を較正し同定精度を上げる包括的な誤差較正法を新たに提案した。微生物のLC/ESI-TOF MSプロテオームデータを取得し、提案手法を用いてデータの較正を行ったところ、99%のMS/MSペプチドの測定誤差が±15ppm以内に収まるという効果を確認した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、測定誤差の目標値(±50ppm)に対して、±15ppm以内に収まると言う効果を確認したことは評価に値する。この分野の研究もしくは技術開発は日々進歩していると推定され、本研究の申請時点と状況の変化は当然考えられ、研究の進め方、知財の考え方等、良く熟考されて推進されているが、技術移転の観点からは、最終目標である、ヒトの癌治療に有望な遺伝子探索の精度を上げる事に向け、更に研究を進展をさせ、実用化することが望まれる。今後は、IT企業や製薬会社との連携まで進められることが期待される。
喫煙妊婦のためのEチャレンジプログラムによる行動変容研究及び禁煙e-learningプログラムシステムの構築 山口大学
藤岡奈美
山口大学
浜本俊一
A県内に在住の妊婦を対象に、喫煙環境の有無、および喫煙者へは、その喫煙動機を調査した。これに加えて、先行研究結果を基に、喫煙者と非喫煙者の社会的格差を調査するために、学歴、収入等々の生活背景についても調査した。本調査によって、妊婦の禁煙支援の状況、および喫煙の動機を把握する事が可能となったため、禁煙への行動変容において、支援に必要な内容を具体的に検討した。このデータベースから、IT企業と打ち合わせを重ね、禁煙支援プログラム運営のための企画資料を作成し(現状の把握、目的、システム環境の整備、サイトツリー、プログラム機能の整理と更新システムの管理方法等、コンテンツレイアウトの作成、アンケートフォームの検討等)、実働可能な所まで完成した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、妊婦を対象としたアンケートにより喫煙状況が明らかになり、それに基づき妊婦を対象とする禁煙プログラムの開発設計図を完成したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、e-Learningの基本設計は出来ているがアプリは完成していない。アプリ開発まで進めば、社会還元がなされる。特に、携帯アプリの開発は、従来のe-Learningコンテンツと違った要素があるので、設計をより一層検討する必要があり、携帯アプリとしての実用化が望まれる。今後は、ライバル企業が現れてくると予想されるので、知的財産戦略を早急に具体化されることが期待される。
微小平面ラチェット機構を持つ生分解性ステントの抗血栓・高密着化 山口大学
南和幸
山口大学
櫻井俊秀
ポリ乳酸フィルムを用いて独創的な微小平面ラチェット機構を持ったステントの開発を進めているが、血栓の発生と留置部位への密着性についての評価・改善を行う必要性を専門医より指摘された。そこで、抗血栓性を付与するポリ乳酸ステントの表面処理プロセス開発を行い、血栓防止の指標となる細胞接着阻害性において目標を達成することが出来た。一方、留置部位への密着性の向上のためにステント構造の設計変更と試作品の評価を行ったが、密着性においてほぼ目標を達成できたものの、拡張力を確認するまでには至らなかった。今後は拡張力の確認およびステントの留置動作に対する抗血栓表面処理の耐性、適した留置条件について明らかにして動物実験の実施を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、 留置時のステント拡張力と接着力向上を目指した研究で、課題を残すものの当初目標はほぼ当初目標を達成している。表面コーティング技術は目標を達成しており、展開力、接着力をさらに向上させる必要性を明確にしている。当初計画を超えた試みにより、十分な能力を備えた抗血栓性コーティング技術を開発した技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、表面処理法では計画外の手法も検討し、大いに社会に貢献できる技術と考えられ実用化が望まれる。今後は、様々な精密機械部品の中にはステントと同類の機械的性能を求められるバネ部品もあると予想される。構造性の最適化法としては参考になる可能性もあり技術が応用されることが期待される。
超音波リニアモータを用いた自在曲面装置の開発 徳山工業高等専門学校
鈴木厚行
徳山工業高等専門学校
吉岡健
褥瘡(床ずれ)の予防には体圧を低く保つ必要がある。そこで、自己保持力があり、電磁波の発生が少なく、静粛な超音波リニアモータを複数個配置し、体圧を感知した箇所を凹ませることで体圧を分散させる方式の自在曲面ベッドを考案した。試作した超音波リニアモータの負荷特性を測定した結果、最大推力 50.4 N・最大上昇速度 320 mm/sが得られ、先の研究で試作した超音波リニアモータより性能が向上した。2本の振動子を「レ」型に結合していることが開発した超音波振動子の特徴である。また、試作した超音波リニアモータの騒音レベル・電磁波レベルを測定した。当初の予定では体圧分散ベッドを試作する予定であったが、完成には至らなかった。今後は実際にベッドとして組み立て、体圧分散効果を確かめたい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、試作した超音波リニアモータの推力およびスピードが従来研究より向上し、また、試作した振動子の特性がほぼ設計通りとなったことは評価できる。一方、試作した超音波リニアモータの推力が当初目標に達しなかった。また、当初目標である体圧分散ベッドの試作に至らなかったので、体圧分散ベッドを試作して技術移転の可能性を明示し、産学共同等の研究開発ステップにつながる可能性を高める必要があると思われる。今後は、モータ単体の性能向上だけでも十分価値の高い研究と思われるので、この部分の学術的な研究をさらに進めることも望まれる。
LP(a)低下剤による動物モデルを用いた抗動脈硬化作用の検討 徳島大学
中屋豊
徳島大学
平岡功
目標:Lp(a)が動脈硬化促進因子であることが多くの研究で示されているが、有効な治療法が存在しない。今回、我々はLp(a)低下させる有効な薬剤を開発し、本合物が人Lp(a)を導入した動脈硬化動物モデルにて抗動脈硬化作用を確認する。達成度:化合物合成の目標は達成できたが、ヒトLp(a)とLDLの遺伝子導入したトランスジェーニックマウスの出生率が低く、必要な個体数を確保に時間がかかり、試験開始が遅れた。本年中に、新規化合物の効果について解析が修了する予定である。今後の展開:動脈硬化抑制効果が確認できると、冠動脈疾患の治療に有用であることを示すだけでなく、Lp(a) の制御が新しい治療ターゲットとして期待されるため、企業化に向けて開発を進める。 当初目標とした成果が得られていない。中でもLp(a)とLDLのダブルトランスジェニックマウスの出産数が十分でないことから、研究に至っていない。出産仔数を増やす工夫が求められるが、代替法等も検討すべきである。今後は、動物実験にとりかかる前に新規薬剤の動脈硬化抑制効果の科学的予測を行っておくことが望まれる。
がん患者のうま味受容体発現とうまみ成分を利用した治療食品探索 徳島大学
堤理恵
徳島大学
平岡功
本研究では、頭頸部癌患者が放射線・化学療法中に生じる味覚障害の原因として、味覚受容体の発現減少の関連性、うま味成分(MSG)を付加することで受容体発現が増加するかを検討することを目標とした。さらにこの結果を踏まえ、味覚異常患者用治療食開発に結び付けることも目標とした。達成度として、放射線・化学療法により甘味・うま味に関与する味覚受容体発現が減少し、苦味受容体は増加することがわかった。また、MSGを添加した食事の摂取により受容体発現が増加することも明らかとなった。一方で、嘔吐などの副作用を考えると食事よりより栄養価の高い栄養食品を開発することが求められると考えられた。今後の展開として、うま味成分を増量させ、かつ嚥下痛などを有していても飲み込みやすい物性・食感のものを治療食品として開発していきたい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもヒトの味覚受容体のmRNA量の変動を捉えることができたこと、うま味成分の摂取によりその発現量の減少抑制を見出したことについては評価できる。一方、どのような担がん患者に応用しようとするのかといった具体的な研究計画を作成することなどが必要と思われる。今後は、頭頸部癌以外の癌(特に、消化器系の癌)についても、味覚受容体の発現量を検討することが望まれる。また、治療効果の更なる検証やメカニズムの解明など研究課題の核となる内容に科学的な知見を与えるとともに、治療食の具体的な商品イメージを創出する必要がある。
Pim-2キナーゼを標的とした骨形成誘導活性を併せ持った新規抗腫瘍療法の開発 徳島大学
安倍正博
徳島大学
本那隆次
Pim阻害薬の骨髄腫動物モデルでの抗腫瘍と骨破壊抑制効果の検討とPim阻害薬(SMI-16a)を構造変換し作成した新規誘導化合物の治療効果と利便性や安全性の評価を目標とし、目標はほぼ達成された。本研究によりPim阻害薬は抗腫瘍活性と骨形成誘導活性を同時に有するユニークな抗腫瘍薬であることが示された。今後の展開として、本化合物は、骨髄腫や癌の骨転移に対する骨量回復活性を有する抗腫瘍薬のみならず、長期使用においても腫瘍発生の心配のないがん治療関連骨量減少や骨粗鬆症に対する全く新しい骨形成誘導薬として臨床応用しうる可能性がある。構造変換し作成した一連の化合物の構造活性相関の情報を基に新たな特許性のある化合物を作成中である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。pim2阻害剤に関する基礎的な研究としての意義は評価できる。一方、技術移転の観点からは、今回使われたpim2阻害剤が特許性がないことが明らかとなっており、新しいpim2 阻害剤をもとに、疾患対象なども含めて再検討することが望まれる。今後は、新しい化合物が見出されることを期待したい。
薬剤耐性株の出現リスクの迅速定量法の確立 徳島大学
間世田英明
徳島大学
平岡功
本研究課題は、申請者が見出した細菌の抗生物質への耐性化を引き起こすタンパク質のその発現を迅速定量を行うことにより、感染菌の単なる薬剤感受性測定ではなく、その株の耐性獲得リスクを分子レベルで短時間に測定し、従来全く手つかずであった、感染菌の院内感染リスク評価の可能性と新しい投薬法(薬の選択法)の提案を可能とするシステムを確立するものである。先に申請者は細菌の抗生物質耐性化を引き起こすタンパク質を発見していることから、このタンパク質の発現を定量することにより、細菌の多剤耐性化のリスクを事前に検出するシステムの確立を試みた。その結果、本タンパク質の抗体を用いることにより、そのタンパク質を迅速に検出し、その発現量から耐性化リスクを評価することが可能な評価システムを構築することに成功し申請目的を達成することができた。今後は、本システムを感染症で最も重要な菌株の一つである緑膿菌に適応し、さらに本システムの実用性を広げていく予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、技術移転につながる可能性を秘めたタンパク質Aに対する抗体が得られ、特許出願準備は進められている。タンパク質Aが耐性化獲得のキータンパク質であることを明確にしたこと、そしてタンパク質Aを定量する為の抗体作成に成功したこと、は成果として評価できる。一方、技術移転の観点からは、タンパク質Aの発現量が状況・環境に応じて変化するのかは現時点で全く情報がなく、耐性株出現のリスクをモニター可能とするかは未知数である。すでに興味を示す企業もいくつか存在するようである。タンパク質Aの発現量の変化と耐性株出現頻度との因果関係を明確にすることで実用化が望まれる。今後は、対象となる細菌種を広げられることが期待される。
顎口腔機能の可視化技術に基づく歯科診療支援システムの開発 徳島大学
重本修伺
徳島大学
本那隆次
本研究課題では、顎関節形態の三次元再構築のための骨の輪郭描出、顎運動との統合、診断のための顎運動の表示方法について検討している。 CT像(DICOMデータ)から顎関節を側頭骨関節窩および下顎頭の自動抽出を実現するまで研究を進めることができなかったが、歯列形状データおよび顎関節形状データと顎運動データの座標系を一致させる治具については、その仕様を決定できた。これによりそれぞれの座標系の重ね合わせの手法が一義的に決まるので、顎運動、顎関節形態情報解析表示用ソフトウエアの開発の目処も立っている。本研究課題は、当初計画の60〜70%は達成できた。今後は、実際の測定データを用いた精度検定を実施し実用化に向けた評価実験を継続する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、本顎口腔機能を高精度に可視化する技術であり、新規性や独自性に富むものである。全体的には当初目標の60〜70%到達できたと報告しており、おおむね目標が達成できたと思われる。顎口腔機能を高精度に可視化し、歯科診療の支援システムとして応用する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、本課題はシステムとして未完成であり健常者での検証もされていないので、今後歯科診療においてどのような疾患や場面で活用できるかは未知数であるが、研究成果が応用展開された際に、社会還元に導かれることが期待できると思われるので実用化が望まれる。今後は、支援システムを完成させるために、企業との共同研究されることが期待される。
被曝低減を目的とした超高速CT画像再構成システムの開発 徳島大学
吉永哲哉
徳島大学
本那隆次
医用X線CT検査における被曝量低減のため、少数投影データからでも高品質な断層画像を高速に再構成できるシステムの開発を目標として、微分方程式に基づいた考案システムのハードウェア化について研究した。まず、考案システムの解軌道を並列計算するためのアナログ電子回路を設計し、プリント基板に回路実装した。実装回路からは微分方程式の解軌道(理論値)に近い出力が得られた。さらに、回路素子の集積化を目的としたトランジスタレベルでの回路も設計し、理論値に近い出力が得られることを回路シミュレーションにより検証した。これらのことから、当初の課題はすべて達成された。集積回路のレイアウト設計および試作が今後の課題である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目標がすべて達成されていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、VLSI化が必須であるが、これに対する準備ができていない。今後の本研究開発推進には、医用CT装置開発製造企業との連携が不可欠と思われるが、そのために、本研究開発の成果の特許等の知財化が望まれる。今後は、医用CT装置メーカとの連携により、粗いサンプリングデータ故に低被曝・高速撮像が可能で必要な精度の画像情報を取得できるX線CT装置を是非提案、実用化に進むことが期待される。
人工合成N型糖鎖を持つネオグライコ酵素の作製とその応用 徳島大学
伊藤孝司
徳島大学
平岡功
N型糖鎖挿げ替えを触媒するEndo-M酵素を利用し、ヒトリソソーム酵素に人工合成機能性N型糖鎖を付加した「ネオグライコ酵素」の創製を目標とした。達成項目として、1) 組換えカイコによる活性型カテプシンA(CTSA)の大量発現・精製法の確立、2)〜4)均一な機能性N型糖鎖とオキサゾリン誘導体の化学合成・保存法を確立(特許出願予定)、機能性N型糖鎖含有CTSAの作製に成功した。5).カイコ由来精製CTSAの培養単球細胞内への取り込みとリソソームへの輸送が示され、期間内の達成度は80%であった。今後は、能性N型糖鎖含有CTSAの製造効率を向上させ、新規Ctsa欠損モデルマウスへの補充治療効果を評価する。本技術により、異種宿主で大量発現した組換えヒトリソソーム酵素のN型糖鎖を均一な機能性糖鎖に高効率で変換できれば、他のリソソーム病治療薬としても応用展開できる。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、N型糖鎖挿げ替えを触媒するEndo-M酵素を利用してヒトリソソーム酵素に合成機能性糖鎖を付加したネオグライコ酵素を創製し高い変換効率を得た成果が顕著である。一方、技術移転の観点からは、次の目標である糖鎖挿げ替え効率を上げることなどで、リソソーム病治療薬としての臨床応用での実用化が期待される。今後は、糖鎖挿げ替え効率を上げることを最優先課題として臨床応用に備えることが期待される。
新規なホモ接合型家族性高脂血症剤の開発研究 徳島文理大学
通元夫
一般財団法人四国産業・技術振興センター
堤一彦
我々はLDLレセプター欠損モデルであるWHHLウサギにおいて脂質低下作用の強いリード化合物を見出している。しかしながら当該リード化合物は難水溶性で、経口吸収性は十分とは言えない。本採択課題では難水溶性改善のために製剤的手法を用いてリード化合物と種々の水溶性高分子担体との固体分散体を創製し、溶解性を検討した。その結果、ある種の水溶性高分子担体との固体分散体は日本薬局方崩壊試験第2液(JPII,pH=6.8)での溶解性が5倍以上向上した。更にビーグル犬を用いた経口吸収性の検討においてリード化合物に比べて当該固体分散体は約4倍の高い経口吸収性を示した。以上の結果より当該固体分散体がホモ接合型家族性高脂血症治療薬のシーズ候補になる可能性は高まった。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。経口投与可能な薬剤の拡大と用量軽減に繋がる技術であり評価できる。一方、技術移転の観点からは、高い経口吸収性をもつ分散体が得られたが、有効性だけでなく安全性等の視点も考慮する必要がある。今後は、安全性等を含め詳細な動物実験に期待したい。そのためWHHLMIウサギのみでなく、マウス等での検討も進める方が望ましい。
D-タガトースの口腔内細菌に対する作用の研究 香川大学
小川尊明
香川大学
倉増敬三郎
我々は、D-タガトースをはじめとする一部の希少糖が、口腔内常在性菌のStreptococcus mutans (以下S. mutansと略)に対する増殖抑制の結果を得ていた。本研究では、S. mutansに対するD-タガトースの効果を検証するために、う蝕発生の因子となる細菌増殖、酸産生、不溶性グルカン産生を測定した。D-タガトースがS. mutansの増殖、酸およびグルカン産生を抑制したが、キシリトールと比較すると、その効果は小さく、ばらつきがあった。しかしD-タガトースとキシリトールを併用すると低濃度でもS. mutansを抑制することを証明した。今後はD-タガトースを利用したガムを作成し、口腔内細菌の変化を測定する予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。D-タガトースのむし歯抑制の可能性を実験的に明らかにし、キシリトールとの比較を検討することができた。この結果から、特許申請や企業との共同研究を行う等、新たな研究のステップに進むことができている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、S.mutansの種類によって効果にばらつきがみられる原因が何に由来するのかを解明することが必要である。今後は、菌の種類や付随条件によって、効果が変動するということなので、効果のメカニズムを理論的に示しながら、商品開発につなげることが期待される。
細胞・微生物の状態分析のためのイメージトラッキングシステム 香川大学
高橋悟
香川大学
倉増敬三郎
細胞の状態や微生物の運動を自動計測可能とする動画像イメージングトラッキングシステムの研究開発を行い、環境変化から生じる輝度変動や細胞や微生物の非線形運動に伴う見かけ上の変動に対応する個体検出かつ追跡手法を担うイメージトラッキングシステムの構築をした。特に、細胞・微生物の検出手法の確立、次に細胞・微生物の位置計測手法の確立、そしてこれらを統合した細胞・微生物の追跡手法の確立と3段階に分けて対応した。
申請内容に基づく成果を導き、各細胞・微生物の行動追跡システムを構築し、行動分析を可能とした。
今後は、構築した手法を搭載した装置開発を行い、細胞や微生物の生態観測に対応でき、それらの状態解析を実施する。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、従来より精度が高い細胞・微生物トラッキングシステムができつつあることは評価できる。一方、精度は目標にまだ届いていないと思われるので、目標達成できるよう改善を図ることが必要と思われる。また、方式の実用性や頑健性を示すことが必要であり、大量データによる検証、揺らぎやノイズに対する対策を行い、実用性を高める必要があると思われる。今後は、医学・医療分野の研究者、装置開発メーカなどと協力体制を構築し、実用化を進めることが望まれる。
分光特性クラスタリングによる2次元分光データの選定 香川大学
鈴木聡
香川大学
倉増敬三郎
結像型2次元フーリエ分光法は、計測深さを合焦面に限定して2次元で分光吸光度分布の計測が可能である。しかし、実際の計測では光源のゆらぎや温度・湿度をはじめとする計測環境の影響を受けるため、高精度な血糖値計測を実現するには様々な外乱に頑健な解析が必要である。そこで本研究では、分光データから外乱を除去することが可能な分光データ補正アルゴリズムを開発した。提案手法では、分光データに混入する種々の外乱を除去できるため、環境変化に頑健な計測を実現することができる。100mg/dl~200mg/dlのグルコース水溶液を計測した分光データを補正した結果、吸光度と濃度の相関係数が約23%改善された。今後は、生体から計測した分光データに開発した手法を適用し評価を行なう。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。目標値とした分光特性に基づくクラスタリング手法の活用による高精度計測は実現できなかったが、変更して行った計測環境に対して頑健な分光データ補正によって改善が認められており、実用化に向けて方向性を示したことは評価できる。信号処理法開発の段階は踏んでいると考えられるので、In-vivoでの測定実験を精力的に進め、実用化に向けての技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、安定で高精度の無侵襲による血糖値センサーが開発されることが望まれる。
生体に対する抗体導入効率向上技術の開発 香川大学
西山成
香川大学
倉増敬三郎
本プロジェクトはがん細胞において高い抗体の細胞内導入効率を獲得し、増殖や転移を強く抑制する技術を確立することを最終の目標としている。これに対して今回の実施期間では、医工情報連携拠点(JST産官学連携拠点)を活用し、(プロ)レニン受容体に対する抗体の膵管がん細胞における増殖抑制作用のスクリーニングをおこなった。その結果、ある種の抗体が培養ヒト膵管がん細胞の増殖を抑制し、モデル動物においてもがん抑制効果を生じた。これら研究成果は、昨年度9月に出願した特許「がんマーカーおよびその用途」に追加データとして加えられ、本年9月にPCT出願をおこなった。また、学会・展示会(DSANJ疾患別商談会)での発表をおこない、現在論文の投稿を予定している。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも抗体導入薬(既存)を用いて研究を進め、導入効率がよいことが示されたことは評価できる。しかし、用いた抗体の効果は細胞外での抑制が主であることから、導入することでin vivoの効果を評価することには適していない抗体であった。本来の目的である細胞内へ抗体を導入して抗がん作用を発揮できる治療法の開発に向けた課題について技術的検討やデータの積み上げ等が必要と思われる。本成果として抗体の導入効率の向上は確認できたので、今後は導入する抗体のターゲットの選別と最適な抗体の選択について検討されることが望まれる。
非メカニカルな血流速度分布計測用2次元断面走査型レーザドップラー速度計の開発 香川大学
丸浩一
香川大学
渡辺利光
高信頼かつ小型な血流速度分布計測手法の確立を目指し、速度方向に対して垂直な断面内を非メカニカルに走査可能な2次元断面走査型LDVを開発した。波長可変レーザと光スイッチを備えた本体と回折格子を備えたプローブを偏波保持ファイバアレイで接続する構成を提案し、模擬光学系による実験の結果、2次元断面走査可能であることを確認した。拍動による流速方向変化にも適した技術開発として、音響光学変調器および電気光学変調器を用いたヘテロダイン方式による速度方向識別方法を検討した。本方式を2次元断面走査用光学系に適用し、2次元断面走査かつ速度方向識別が可能となった。今後、プローブ小型化および流管を用いた実験を進めていく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に目標としていた原理の確認ができた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、最終的な製品を想定した場合の装置の総合的な仕様を検討しておくことが望まれる。今後は、血流測定を目的とした場合に、本装置で有効に計測できるかを事前に検証されることが必要と思われる。
脳回路機能解析のためのセンサー統合スライス標本維持実験システム 徳島文理大学
冨永貴志
脳の認知機能異常は様々な要因で惹起される。その予防法治療法開発を迅速に行うには小動物スライス標本の神経回路機構を調べる実験が必須である。しかし、標本を適切な生理状態に維持し実験装置に導入する標準的な機器や手段が乏しいことが研究推進の障害になっている。これを克服し、経験や知識の少ない実験者でも標準化された再現性の良い評価実験を遂行できるようにすることを目標とした。開発したチャンバーに酸素濃度計測センサーを設置し、一体化した温度調節機能をつけた。当初の目的を達成し、溶液還流系などを一体化し、簡単に生体標本、神経回路機能の評価実験を行いうる装置を開発に成功した。製造上の問題を検討し早期に製品化する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、センサー統合スライス標本維持システムの開発は、ほぼ目標通りの成果が出たものと考える。本システムは脳神経系の研究に寄与するばかりではなく、日本が主導すべき再生医療分野の研究に大きく寄与できる可能性のある実験装置と考えられ評価できる。一方、企業と具体的に初心者にも使いやすい実験槽システムとしての商品化(実装化等)への相談をしているが、特許等独占できる根拠が薄いと考えられるので、さらなる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、研究効率が上がる機器に仕上げ、商品化後も常に改良に注力し、競合品に負けないように努力が望まれる。
腫瘍血管を破壊する新規脳腫瘍治療薬の開発 愛媛大学
高橋寿明
愛媛大学
秋丸國廣
我々は脳腫瘍血管に発現する細胞表面抗原タンパク質分子X(仮名)が腫瘍血管特異的にN型糖鎖修飾を受けることを見いだした。本プロジェクトはその糖鎖構造の解明が目標であり、将来的に抗体医薬品としての開発を目指している。ゲル濾過カラムや糖鎖結合レクチンカラムを用い脳腫瘍組織から分子Xの精製は行えたものの、解析に必要な試料量を得ることが出来ず、期間内に質量分析は行えなかった。期間終了後も学内研究資金などで引き続き試料の調製を行っている。今後、該糖鎖修飾が明らかになれば、新規治療剤として特許出願を行い難治性悪性脳腫瘍の新規治療剤の開発が開発指向領域にある製薬企業等へ技術移転や共同研究開始へ展開していく。 当初目標とした成果が得られていない。中でも研究完了時点で分子Xの精製に留まっており、精製量の不足から、分子構造の解析に至っていない。分子Xの精製には成功しており、その量が確保されれば、研究の遂行が可能と思われる。今後は、研究の早期進行のためには腫瘍組織の量的確保が必要と思われる。十分な倫理的配慮を前提として、組織採取ができる病院の範囲を広げるなどの工夫が望まれる。
眼瞼圧測定器の開発 愛媛大学
白石敦
愛媛大学
秋丸國廣
瞬目関連結膜疾患では、眼瞼圧の強さが関与していると推測されるが、詳細は不明であった。本研究は、眼瞼圧測定器を開発し、眼瞼圧の評価を行うことを目的とした。小型圧力センサーに凸部形状治具と裏面に温度センサーを付加した眼瞼圧測定装置を試作した。これを用いて正常者の眼瞼圧を測定したところ、上眼瞼および下眼瞼それぞれが安定して測定可能であった。年齢と負の相関が認められた。眼瞼痙攣症例における治療の有効性評価を行ったところ、上眼瞼と下眼瞼のそれぞれにおいて治療前に高かった眼瞼圧が治療後有意に低下していた。新しい診断装置として、瞬目関連疾患の診断や予防において有効であると示唆された。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、正常者および眼瞼痙攣症例の検証を行い、眼瞼圧測定器の有効性を確認できた点において、技術移転につながる研究成果が得られたといえる。眼瞼圧測定器という従来にはない新しい発想の診断機器という点で優位性が高いもので技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、測定器としてはほぼ完成の域に達しているものといえる。そのため、技術移転を目指した産学共同等の研究開発ステップにつながる可能性は十分にあり実用化が望まれる。今後は、眼瞼圧の計測が臨床応用だけでなくコンタクトレンズ処方などさまざな応用展開が可能だという点で、今後の研究をが期待される。
葉緑体工学を用いた養殖魚のための疾病予防植物の創出 愛媛大学
中平洋一
愛媛大学
入野和朗
新興国における人口増加や先進国での健康志向の高まりから、世界的規模で水産資源の消費が増大しており、その安定供給には、持続性のある養殖システムの確立が不可欠である。しかしながら、ウイルス等に起因する魚病被害が、養殖業における生産性向上の課題となっており、低コストかつ効率的な感染防除技術が求められている。本研究では、植物細胞の「葉緑体」をバイオリアクターとすることで、抗原ワクチンとしての効果が期待される魚病ウイルス由来タンパク質を(細胞内全タンパク質の10%以上のレベルで)大量発現することに成功した。これにより、植物を利用した魚病ワクチンの低コスト生産に向けた可能性が示唆された。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ベータノダウイルス外被タンパク質を大量発現する葉緑体の形質を転換したタバコが作出したことについては評価できる。一方、作出したタバコの有効性の検証に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、有効性の検証結果に基づき、有効な魚病ワクチンの生産にまで繋がれることが望まれる。
L-ヒドロキシプロリンの酵素学的定量法の開発 愛媛大学
渡辺誠也
愛媛大学
入野和朗
生体試料や組織中に含まれるコラーゲンの定量には、他のタンパク質には含まれないL-ヒドロキシプロリン(L-Hyp)が利用される。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に替わる簡便・迅速・安価な酵素学的定量法を開発を目指した。酵素の大量生産・精製系を確立し、詳細な酵素学的性質の解析と反応条件最適化を行った。それに基づいて、0.004~1mMの範囲で標準溶液及び生体サンプル中での定量いずれにおいても、HPLC法と遜色ない精度を確認した。また、酵素センサー開発に先立ち反応の電気シグナル検出にも成功した。特許2件を出願した。小型定量キット実用化は目前であり、生体試料検査機関との共同研究にもつながった。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、大量の酵素生産を可能にし、実用化の大きな問題を解決している。3-ヒドロキシプロリンの定量についても可能性を見出したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、尿や血清の測定について都内医科大学との連携で具体的に検討されおり、定量キット開発に名乗りを上げた企業もある。生体サンプルを使用して早期の検証を行うことで実用化が望まれる。今後は、新たな需要開拓のためにも、病院検査部等との共同研究によりL-Hypが各種疾患マーカーとして有効であるかどうか検証されることが期待される。
医療・介護現場のニーズに対応した移乗動作介助機器の実用化 高知大学
石田健司
要介護者(障害者)の中には、体の回旋はできなくとも、支えがあれば立位可能な症例は多い。その残存機能である立位能力を最大限活用し、要介護者(障害者)の自主性や自尊心を失わせることなく、安全に移乗動作が行える機器を開発・試作し、開発機を元に、移乗動作介助機器の実用化を目指し、その有用性をアンケート調査した。
結果として、走行は比較的良好との評価であったが、動き始めと回転時にまだ改良の余地がありと評価された。また自分が介護される際には、本機器の有効性の理解は得られたが、機器の金額面で、5〜10万円までに価格を落とす工夫が必要であった。今後ベッドと一体型で、ベッドの柵の回転バーと一体になるものを作成したい。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、機器メーカーと協力し、機器そのものに一部改善がなされて、現場からの要望にある程度答えられる商品レベルとなっているとともに、使用者による評価にまで至っていることは、評価できる。一方、技術移転の観点からは、アンケートなどから装置の操作のしやすさ、静音化、軽量化、強度などの点にまだ問題が残っているので、改良が望まれる。今後は、この商品は介護現場において、介助者の負担軽減、被介助者のモチベーションアップにつながることが期待されるので、購入しやすい価格設定にも配慮して実用化されることが期待される。
トロンボモジュリンの上皮増殖因子様構造を用いた血管内皮細胞保護薬の開発 高知大学
池添隆之
血管内皮細胞上に存在するトロンボモジュリン(TM)は、血液凝固線溶系を制御する重要な蛋白質である。TMは2008年5月に世界初の遺伝子組換えTM製剤として発売され、DIC治療に広く臨床使用されてきている。申請者は前年度の本プログラムで、TMは培養血管内皮細胞において細胞増殖刺激シグナルERKの活性化を介して抗アポトーシス蛋白質Mcl-1を発現誘導し内皮細胞を保護する新規作用を有することを世界に先駆けて報告した(Arterioscler Thromb Vasc Biol, 2012)。本研究で、その活性部位は抗凝固作用とは無関係であるTMの上皮細胞増殖因子(EGF)様構造の40アミノ酸からなる特定の部位に局在することを突き止め特許を出願することができた。今後その40アミノ酸からなるペプチドを大量生産し動物での効果を検証し創薬開発を進める。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。目標であった活性部位同定はできており、研究が着実に進んでいる点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、血管内皮保護材というあいまいな目標でなく、どういう医薬品を目指すのか明確にする必要がある。シーズからリードへと研究目標は達成できているので、今後は具体的な創薬への取り組みが望まれる。医療ニーズに合った適応疾患を考慮してほしい。
高知県産ショウガを利用した嚥下機能改善品の開発 高知大学
宮村充彦
高知県特産品のショウガを利用した嚥下機能改善品を作成し、製剤学的、臨床的評価を行い、商品化を目指して、研究を推進した。1%(ショウガオールとして2μg含有、ジンゲロール類として36μg含有)、3%および5%配合した口腔内崩壊錠(OD錠)を、添加物等の組成を最適化し、作成した。作成したショウガ配合OD錠について、各種製剤試験を行った後、被験者を年齢層に分け臨床試験を実施した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、症例数は十分ではないものの、被検物質を製剤化しヒト試験で有効性を確認した事は評価できる。一方、技術移転の観点からは、ショウガオール・ジンゲロールのみが活性成分と思われるので、これらの成分を多く含むショウガの育種や食品向けの濃縮法を開発すると共に高知産ショウガの優位性を示すことでの実用化が望まれる。今後は、ショウガオール・ジンゲロール含量の異なる他のショウガ商品との比較試験や経皮吸収型の嚥下機能改善剤としての開発パートナーとの連携を検討されることが期待される。
抗アレルギー海洋微細藻カロテノイドの開発 高知大学
小野寺健一
高知大学
吉用武史
本研究は海洋渦鞭毛藻類が生産するカロテノイドの抗アレルギー作用を解明し、アレルギー予防薬や香粧品として使用することを目的とした。当該カロテノイドの抗アレルギー性は動物試験の実施により証明され、アレルギー予防剤としての可能性を有することを明らかにした。今後は試料の供給を続けると共に、新たな機能性の追求、商品開発についての展開を行いたい。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に計画通りペリジニンの抗アレルギー性を解明できたことは高く評価できる。一方、技術移転の観点からは、特許は出願しているが、具体的な商品化を目指すためには既存薬剤との差別化を明確にしていく必要がある。今後、商品開発を進めていく上で、コスト面や社会的ニーズを的確に見定めた展開が期待される。
有害物質応答性細菌を活用した医療環境中抗がん剤の迅速検出技術の開発 九州工業大学
前田憲成
本研究開発では、筆者が保持している「有害物応答性細菌を活用したバイオアッセイ法」を利用して、医療従事者の長期暴露が懸念されている抗がん剤をアッセイし、新しいシーズを見出すことであった。結果として、試験した抗がん剤のうち、フルオロウラシルに対しては高い感度で検出できることが明らかとなったが、その他の抗がん剤(主にDNAに作用する種類)に対する感度は良好ではなかった。今後の展開として、最終的には、医療現場の環境中の抗がん剤の汚染度合を網羅的かつ簡易・迅速に検査できるバイオアッセイ法の確立が求められるので、今回の研究成果をもとに、次なる課題を解決できるバイオアッセイ法の改良に取り組む予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、化学物質の微生物に対する毒性を短期間で調べられる技術については評価できる。一方、現在のアッセイ系は一部の作用機構の抗がん剤にだけ有効であるが、他の作用機構の抗がん剤には適していない。今後の研究は多様な抗がん剤が検出できる細胞の開発が求められる。幅広い作用機構の抗がん剤の簡易検出が可能な細胞の開発が必須で、かなりの基礎的検討が必要で、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、有害物応答性細菌の水素発生の増減のメカニズムを解明し、単なる細胞毒性なのか、それとも他の機構かを調べることが望まれる。
すい臓がんに作用する微生物毒素の探索 九州工業大学
北田栄
九州工業大学
山崎博範
微生物Bt菌には様々な菌株が存在し、標的がん細胞を選択的に認識し破壊する一群の抗がん性タンパク質を生産する。しかし、発見や治療が難しいとされる「ヒトすい臓がん」に作用するBt菌タンパク質は報告がない。今回4749株のBt菌から、ヒトすい臓がん細胞に作用する新しい抗がん性タンパク質の同定を目標とした。これまで複数のBt菌株の同時培養系と抗がん作用評価系を確立し、効率的ながん作用のスクリーニングを行った。結果、2種のヒトすい臓がん培養細胞に作用する49株のBt菌を発見した。これまでの研究の達成度は約60%であり、今後、菌株からのがん作用の再現性の確認、毒素分子とその遺伝子の同定を行う。新規のヒトすい臓がん細胞特異的な分子は、がん診断や抗がん製剤のシーズ分子として期待される。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にBt菌株ライブラリーから目的の生理活性物質を産生するBt菌株を探索する方法の効率化が進み、膵臓がん細胞株に対する増殖阻害活性を有する物質を産生するBt菌株の存在が確認できた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、スクリーニングの結果得られたヒット菌株をマスター菌株に戻って再現できないのは問題であり、その解決策について検討する必要がある。Bt菌株ライブラリーから目的のBt菌株を確実に同定できるように、菌株管理体制の改善が望まれる。今後は、Bt菌株ライブラリーから目的物質を産生するBt菌株を同定する有効な探索研究システムを作り上げることが期待される。
有機強誘電体を用いたカテーテル型高感度触覚センサの開発 九州工業大学
高嶋一登
九州工業大学
山崎博範
<目標>本研究では、有機強誘電体を用いたカテーテル型高感度触覚センサの開発を目指した。目標は、カテーテル型の試作品(直径:5 mm以下、最小検出感度:0.1 N以下)を開発することである。
<達成度>ポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルムを用いて、当初目標としたサイズ、感度のセンサは作製できた。また、センサを評価するための実験および数値解析手法の検討も行った。
<今後の展開>微細化に適したフッ化ビニリデン(VDF)と三フッ化エチレン(TrFE)のコポリマー(P(VDF/TrFE))などを用いて、さらにセンサの小型化を図っていく予定である。小型化などセンサ形状を最適化する際に得られた構造や作製方法に関する知見は、随時、特許申請を行っていく。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、血管内カテーテルを念頭に置いた研究を進めているが、この技術のニーズは高く、医療分野のみならず工業的応用性が期待されることについては評価できる。一方、要素技術は着実に開発できているが、実用的な試作機はまだ完成していない。共同開発するための企業や医工連携のための医療機関も候補名があがっており、ステップアップする可能性は高い。この技術が完成し応用展開された場合、医用のみならず、各種狭所・管内の診断など工業的な価値が生まれる。ただ、触覚センサの要素技術だけでも、現時点ではまだ道半ばであり、さらに技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、血管内センシングに限定すると安全性をはじめとする医用機器としての制約がきついため、平行して配管内診断などへの応用を進められることが望まれる。
インプラント周囲軟組織封鎖性向上を目指した新規デザインの開発 九州大学
鮎川保則
歯科インプラント治療は欠損補綴の有力な選択肢として広く普及している一方で、インプラント周囲炎によって苦慮する症例も稀ではない。口腔内には多くの細菌が存在し、インプラント周囲炎は軟組織からの感染に惹起されると考えられるため、その封鎖性の改善こそが今後の大きな課題である。本研究はこれまでに有効性が示唆されているインプラント粘膜貫通部の形状および表面性状に着目し、軟組織封鎖性改善のための新規デザインの開発を目指すものであった。本研究では実験用インプラントの実験動物口腔内への定着率が低かったため、当初の目標を達成することはできなかった。今後は今回の実験を通して得られたノウハウを有効に活用し、インプラント新規デザインの開発につなげていきたい。 当初目標とした成果が得られていない。中でも、当初の目標は動物実験による新規表面性状の有効性を証明と新規表面性状および形状(本研究者らが開発した粘膜貫通部にステップを付与したインプラントに、グルーブを適切な間隔で付与)を応用した新規インプラントの有効性を動物実験により証明することにあったが、インプラントがラットに生着せず、実験計画自体が進行しなかった。結果を得ることが出来ず、当初の目標は達成されなかった。動物実験の計画を検討しなおす必要性がある。インプラント周囲の封鎖性の改善は、インプラント周囲炎をコントロールする上で、大切なファクターであり、さらなる技術的検討や評価が必要である。今後は、Fixtureの表面形状に関する研究に実績があるので、本研究で得られた問題点を十分に再検討され、今後につなげて頂くことが望まれる。
高品質な食品の機能的デザインを支援する多次元情報統合化技術の開発 九州大学
藤村由紀
九州大学
佐々木ひろみ
本研究は、質量分析(LC-MS/MALDI-MS)に基づく包括的代謝物測定・多変量統計解析法を応用・最適化し、食品中の多彩な成分情報を複数の生理活性情報と有機的に関連づけて、機能判別や品質予測、成分寄与度を総合的に評価できる情報統合化技術の開発を概ね当初の予定通りに成功できた。今後、本成果を学会ならびに論文にて公表すると共に、網羅的成分情報の確保のためのMALDI-MS用マトリックスの改善および多様な食品の機能性評価へ適用することで、技術的検証(汎用性評価)を行って、更なる技術的高精度化をはかり、多彩な食品・農林水産物に対応可能な質の高い機能的デザインを支援する評価技術へと昇華させる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、研究計画に従い、マトリックスライブラリーから茶抽出物中の成分情報を検出可能なマトリックスを見出し、また、茶の3種類の生理活性を測定し、それらを統計解析し、幅広く取得した成分データから複合的生理活性に対する高精度予測モデルを構築したことは、評価できる。一方、技術移転の観点からは、今回実施されたお茶の成分についての研究成果から、具体的な機能性食品開発につなげるには、どのように本成果を活用できるのか、その道筋や見通しを提示することが望まれる。また、ごく限られた範囲での検討であり、普遍的な予測モデルに仕上げていくことが、望まれる。今後は、医薬品についても研究が進んでいるとのことであるので、そちらの成果を取り入れることで、食品に対する研究が進むことをが期待される。
PPRモチーフを利用したカスタムRNA結合蛋白質の設計 九州大学
中村崇裕
九州大学
三角可恵
PPR(pentatricopeptide repeat)蛋白質は配列特異的なRNA結合蛋白質であり、35アミノ酸からなるPPRモチーフの連続(平均11個)で構成される。我々は、PPRモチーフと塩基が1対1の対応関係で結合すること、モチーフ中の3箇所のアミノ酸の組み合わせが結合する塩基を決定する「RNA認識コード」を司ることを明らかにした(PCT/JP2012/077274)。本研究では、PPRモチーフを利用したカスタムRNA結合蛋白質の実用性について、迅速な評価が可能な酵母実験系の導入に注力した。しかし、酵母実験系ではPPR蛋白質とRNAとの結合が十分に評価出来なかった。そこで組換え蛋白質を用いた生化学的な実験により、PPRコードに基づくPPR蛋白質の結合塩基配列の改変を行ったところ、予想通りの結果を得ることができた。PPRモチーフを利用したRNA操作技術の確立に向けて、有用な知見を得ることができた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、PPRモチーフとRNA配列の相関を解析できる点については評価できる。一方、RNAに結合するカスタムPPR蛋白質の構築とその評価や特許出願に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、PPR蛋白質のアミノ酸置換によりRNA結合蛋白質の探索を継続すると共にコーディネータによる市場性の具体的な例示や海外動向の分析がなされることが望まれる。
メタルフリーMRI造影剤の開発研究 九州大学
唐澤悟
九州大学
坪内寛
臨床現場使用されているMRI造影剤は優れた性質を有している一方で、様々な問題点を抱えている。そこで私たちは、金属を含まないメタルフリーMRI造影剤を開発することによってこれらを解決することを試みた。造影剤には電子スピンが必要であるため、有機ラジカルを分子設計の核とし、有機ラジカル担持型DNAナノミセルをもちいて感度検証を行った。二重鎖DNAサンプルの1テスラー磁場下における感度r1は6.8であり、目標値のr1 = 4を上回ることができた。この結果、感度の点で市販されているガドリニウム含有造影剤と同程度であり、メタルフリー造影剤の実用化への方向性が示された。今後は知的財産権取得や実用化へ向けて、メタルフリー造影剤の安定性試験を行うとともにDNAに替わる大量生産可能な物質を提案していく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。有機ラジカルを用いるメタルフリーMRI造影剤の開発についての基礎的な設計指針が明確になった点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、実際の臨床応用を目指して、安定性、生体毒性そして水への溶解性を備えた新たな薬剤の開発が望まれる。今後は、Gd錯体に比べて分子サイズが遙かに大きいことを利点としたMRI診断への応用を考慮することで、本薬剤の特徴や臨床利用における位置付けを明確にすることが期待される。
MALDI-MS用デザインドマトリックス開発戦略 九州大学
三浦大典
九州大学
姫野康隆
MALDI-MSは極めて高感度かつハイスループットな質量分析技術であり、合成高分子や生体高分子(タンパク質・ペプチド等)分析における強力なツールである。しかし、既知のマトリックスで測定可能な対象物質が極めて限定的であり、かつ各マトリックスで測定可能な分子が異なる事から、低分子化合物測定への用途拡大は制限されている。本申請では、生体代謝物標品を用いた総当たり解析データおよびそれぞれの化学構造記述子を用い、イオン化に対する構造-機能相関(QSAR)解析を試みることで、直感的には窺い知れなかった構造的要因がMALDIの機構に関与する可能性を示すことに成功した。これはマトリックスの機能特性に対する、化学構造に立脚した系統的理解に資する基礎的知見の獲得に資する重要な知見であると考えられる。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、目標は達成され、特許も出願されており、イオン化に対する構造-機能相関(QSAR)解析を試み、構造的要因がMALDIの機構に関与する可能性を示すことに成功したことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、既に学内関連プロジェクトで企業との接点がある。今後は、感度・精度・定量性・操作性等の観点から、LCMS等の現在汎用されている方法により得られた結果との比較データを示し、優位性が実証されることが期待される。
マルチモダールイメージングを可能とする蛍光・磁気共鳴機能性分子の開発 九州大学
山崎俊栄
九州大学
平田徳宏
活性酸素などにより傷害された脂質・タンパク質などの高分子ラジカルが、多くの酸化ストレス疾患の発症原因に密接に関与している。しかし、このラジカル検出は、非常に高い反応性のためほとんどなされてこなかった。そこで本研究では、蛍光・磁気共鳴の多機能化合物による個体から分子までの異なる階層間での情報統合を目的に、蛍光スピン化合物の開発、細胞・動物モデルでの検討、およびラジカル種の同定を行った。その結果、開発化合物により、肝癌モデル動物の胆汁からラジカル種を蛍光検出・同定することに成功した。今後は、未知のラジカル種の構造推定を継続するとともに、MRIの感度向上を行い、組織、細胞間の情報統合を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、SIPの非侵襲的生体イメージングに向けて、新しいタイプのイメージングプローブを開発することができ、このプローブの細胞レベルでの有用性を確認できたことについては評価できる。一方、開発したプローブは、そのまま用いたのでは生体でのイメージングで十分な信号が得られないことが判明し、SIPプローブとして新たな化合物を開発しなければならないことが判明したので、さらなる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、蛍光スピン化合物を新しく開発し、それを用いることで、細胞、組織レベルでの活用に向けた取り組みを加速されることが望まれる。
腎生検確定診断用自動観察電子顕微鏡の開発 九州大学
金丸孝昭
九州大学
古川勝彦
本申請では、深紫外光を利用したアブレーションに着目し、電子顕微鏡にブロック試料を装着し、電顕で観察しながら試料表面を10〜100nmの深さで非接触・高速・大面積切削が可能な診断手法を提案した。新開発の深紫外フラッシュランプ(ウシオ製)でのソフトアブレーションを実現するための研究を行ったが、パワーが弱く使用不能であった。そこでエキシマレーザー(米国製)を用いた装置を試作し実験に供した。結果、一例を挙げるとレーザー1ショットで19nmの深さ、1mm×1.5mmの広さで掘削しながらハムスター腎臓の連続断面を撮影することに成功した。これらの成果により腎生検確定診断用自動観察電子顕微鏡の実現に目途が付いたと判断された。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、基本的な手法について、高価なエキシマーレーザーによる、確認作業を続けて基本原理を確固としたものにしている点は評価できる。一方、新開発の深紫外フラッシュランプを利用するという点が主眼とする目標であり、本技術の普及と応用のために必要とされる新規性のある開発であるが、新開発の深紫外フラッシュランプはパワーが弱く使用不能であったということで、適用を断念したのは残念である。まずは、DUVではどの程度のパワーが必要となるのか、それは実現可能であるのか、その開発コストは、など、本研究開発での目的に関する要素についての見通しを明確にする必要があると思われる。今後は、上記判断の後に、メンテナンスコストが高価で不利なエキシマレーザーを使用してでも腎生検確定診断用自動観察電子顕微鏡の実現は、重要であるので、さらなる改良に進むのか、方針、目標を明確にして研究開発を進めることが望まれる。
インテリジェント大腸内視鏡トレーニングモデルの開発 産業医科大学
久米恵一郎
産業医科大学
橋本正浩
大腸癌の臓器別癌死亡順位は、男性が3位、女性1位で大腸癌検診の重要度は増すばかりである。その検査となる全大腸内視鏡検査は、施行医の技量が患者の苦痛度に反映する。市販のトレーニングモデルがあるが、初期操作法の習得が限界で、患者の苦痛度を軽減できるほどの上達を見込めず、実際の患者で経験を重ねて上達しているのが現状である。そこで、検査能上達のために再現すべき2つの機能を人工的に再現するインテリジェント・トレーニングモデルを開発することを目的とした。生体運動である腸管蠕動運動の再現と苦痛の原因となる腸管の過伸展を反映するセンシング機能を導入し、蠕動運動に逆行する挿入法と腸管を過伸展させた場合には施行医に警告して、より苦痛の少ない挿入を促すシステムを完成させた。今後、連携先企業を探し、市販化モデルを実現させたいと考えている。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、 疑似腸管蠕動運動を備えた大腸内視鏡トレーニングモデルの作成と、大腸内視鏡検査中の患者苦痛を腸管伸展強度で表し、術者の技量をスコア化して評価可能なトレーニングソフト開発の両面においてほぼ実用化に近い状態にあることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、他のトレーニングモデルと比較した場合の学習効果の優劣に関する客観的評価が残されている。産学共同研究開発の候補として2社が具体的に示されており、連携についてすでに検討されている。 医師の大腸内視鏡技術を効率よく習得させる学習法を如何にして開発するかは喫緊の課題で実用化が望まれる。今後は、実用化モデルを早期に完成させ、他モデルと学習効果を比較すること、実際に使用した場合の問題点を整理し、よりよいモデルへのブラッシュアップすることが期待される。
エビ由来乳酸菌を利用した感染性胃腸炎の予防を目的とする健康食品の開発 福岡大学
鹿志毛信広
本申請の目標は、エビ由来乳酸菌のヒトおよびマウス腸管における抗菌ペプチド産生誘導作用を評価し、新たな感染性胃腸炎の予防法を提供することにある。本研究の結果、熱殺菌(65℃、10分)したLactobacillus plantarum D2905株がヒト腸管上皮細胞株であるCaco-2細胞においてhBD2の産生を誘導すること、マウスへの経口投与により大腸におけるCryptdin-3の産生を誘導することを明らかにした。これらのディフェンシン系抗菌ペプチドは、感染性胃腸炎の主な原因であるサルモネラやカンピロバクターの増殖を抑制するため、熱殺菌したエビ由来乳酸菌は感染性胃腸炎を予防するための健康食品となり得る可能性を示した。今後は、感染性胃腸炎の原因菌に対する感染防御効果を検討する。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。供試したエビ由来乳酸菌によって、腸管における種々のディフェンシン類が著しく誘導されることを見い出しており、本研究により健康食品としての利用価値が高まった点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、対象とした乳酸菌による種々のディフェンシン誘導作用が実際に腸管感染症の防御にどの程度貢献するのか、in vivoにおける詳細な検討が必要である。今後は、ヒトにおける感染性胃腸炎原因菌防御効果が明らかになることを期待したい。
血清中の外因性プロリン除去技術の開発 徳島大学
川上竜巳
血清中のL-プロリンを除去する手段として、超好熱菌由来のL-プロリン脱水素酵素(ProDH)を利用する方法を検討した。本酵素は脱水素酵素(PDH)活性だけでなく、わずかにオキシダーゼ(POX)活性も有しており、POX活性を除去することで、試薬ブランクを上げることなくL-プロリンを除去させることを目指した。数種類のProDHについて、POX活性に関与すると考えられたシステイン残基を、セリン、スレオニン、アラニン、グリシン、アスパラギンに置換した変異体(計24種類)の構築と酵素の簡便精製に成功し、その酵素活性を測定したが、PDH活性の大幅な減少が見られ、POX活性も完全に除去することはできず、変異部位の見直しなどの検討が必要である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、24種類の変異酵素を実際に作成し、それらの酵素活性を比較検討しており、その技術レベルの高さは評価できる。また、オキシダーゼ活性のみを低下させる方法は確立していないので意欲的な研究課題であることについては評価できる。一方、期待通りの成果が得られなかったことは目標達成の困難さも示唆している。ただ、企業も支援しているので、成功すれば技術移転の可能性は残されている。目的は明確であるので、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、目標の達成には、より専門的な酵素学的な知見に基づいた仮説が必要である。オキシダーゼの専門知識を持つグループに相談しアドバイスを受けることが望まれる。
深屈曲型人工膝関節の海外向け仕様としてのユニバーサル型人工膝関節の開発 九州大学
廣川俊二
申請者責任者らが開発した深屈曲型人工膝関節の製品化と国内向け販売は決定済みであり、これを受けて今回は深屈曲型の海外向け仕様としてユニバーサル型人工膝関節の開発を計画した。
ユニバーサル型とは、上記深屈曲型をベースに、脛骨コンポーネントの設置角、ポストの位置や水平断面曲率などをモジュラー化し、深屈曲型に対する種々の要求仕様に応じてモジュラーの組み換えが可能な人工膝関節システムを意味する。
膝の深屈曲が必要な理由は各国によって異なることから、対象国の事情やニーズに応じて上記モジュラーの最適な組み合わせを見出すため、別途開発したシミュレータによる計測・評価実験を行う。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、海外向け仕様の深屈曲型人工膝関節の開発を目指す研究で国際的な生活習慣の違いに目を向けた人工関節の開発は、ユニークである。独自の膝関節シミュレーターの開発の実績に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、 競合する製品や会社も多いが、膝関節シミュレーターや有限要素法を用いた3次元力学解析の手法は確立さ、企業との協力で製品化することを予定しており実用化が望まれる。今後は、国際的なニーズに対応した製品として成立するには、犠牲にするべき何かを明らかにするかにより、必要な機能を実現することが期待される。
テクスチャー効果を利用した血圧上昇を抑えるゲル状醤油の開発 佐賀大学
成田貴行
佐賀大学
末安亜矢子
研究開発の概要の醤油は、テクスチャー効果を含めた"多数の複合的効果"で血圧上昇をブロックできる可能性がある。本課題では、この相乗効果を最大限に生かし、塩味感を保ちつつも血圧上昇を最小限に留めうるゲル状醤油の開発に取り組くんだ。研究開発の結果、醤油使用量を減らしつつも、塩味感をアップさせる海藻多糖類があることが明らかになった。予想される減塩量は、目算で醤油から最大65 wt%のNaCl量醤油を減塩できる。この結果は、目標値を十分に上回る結果と評価できる。しかし、醤油のかけ過ぎ防止効果、人間の腸内でのNa+の吸収抑制効果に関しては見積もることができていないため、今後検討する必要がある。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に塩味感を保ちながら血圧の上昇を抑えることができることを見出した点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、マウスを使った血圧変動およびナトリウムの摂取量の評価などが望まれる。今後は醤油は嗜好品であることから、企業との密接な研究による商品としての評価とそれに基づく改善が期待される。
ペルオキシダーゼを標的とした気管支喘息に対する治療薬の開発 佐賀大学
出原賢治
佐賀大学
末安亜矢子
気管支喘息の発症に関与するペルオキシダーゼを同定する目的で、A酵素、B酵素の各欠損マウスをMayo Clinic、横浜市立大学から入手し、さらに我々の研究室にてC酵素欠損 マウスの作製を行い、喘息発症に関する解析を行った。その結果、A酵素とC酵素欠損マウスにおいては好酸球浸潤の低下が見られた一方で、B酵素欠損マウスでは好酸球浸潤の低下は見られなかった。これより、好酸球性炎症に対してA酵素とC酵素の両方が関与しているが、 B酵素は関与していないことが明らかとなった。今後さらに、各欠損マウスにおける喘息病態をさらに詳細に解析するとともに、喘息の原因ペルオキシダーゼに対する阻害剤の探索、開発を進める予定である。 当初目標とした成果が得られていない。気道炎症におけるチオシアネートイオンの関与やペルオキシダーゼの関与を明らかにした点は評価できる。炎症のカスケードの終末にいくほど、さまざまな分子が関与する。ペルオキシダーゼの関与は終末の方と思われるので、その阻害剤による調節は難しいのではないかと思う。炎症のtriggerについて研究するか、あるいは、創薬と切り離して純粋に炎症の一局面として研究することが望まれる。
胆汁酸結合能を有するイカペプチドを用いた抗肥満食品の開発に関する基礎的研究 長崎県立大学
古場一哲
長崎総合科学大学
山中孝友
これまで、イカ、タコはコレステロールを上昇させると考えられきたが、我々はラットにおいて、イカたんぱく質が腸管でステロイドと結合してコレステロールおよび胆汁酸を体外へ排泄し、さらに肝臓での脂質合成を低下させて、血清および肝臓脂質濃度を低下させることを見出した。食事中へわずか5%レベルのイカ添加で効果が示されたことから、イカたんぱく質中のペプチドには強い作用を持つ画分があると予想され、その同定を試みている。目標達成率は70%程度であり、今後さらに脂質低下作用ペプチドを探索する。最近、胆汁酸は糖、脂質代謝の制御に役割を果たすことが報告されているので、本研究は身近な食材に機能性を見出す可能性を持つ。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、イカが、血清中性脂肪を低下させ、コレステロールを低下させる機構を解明したことについては評価できる。一方、現状では、イカの健康効果を示すに留まっており、機能性素材としての新規性や優位性が乏しい。すり身(クエン酸添加物)の特性評価、活性本体の同定あるいは機能性を高める処理法の開発など技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、イカすり身自体は既存技術なので、新しくより機能性の高い素材開発されることが望まれる。
長崎県産農林水産物の乳酸発酵による新規機能性食品の開発 長崎県立大学
田中一成
長崎総合科学大学
山中孝友
長崎県産物から採取された乳酸菌およびミャンマー産の希少な乳酸菌を用いて、長崎県産農林水産物を乳酸発酵させることで、高度な機能性を有する食品を開発するための基礎資料を得ることを目的とした。長崎県内の緑茶葉、ミニトマト、大豆などを45種類(県内産20種類、ミャンマー産25種類)の乳酸菌で乳酸発酵することで、ヒトの健康に寄与する成分が10〜600%増加した。また、これまでに知られていない新規成分を生成することに成功した。これらのうち、いくつかの発酵生成物で脂肪合成の抑制効果を有するものが確認された。これら生成物や乳酸菌を用いて、ヒトの健康に寄与する機能性食品を創成するための基礎資料を得た。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に農産物の乳酸発酵に適する乳酸菌の選別と原料の組合せにおいて、プロシアニン、イソフラボンが、1.3倍近くなった組み合わせや緑茶でmax54%ラジカル消去活を見いだすなど、興味ある結果が得られている点については評価できる。一方、技術移転の観点からは、組み合わせにより、有効成分(食品)があるので、それらの発酵条件やin vitro、in vivoの再現性に向けた検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、地域特産の農作物と良い乳酸菌の組合せを見出せており、実用化されることが期待される。
新規ラジカルスカベンジャーの簡易かつ迅速な探索を目指したヒドロキシルラジカル消去能自動分析装置の開発 長崎大学
岸川直哉
長崎大学
山口陽子
ヒドロキシルラジカルや1-methyl-4-phenylpyridinium (MPP+) ラジカルを対象とするラジカル消去能の自動測定法を開発した。本法は試料のラジカル消去能を1測定あたりおよそ1分以内に測定可能であった。様々な化合物が有するラジカル消去能測定を測定したところ、トロロックスが優れたヒドロキシルラジカル消去能を示し、エダラボンやユビキノンが優れたMPP+ ラジカル消去能を示すという結果を得た。今後は、これらの化合物の疾患予防・治療効果を医療機関・医薬品メーカーとの共同研究により明らかにしていくとともに、脂質ラジカルのような他のラジカル種に対する消去能自動測定法の開発を続けていく予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ラジカル消去能を有する化合物を簡易迅速に評価できる自動分析装置を開発し、地場農産品などの抗酸化能を評価する自動分析機器としての利用価値を見出した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、本測定法において認められる非特異的なラジカル消去反応の原因や血清試料中の発光増強物質の特定などに対する検討が、特に、診断用機器としての応用価値を得るには必要とされる。また、装置を利用する企業分野に応じて装置を改良するなど、機器メーカーと連携して実用化が望まれる。今後は、特許を出願するとともに、機器メーカーと連携し小型で多様なラジカル消去能を計測できる分析装置とすることも期待される。
抗がん活性の増強を目指したベンズインドロイソキノリン型トポイソメラーゼ阻害剤の構造改変 長崎大学
石橋郁人
長崎大学
石橋由香
研究責任者は、強力な抗がん活性を持つ海洋天然物ラメラリンのトポイソメラーゼⅠ阻害作用機構と構造活性相関情報に基づいて、ベンズインドロイソキノリン骨格を有する新規抗がん活性物質BIIQ-1を創製した。本課題では、BIIQ-1の構造改変を更に進め、物性面での改善を図ることにより、より高活性・高機能な化合物の創製を目標とした。生体内での移行性および細胞膜透過性を高めた8種類の誘導体を合成し、HeLa細胞に対する増殖阻害活性を調べた。その結果、親化合物BIIQ-1の活性を大幅に凌ぐ誘導体dBIIQ-6を見出し、期待以上の成果を得ることができた。今後は、より高活性な化合物の創製を行うと共に、in vivoにおいても有効性が期待できる水溶性誘導体の合成を行う。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に当初計画のNオキシド体では、変異原性などの問題を含むが、脱酸化体で活性の優れた有望なリード化合物を見出したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、経口剤を考える場合ある程度の水に対する溶解度が必要なため、合成と並行して物性面の評価をするとともに知的財産権を確保することが望まれる。今後は、体内で抱合を受けやすいフェノール性の水酸基が存在するためin vivoで活性が低下する可能性があるので、代謝を考慮し薬物動態の良い化合物への変換が期待される。
生体微量イオンイメージングを指向した質量分析プローブの開発 長崎大学
真木俊英
長崎大学
石橋由香
これまで上市しているレーザー光線により開裂してイオンを発生する機能性分子の検出原理を利用して、イオン分子捕捉能を有するイオン化プローブを構築し、複雑な混合物中から、迅速に標的イオンの質量分析イメージングを可能とする新しい質量分析プローブの開発を目指す。複数のプローブ分子を合成し、LDI-MS測定を試みたところ、何れの試料からも有効な質量分析シグナルが検出されず、追跡測定によりその原因を確認した。今後、原因の解明を進め、阻害因子を明かにすることにより、高感度化の達成へ繋げる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、今まで認識していなかったプローブ分子の光開裂イオン化の基本的な問題点を確認できたことは評価できる。一方、問題をさらに絞り込む実験あるいは理論調査で今後なされるべき解明の方向性を明らかにすることが必要と思われる。今後は、実用化に値するプローブ分子を見出すべく、問題解明の攻略点を具体化し、解決に向けた基礎的な研究を続けてることが望まれる。
新規なバイオフィルム形成阻害剤の適応病原細菌の探索 長崎大学
和田昭裕
長崎大学
蔡国喜
ヒトの生体内にある物質が、毒素原性大腸菌(ETEC)のバイオフィルム形成阻害活性があるのを我々は既に見出している。この新規なバイオフィルム形成阻害物質の活性が、ETECだけではなく医療上バイオフィルム形成が問題(例えばカテーテルでのバイオフィルム形成)となる主たる細菌(A菌、B菌、C菌)においてバイオフィルム形成阻害活性が認められるのかどうか調べた結果、A菌およびB菌に関してはバイオフィルムの形成阻害が認められたもののC菌においてはバイオフィルム形成阻害が認められなかった。これらのバイオフィルム形成阻害剤は、細菌の増殖に影響を与えずバイオフィルム形成阻害が認められた。今後、さらなるバイオフィルム形成阻害剤の構造活性相関を追求していきたい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。生体内に存在する物質が、特定の細菌のバイオフィル形成に対して阻害活性をもつことを明らかにした点については評価できる。一方、当該物質の活性メカニズムを明らかにすることや臨床・環境分離株をもう少し多く入手して、評価することなどデータの積み上げが必要と思われる。今後は、当該阻害物質が、特定の細菌類に特異的に活性を示すということなので、その特異性が何に基づくのか、阻害機構を明らかにした上で、技術移転に向けて連携を図っていくことが望まれる。
骨髄指向型エリスロポエチンによる革新的貧血治療法の開発 熊本大学
丸山徹
エリスロポエチン製剤の開発により、貧血治療は大きく進歩したものの、治療効果の向上や適応症の拡大が望まれている。この臨床上の課題に対して、申請者らは、ウサギ以上の大動物(サル含む)で、投与量の70%が骨髄に移行するリポソームにエリスロポエチンを封入し、作用部位である骨髄へのデリバリーシステムの構築を試みた。1)ウサギで腎性貧血モデルの作成に成功した。2)健常、腎性貧血病態ラビットを用いた検討で、エリスロポエチン製剤が造血効果を発揮しない低濃度においても、本リポソーム製剤が優れた造血効果を発揮することを実証した。3)そのの作用は骨髄マクロファージを介したエリスロポエチンの骨髄移行性の亢進によることを確かめた。したがって、当初の目標の大部分に到達することができ、エリスロポエチン封入リポソームが新規貧血治療薬になりうる可能性を見出した。今後は、イヌ、ブタやサルなどの大動物を用いて同様な検討を行う必要があるが、それに際しては、まず腎性貧血モデルの確立を試みる必要がある。また、連続投与が体内動態や治療効果に及ぼす影響についても検証する予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。骨髄指向性リポソームにエリスロポエチンを封入した製剤を開発し、その有効性や安定性を実験動物で確認し、当初掲げた目標をすべてクリアできた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、今回得られた成果に関わる特許出願を早急に行い、それに基づき技術移転を進めるべきであると考える。今後は、大動物での有用性を確認する必要性や製剤としての安全性や製法・安定性の確認を行う必要がある。ヒトへの臨床応用には大きな障壁があるのでそれをクリアすべく、綿密な戦略を立てることが望まれる。
プロトタイプGタンパク質介在性受容体インバースアゴニストペプチドの構想:(1)リウマチ患者治療用C5a受容体インバースアゴニストペプチドの調製 熊本大学
西浦弘志
天然型C5a受容体インバースアゴニストペプチドAcGQRDL131DRIAGQVAAANKK(Ac18)からヘッド部位(GQRDL131DR)・ボディ部位(IAGQVAAAN)・テイル部位(KK)から構成される関節リウマチ治療用インバースアゴニストペプチドの調製を目標に、14種類を合成した。その中で、合成番号(X)が、カラゲニン誘導性胸膜炎モデルマウスの急性炎症を消炎した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも申請者の独自性の高いテーマで、Ac18の誘導体合成により、同程度の作用を示し、急性炎症で効果を示す誘導体を見出したことは評価できる。一方、まだ基礎的な段階であり、薬理活性、物性を含めて総合的に目標とする分子の持つべき性質を明確にし、技術的検討やデータの積み上げが必要であると思われる。今後は、ペプチド医薬であれ研究用試薬であれ、分子プロファイル(活性、物性、動態等)を明確にしてから研究を進めることが望まれる。
GIRK チャネル阻害作用をもつチペピジンの新規統合失調症治療薬としての開発研究 熊本大学
高濱和夫
熊本大学
松本泰彦
先に提出した特許出願(「統合失調症治療」特願2012-180943)に基づき、GIRKチャネル阻害作用をもつチペピジンの抗統合失調様作用について、動物実験で追究し、そのメカニズムを薬理学的に調べた。その結果、チペピジンは鎮咳有効量で統合失調症の3つの中核症状(陽性症状、陰性症状および認知障害)のすべてのモデルで有意な効果を示した。また、重篤な副作用はあるが陰性症状にも効果を示すクロザピンとの併用は、強い抗統合失調症様作用を示す結果を得ていることから、臨床応用できる可能性は十分考えられる。今後、 本研究で示唆された、GIRKチャネル、ドパミンD1および5-HT1A受容体の関与を含めてメカニズムをさらに明らかにしていくことが重要である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。多角的な行動薬理学的研究により、高い安全性が確立されているチペピジンの統合失調症治療への応用可能性が見いだされたことについては評価できる。一方、幼仔期海馬損傷モデルで効果を示さなかった点については、さらに慎重に研究を進めるか、他の病態モデル動物での検証が必要がある。今後は、他の病態モデル等によりチペピジンの統合失調症治療における3つの中核症状に対する作用機序を明らかにし、新たな治療薬の開発に繋げることを期待したい。
ES細胞由来マクロファージを用いたアルツハイマー病モデルマウスの細胞治療 熊本大学
池田徳典
熊本大学
松本泰彦
脳内アミロイドβ (Aβ)タンパクの蓄積が原因とされるアルツハイマー病に対し、ES 細胞由来マクロファージ (ES-MP)を利用した細胞治療の可能性について検討し実用化を目指した。アルツハイマー病モデルマウスの5xFADマウスに、ES-MPを静脈投与し、認知症状改善の有無についてY字型迷路試験にて非投与群との比較検討を行った。その結果、ES-MPを投与した5xFADマウスでは、認知機能が改善し、脳内可溶性Aβ減少とAβ沈着量低下を認め、ES-MPが有用である可能性が示された。一方で、脳内へ移行するES-MPはわずかであり、効率性に問題があった。そのため今後は、ES-MPが脳内へ最も効率的に移行するのに有用なケモカイン受容体の特定を行い、その受容体を発現したES-MPの作成を行う。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にES細胞由来のマクロファージの静脈投与により、モデルマウスの認知症状の改善と、脳内のアミロイドβの減少との可能性を示した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、他のモデル動物での検討、他の評価法での認知機能の検討、脳内のアミロイドβタンパク変化の定量的な時間経過の検討など十分なデータを積み上げる必要がある。今後は、静脈投与するマクロファージの、脳内への効率的な移行法の開発を進めると共に、アルツハイマー病に対するマクロファージ投与の有用性をより確かなものとすることが望まれる。
高機能分子デンドリマーを活用した新規マルチターゲット型アミロイドーシス治療薬の開発 熊本大学
城野博史
徳島大学
荒木寛幸
難治性アミロイドーシスは、アミロイド原因タンパク質の、①産生上昇あるいは変異タンパク質の産生、②立体構造の変化によるミスフォールディング、③アミロイド線維の組織沈着、の3つの重要なステップを経て進行することが知られている。本研究では、これらの3つのステップを同時に抑制しうる新規マルチターゲット型アミロイドーシス治療薬の開発を目的とし、高機能分子デンドリマー結合体が、アミロイド原因タンパク質であるトランスサイレチンの産生ならびにアミロイド線維形成を抑制しうることを実証した。今後は、最も高い治療効果を得る条件を検討し、モデル動物を用いた有効性の評価を継続して行い、本剤の新規治療薬としての応用展開を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に高機能分子デンドリマー結合体に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、新規アミロイドーシス治療薬として、未だシード、コンセプトの検証研究段階である。特に肝実質細胞に対する集積性を改良する必要がある。今後は、治療薬として開発する際に治験に時間を要すると思われるので、計画を十分に立てることが期待される。
H5N1新型インフルエンザに対する新規治療抗体の開発 熊本大学
桑原一彦
徳島大学
荒木寛幸
免疫原で用いたH5N1型ウイルス(Qinghai/1A/2005 clade 2.2)のヘマグルチニン(HA)のみならず3種類のクレードの異なる株のHAとの結合交叉性を有する複数のモノクローナル抗体を樹立し、そのうちの1種類のクローンがマウス感染実験でも中和活性を示すことを確認した。最低1種類の中和抗体の樹立を目標に研究開発を行ったため、90%は達成したと考えている。本研究開発で、これまでに報告がない「広範囲にH5N1型ウイルス株を認識することができるpan-H5治療抗体」を樹立でき、今後さらなる感染実験等の基礎データを積み重ねて製薬企業等との連携を図り、ヒト型化治療抗体として市場に出すことを目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。H5N1低病原性ウイルスの感染を阻止するモノクローナル中和抗体を1種類樹立できたことは評価できる。一方、技術移転の観点からはこの抗体の治療抗体としての有用性を示す必要がある。今後は、樹立されたモノクローナル抗体のH5N1型高病原性ウイルスへの効果を検証する必要がある。臨床応用のためにはヒト型モノクローナル抗体の作製が必要となる。そのためにもエピトープ解析が必要である。
硫酸抱合型尿毒症物質の肝産生阻害を機序とする腎障害治療薬物の効果検証 熊本大学
齋藤秀之
徳島大学
荒木寛幸
本課題では、尿毒症物質インドキシル硫酸の肝臓産生を阻害する薬物探索を企図し、インビトロスクリーニング系および急性腎障害モデル動物を用いて、シーズ薬物の選定基準となるデータの集積並びに腎保護効果の検証を目的とした。約180種の化合物についてスクリーニングした結果、10種の化合物に強い阻害効果が認められた。最も強い阻害効果を示した化合物Aについて精査した結果、腎障害動物において血中インドキシル硫酸蓄積の顕著な抑制並びに腎保護効果が得られた。本成果を踏まえ、化合物Aの化学的修飾(熊本大学薬学部・生体機能分子合成学分野との共同研究)による周辺(類縁)化合物を合成し、上記のインビトロスクリーニング並びに動物投与試験により、化学構造的に新規のインドキシル硫酸産生阻害薬・腎機能保護薬の探索を展開する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に新たな抑制分子を同定し、急性虚血モデルでの検証を行った点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、化合物A誘導体合成による知的財産権の取得が重要である。今後は、慢性モデルでの検証と安全性を検討する必要があり、腎障害抑止の薬剤としては病態発症後の改善効果を見る必要がある。
動脈硬化症を予防・改善する天然機能成分の作用機構の解析 熊本大学
塚本佐知子
徳島大学
荒木寛幸
Manzamine Aは、マクロファージの泡沫化を抑制しACATの作用を阻害した。そこで、高脂血症モデルマウスにmanzamine A を30 mg/kg/dayの量で3ヶ月間経口投与した。その結果、非投与群のマウスに比べて血中脂質濃度の低下が認められ、さらに動脈硬化部位が非投与群の半分の面積であった。したがって、manzamine Aは高脂血症および動脈硬化に対する改善効果を示したといえる。しかし、manzamine AはACAT-1とACAT-2を同程度の強さで阻害した。最近では、ACAT-2を選択的に阻害する薬剤がより有望であると言われているので、今後ACAT-2に選択性を示す誘導体の調製を目ざす。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。ApoE 欠損マウスを使用した動物実験から、Manzamine Aが血中の脂質である総コレステロール、LDLコレステロール、遊離コレステロール、トリグリセリドを有意に低下させることを見出し、Manzamine Aに脂質異常症を改善する可能性があること、動脈硬化病変の抑制に効果があることを動物モデルで証明したことは評価できる。一方、研究実施者自身が指摘しているとおり、Manzamine Aの細胞毒性の検討が急がれる。また、マクロファージの活性化状態の解析、動脈硬化部位におけるAGEsの蓄積状態の解析など、データの積み上げが必要と思われる。今後は、細胞毒性を確認しつつ、スクリーニングと動物試験を実施することが望まれる。
TRAF6を標的としたNF-κB阻害剤の開発と抗がん剤への展開 熊本大学
大塚雅巳
熊本大学
松本泰彦
本研究では、我々が開発したジスルフィド化合物SN-2の構造を改変し、TRAF6蛋白質の亜鉛結合部位に作用してIL-1刺激によるNF-κB活性化を低濃度で阻害する化合物を創ることを目指した。合成が難航したため十分な数の誘導体を創れず目標は達成できなかったが、化合物がTRAF6のリングフィンガードメインでなく、亜鉛フィンガードメインに結合するという作用機序を示唆する知見を得た。今後はこの知見に基づいて誘導体を設計し直し、阻害活性や、亜鉛フィンガードメインに対する特異性を向上させたいと考えている。その後に抗がん活性を細胞や動物を用いて評価し、抗がん剤へと発展させたい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。SN系化合物がTRAF6の亜鉛部位への関与が確認された点については評価できる。一方、ドラッグライクの化合物の分子設計及び合成に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、阻害機構に基づく阻害活性の強い化合物を合成できることが望まれる。
視神経保護を目的とした人工再構成リポ蛋白の最適化 熊本大学
林秀樹
熊本大学
松本泰彦
緑内障は日本の失明原因疾患第1位で治療薬も限られることから、新たな治療法の開発が切望されている。研究責任者はこれまでに、アポリポ蛋白(アポ)E含有リポ蛋白が視神経保護効果を発揮することを示した。本研究課題では、生体内でも強力な視神経保護効果を発揮するリポ蛋白の脂質組成の最適化と、点眼治療を可能にするリポ蛋白の作製を試みた。その結果、脂質組成の違いにより、培養細胞では保護効果が異なるものの、生体内では保護効果に違いはないことが明らかとなった。リポ蛋白の点眼投与では、今回の検討項目で網膜への到達は観察されなかった。以上より、本研究の達成度は約50%である。今後は、アポE自体の修飾やリポ蛋白の作製方法の改良により、点眼治療可能なリポ蛋白の作製を試みる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。in vitroでは脂質組成により神経保護効果が変化するが、in vivoでは変化しないという具体的な結果を得たことについては評価できる。一方、生体内でも強力な視神経保護効果を発揮するリポ蛋白の脂質組成の最適化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、「網膜疾患の点眼治療を可能にするDDSの開発」が成功すれば、大きなインパクトとなるので、神経保護作用に関して、in vitro と in vivoの相違の原因を明らかにする研究が望まれる。
M細胞抗原デリバリー分子を用いた経鼻粘膜HIVワクチンの最適化 熊本大学
三隅将吾
熊本大学
松本泰彦
本研究では、ワクチン抗原にTGDKを結合させた低侵襲性経鼻粘膜HIVワクチンを調製し、HIV初発感染部である膣粘膜に、より効率的にHIVを排除する免疫応答(抗CCR5 IgAおよび抗ENV IgA)を誘導することを目指した。経鼻からワクチン抗原の接種により、実際に膣部にワクチン抗原に対する抗体を誘導できることを初めて確認できた。今後、実施したすべてのカニクイザルに対して、HIVウイルスの感染を排除できる程度の粘膜免疫応答を効率よく誘導させるための抗原の加工、および投与デバイスの加工を行うと共に、実際にHIVウイルスを排除する効果があるか検証することで、実用化を目指したい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にカニクイザルを用いて、鼻粘膜ワクチンで抗体産生効果が観察されており、その点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、鼻粘膜ワクチンで得られた抗体の特異性の検討などが望まれる。今後は、早期にパートナー企業を見いだし、共同で開発を進めることが望ましい。
天然硫酸化多糖サクランを用いた抗炎症性被覆シート剤の開発 熊本大学
本山敬一
熊本大学
松本泰彦
創傷に対する治療は、従来のガーゼと消毒薬の治療法から、創傷面の再生組織を殺傷させないために消毒薬を用いず、創傷面を被覆・保湿させることで、自然治癒を促進させる湿潤療法へと移行しつつある。本申請課題では、消炎性を有する創傷被覆シート剤としての天然硫酸化多糖サクランの有用性評価を行った。我々はサクラン含有シート剤の作成に成功し、優れた強度および安定性を有することを見出した。また、サクランはアトピー性皮膚炎モデルマウスの創傷行動を抑制、抗炎症作用を有する傾向が示された。今後、抗炎症作用に優れるサクランシートの改良を行い、将来的には臨床試験を実施する予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、抗炎症作用の評価がほとんどできていないが、シート剤及び支持体を有するシート剤の調製に成功して、シート剤の形態も広がったことについては評価できる。一方、支持体を有するシート剤ができたことで開発ステップにつながる可能性が高まったが、特許出願に向けて抗炎症効果の評価行い、さらに抗炎症効果を高めるための技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、サクランの製造企業との連携により、地域で一体化した体制が構築されることが望まれる。
摩耗粉毒性を抑制する人工関節摩擦面の創製 熊本大学
中西義孝
熊本大学
本田一貴
人工関節から発生する超高分子量ポリエチレンの摩耗粉による生体反応を抑制するため、相手面摩擦材料であるCo-Cr-Mo合金の表面性状をナノメートルオーダーで創製した。その結果、従来の鏡面仕上げ処理と比較し、摩耗量の抑制と摩耗粉サイズの肥大化が実現し、マウス由来細胞による毒性試験でも、生体反応が抑制できる結果を明示することができた。この摩擦表面の創製技術、特に低摩耗化技術はポリマー/硬質材料の摩擦系で、水系潤滑・境界潤滑領域で効果的であり、工業部品への展開が容易でため、人工関節への適用のみならず、機械部品への適用を目指した研究開発へと発展させる に至った。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、 当初の目標は新しく創成された人工関節用摺動面により発生する摩耗粉が、生体細胞からのサイトカインの放出を低減することを確認することであったが、サイトカインの測定まではなされていない。しかし、その前段階である細胞培養の結果では、新しい摺動面から発生する摩耗分の細胞毒性は少ないことが、明示された。総摩耗量を減少させながら、摩耗粉を大きくすることは、一見矛盾し困難と思われるが、これを実現している技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、未完了のエビデンス作りはもちろんのこと、製品化に向けた実証実験が必要と思われるが、 企業との共同研究の契約も締結されたことから、次のステップへの可能性は高まり実用化が望まれる。今後は、細胞生物学に長じた研究者との共同研究を推進しされることが期待される。
ミクログリア関連疾患を標的とした細胞選択的膜透過キャリア分子の開発 崇城大学
國安明彦
徳島大学
荒木寛幸
細胞選択的膜透過性をもつ環状7-merペプチドをリード化合物とし、ミクログリア関連疾患の治療に役立つ新規DDSキャリア分子の作製に取り組んだ。その結果、リード化合物に比べ、水溶性が高く、かつミクログリア結合能を保持した新規ペプチドミメティック化合物を得た。本化合物は、in vivoでの評価はできなかったものの、細胞培養系においてミクログリア選択的に細胞内へ取込まれた。
今後、本化合物をDDSキャリアとして導入した薬物コンジュゲートもしくはリポソーム製剤の作製を行い、ミクログリア関連疾患である眼疾患および神経変性疾患への応用展開を目指す。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。申請者が研究過程で見出した細胞選択的に取込まれる「細胞選択的細胞膜透過ペプチド」をリード化合物として、細胞選択的な DDS キャリア分子を構築し、効果的 かつ安全な治療薬の開発を目指している点については評価できる。一方、 新たに合成したペプチドではミクログリアへの移行が観測されたが、in vivo 移行性の検討には至らなかったので、ミクログリア結合能を保持したD-アミノ酸置換親水性ペプチドに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、in vivoにおける細胞内移行性とミクログリア結合能を観察することが望まれる。
大腸癌・食道癌ハイリスク患者のスコア化による検出法の確立 九州大学
杉町圭史
九州大学
平田徳宏
本研究の目標は、消化器がん(大腸癌、食道癌)について発癌関連遺伝子多型の結果と生活習慣のアンケートをもとに大規模統計解析によって発癌関連因子をスコア化し、発癌のリスク評価しシステムを構築することである。我々は、先行研究によって集積した大腸癌患者と非癌健常者の3610名の血液から発癌関連遺伝子多型解析し、さらに生活習慣に関するアンケートを統計学的に解析した。疎超平面学習手法を用いて3610人の患者のデータを特徴ベクトル化し5回の交差検定を行うことにより、369個の特徴から13個の重みをもつ特徴を抽出することができた。次に、発癌リスク評価アンケートを作成するために369個の特徴の分類をすべて見直し作業を完了した。現在最終的なアンケート作成のための解析中である。本研究期間内に発癌リスクアンケート完成まで至らなかったが早期に作成する予定である。今後は実際の患者で前向き研究を展開するが大腸内視鏡のフォローなどを考慮すると5年単位の時間を要すると思われる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、大腸癌に関する患者疫学データを機械学習手法の一つであるSVMによる分類をとおして、13個の重みをもつ特徴を抽出した。また、大腸癌に関しては、発癌リスク評価アンケート項目の作成、発癌リスク評価システムの基盤システムを構築、臨床試験への準備など、課題が明確になっている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、大腸癌についての有向因子を抽出できているため、食道癌についても同じ進め方ができるのかどうかの検討が必要である。まだ時間はかかると思われるが、研究開発の継続により、技術移転が可能になり、実用化が望まれる。今後は、「大腸癌」5年間のコンホート研究の推進および「食道癌」についても目途が付けられることが期待される。
新規生理活性ペプチドの機能解析による創薬シーズとしての可能性の検討 宮崎大学
十枝内厚次
宮崎大学
新城裕司
グラニンスーパーファミリー(グラニン類)は、神経内分泌細胞の分泌顆粒形成において根幹となる蛋白群である。グラニン類は複数の生理活性ペプチドの前駆体となることから、グラニン類由来ペプチドの創薬シーズとしての可能性を検討した。申請者らのグループが同定したNERP-2は、糖尿病治療薬としての可能性を提示した。さらに3つのグラニン由来の新規ペプチドを同定し、2つに生物活性を認めた。2つのペプチドの一つは抗肥満薬として、一つは糖尿病治療としての可能性を見出した。今後は、製薬会社と協力して生物活性を持つペプチドをリードペプチドとして、新たな治療薬の開発に着手する予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。新規ペプチドとして、ENP8とENP9を、摂食抑制作用などを指標として同定し、その組織分布も解析されている点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、生理活性ペプチドの医薬品としての応用にはまだ時間がかかると考えられるが、受容体同定のためのストラテジーを複数用意するとより確実な進展が期待される。今後は、受容体を同定するのためのハイスループットな方法の検討が望まれる。
遺伝学的手法を用いた大腸菌O抗原型検査方法の確立 宮崎大学
井口純
宮崎大学
新城裕司
本課題では、従来の病原性大腸菌分類に利用されている血清学的手法に代わる、「新規・遺伝学的手法」を確立することを目標とした。網羅的な大腸菌O抗原合成遺伝子領域の塩基配列情報を基に、それぞれのO抗原型を特異的に判定できる162種類のPCR プライマーセットを開発した。さらに効率的な検出を可能にするために、上記プライマーセットを利用した1反応チューブに6から9種類のプライマーセットを含んだ20種類のマルチプレックスPCRキットを開発した。PCR法およびマルチプレックスPCR法の特異性は、大腸菌O抗原型全標準株(184株)を用いて確認した。今後は試薬・検査薬メーカーと商品化を目指した共同研究を行予定である。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、 大腸菌O抗原型全184種の検出にほぼ対応しうるプライマーセットの開発に成功しており、新規遺伝学的手法による大腸菌O抗原検査法が概ね確立できたものと評価される。既に本研究成果は試薬・検査薬メーカーとライセンス契約、共同研究契約にこぎつけており、技術移転につながる十分な研究成果が得られたものと評価できる。一方、技術移転の観点からは、 今後の研究開発に向けて探索段階から実用段階へと移行すべく取組みが図られており、的確な計画が示されている。 産学が共同して検査応用しうる開発ステップへと入っており、実用化の可能性も高くなったものと評価される。実際に食品衛生領域(現場)において検体から迅速検出に適用しうるか、今後検討を重ねる必要があるものと思われるが、実用化が望まれる。今後は、同様の手法を応用すれば、大腸菌に限らずゲノムが判明している主要なグラム陰性病原細菌に対する検査法が確立できると思われる。従って、そのような方面でさらなる研究展開が期待される。
PAC1シグナリングを標的とする新規の難治性疼痛治療薬の開発 鹿児島大学
宮田篤郎
鹿児島大学
遠矢良太郎
今日難治性疼痛患者の数は急速に増加し、新規疼痛治療薬の開発は喫緊の課題である。下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)が痛覚伝達に関与し、その特異的受容体PAC1の阻害により糖尿病性疼痛が改善することから、4種類の新規アンタゴニスト候補ペプチドを得て、他の難治性疼痛に対する効果の評価と鎮痛作用機序の解明を進めた。今後その評価と詳細なメカニズムの解明を通して、新規の難治性疼痛治療薬の開発を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。PACAPに絡む新規の疼痛・鎮痛メカニズムに注目し、キーになるPAC1受容体拮抗物質をラインアップし、糖尿病性および座骨神経部分結紮による痛みでの効果を検証し、その細胞内作用機構の解明を進めた点については評価できる。一方、新規PAC1拮抗物質候補の最終的な構造解析を完成させること、痛みは非常に複雑な現象であるので、応用展開の前段として多種類の動物モデルでの効果を検証すること、などデータの積み上げが必要と思われる。今後は、難治性疼痛の多様性に注目し、そのどれに有効な鎮痛薬となるかを常に考慮しつつ、応用展開に臨むべきである。
指伸展への促通機能を有する片麻痺親指機能回復訓練装置の開発 鹿児島大学
余永
鹿児島大学
中武貞文
促通反復療法では、片麻痺指の伸張反射を誘発し、自動的な随意運動を引き起こすことで促通効果を高め患者の意図した運動を実現する訓練を反復することで、指の機能を回復させる。まず、歪拡大メカニズム原理を基づき、指先および指根元の接触力の高感度高剛性な力覚センシング機構を原理開発・試作した。次に、高精度なパラレルリンク運動機構に基づき、親指の屈曲・伸展の運動平面に2運動自由度と手の掌平面と直交する平面に1運動自由度を対応できる片麻痺親指機能回復訓練機構と制御方法を原理開発・試作した。さらに、指の伸張反射を効果よく引起して機能回復訓練を行うときの訓練効果評価方法を開発し、試験と評価で有効性を検証していた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、装置の設計や訓練法については詳細に記述されており、試作した装置が、今後訓練に使用できると思われることは、評価できる。一方、片麻痺親指機能回復訓練装置の有効性については、臨床研究・試験なども通じて総合的に評価する必要があると思われる。今後は、リハビリに有用であると思われるので、評価を通じて抽出された課題に対して、さらなる改良が望まれる。
ムチン発現解析を応用した胆管癌の早期診断法の開発 鹿児島大学
横山勢也
鹿児島大学
中武貞文
未だ人類の手中にない胆管癌を、高度に発達してきた画像診断に、悪性度を推し量る「質的診断」を加味して、治療戦略を明確に立てられる診断システムを構築、さらには、発癌リスクの評価システムを構築することを目標とした。期間中に胆管癌組織検体においてムチン遺伝子のメチル化異常のプロファイルを構築し、胆嚢より採取した胆汁液におけるメチル化異常との相関関係を検討した。腫瘍由来のDNAを新規メチル化解析法であるMSE(Methylation Spacific Electro pholesis)法を用いて検出することで、難治性癌の代表である胆管癌のスクリーニングや発癌リスク診断に有用であると考えられる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、アッセイ法の感度・特異度等の有用性の評価がなく当初の目標は得られなかったが、DNAメチル化異常の検出を難治性がんのひとつである胆管がんの診断に応用する試みは評価できる。一方、DNAメチル化異常の検出をがん診断に応用する研究には様々な課題(解析検体、解析法、感度・特異度、がん種特異性など)を克服する必要があり、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、DNAメチル化異常のがん診断への応用を目指し基礎研究を含めた十分な解析を今後も進めていただくことが望まれる。
ムチン発現解析を応用した難治性スキルス胃癌の早期診断 鹿児島大学
米澤傑
鹿児島大学
中武貞文
内視鏡的治療の術中迅速転移診断における、確実な癌の深達度診断法の確立やリンパ節微小癌転移の有効な検出を目的とした。当該新規抗MUC1抗体『MUC1-014E』による染色は、サイトケラチン(Keratin-AE1/AE3、Keratin-CAM5.2)と同様に、低分化腺癌(por2)の癌細胞を効率良く検出できることが実証された。さらに、癌浸潤の深達度の判断に非常に有用であった。分子生物学的研究においても、MUC1分子のmRNAの発現状況をより正確に反映しており、MUC1遺伝子発現機構を正確に把握できた。今後は、適応可能な腫瘍性病変の範囲を拡大し、手術の際の切除断端評価に応用する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、当初に目標に掲げた数を大きく下まわる症例数での評価・検討に留まり、抗体(MUC1-014E)の有効性の実証は量的、質的に不十分であったが、胃低分化腺癌において、癌細胞を視認性良く検出できていることについては評価できる。一方、スキルス胃がんというきわめて悪性のがんの早期診断検査は、患者の生命予後を改善するために重要であり、医療的社会的ニーズは高いので、評価・検討に向け多数症例によるデータの積み上げが必要と思われる。今後は、がんセンターなど多数症例の収集が可能な施設との共同研究の実施をされることが望まれる。
マダニの生物活性分子(TBM)を用いた難治性原虫病の予防・治療開発 鹿児島大学
田仲哲也
鹿児島大学
中武貞文
トキソプラズマ原虫やクリプトスポリジウム原虫はヒトや動物に寄生し、深刻な疾病を引き起こす難治性の原虫病である。我々は難治性原虫病に有効な抗原虫分子を探索していたところ、マダニの自然免疫を担うであるディフェンシン様分子のペプチド部位に抗トキソプラズマ効果を見出した。しかし、このペプチドに対してクリプトスポリジウム原虫に類似したアイメリア原虫のオーシストについては予防効果が認められなかった。今後は当初の目標を達成するために、他のペプチド部位の検索も行い、クリプトスポリジウム原虫とマラリア原虫に対する防御効果についてin vitro、in vivoレベルで解析を行う予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。ヒトや動物に寄生し疾病を引き起こす病原虫の多くにはキャリヤーが存在する。キャリアーの自然免疫研究から病原虫防御剤を開発するという手法は、今後様々な場面での適応が可能と考えられ評価できる。一方、技術移転の観点からは、創薬方法的な考え方の、広範な特許出願を早急に行うべきである。キャリアー・免疫種・原虫の多様性、さらにヒトや動物への安全性確認など、本課題は幅広く展開する可能性を有している。基本特許出願後、早期の企業連携を実施することが期待される。
尿中マイクロRNA検出による尿路上皮癌診断(前向き試験) 鹿児島大学
榎田英樹
鹿児島大学
中武貞文
マイクロRNA(miRNA)は22塩基程の小さなRNAであり、ターゲットのmRNAに結合してその発現を抑制する。腫瘍特異的に発現が亢進するmiRNAは癌遺伝子的作用を有する可能性があるとされる。我々は臨床尿路上皮癌においてmiRNAのプロファイルを報告し、既に2つのmiRNA (miR-96, miR-183) は尿検体での検出が可能で、腫瘍マーカーとしての有用性を既に確認していた。今回、新たなmiR-Xについて肉眼的血尿を主訴とする外来受診患者において、尿中miRNA測定による尿路上皮癌の検出効率を前向き試験として実施し、腫瘍マーカーとして有用であることを確認した。既に特許の権利譲渡が成立したため今後は産学連携による実用化が期待される。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の目標であった尿中マイクロRNAの同定を利用した尿路上皮がんの診断法を確立し、さらに成果を特許化し既に企業に譲渡しており、順調にプロジェクトが推進されたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、尿路上皮がんの診断マーカーとして従来の細胞診を上回る可能性のあるmiRを同定しその有用性を示した。ただ、なぜ赤血球の混入からmiR-96、miR-183の検出には偽陽性率が高く、miR-Xでは影響がなかったのかを解明することで実用化が望まれる。今後は、尿に混入する血液の影響をどのように回避するかの技術開発が期待される。
がん細胞とがん関連マクロファージを同時に標的とする抗体医薬の開発 鹿児島大学
松山隆美
鹿児島大学
中武貞文
目標 葉酸リセプターα(FR-α)と葉酸リセプターβ(FR-β)に反応する抗ヒトFR-αβ抗体のがん増殖抑制作用を明らかにする。また、各種のがんについて、この抗体の反応性を明らかにする。
達成度 抗FR-α抗体と抗FR-βの抗体の併用によるがん増殖増強作用を示したが、ヒトマクロファージ産生マウスを作成できず、抗ヒトFR-αβ抗体のがん増殖抑制作用を示すことはできなかった。
抗ヒトFR-αβ抗体による卵巣がん、膵臓がん、肺がん、乳がんのがん細胞とがん浸潤マクロファージの反応性を組織像別に明らかにしたが、悪性中皮腫、悪性黒色腫、大腸がんついては十分な検討ができなかった。
展開 今後ヒト化抗体を作成し、FR-α発現がんへの臨床応用を目指す。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。ヒトがん細胞とマクロファージを同時に標的とする治療法の開発は大変興味深い。一方、ヒトがん細胞とマウスマクロファージ、およびヒト臍帯血由来マクロファージの混在する中での解析は困難なようで、当初の目標は完全には達成されていない。ただし、がんに対する効果を確認した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、すでにベンチャー企業等へ技術移転が決まっているようであり、産学協同の姿勢がとられている。今後は、臨床研究者とコラボレーションされることが期待される。
衝撃波処理による沖縄県産月桃からの精油抽出の高効率化 沖縄工業高等専門学校
嶽本あゆみ
琉球大学
玉城 理
衝撃波がもたらす瞬間的な高圧負荷は、独自の破壊作用により細胞内外の物質の行き来を容易にし、機能成分の高効率抽出を可能とする。沖縄県に自生する月桃は抽出効率が低い一方で、その芳香成分や機能性が珍重されている。本研究では抽出効率が低い一方で芳香成分や機能性が珍重される沖縄県に自生する月桃に対し抽出効率の向上評価と品質評価を行い、高効率生産技術の実用化を目指した。本研究により、精油蒸留水(フローラルウォーター, Essential Oil Water Extract)の芳香成分について成分比の変化ならびに含有成分種数の増加が確認された。さらに水蒸気蒸留副産物溶液に、高い抗酸化活性と衝撃波による抗酸化活性増加の結果が得られた。特に後者について、新規の素材創出への展開が期待される。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、月桃からの精油および精油蒸留水等の効率的な抽出法として技術をほぼ確立したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、月桃の乾燥度と精油の抽出効率の相関や原料の採取時期、スケールアップ方法を検討するなどでの実用化が望まれる。今後は、水蒸気蒸留副産物のポリフェノール成分の空気酸化による変質や重合等も考慮すると共に乾燥による成分ロスを防ぐことを目的に凍結原料についても検討されることが期待される。
実用化可能なカイコ無細胞タンパク質合成系の開発 沖縄工業高等専門学校
伊東昌章
久留米工業高等専門学校
三島淳一郎
これまでに、動物由来で最高レベルの合成量(30 μg/ml)にあるカイコ無細胞タンパク質合成系を構築した。しかしながら、使用器官の後部絹糸腺が脆弱で摘出が難しく、結果として抽出液調製に多大な労力を要し、実用化の障壁となっている。平成23年度に、セリシン生産に特化した新しいカイコ品種「セリシンホープ」のハイブリット種の中部絹糸腺を用い、0.21ng/mlと微量ながら無細胞タンパク質合成に成功し、抽出液調製の大幅な簡便化を達成した。今回は、抽出液作製に適するカイコの飼育日数、抽出液を凍結する工程の影響等の検討により、1.0μg/mlのタンパク質の合成に成功し、目標を達成することができた。また、これまでの成果をもとに特許を出願した(特願2013−230629)。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、カイコ幼虫の中部絹糸腺からの無細胞抽出液が高いタンパク質の合成能を持つことを実証したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、合成能の再現性やβ-ガラクトシダーゼ以外のタンパク質への展開の可能性と凍結の合成能への影響を確認するなどでの実用化が望まれる。今後は、凍結による合成量低下の克服と低コスト化などにより、既存の無細胞タンパク質合成に対する優位性を示すことが期待される。

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