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事後評価 : 【FS】探索タイプ 平成24年1月公開 - 無機化学分野 評価結果一覧

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課題名称 所属機関 研究責任者 研究開発の概要 事後評価所見
中温域燃料電池用プロトン伝導性電解質ナノ膜の技術開発北海道大学幅崎浩樹次世代中温域燃料電池用電解質として期待される、プロトン伝導性ZrO2-WO3ナノ薄膜の技術開発を行った。種々の組成のZr-W合金上にアノード酸化ZrO2-WO3皮膜を形成したところ、タングステン添加量を増大させるとプロトン伝導性が一層向上することが明らかとなった。また、このアノード酸化皮膜はプロトン伝導率の膜厚依存性を示し、伝導率が増大する遷移膜厚がタングステン添加量の増大によって厚膜側へとシフトすることを明らかとした。このZrO2-WO3ナノ膜をITO基板上に形成するとさらに一桁以上伝導率の向上し、電解質膜として有望であることが確認された。しかしながら、MEAとした場合、新たに界面抵抗を低減する必要性が明らかとなった。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。無機電解質薄膜の作製法とその特性評価、電池の作製に必要な薄膜の最適組成や膜厚などについては目標がほぼ達成されている。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けて研究を検討することが望ましい。
新規反応性ガスを用いた水酸化物薄膜のスパッタ成膜技術の開発北見工業大学阿部良夫反応ガスとして過酸化水素を適用したスパッタ法により、水酸化物薄膜を作製することを目的とした。市販の過酸化水素水を液体原料として用い、これから蒸発した過酸化水素と水蒸気の混合ガスをスパッタチャンバに供給した。金属ZrおよびNiターゲットをこの混合ガス中で反応性スパッタすることで、水和酸化ジルコニウム(ZrO2・nH2O)薄膜とオキシ水酸化ニッケル(NiOOH)薄膜を作製した。また、作製した試料の電気化学的特性を評価し、ZrO2・nH2O薄膜のイオン伝導性、およびNiOOH薄膜のエレクトロクロミック特性を確認した。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。過酸化水素水を用いて水酸化物薄膜のスパッタ成膜プロセスに成功しており、この研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けて研究を検討することが望ましい。
多様な炭素資源からの水素製造を指向した高表面積ペロブスカイト触媒の開発北見工業大学大野智也多様な炭素資源からの水素製造を指向した高表面積ペロブスカイト触媒の開発を目的とし、シリカナノ粒子表面へのペロブスカイト型酸化物(チタン酸バリウム)のナノコーティング技術の開発を行なった。その結果、二段階の液相反応を経ることで、目的としたチタン酸バリウムのナノ粒子へのコーティングが達成された。また得られた材料の表面積は従来の材料を超え、高表面積化に成功した。さらに、得られた材料をメタン水蒸気改質反応に適応したところ、報告されているNi/BaTiO3触媒のメタン転化率を大幅に超える特性が確認された。しかし現時点では使用温度に制限があるため、今後耐久温度の向上について検討を行なう必要がある。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。当初目標としていた高表面積触媒の合成に成功しており、さらに、その高い触媒活性を確認している。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けて研究を検討することが望ましい。
クロマト反応器を用いたバイオディーゼルの高効率合成と副生成物グリセリンの同時分離一関工業高等専門学校福村卓也バイオディーゼルの高効率合成法を構築すべく、固体酸である水素型イオン交換樹脂触媒を用いたモデル油脂であるトリアセチンとエタノールの回分エステル交換反応を行った。具体的には、反応挙動に及ぼす初期トリアセチン-エタノールモル比、触媒濃度、反応温度、初期グリセリン濃度について検討を行い、本反応系の機構の詳細について明らかにした。副生成物であるグリセリン濃度が高いと反応速度が著しく低くなったことから、効率的なバイオディーゼルの合成のためには、グリセリンを反応場から効果的に除去する技術の確立が必要であることが示唆された。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。反応解析から副生成物のグリセリンの影響が見出されており、この研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
α-γ弁別可能な新規シンチレータLiCAFの高品質化・大口径化技術の開発東北大学吉川彰研究目的として、中性子断面積の大きなリチウムを含んだシンチレータ結晶の高品質化・大型化とシンチレーション発光特性の違いを利用した信号波形処理法に基づくα線-γ線弁別が可能なLiCAFシンチレータの高品質化・大口径化を目指した。本研究は、熱中性子および熱外中性子に対し高い感度を持ちつつ、ガンマ線信号を除去可能な中性子検出器の実現に寄与する。 α線-γ線弁別が可能なCe:LiCAFの大口径化として、直径2インチ(50 mm)、長さ50 mmで、インクルージョン、クラック等の欠陥がない単結晶の育成に成功した。また、Eu:LiCAFに関しても、直径2インチ(50 mm)、長さ50 mmで、インクルージョン、クラック等の欠陥がない単結晶の育成に成功した。 高品質化として、賦活剤の均質分布のために二重坩堝法を用いた。また、組成的過冷却に起因するセル成長によるインクルージョンの制御することで品質が改善され、光学及びシンチレーション特性が向上した。期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。中性子検出器の商品化を目指して、その中核材料となる高品質、大口径のLiCAFの作製技術が確立できている。特許出願及び企業との連携を実施しており、市場調査を行い、実用化研究に入ることが期待できる。
「タングステンブロンズナノ粒子」の形態制御・透明赤外線遮蔽材料の開発東北大学佐藤次雄近年、省資源や省エネルギー、快適空間創製等の観点から、可視光透明性に優れた赤外線遮蔽材料が求められている。本研究では、ITO(スズドープ酸化インジウム)を代替可能な安価で高性能な赤外線遮蔽材の開発を目標として、エタノールー酢酸混合水溶液を溶媒とするソルボサーマル反応等によりタングステンブロンズ型MxWO3(M:アルカリIa族、IIa族、希土類等の金属元素、0<x<1)ナノ粒子を合成し、生成物の光化学特性の評価を行った。ソルボサーマル反応により、直径15 nm、長さ40-50 nmの高分散MxWO3ナノ粒子(M=Cs, K, Na)の合成に成功し、ITOより優れた赤外線遮蔽能を示すことを実証できた。期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。インジウムより資源的に豊富で安価なタングステンを原料として、ITOより赤外線遮蔽特性の優れたタングステンブロンズナノ粒子の簡便な合成方法の開発に成功しており、この研究成果を特許として権利化し、コーディネーターを通じて企業との連携を行い、実用化研究に入ることが望ましい。
減色混合による「色指示物質センサー」のユニバーサルデザイン化東北大学足立榮希色による目視センシングにおいて1&2型色覚者が識別容易になるような発色設計を行うためには、現状のセンシング色に加色し発色を制御することが1つの方法である(減色混合)。例えば、イムノクロマト法の金コロイドによる赤系指示色は青系指示色との減色混合によりユニバーサルデザイン化が可能であろう。そこで、大きさによって様々な発色が可能であるが形状不安定な平板状銀ナノ粒子を顔料として利用するため、銀ナノ粒子安定化技術を開発した。これまで、塩素イオン存在下数分で変色していたが、90分以上安定に保つことが可能となった。これにより様々な発色が可能な平板状銀ナノ粒子を、減色混合のための顔料として利用する道筋をつけた。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。銀ナノ粒子の安定化に成功しており、処理期間の短縮や信頼性が確立できれば、高級顔料や抗菌プラスチック製品へ応用が期待できる。今後は企業と連携して効率の良い製造方法など実用化に向けた研究をすることが望ましい。
多段カラム陰イオン交換精製法による次世代ULSIゲート絶縁膜用高純度ハフニウムの作製東北大学打越雅仁本研究開発は、次世代ULSIゲート絶縁膜用高純度Hfを多段カラム陰イオン交換精製法により作製する事を目的に実施された。具体的には、Zr濃度を90massppm未満、その他の不純物の合計を10massppm未満である高純度Hfを、大量生産を視野に入れたパイロットスケールの精製装置で作製する。多段カラム陰イオン交換精製により得られた高純度HfO2に含まれるZr及びその他の不純物の濃度はそれぞれ60massppm、40massppmであった。その他の不純物は後工程である水素プラズマアーク熔融により容易に10massppm未満に減じる事が可能である。従って、本研究の主要な目的は達成出来た。今後は、高純度HfO2を還元して得られる金属Hfの純度を評価し、高純度Hfを原料としたHfO2薄膜の作製と電気的特性の評価を行う。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。Hf中のZr不純物濃度を目標値を超える1/300以下に低減でき、カラムのスケールアップを実現するための知見を得たことは大きな成果であり、この研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、研究開発のスピードアップを図ることが望ましい。
構造を持つ高強度光反応場を用いた「サブナノ合金微粒子」の作製東北大学中村貴宏本研究開発では光照射だけでサブナノメートルオーダーの合金微粒子を作製すことを目的に研究を行った。申請者は金・白金・銀イオンを含む水溶液やこれらの混合水溶液を対象とした高強度レーザー照射により、粒径が2 nm程度で単分散の金・白金・銀ナノ粒子やそれらの合金ナノ粒子の作製に成功した。一方で、極短パルスレーザーの横断面偏向分布を制御し、焦点付近に構造を持つ光反応場を形成することで、作製される粒子のサイズをさらに小さくすることが可能であることも示した。本申請研究ではこれまでに得られている知見を元に、構造を持つ光反応場をもちいてサブナノ合金粒子の作製を目指した。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。コントロールしたレーザー光照射が、粒子生成速度、粒子径に影響を与えることを明らかにしている。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
希土類窒化ケイ素系高耐久性白色LED用蛍光体の開発東北大学末廣隆之従来、高温構造材セラミックスの粒界構成相として見出されてきた希土類窒化ケイ素系物質は白色LED用蛍光体ホストとして有望な候補であると考えられるが、大気下での取扱が困難な希土類窒化物の使用を前提とする高窒素含有組成の粉末バルク合成と蛍光体ホストとしての特性評価はこれまで未踏の領域となっていた。本研究では気相還元剤を用いた独自の還元窒化プロセス(GRN)に基づく直接合成手法の確立により、白色LEDの高出力化や発光特性の多様化を指向した産業ニーズに対応する新規希土類窒化ケイ素基蛍光体の開発を目標とし、従来材料に比較して高温安定性に優れ、照明用途における演色性向上に有利な近紫外-青色光励起黄橙色蛍光体(La,Ca)3Si6N11:Ce3+を開発した。期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。希土類窒化ケイ素固溶体粉末を独自の手法である還元窒化プロセスにより合成し、期待した耐熱性、発光効率、広い発光スペクトルを得たことは大きな成果であり、早期に研究成果を特許として権利化し、コーディネーターを通じて企業との連携を行い、技術移転に向けた実用化研究に入ることが望ましい。
ナノファイバー/層状組織で強化された高導電性Cu-Zr合金の溶解凝固・加工プロセス技術の確立東北大学木村久道長尺な線材を作製するための溶解凝固・加工プロセス技術の開発を行い、直径12mmのCu-Zr二元合金鋳造材200gの表面を0.5mm切削加工後、伸線加工することによって、直径100μmで1.0kmの線材を作製することが出来た。この引張強度と導電率(%IACS)は、それぞれ700MPa、83%IACSあり、目標としたCu-Be合金(商用のCu-Ni-Be合金(C17510)など)のそれらを上回っていた。これらは、本研究の目的をほぼ達成したことを示している。今回、長尺の高強度・高導電性Cu-Zr合金線材が開発出来たことで、小型内視鏡や超音波診断装置用の細線同軸ケーブル、超小型高トルクのステッピングモーター用磁石線材などへ応用が可能となった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。高導電性をもつCu-Zr合金線材の開発により、高トルクモータへの応用が期待できる。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
再処理施設汚染モニタ用新薄膜シンチレータの開発東北大学柳田健之当該研究開発の目標は、BGO比二倍以上の発光量を持つ薄膜シンチレータの開発およびα線リアルタイムモニタとしての実証である。様々な添加剤を微量添加した結果、二価もしくは一価陽イオンを添加した ZnO において、BGO 比二倍以上の発光量を達成した。ガンマ線ノイズとの切り分けを調査した結果、最適な膜厚は 20-30 ミクロンであった。さらに既存の核医学用撮像検出器を改良して、241Am密封α線源を用いて実証試験を行ったところ、サブミリ程度の解像度を持ったα線リアルタイムモニタリングを行えることを実験的に確認した。期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。今後、企業との共同研究開発の中で、ZnOシンチレーターの寿命特性や生産コストなどの検討が進み、実用化されることが十分期待できる。
環境に優しいソフト溶液プロセスによる導電性酸化亜鉛ファイバー粒子の創製東北大学殷しゅう環境に優しいソフト溶液プロセスを用い、導電性酸化亜鉛粒子の創製を行い、粒子サイズとアスペクト比が精密に制御された導電性酸化亜鉛ファイバーの合成を行い、粒子形状、ドーパント種類と量の制御を行い、透明導電性材料であるITOの代替材料としての導電性酸化亜鉛粒子の創製の可能性を検証した。板状粒子の他、アスペクト比が50以上のファイバー粒子の合成に成功した。優れた圧粉電気抵抗を有すると共に、薄膜を形成した場合では約80%以上の可視光透明性を実現した。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。ファイバ状酸化亜鉛の合成は評価できる。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けて研究を検討することが望ましい。
超微細LSI製造向け層間配線用タングステンCVDの基礎実証山形大学廣瀬文彦超LSI製造用金属膜形成プロセスにおいて、層間配線およびプラグ配線に用いられるW製膜技術の開発を行った。本シーズは、塩化Wを含むプラズマを原料とすることで、デバイスへのダメージの原因となるフッ化水素の発生を効果的に防止することができる。本研究では、抵抗率10μΩcm以下、成膜速度100nm/min以上、アスペクト比20のトレンチ部への埋め込み95%以上を目標に進め、抵抗率と成長速度についてはほぼ目標を達成することができた。埋め込み特性については、アスペクト比5のトレンチで60%埋め込みとボトムアップ形成を実証することができた。今後、ボトムアップの安定プロセス条件の抽出研究を進め、大型実証機開発へと展開する。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。塩化タングステンを含むプラズマを原料とすることで、デバイスへのダメージの原因となるフッ化水素の発生を効果的に防止できている。特許出願及び企業との連携が実施されており、市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
汎用な電解液中での陽極酸化法によるバルブ金属の自己組織化構造の精密制御福島工業高等専門学校酒巻健司ハロゲンフリーの汎用な電解溶液中での陽極酸化法により、Ti金属上に自己組織化ホールアレイナノ構造体(50-200 nmの多孔質構造)が短時間で構築され、単年度での到達目標を達成した。室温で形成されたホールアレイナノ構造体はアナタース型酸化チタンで、大気中での低温焼成により、構造を保持した結晶性の向上が見出された。電解液量や処理前のTi表面形状、表面積、電極間距離等の制御が安全・簡易にできる電解セルの開発により、トップダウン的にナノホールアレイ構造体が試料全体に均一に形成されることから、ナノ機能がバルク性能にわたるスケールメリットの実用性を示した。さらに、Fe金属上にも、自己組織化ホールアレイや可視光応答型ヘマタイト構造の構築を実証した。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。チタン材料の陽極酸化による自己組織化された酸化チタン膜の調製法を確立したことは評価できる。特に陽極酸化の条件を詳細に検討し、低電流+低電圧法を複合化したコンバインドモード陽極酸化を開発したことは検討の結果が伺える。復興後、研究成果を特許出願し、実用化に向けた活動に入られることを期待する。
化学分析による水道管の老朽化診断手法の開発茨城大学藤田昌史水道管の更新計画を合理的かつ効果的に進めるために、水道管ネットワークから採取した水道水を対象に化学分析を行い、老朽化状況を診断する手法を開発することを目指した。その手始めとして、腐食の現況を把握するための指標の検索を行った。浄水場、配水池、配水管など合計6地点を対象に現地調査を実施した。採水した試料のICP分析を行い、得られたデータをもとに主成分分析を行ったところ、第一主成分はK、Na、Mg、Ca、Siの影響を受けていたが、第二主成分は唯一Feの影響が顕著であった。また、流下にともない懸濁態のFe量の増加が確認され、特に腐食が懸念されている地点では著しく高いFe量が検出された。そこで、XAFS解析によりFeの形態を調べたところ、主要な成分と考えられたFe3O4とα-FeOOHの存在割合が、地点間で異なることが示された。これは、Feの挙動が反映された結果と考えられるが、現段階ではその理由までは整理できなかった。しかし、得られた結果を総合すると、老朽化を診断するうえで、Feは極めて有用な指標であることを見出すことができた。期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。水道管の老朽化診断に対してFeの量と組成形態が有用であることを明らかにしている。研究成果を特許として権利化し、コーディネーターを通じて企業との連携を図ることで実用化研究に入ることが期待できる。
超低ヤング率・高強度チタン合金の開発筑波大学金へよん本研究では、Ti-Nb-Zr系超弾性合金に浸入型元素である酸素や窒素を添加することで、低ヤング率を維持しながら高強度化を実現し、新たな超低ヤング率・高強度生体用合金を開発することを目標とした。Nb、Zrおよび酸素や窒素の濃度を系統的に変化させた合金を作製し、機械的特性の評価を行った。酸素および窒素の添加は超弾性回復歪みの増加、平均ヤング率の低下および強度の上昇に非常に有効であった。特に窒素の添加が酸素の添加に比べ強度の上昇に有効であった。窒素添加材において、Nb濃度やZr濃度および熱処理温度を調節することで、平均ヤング率が骨と近い超低ヤング率が実現できた。今後、歯列矯正ワイヤ、骨接合材、人工骨への応用に向けて更なる特性を目指す。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。生体組織に近い力学的特性(低ヤング率、高強度)を有する合金の開発は意義もあり、目標値をクリアーした合金開発に成功しており、この研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けて研究を検討することが望ましい。
硝酸溶液からのロジウムの抽出分離系開発独立行政法人産業技術総合研究所成田弘一工業的価値が高くかつ最も高価な白金族金属であるロジウムは、抽出不活性な金属として知られており、特に硝酸溶液からの抽出分離は極めて困難である。本研究では、タイプの異なる2種類(イオン対型及び配位型)の抽出剤を混合した抽出系による分離実験を行った。その結果、チオジグリコールアミド/テトラ-n-オクチルアミン混合抽出剤が、ロジウム抽出率(硝酸濃度7 mol/L:75%、10 mol/L:89%)、抽出容量(9.6 g/L)及び硝酸に対する安定性に関して目標値をほぼ達成できることが分かった。今後は、硝酸-塩酸系(王水系)、塩酸系への適用性を検討することで、今回得られた混合抽出剤の実用性、汎用性の向上を目指す。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。硝酸溶液からのロジウムの抽出分離は目標値を達成している。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けて研究を検討することが望ましい。
発光色が可視域で可変可能な高輝度環境半導体量子ドットの開発独立行政法人物質・材料研究機構白幡直人循環型社会の構築に向け、半導体量子ドットへ要求される条件は (1)高輝度、(2)可視域における発光色の可変、(3)環境・生体に対し無毒、なことである。本研究では、サイズと表面の精密制御を通じて、従来よりも遙かに高輝度な環境半導体ナノ粒子を開発することに成功した。今回達成した発光波長域は、紫-緑(380-520 nm)であり、発光色を可変できる。さらに、発光効率を当該波長域でサイズ依存性が知られているCdSやCdSeナノ粒子の市販品と比べると、いずれの波長帯においても数倍以上の高い輝度を示す。形態が粒子状であるため表面修飾が容易で油溶性も水溶性にも可変可能である、等の優位性を有する。期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。独自に開発したレーザ化学合成法によって、サイズのよく制御されたシリコンナノ粒子を作製し、従来困難とされた鮮明な発光色の分離に成功している。早期に研究成果を特許として権利化し、企業と連携して実用化研究に入ることが望ましい。
新合成法によるオキシ窒化物光エレクトロニクス材料の開発宇都宮大学手塚慶太郎蛍光体として、アルミニウムやケイ素を含むオキシ窒化物 (陰イオンとして、酸化物イオンO2-と窒化物イオンN3-を含む化合物) が注目されている。しかし、これらのオキシ窒化物は、高温と高圧の窒素またはアンモニアの条件下でないと合成できない問題点があった。申請者は、これらを解決するのに、(1) 低温・低圧という穏やかな条件、(2) 新規オキシ窒化物が合成可能、(3) 金属の酸化数を制御可能,の三つの利点を持つ新しい合成法を提案し、その検証を行った。当初目標とした成果が得られていないように見受けられる。今後、技術移転へつなげるには、今回得られた成果を基にして研究開発内容を再検討することが必要である。50種類以上の組成種で研究を実施し、新規化合物の発見、組成の生成傾向が把握されたことは成果であり、この研究成果を特許として権利化し、企業と連携した研究を検討することが望ましい。
高効率水素分離・製造のためのサブナノメートル細孔を有する多孔質セラミックス薄膜の開発宇都宮大学松本太輝本研究は、高純度水素分離膜あるいは「メンブレンリアクター」を用いた水素製造の技術に、研究代表者のこれまでのゾル-ゲル合成に関する成果を導入し、従来のパラジウムに替えて、セラミックス(金属酸化物)をベースとする新しい水素選択分離膜材料を創出しようとするものである。22年度に行った研究開発により、アルミナ管状支持体上に多孔性ジルコニア薄膜を合成することに成功し、選択分離性評価法の一つである水/IPA分離試験において明らかな分離能が観察された。今後、細孔径制御や膜圧制御といった合成条件の最適化を行い分離能と熱安定性をさらに向上させることによって、目標とする多孔質セラミック水素選択分離膜材料が創出できるものと期待される。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。高い水素分離機能をもたらすプロセスについて幾つかの条件を見出し、今後の研究につながる方向性が得られている。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
新しい合成法による新規酸化物蛍光体材料の開発宇都宮大学単躍進近年、電気エネルギーによって直接光を発するLEDの実用化や、様々の受像機(CRT, FPD, PDP)の出現および機能性インキの開発に従って、蛍光体の需要が増え、市場も拡大し続いている。しかし、現在使われている蛍光体は、主に希土類やガリウムなどの希少元素を用いるものであり、資源の点から、または希少元素の抽出コストの点から問題がある。われわれは、普遍的に存在するアルミニウムを用いて、独特の溶液法により、蛍光を示すアルミナの合成を見出し、安価な原料と比較的低温(~720℃)の加熱よりアルミナ蛍光体の合成法を確立した。得られたアルミナ蛍光体は、280 nmの励起光により、強い青色発光(発光波長は約400 nm)を示し、燐光も有している。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。安価で高輝度のアルミナ蛍光体の新しい合成法を確立しており、企業と連携して市場調査を行い、技術移転に向けた実用化研究に入ることが期待できる。
窒素ドープ多孔性カーボンブラックの量産法の開発群馬大学白石壮志電気二重層キャパシタ(EDLC)の欠点であるエネルギー密度を改善するためには、窒素ドープされた多孔性カーボンブラックが電極主材として有効である。本研究課題では、カルバミン酸アンモニウムを用いて、窒素ドープ多孔性カーボンブラックを乾式で安全に製造できる量産法の確立を目的とした。(1)1000 m2/gの比表面積を有し、かつ1%以上の窒素がドープされたカーボンブラックを実現する、(2)窒素ドープ多孔性カーボンブラックを用いたEDLCについて容量は20F/g以上、3.2V充電後の容量維持率は90%以上に改善する、の二点を目標と設定し、開発期間内に両者とも達成した。今後は、産業界との共同研究によって本手法を発展させ、窒素ドープ多孔性炭素の製造をスケールアップしたい。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。カルバミン酸アンモニウムを用いて従来の方法と比較して簡便かつ安全な窒素ドープ法を確立しており、スケールアップも期待できる。特許出願及び企業との連携を実施しており、市場調査を行い、実用化研究に入ることが期待できる。
炭素繊維材の建設機械への適用に関する基礎的研究ものつくり大学北條哲男本研究では、建設機械のクレーン支持索(ペンダントロープ)に高機能な炭素繊維材を適用するうえでの基礎的な課題を検討する。鋼製ワイヤロープで構成されたペンダントロープを軽量で高強度な炭素繊維材に替えることにより、建設機械の性能向上・省エネルギー化と支持索交換に伴う安全性を図ることを目的とする。 クレーン支持索に適用するためには、ペンダントロープの接合部の構造形状や使用上の耐久性の課題の解決を図る必要がある。本研究では、本体と一体化した新たな接合部の構造形状の検討、使用時に生じる可能性のある振動の対策案の把握などを行い、実用化の見通しを得た。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。基礎的なデータが得られており、部材との接合部の設計等に生かすことで実用化が期待できる。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けて研究を検討することが望ましい。
環境水及び排水中の微量重金属のオンサイト高感度高選択的簡易分析法の開発埼玉大学渋川雅美環境水および工場排水中の微量亜鉛とカドミウムを対象とし、これらを正確に測定できる簡易比色分析法の開発を目的として研究を行なった。それぞれの金属イオンを環境基準値以下の濃度で簡易吸光光度計により正確に測定できることを目標とし、このための分離濃縮法としてポリエチレングリコール(PEG)/硫酸ナトリウム水性二相抽出法を選択した。また、15分以内で測定できることを目指し、水性二相抽出の高速化を検討した。その結果、適切な抽出剤を用いて選択的に抽出分離と濃縮を行ないうること、また5-Br-PAPSにより目標の濃度レベルで定量できることを見出した。また、熱対流を用いることにより水性二相系の分相を速めることが可能になったが、高分子量のPEGでは目標の時間内での測定ができていない。今後は、高度な濃縮を必要とする系についての測定の高速化と高感度化に向けて改良を行う予定である。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。有機溶剤を用いない水系二相分配系で、金属イオンの分配とその発色を確認できている。企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究開発に入ることが望ましい。
ゲート型吸着材の高性能二酸化炭素吸着ヒートポンプへの応用千葉大学加納博文効率的な吸着ヒートポンプの開発と地球温暖化防止に貢献するために最も重要な課題となる、良好な二酸化炭素吸着材を調製し、その基礎的性質を評価した。、異なる種類のゲート型吸着材は既存の調製法によって合成した。既存の吸着ライン装置を用い、熱量計に試料を組み込み、吸着熱および脱着熱の評価を行った。本研究を進めることで、ゲート型吸着材のCO2吸着・脱着等温線を取りながら、微分吸着熱および微分脱着熱の同時測定を可能とした。このデータから二酸化炭素分子あたりの熱の出入りと、吸着材あたりの熱の出入りを評価できた。また、単位時間当たりの吸着熱(すなわちパワー)を見積もり、吸着ヒートポンプとするための技術的な基礎データとした。このように二酸化炭素吸着ヒートポンプとしての効率を考える上で、重要な基礎データを得た。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。二酸化炭素吸着ヒートポンプとしての効率を考える上での重要な基礎データが得られている。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
強酸を用いた新蓄電材料の化学的合成と蓄電装置への実用化研究芝浦工業大学松本聡絶縁油は炭化水素系の成分でできているが、これに硫酸を加えて化学反応を起こすと黒色のアモルファス状の炭素が遊離することが、本研究室において確認された。これをゲル状とした物質を用いてコンデンサを試作した。静電容量を実測した結果、従来の経験からは想像し得ない大容量の蓄電性能を持つことが判明した。今回の試作品は、試作段階であり試作条件や測定条件により、静電容量が大きく変動したが、市販されている電気二重層キャパシタを上回る大容量の可能性が実験的に見出された。また、動作電圧も一段で3ボルトまで良好な特性を示すことが実験で確認され、従来の電気二重層キャパシタよりも高電圧で動作できることが確認された。動作電圧については、さらに高電圧化の可能性があるが、今回の研究期間内ではこの確認には至らなかった。なお、試作段階において、電極に金属を用いた場合、金属は酸により腐食が認められ実用化には多くの困難が伴うことが予想された。このため、酸に腐食されにくい電極として同じ炭素系の電極に切り替えたところ良好な結果が得られるようになった。また、キャパシタとして実用化するためにはセパレータの開発も重要であるが、今回はガラス系材料を使用した。これらの基本構造の確立により実用化に対する技術課題解決の目処がついた。今後は、さらなる最適な材料の探索、試作品に対する動的特性の調査、更なる高電圧領域における動作特性の確認、ならびに試作品の大容量化のための構造最適化に関する研究を進め、実用化を目指したい。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。低コストな原料と簡単な方法で遊離炭素を合成する方法を見いだし、蓄電材料に応用できることを実証している。出願された特許を核として、企業と連携して市場調査を行い、、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
電気的な外部刺激により色調の変わる粘土鉱物材料の開発首都大学東京高木慎介これまでに、JSTシーズ発掘研究を通じて、周囲の外部刺激(溶媒や蒸気)により、色調が変化する材料を見い出してきた。環境に優しい材料を用いた興味深い機能性物質の発見であったが、これらの外部刺激(溶媒や蒸気)は、あまり汎用性の高いものではなく実用化には至っていない。本課題ではより応用性の高い外部刺激に応答して色調の変化する材料の開発を目指した。具体的には、電気的な外部刺激、温度刺激に応答する材料を開発し実用化の可能性を探った。そのための基本材料となる鉄を骨格内に含有する粘土鉱物を設計し、その合成に成功した。鉄元素を、酸化還元剤により処理することで、可逆な酸化還元反応が可能であることを明らかとした。現在、この粘土鉱物と色素の複合体形成挙動について、さらに検討している。色素の種類によって、吸着配向変化挙動が異なることを見出し、電気的な刺激により色調の変化する材料開発の足がかりを得た。粘土骨格内の鉄元素を酸化還元することで、色素の配向変化に基づく色調変化を目指す。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。電気的刺激により色調が変化する粘度鉱物材料は独自性が高く将来性も覗える。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けて研究を検討することが望ましい。
基板表面静電気量制御によるグラフェンの選択的転写技術の開発東京大学長汐晃輔グラファイトの単層であるグラフェンは、Siの200倍もの移動度ゆえ世界中でトランジスタ応用が期待されている。高移動度はテープによりバルクグラファイトから基板へ転写するという原始的手法によって達成されるが、面積が小さく位置制御できない。一方で、スケールアップが容易な化学気相成長では結晶性が悪く高移動度は得られていない。我々は原点に戻り、個々のデバイスに十分な大きさのグラフェンを指定位置へ配列する転写技術を確立することを目標に、基板表面処理により大型グラフェンを転写することに成功してきた。その結果を踏まえ今回、基板表面の静電気量を制御し大面積グラフェンの選択的転写技術の確立を目的とする。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。当初の目標であるグラフェンの転写機構の解明に関してはある程度達成されている。研究は実用化に向かっており、今後はグラフェンの転写技術の精度向上に期待する。研究成果を特許として権利化することが望まれる。
層状複合酸化物を用いたディーゼルパティクレイト同時除去可能なNOx浄化触媒の探索東京都市大学宗像文男本課題では、ディーゼルエンジンから排出される粒子状物質を比較的低温で酸化除去するNOx浄化触媒として貴金属を含まない (Ln, A)3 (Mn, Fe)2O6-δ(Ln=La,Ndなど、A=Ba,Sr、δは酸素欠損量)層状ペロブスカイトを複合化することにより、新規貴金属フリーNOx浄化用触媒の実用化を目指した。本研究での目標は1)貴金属を含まない複合酸化物の元素の組み合わせ最適化と、2)粒子状物質を還元剤とし、NOxと粒子状物質を同時除去できる触媒の開発であり、その結果、上記層状ぺロブスカイトを用いることにより、NOxと粒子状物質の同時除去反応が確認された。さらに、ガソリンエンジン用NOx浄化触媒への適用の可能性も示唆され、将来はプラグインハイブリット自動車を含めたあらゆる内燃機関を搭載した次世代自動車等に用いることのできる理想的な排ガス浄化技術すなわちNOx直接分解触媒への適応も考えられる。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。DPを還元剤として、貴金属フリーの新規触媒を用いて、NOxとDPの同時除去を実施した。新たな自動車の排ガス処理技術としての実用性もある。今回の研究成果を生かし、さらに周辺特許を検討すると共に、企業と連携して実用化に向けた研究開発を進めることが望まれる。
透明性/柔軟性/難燃性に富む有機-無機複合フィルム東京農工大学敷中一洋本課題では高い割合で無機成分を含有した有機-無機複合フィルムについて難燃材料への利用可能性を示すことを目的とした。具体的には1.フィルムの大面積化/厚み増加。2.フィルムのプラスティックスへの付着。3.フィルム及びフィルムコートプラスティックスの難燃性評価。を行った。結果フィルムが燃焼前後で自立膜として存在し得るだけの厚みを得る事が出来、かつフィルムによる表面コートを達成した。フィルム自体が炎/熱を遮蔽する性質を持つ為、フィルムコートにより滴下物の抑制等プラスティックスの難燃性向上に寄与した。本結果を元に有機-無機複合フィルムの難燃材料への展開が期待される。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。表面コート法によるさまざまな樹脂への難燃性付与技術の確立は工業的メリットがあると思われる。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究開発が望まれる。
シリコンナノ粒子の大量合成とその応用独立行政法人国立国際医療研究センター山本健二本研究は、生体に利用可能な、安全で安心なシリコンナノ粒子の開発し、その100ミリグラム規模の大量合成と応用可能性を示すことを目的として研究を行った。シリコンナノ粒子として、疎水性ナノ粒子および親水性ナノ粒子についてそれぞれ大量合成装置を用いた合成および精製方法の確立を目指した。合成装置の開発及び表面修飾反応条件の改善により当初の10倍の収量を実現し、その値は、目標の50ミリグラムに近い収量であった。精製法については、疎水性、親水性それぞれについて、一定の方法を確立し、本課題の大目標に関しては、達成することができた。今後、研究体制を維持しつつ、応用法の開発に努めたいと考えている。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。シリコンナノ粒子を50mg程度合成し、大量合成法の足がかりを確立しており、この研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
低融点ガラスを添加したMn-Co-Ni系スピネル単一相酸化物未焼結体からなるサーミスタ素子の試作横浜国立大学横山隆本研究では、Mn-Co-Ni三成分系立方晶スピネル単一相酸化物の未焼結粉末に種々の割合で低融点ガラスを添加した後、800℃以下の各温度で焼成して素子を作製し、電気的特性とその安定性について検討することを目標とした。結果として、得られた素子のサーミスタ特性は市販品のサーミスタ素子と同等であることが明らかとなった。また、ガラスを7 wt%以上添加することで、素子に十分な強度が得られることが判明した。さらに、素子の導電率の変化率は±1 %以内と非常に安定していることも見出した。これらの内容は、当初の目標を十分に達成するものである。未焼結体酸化物にガラスを添加することで、十分な強度をもち、市販のサーミスタ素子と同等の特性が得られたことは、省エネルギーの観点からも有用な方法であり、今後発展していくものと考えている。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。サーミスタ素子を作製するための焼成温度が800度であり、従来の温度1400度比べて著しく低い条件で成功しており、この研究成果を特許として権利化し、コーディネーターを通じて企業との連携を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
流動接触分解プロセスでの高選択的プロピレン製造のためのゼオライト触媒の開発横浜国立大学窪田好浩MSE骨格をもつAl含有MCM-68ゼオライトを固体酸触媒とする、長鎖パラフィンの流動接触分解での低級オレフィン、特に需要の高いプロピレンの高選択製造を目指している。流動接触分解のモデル反応としてヘキサンのクラッキングを取り上げ、10種類を超える様々なゼオライトを固体酸触媒として試してきた。本研究では、Al-MCM-68触媒の活性点となるAl含有量を制御する調製方法を探索し、プロピレン収率の向上を目指した触媒開発を進めたところ、Si/Al比50以上になると炭素析出を十分抑制でき、高いプロピレン収率が得られることがわかった。今後は炭素析出の更なる抑制のため、ゼオライト触媒粒子の外表面活性点の選択的な被毒効果を調べ、高効率プロピレン触媒の開発を進める予定である。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。ゼオライト中のAl含有量を制御し、プロピレン生成の選択性について当初目標の50%が達成されており、この研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
ヘテロエピタキシャルダイヤモンドによる高信頼性電気化学電極の作製青山学院大学児玉英之本研究開発ではボロンドープヘテロエピタキシャルダイヤモンド電気化学電極を作製し、その性能評価を行った。硫酸水溶液のサイクリックボルタモグラムから、一般的な多結晶ダイヤモンドと同様なボルタモグラムが得られ、電気化学電極として用いることが可能であることがわかった。電極面内で複数の測定箇所で測定した結果、多結晶ダイヤモンドは場所によってボルタモグラムが大きくばらつくのに対して、ヘテロエピタキシャルダイヤモンドを用いた場合、ほとんど違いはなく、非常に再現性の高い電極であることがわかった。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。ボロンドープしたヘテロエピタキシャルダイヤモンドをCVD法により作製し、電気化学用の電極材料として有用であることを見出している。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
セルフクリーニングと細胞培養基板応用を目指した新規ブルカイト薄膜の開発東海大学冨田恒之本研究課題では、従来用いられていたアナターゼ型二酸化チタンを超える光親水化速度をもつ新規ブルカイト型二酸化チタン薄膜の開発を目指した。グリコール酸チタン錯体を、酢酸ナトリウムやオレイン酸ナトリウム共存下で水熱処理することでブルカイト粒子を単相で合成した。得られた粒子をスピンコート、フローコートによってガラスおよびプラスチック基板に塗布し、加熱処理することでブルカイト膜を作製した。ガラス基板上に作製したブルカイト膜はアナターゼを超える極めて速い親水化速度を示した。また、ヘキサンを分散溶媒としてポリイミド基板にブルカイト膜を作製することに成功した。ガラス基板と比べその光親水化速度は遅かったものの、紫外光照射によって超親水性を発現することを確認した。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。ポリイミド基板上へのブルカイト膜作製に成功し、目標の濡れ性改善、親水化速度の向上及び大型基板の作製を達成している。出願された特許を核として、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
低温駆動型室内空気浄化用の新規ナノハイブリッド固体触媒東京工業大学谷口裕樹現在、活性炭などの吸着剤により、揮発性有機化合物(VOC)の除去が行われている。しかし、吸着量には制限があり、高濃度、或いは長期間のVOC除去には破過現象がおこってしまい、効果的ではない。そこで、VOCを室温近傍での温度で酸化分解して無害化する触媒を見出すことを目的に研究を行った。本研究課題では、V2O5・ブチルメチルイミダゾリウム塩ハイブリッド型固体触媒が120℃で触媒活性を示す知見を踏まえ、金属活性種、触媒微粒子のサイズ効果の検討を行った。これまで駆動温度を検討した触媒は金属担持量が少ない触媒であり、金属担持濃度を上げることにより、VOCの一種であるスチレンを60℃で80%以上分解させることに成功した。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。ナノハイブリッド固体触媒により、効果的にVOCを酸化分解させる新技術として期待できる。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けて研究を検討することが望ましい。
色素増感型光触媒膜を用いたゼロバイアス可視光水分解システムの開発新潟大学八木政行エネルギー・環境問題を背景に次世代エネルギー供給源として可視光水分解システムに大きな期待が寄せられている。申請者は高い光触媒活性を示すメソポーラス酸化タングステン(WO3)膜を合成し、コバルト触媒を電解質水溶液中に存在させることによりWO3電極の酸化的腐食が著しく抑制され、高活性が長時間保持されることを見出した。WO3を用いて水の可視光分解を達成するためには、原理的にバイアス電圧が必要である。WO3光触媒膜の技術移転において、このバイアス電圧の軽減は重要であり、ゼロバイアスの可視光水分解システムは革新的である。本研究では可視光増感型光触媒アノードを開発してゼロバイアスの可視光水分解システムの創生を目指す。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。無機化合物半導体を積層する系で水の可視光分解に対して成果を得ており、この研究成果を特許として権利化し、コーディネーターを通じて企業と連携を行い、実用化に向けて研究を検討することが望ましい。
摩擦撹拌接合法の拡張展開によるNi基超合金高温部材損傷部の修復長岡技術科学大学岡崎正和摩擦撹拌接合法の拡張適用によって超合金部材補修の新手法となることを探求した。すなわち、Ni 基超合金改質に使用可能と思われる金属合金群(全 4 種類)を補修用材料とし、被補修材料にはNi 基超合金 IN718 を選定し、(1)摩擦撹拌接合の際のキーとなる条件の物理的指標の明確化とその適正値(領域)提示、 (2)補修部位の材料学的キャラクタラーゼーションの調査、(3)非補修部位と比較した補修部位の強度の調査、などを通じてこの手法が新補修手法として期待できる潜在能力があることを示した。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。放電コーティング法と摩擦撹拌接合法を組み合わせる表面改質手法で、当初設定した目標のレベルの疲労強度を達成できる可能性を示している。従来技術では補修が難しい超合金部材の補修技術として期待できる。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
難分解性医薬品類で汚染された下水の光触媒併用型マイクロバブル法による浄化技術の開発長岡工業高等専門学校村上能規医薬品は人間には欠かすことのできないものである。しかし、これらが不用意に病院等で廃棄された場合、生体への作用を持つ特性が故に、下水処理場においても分解されないまま河川に放流され、生物濃縮を受けた結果、環境破壊を起こす可能性がある。しかし、その廃棄量は微量であるため、通常の下水処理のように濃縮後、化学および 微生物処理をするのが非常に難しい。本課題においては直径が10μm以下のマイクロバブル(気泡)と酸化チタン光触媒を併用することで、マイクロバブルと光触媒の相補効果を誘 起し、完全分解能力を持ち、かつ、安価で維持費のかからない医薬品類を含む汚染水処理技術の開発を目指した。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。光触媒とマイクロバブルの相乗効果が期待できる。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
高導電性チタン酸リチウムナノ負極材料の開発福井大学荻原隆本研究は、リチウムイオン電池用炭素負極の充放電時の課題であるSEI形成と格子膨張による劣化を解決するために噴霧熱分解法により高導電性チタン酸リチウムナノ負極材料を開発し、1C充放電時で170mAh/g、1000サイクル後の放電容量維持率90%、10C充放電時で150mAh/gを示すことを目標として研究を行った。チタン酸リチウムの粒径を100nmまでナノサイズ化すると共に添加した炭素導電剤の最適化を行うことで、上記の目標を達成した。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。目標とした電気容量、サイクル寿命の高導電性チタン酸リチウム負極材料が得られている。研究成果を特許として権利化し、コーディネーターを通じて企業連携を強化し、実用化に向けて研究開発のスピードアップを図ることが望ましい。
ナノめっき水素吸蔵合金を利用した水素貯蔵体の作製福井大学瀬尾利弘Mg含有超格子系水素吸蔵合金(Mg系MH)の微粉砕による10μm程度の粒径に揃えるプロセスおよびその微粒子上に電気めっきによりNiおよびNi-PTFE複合皮膜を作製するプロセスを確立した。400℃以下のホットプレスによりNi-PTFE複合皮膜により被覆したMg系MH微粒子を成形するプロセスを確立し、成形体の加工性を評価、水素貯蔵体およびニッケル水素二次電池負極材料としての基本的な性能を確認した。特に、ニッケル水素二次電池の負極として本成形体が利用可能であり、かつ電極として従来のペースト式電極よりも高性能であることを明らかにした。今後サイクル寿命等の確認を行った上で燃料電池用水素貯蔵体として製品化を目指す。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。水素吸蔵合金微粒子の作製およびその上へのNi、Ni-PTFEメッキに成功している。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けて研究を検討することが望ましい。
傾斜鏡型浮遊帯域法による大口径化技術の分解溶融型化合物への展開山梨大学綿打敏司シリコン等工業化されているバルク単結晶材料は、調和溶融型化合物が圧倒的に多い。これは、調和溶融型であれば大口径化が容易な引き上げ法やブリッジマン法が適用できるためである。こうした手法での育成困難な分解溶融化合物単結晶の場合、浮遊帯域溶融(FZ)法など育成可能な手法では大口径化が困難なため工業化されていない。本研究では、調和溶融するルチル(酸化チタン)単結晶の大型化に有功であった独自技術の傾斜鏡型FZ法を分解溶融型化合物単結晶に適用し、その大口径化を目指した。従来法で6mmφが限界であったランタン系銅酸化物超伝導体を目標に極めて近い11mmφにまで大口径化した。一層の大口径化に必要な改善点についても明確化できた。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。11mm径の単結晶の作製に成功しており、この研究成果を特許として権利化し、企業との連携によって実用化に向けて研究開発のスピードアップを図ることが望まれる。
高品質グラフェンを用いたベンダブル透明伝導膜の開発信州大学キム・ユン・アム本研究ではグラフェンを用い、液晶ディスプレイや太陽光パネルに用いられている酸化インジウムスズ(ITO)では不可能であるベンダブル透明伝導膜の合成を目指す。しかし、現在の金属薄膜より成長させたグラフェン透明導電膜は多くの問題点(欠陥及び転写)を抱えており、産業化が期待されるグラフェン固有の物性値には達していない。これまでに申請者らは安価で高純度、高品質グラフェン(幅20-300nm, 2-40層)の製造に成功した。そこで本研究ではこの高純度、高品質グラフェンを利用し、高度な分散技術および異種元素ドープによる高電気伝導性のグラフェン膜技術を確立し、従来のグラフェンでは難しかった抵抗(80 Ω/sq)と可視光透過率(85%)を併せ持ったベンダブル透明導電膜の開発に挑戦した。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。成膜が可能であることが実証されており、特性の向上に期待したい。研究成果を特許として権利化し、課題を明確化すると共に、企業との連携を検討することが望ましい。
廃棄ポリ塩化ビニルから陽イオン交換樹脂への再生技術研究信州大学三島彰司当課題は、ポリ塩化ビニル(以下、PVC)を脱塩素して硫酸処理することによって、陽イオン交換樹脂に転換する技術開発である。PVCから陽イオン交換樹脂へ転換する基礎的技術は確立しているものの、陽イオン交換樹脂の諸性能は不明であるので、本研究開発期間では、種々の性能試験により、陽イオン交換樹脂の特徴を明確化することを試みた。その結果、PVCから調製した樹脂は、金属イオン、塩基性化合物、VOC類を吸着できるスルホン化炭素質固体であり、熱的に安定な固体酸としても機能することが明らかとなった。現状の廃棄PVCを埋立処理する方法に替えて、安価でしかも耐熱性の優れた陽イオン交換樹脂へ再生するという新規な技術を移転することが今後の展開である。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。ポリ塩化ビニルを脱塩素して硫酸処理することによって、陽イオン交換樹脂に転換し、陽イオン交換樹脂の特徴や機能を明確化している。特許出願にも意欲的であり、コーディネーターを通じて企業との連携を行い、、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
CFCを用いた地下水流動経路分離型年代測定・解析法の開発信州大学中屋眞司最近の50年内に涵養した地下水の流動経路を分離し、経路の循環時間を求めるために、地下水中のクロロフルオロカーボン類(CFCs)の濃度を測定し、CFCsが溶解した時点の大気中CFCs濃度をヘンリーの法則を用いて求め、CFCs観測時間記録に照合することによって年代を決定する実用的な測定システムを研究開発した。酸素と水素の安定同位体比を用いて地下水流動経路を分離し、CFCs年代トレーサーと組み合わすことで循環時間、流速を求める手法ができた。しかし、過大なCFCs濃度を示す地下水が全体の60%で測定され、課題が残った。本手法は特定の環境下では有用であるが、汎用性の点を考慮すると達成度は中程度であった。今後、本成果を十分生かし、汎用的な地下水流動経路分離型年代測定法を目指し、技術開発を展開する。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。研究テーマの社会的な期待度は高く、クロロフルオロカーボンによる地下水年代推定精度は当初の研究目標を達成している。今後、研究成果を特許として権利化し、企業と連携して汎用的な地下水流動経路分離型年代測定法を目指し、実用化に向けた研究を行うことが望ましい。
軽質炭化水素を用いた高付加価値芳香族の高効率合成触媒の開発岐阜大学宮本学安価で安定供給可能な軽質炭化水素の芳香族化において、付加価値の高い芳香族であるパラキシレンを選択的に合成できる触媒開発を目的とした。軽質炭化水素の芳香族化で高い芳香族選択性を示すGa含有MFI型ゼオライト(GaMFI)の外表面を不活性なMFI型ゼオライト(silicalite-1)で被覆することにより、生成したキシレン中のパラキシレン比率(パラキシレン選択性)の大幅な向上(90%以上)を達成した。今後、触媒構造や反応条件の最適化により、パラキシレン選択性および収率のさらなる向上が期待できる。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。当初目標のパラキシレン選択率95%を上回る触媒を合成することができたことは評価できる。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けて研究を検討することが望ましい。
紫外光を利用した無触媒脱硝法の実用性評価岐阜大学神原信志紫外光利用無触媒脱硝装置の実用性評価を行った。選択式触媒脱硝装置の1/2のコストで装置製造ができることを目標とし、装置性能の目標を「700℃での脱硝率80%以上」とした。反応温度やアンモニア濃度、モル比、酸素濃度を変化させて、紫外光で励起したアンモニアが最も反応選択性が高くなる条件を探索した。紫外光照射装置へのアンモニア供給濃度1.0%、NH3/NOモル比1.5、酸素濃度8.3%で700℃での脱硝率85%を達成した。これらの実験結果を通じて、実用装置設計のための評価式を得た。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。エキシマランプによる高濃度アンモニア脱硝試験では、脱硝率、装置コストについて、当初の目標を達成している。コーディネーターを通して企業との連携活動を強化し、市場調査を行うと共に実用化の研究開発を進めることが望まれる。
マイクロ波水和反応を利用したメートル級大型セラミックス部材成形技術の開発名古屋工業大学白井孝マイクロ波による水和反応促進作用を利用したセラミックス大型部材のバインダーレス成形技術の開発を行った。粉体表面反応層の制御やマイクロ波反応場の最適化技術の構築に成功し、大型部材成形時におけるハンドリングに耐えうる成形体強度を達成した。今後は本研究開発にて構築したマイクロ波局所反応制御技術を基に地球環境保全を目指した次世代産業技術の創生を目指す。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。新規な接合法によるセラミックスの大型部材化に関する基礎的技術が確認された点で、当初の目標がほぼ達成されている。研究成果を特許として権利化し、コーディネーターを通じて企業と連携して市場調査を行い、実用化研究を検討することが望ましい。
車載用NOxセンサの検知極材料の開発(財)ファインセラミックスセンター上田太郎排ガス中に存在するO2と比較して十分大きなNO2応答を示す電流検出型ジルコニアセンサ用電極材料の開発を目標とした。ペロブスカイト型酸化物La1-xSrxMO3(M=Co, Mn, x=0, 0.2, 0.4, 0.6)の合成を行い、これらを検知極としたセンサの応答特性を評価・検討した。その結果、Mn系の場合に比較的良好なNO2応答を示し、LaサイトのSr置換によってNO2に対する電流応答値が増大することが分かった。SN比はLaMnO3の場合に従来の約2倍の値を得ることができた。今後は、酸素空孔へのガス吸着特性、電極作製方法の検討を行い、高NO2応答と低O2応答性を両立可能なセンサ作製手法を開発したい。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。SN比の改善が必要であるが、低価格で高性能な車載用NOxガスセンサの実用化につながる可能性が十分覗え、この研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
二液噴霧法による微細配線パターンの作製愛知県産業技術研究所吉元昭二本研究では、回路基板等の微細配線形成技術について、現在のフォトリソグラフィー技術とエッチング技術を併用して作製する煩雑な工程をより簡素化できる技術の開発を目的に研究を行った。その結果、ポリエチレンテレフタレート(PET)基材に銀及び還元剤を含む二液を同時に噴霧し、基材上で起こる還元反応を利用することで簡便に銀の微細配線パターンを作製する方法を開発した。この方法は加熱処理を一切必要とせず常温下で銀析出からパターン形成までを行うことが可能である。本研究で開発した方法を用いることで、ライン/スペースで 100/100μm 以下、ライン厚はおよそ 200nm のパターンが作製可能であることが分かった。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。新しい簡便な微細配線パターンの作製技術として今後の展開にも期待できる。研究成果を特許として権利化し、企業と共同して市場調査を行い、研究開発のスピードアップをすることが望ましい。
ショットブラストによるめっき前処理技術の開発愛知県産業技術研究所山口敏弘本課題では、ショットブラストによる前処理で作製しためっき皮膜が、従来の前処理による皮膜と同等以上の耐食性、密着性を有することを目標として研究を行った。まず、前処理条件を検討した結果、対象材にめっき皮膜を生成させることができた。得られためっき皮膜について、塩水噴霧による加速腐食試験と冷熱衝撃による密着性試験を行ったところ、耐食性は若干改善を要するが、密着性は充分であることが判明した。ショットブラストによる前処理は、繁雑な従来の前処理工程と比較して簡便で低環境負荷な技術である。密着性は良好であるため、耐食性を改善することで、より低環境負荷な代替技術としての普及が期待できる。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。従来の前処理法に比べて簡便で低環境負荷の前処理技術を提案し、実用化の可能性を示している。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
熱間発泡技術を利用した水質浄化材の開発愛知県産業技術研究所竹内繁樹水に浮遊して水中のリン酸を吸着する水質浄化材の開発を目指した。開発の目標として、かさ比重0.9以下、リン酸吸着性能 12gP2O5/kg 以上を設定した。リン酸吸着機能を付与するためカルシウム成分を配合したカルシウム-SiC 添加ガラスカレットでは、水酸化カルシウム配合量 1%、840℃、保持時間 0.5h で得られた焼成体のかさ比重は 0.8、飽和リン酸吸着量は 3.6gP2O5/kg であった。カルシウム-助剤-SiC 添加ガラスカレットでは、水酸化カルシウム配合量 5、10%、900℃、保持時間 0.5h で得られた焼成体のかさ比重はそれぞれ0.5、0.6、飽和リン酸吸着量は 4.2、4.7gP2O5/kg であった。この結果から、さらにリン酸吸着性能を向上させるためには、カルシウム源の選定等が必要と考えられる。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。リン酸吸着性能の向上、発泡制御の克服に期待が持てる。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けて研究を検討することが望ましい。
燃料電池用無機-有機ハイブリッド型電解質膜の開発愛知県産業技術研究所梅田隼史本研究では、固体高分子形燃料電池用の無機-有機ハイブリッド型電解質膜の合成と評価を行った。本研究の電解質膜は無機骨格を有するのに加え、安定性の高いホスホン酸基を導入するため 100℃以上の中温域で動作可能な固体高分子形燃料電池へ適用できる可能性がある。 過去の成果で得られている無機-有機ハイブリッド型電解質膜を今回改良し、その膜を用いて膜電極接合体を作製した。単セルとして発電試験をしたところ、80-140℃の温度域で燃料電池として機能することを確認し、目標値を達成した。今後は、膜の更なる改良(薄膜化、低湿でのプロトン伝導性の向上)および膜電極接合体の作製方法の最適化により電池出力向上を図ることが必要である。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。無機-有機ハイブリッド膜の開発により、目標の出力密度を達成している。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、研究開発のスピードアップを図ることが望ましい。
X線照射による紫外線励起型蛍光特性を付与した可逆性着色ガラスの開発愛知県産業技術研究所福原徹紫外線励起による蛍光特性のある透明ガラスで、X線照射により濃く着色して蛍光特性が無くなり、加熱すると元の蛍光特性に戻るという特徴をもつことを目標として研究した。その結果、Li2O-ZnO を含む透明ガラス4gに希土類酸化物としてEu2O3、Tb4O7をそれぞれ0.3g添加すると特に良い蛍光特性を示し、X線を照射すると濃く着色して蛍光特性が消失し、200℃で加熱すると元の透明ガラスに戻ることが分かり、ほぼ目標どおり達成した。実用化の見通しとしては、現在到達した物性では蛍光発光を利用した表示板などには適応可能であると考えているが、希土類添加量を低減する技術を開発して低コスト化することが必要である。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。蛍光特性と消色・復元は数値目標を達成している。今後レアアースの使用量低減や実用化に向けてはコスト改善が必要と思われるが、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けて研究開発のスピードアップを図ることが望ましい。
樟脳の熱CVDによる透明導電膜の研究開発中部大学梅野正義樟脳(カンファ)は、分子構造:C10N16Oで2つのメチル基(CH3)と炭素の6員環と5員環をもっているため、メタン(CH4)を原料に用いる場合に比して、200℃低温化した基板温度800℃で、良質なグラフェン膜を得ることができ、5㎝×5㎝フレキシブルプラスチック基板に、グラフェン膜を作成でき、シート抵抗100オーム/□および可視光透過率85%を得ることができ、透明電極として、十分に使用できることを示した。 また、マイクロ波励起表面波プラズマCVDではさらに300℃低温化した500℃でも良いグラフェンの成膜ができることを明らかにした。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。当初に設定された目的は、面積、電気伝導度、光透過率などの数値において十分に達成されている。良質で大面積なグラフェン透明導電膜の成膜技術が確立できると、ITO代替としてインパクトも大きい。今後は企業と連携して特性を更に向上させると共に、大面積化や信頼性を含めた実用化研究が望まれる。
希少金属レス準結晶型水素吸蔵合金の開発独立行政法人産業技術総合研究所松本章宏固相合成により作製したTi-Zr-Ni系準結晶に関し、NiのCo、Fe置換とY添加による準結晶の相安定性を明らかにした。目標とした水素放出温度100℃以下は実現できなかったものの、先記材料設計により水素放出温度を大きく低下できることがわかった。今後は、得られた成果に基づき、材料設計の精緻化を図ることにより、目標達成ならびに技術移転へと展開を図りたい。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。Ti-Zr-Ni系の水素吸蔵合金のNiの一部をFeで置換し、併せて、Yを添加することにより水素放出温度の低下と準結晶相の安定を得ている。研究成果を特許として権利化し、企業と連携した研究を検討することが望ましい。
マグネシウム合金上への高耐食性超はっ水皮膜の開発独立行政法人産業技術総合研究所石崎貴裕本研究では、マグネシウム合金上へ超はっ水性の耐食性皮膜を形成させることを目的として研究開発を行った。本研究では、溶液プロセスによる2つのアプローチを試みた。1つめのプロセスでは、超純水中にマグネシウム合金を浸漬させ、加熱処理後に疎水性の有機単分子膜を被覆した。2つめのプロセスでは、硝酸セリウム溶液中にマグネシウム合金を浸漬させ、その後、疎水性の有機単分子膜を被覆した。いずれのプロセスでも、皮膜表面の水滴接触角が150°以上の超はっ水表面を形成することに成功した。また、いずれの皮膜も臨界剥離荷重値が50mN以上になり、良好な密着性を示した。これらの皮膜の耐食性を塩水噴霧試験により評価した結果、皮膜表面は9以上のレイティングナンバであり、高い耐食性を示した。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。微細かつ緻密な凹凸構造皮膜上に疎水性有機単分子膜を被覆させることで目標特性を達成している。また、技術的課題も明確にしている。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けて研究を検討することが望ましい。
優れた冷間成形性を示すMg-Zn-Ca合金押出し材の創製独立行政法人産業技術総合研究所千野靖正カルシウムを微量添加したマグネシウム合金押出し材の機械的特性と組織・集合組織の関係を調査した。特定の操作条件で押出しを実施した当該合金には、底面の一部が押出し方向に対して30~40°傾く、特異な集合組織が発現した。また、特異な集合組織を有する押出し材はアルミニウム合金(5052-0合金)に匹敵する高い延性(引張り延び:27%)を示した。Electron Back Scattering Pattern(EBSP)法を用いた結晶方位解析の結果、当該合金に発現した集合組織が、微量の希土類元素を添加したマグネシウム合金押出し材に現れる<11-21>//ED集合組織と同種であることが判明した。また、特異な集合組織の形成が、押出しに伴う再結晶粒の生成と密接に関係することを明らかにした。期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特許出願及び論文発表も計画されており、今後の研究で商用Mg合金以上の強度が得られれば実用化の可能性大と考えられる。コーディネーターを通じて企業との連携を行い、研究のスピードアップを図ることが望ましい。
新規三元系セラミックス薄膜の低温合成技術の開発独立行政法人産業技術総合研究所中尾節男新規三元系セラミックスとして、MAX相の一つであるTi3SiC2に着目した。アークガンを用いて、基板にパルスバイアス電圧を印加し、500℃以下の低温でMAX相Ti3SiC2薄膜の合成を目指した。作製した膜はいずれもアモルファス構造であった。この膜を真空中で熱処理したところ、500℃以上ではあるが結晶化することがわかった。また、基板バイアス電圧が高いほど、結晶化領域の面積割合が大きくなることもわかった。今回、500℃以下で合成するという目標は達成できなかったが、今後は、基板バイアス電圧以外の作成条件も最適化し、さらに低温でのMAX相の合成を進めていく。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。アークガンを用いて作成したTi3SiC2膜は、目標値は達成していないが、熱処理温度を低温化できる成果が得られており、この研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けて研究を検討することが望ましい。
ミリングナノ複合体粒子をベースとする中温作動燃料電池用コンポジット電解質シートの開発豊橋技術科学大学松田厚範本研究開発により、「150℃以上の無加湿条件下で100mWcm-2以上の発電性能」ならびに「熱的安定なMEAの作製」といった当初の技術目標を達成した。なかでも、電解質中のミリングナノ粒子とポリマーマトリクスの組成比や電極触媒層における構成材料の最適化を試み、この独自に作製したMEAを用いた燃料電池発電実験では、「160℃の無加湿条件下で350mW cm-2以上の最大電力密度が得られ、当初の技術目標を大きく上回る非常に優れた発電性能」を実現したことが特筆される。この結果は、ミリングナノ粒子がポリマー樹脂の性能増大に有効であることを示すものである。既に企業との共同研究を実施しており展開が期待される。期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。すでに企業との共同研究を実施しており、早期に研究成果を特許として権利化し、技術移転に向けた実用化研究に入ることが望ましい。燃料電池用と共に、リチウムイオン電池、色素増感太陽電池などへの応用展開の可能性もあると思われる。
固体高分子形燃料電池カソードにおける金属酸窒化物触媒の開発豊橋技術科学大学千坂光陽固体高分子形燃料電池カソードにおける非白金触媒として、ハフニウム酸窒化物担持カーボン触媒を、含浸法により作製したハフニウム酸化物担持カーボンをアンモニア雰囲気下で熱処理(窒化処理)して合成した。特に窒化処理温度・時間が酸素還元反応(ORR)活性に与える影響を明らかにした。ORR活性はこれらの増加により向上し、窒化処理温度に最も依存した。本実験条件下では、標準水素電極に対し、最高0.78 VのORR開始電位が得られた。目標値よりわずかに低いが、白金担持カーボン触媒の0.96 Vまで0.18 Vに迫る値である。当初計画に盛り込んでいない、出発原料・合成方法を検討した結果、活性向上の指針も得られ、今後は指針に基づく目標値達成が十分に期待される。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。含浸法で作製したハフニウム酸化物担持カーボンを窒化処理し、窒化処理条件が活性に与える影響を解明しており、この研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
環境調和元素を用いた抵抗変化メモリ材料の開発名古屋工業大学横田壮司安全かつ高いクラーク数を有する元素で構成される酸化物を作製し、抵抗変化メモリ材料としての可能性を探査した。次世代メモリ材料として、1高い抵抗変化量2速いスイッチング速度の2点を達成目標とした。作製した試料は5Vで150 %程度変化させることに成功した。速度においては、10Vで約50 nsecでスイッチングさせることに成功した。また、高い抵抗変化には、試料結晶格子内の酸素の存在状態が大きく寄与しており、速度には、抵抗スイッチングに寄与する層厚に寄与していることを明らかにした。今後は、これらの結果をもとに概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。環境に適した元素から構成される酸化物を用いて、新規性のある抵抗変化メモリーを試作し、実用デバイスにつながる可能性を示したことは成果であり、この研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、開発のスピードアップを図ることが望ましい。
交流高電場印加によるセラミックス電極・電解質接合体の開発名古屋工業大学中山将伸本研究開発では、酸化物の固体電解質を用いた全セラミックス型・リチウムイオン電池を作成し、交流電場を印加することで粒界・界面抵抗を制御し電池特性を向上させることを目指した。LiFePO4, Li5La3Ta2O12, Li4Ti5O12をそれぞれ、正極、電解質、負極として全セラミックス電池を組み立てた。この電池に交流電場を制御することで粒界・界面抵抗が1/3程度減少することを観測した。また、従前では220℃で充放電していた電池が、150℃下でも充放電サイクルを示すことが分かった。粒界・界面抵抗は印加する交流電場の周波数、振幅電圧、時間に対して敏感であり、粒界・界面抵抗が増大する場合もある。再現性も50%程度であり、粉体の混合状態やモルフォロジーの精密制御が必要であると考えられる。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。交流電場を印加することにより、放電容量が3倍向上したことは評価できる。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けて研究を検討することが望ましい。
高強度アルミニウム合金切削屑の固相リサイクル再利用技術名古屋大学金武直幸航空機産業に多用されている高強度アルミニウム合金(7000系の超々ジュラルミン)は、素材の80%以上が切削屑として多種合金と同様に廃棄されている。本研究では、この切削屑を原材料と同等の材質を有する同種合金に再生して自動車部品等の再生素材として提供できる技術の確立を目指した。そのために、強ひずみ加工法である圧縮ねじり加工による固相リサイクル技術の可能性を検討した。その結果、200~470℃の加工温度範囲で切削屑を固相のままバルク化できることが確認でき、固相リサイクル技術の実用化の可能性を実証できた。また、成形体の室温引張試験でも20%以上の伸びを示す延性を確認することができ、再生素材の二次加工(鍛造加工など)の可能性も十分に期待できる。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。航空機産業で切削屑として大量に出る高強度アルミニウム合金を新しい強ひずみ加工法で再生素材としてリサイクルできる可能性が高まった。研究成果を特許として権利化し、コーディネーターを通じて企業と連携して市場調査を行い、実用化研究を検討することが望ましい。
土壌汚染物質の分散係数とKnudsen拡散係数の測定方法名城大学日比義彦乱さない土試料の屈曲度を考慮した分子拡散係数とKnudsen拡散係数および分散長を求めるために、乱さない土試料を収納できるようにカラム実験装置の改良とカラムの試作を行った。千葉県千葉市稲毛区で採取したシルト混じり砂または細砂をカラム内に格納する実験を行った。カラムと試料のクリアランスにおけるガスのバイパス状の流れが当初問題となったが、このクリアランスに適切な材料を詰めることにより防ぐことができた。最終的に、カラム内にガスを注入してトレーサー試験を行うことができた。土中の体積含水率が前記のパラメーターに影響することが既存の研究で分かっている。そこで、今後の課題としては、土中の体積含水率を測定できるようにカラムを改良する予定である。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。適用が想定される土壌を限定することで、それらに対応可能な技術に発展できる可能性がある。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化を検討することが望ましい。
液体炭酸ガス/メタノール混合溶媒中の炭酸ガスの電気化学的還元三重大学金子聡大気中CO2を分離回収するために、これまでに数多くの分離プロセスが開発されているが、物理吸収法は吸収液を繰り返し使用することが可能であるため、幅広く用いられてきている。特に、メタノールを物理吸収液として用いるRectisolプロセス法は有望な手法の一つである。従来は、このメタノール溶媒にCO2の溶け込ます方式で電気化学的還元を行ってきたため、CO2の物質輸送に限界があった。したがって、液体炭酸ガス/メタノール混合溶媒系で電解還元を行うことにより電流密度を高め、CO2の電気化学的還元反応を進行させることができた。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。電極の改良と支持電解質の探索を行い、目標とするCO2の電気化学的還元反応の効率を高めており、今後の研究開発進展が期待できる。企業と連携して市場調査を行い、技術移転に向けた実用化研究に入ることが望ましい。
広帯域発光スペクトルを可能とする窒化物半導体の変調選択成長技術三重大学平松和政本研究開発では、窒化物半導体の選択成長技術において、温度、圧力V/III比などの結晶成長条件やマスク幅、ウィンドウ幅、フィルファクターなどのマスク形状を変えながらa面GaN上でファセット制御を行うための基礎検討とファセット制御機構の考察を行う。この計画に対して、a面GaN上での選択成長においてファセット構造を制御するための成長条件の確立を行うことができた。また、このファセット制御技術を利用することで非極性GaNの低転位密度化も図ることができた。今後は、広帯域白色LEDと高品質非極性窒化物半導体テンプレート基板の実用化に向けた技術移転を行うための研究開発を行う予定である。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。GaNのファセット選択成長の再現性が確認でき、方法の再現性が確かめられている。非極性GaN半導体の選択成長技術は、広帯域白色LEDの実現、低転位密度化基板の実現等に有用である。企業と連携して実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
高感度分光分析のための酸化物超薄膜ー貴金属ナノ粒子複合膜の開発滋賀県立大学秋山毅紫外~可視~近赤外領域の光照射で増強電場を生じる貴金属ナノ粒子と酸化物超薄膜の複合膜を作製した。ナノ粒子は対応する金属塩を水溶液中で還元して得、その後ガラス基板に修飾した。その表面に酸化物超薄膜を、ナノメートルオーダーで積層が可能な表面ゾル-ゲル法を用いて形成した。蛍光性の色素をプローブとしてこれらの複合膜の分光特性を評価したところ、6倍程度以上の蛍光増強効果と、10倍程度以上のラマン散乱増強効果を発現する事が明らかとなった。これらの複合膜は常温大気下で安定に保存可能でもあり、実用化の可能性が高い事が示された。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。ラマン増強については、微粒子に酸化物被覆のない方が優れた特性をを示すという成果が得られており、この研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究をすることが望ましい。
調和組織制御による高性能金型用ハイス材の開発立命館大学飴山惠高強度と高延性は二律背反な性質であるが、申請者が開発した「調和組織制御」によりステンレス鋼やチタンなどの種々の金属材料で高強度と高延性が両立することが示された。本課題では、「調和組織制御」をハイス材(高速度鋼)に適用し、二律背反である高強度(耐摩耗性)と高靱性(耐欠損性)の両方に優れた高性能ハイス材を開発する。ハイス材は金型材料として広く使用されているが、これにより高寿命化できるだけでなく、従来、超硬合金材料でなければ対応できなかった高性能金型や工具に代替でき、タングステン、コバルト等の稀少元素の使用軽減(省資源化)も実現できる。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。ハイス粉のMM(Mechanical Milling)処理によってナノ結晶組織のネットワーク構造を有する調和組織が得られ、機械的特性が向上することを見出している。この研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
酸化チタンと導電紙を用いた触媒機能紙の開発京都工芸繊維大学井野晴洋炭素繊維とバインダー繊維を混抄することにより表面抵抗値が4Ω/cm2と、市販の導電紙に比べ2桁以上抵抗が低く、酸化しない導電紙が得られた。さらに、抄紙時の混合、抄紙後の吹き付け、抄紙後の含浸といった方法により酸化チタン粉末を担持させて触媒紙を作製した。この紙に通電して一酸化窒素ガスを通す事により、一酸化窒素ガスが分解される触媒効果が発現する事を確認した。加える電力、担持する酸化チタンの量が多いほど触媒効果は高くなり、計画通り電界印加型触媒紙が得られた。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。炭素繊維とバインダー繊維を混抄して導電紙を作製し、酸化チタン粉末を担持させて触媒紙を作製した。通電して一酸化窒素ガスを通してガスが分解される触媒効果を確認している。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
低融点ガラスを用いた紫外LED用白色蛍光材料の開発京都大学正井博和本研究は、将来的に実現が期待される深紫外LEDとの組み合わせにより白色発光を示す素子として応用展開するため、深紫外光励起により高い発光効率を示すSnO含有リン酸塩低融点ガラスの組成の探索をおこなった。本年度の研究成果により、深紫外光を照射することにより白色発光を示す透明な希土類フリーリン酸塩系ガラス蛍光体を開発することに成功した。得られた白色発光特性は、研究提案時の目標値を超えるものであり、当研究に関する講演は、応用物理学会のマスコミプレビュー講演に選定された。今後、ランダムな構造を有するガラスからの発光機構解明をおこなうことにより、更なる高効率化が期待される。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。深紫外光を照射することにより白色発光を示す透明な希土類フリーリン酸塩系ガラス蛍光体を開発することに成功している。特許出願及び企業との連携を実施しており、市場調査を行い、実用化研究に入ることが期待できる。
イオン液体を分散媒質に用いた高機能ナノ粒子生成の最適化と特性評価京都大学中嶋隆本課題では、イオン液体中に置いた貴金属試料をレーザーアブレーションすることにより、乾かないイオン液体で守られた高機能ナノ粒子を生成するための最適条件を見いだすことを目的とした。研究開始時に解決すべき問題と考えていたのは、生成した金ナノ粒子が劣化(凝集)する原因を突き止め、その解決策を講じることであった。調査の結果、レーザーアブレーションによるイオン液体の劣化(カチオンやアニオンの解離)の有無を調べる必要があるという考えに至った。質量分析器を使って調べたところ、親カチオンや親アニオンのままの分子イオンも多数存在するが、これらが解離した分子イオンもかなり存在することがわかった。質量スペクトルは照射レーザー波長やパワーによっても異なるが、劣化がなさそうな照射条件を見つけることができなかった。当初目標とした成果が得られていないように見受けられる。今後、技術移転へつなげるには、今回得られた成果を基にして研究開発内容を再検討することが必要である。ナノ粒子の劣化原因調査により得られた結果が期待したものとは違ったが、その結果を基に新たな課題と解決のためのアイデアを導き出している。この研究成果を特許として権利化し、企業と連携して実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
高性能メカニカルシール用多孔質炭化珪素素材の開発京都大学檜木達也通常の炭化珪素セラミックスは水を潤滑剤として0.01オーダーの低摩擦係数を与え得るが、気孔により表面形状を制御することにより、水を潤滑剤に優れた耐荷重性と0.001オーダーの超低摩擦係数を発現するメカニカルシール用多孔質炭化珪素セラミックスの開発を行った。多孔質炭化珪素セラミックスは、炭化珪素原料に炭素粉末を加え、ホットプレス法により焼結を行い、更に酸素雰囲気下の高温で炭化処理を行い作製した。実用素材への適用性を考慮し、厚さ8mm程度まで気孔が均一に分散する素材の作製技術を確立し、素材の場所に依存せず同様に0.001オーダーの超低摩擦係数を発現する多孔質炭化珪素セラミックスが得られた。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。優れた耐荷重性と0.001オーダーの超低摩擦係数を発現するメカニカルシール用多孔質炭化珪素セラミックスの開発に見通しをつけたことは評価できる。超低摩擦材料作製の技術は多くの製品に反映できる可能性があり、関連の企業との連携を図りながら特許出願も視野に入れて、実用化に向けた活動に入られることを期待する。
地下水中鉄・砒素・アンモニアの生物学的除去用プレフィルター開発京都大学藤川陽子本申請で提案のプレフィルターを付けた状態で、以下の目標達成を目指した。1)粒状ろ材を充填した生物ろ過塔においてろ材上層部の固結が減り逆洗浄時のろ材展開率が向上、上部ろ材の逆流流出等の事態が起こらない、2)生物ろ過塔も含めたシステム全体の維持管理作業が簡略・低減化される、3)鉄・砒素・アンモニアなどの除去率が、プレフィルター設置以後、プレフィルター設置以前と比べて同等以上である、4)プレフィルターの初期設置および維持費用が、生物ろ過システム全体の費用から見て適正である。1)、2)については一定の目標が達成できた。ただし、プレフィルターの設置位置や材質により3)について大きな差が生じ課題となった。寒さによるろ過塔の亀裂発生などにより運転期間が不十分で3)、4)について引き続き検討が必要と考える。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。本課題で意図されている鉄バクテリア法の適用性に関して、基本的な知見と適用条件はほぼ明らかにされた。海外戦略も想定し、研究成果を特許として権利化し、企業と連携して実用化に向けた研究をすることが望ましい。
電流制御によるナノ多層膜めっき技術の開発大阪市立大学兼子佳久イオン化傾向の異なる金属イオンを含む電解液を用いることで、電気めっき法によりナノ多層膜を作製することができる。本開発では電位制御ではなく、装置がシンプルな電流制御でナノ多層膜を作製するために容量の異なる2種類の電源をコンピュータで切り替えるシステムを構築し、ナノ多層膜を作製することを目的とした。リレーとAD/DAコンバータを利用して2台の電源を切り替える回路およびそれを制御するプログラムを作製し、アミド硫酸ニッケルと硫酸銅を含む電解液を利用してNi/Cuナノ多層膜の成膜を試みた。高電流密度で析出するNiはほぼ目標通りの層が形成できたが、低電流密度域のCu層の形成はやや不安定であった。今後はCu層の安定析出が課題である。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。多層膜メッキ技術として層厚さの誤差を当初の目的以下にする成果が得られており、この研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けて研究を検討することが望ましい。
半導体素子・材料の既成概念を変革する新太陽電池材料の製造法大阪大学伊東正浩近年、太陽電池市場に突如登場して、世界を席巻しているCdS/CdTe厚膜太陽電池に対して、環境に優しく資源制約の無い低廉な太陽電池を実現するCZTS型材料ペースト事業化の検証を目指し、太陽電池製造では考えられなかった、5000年余の歴史を持つ窯業技術「セラミックの超微粉砕工法」を応用した研究に挑む。界面活性剤、粉体の表面活性、粘弾性等を検討した結果、セラミックの超微粉砕工法で玉石などからの不純物が少なく、低温で焼成できる微粉ペーストを得た。このCZTSペースト焼結膜とCdSバッファー層の積層体からなる簡易評価素子で光起電力を確認した。今後は、本材料を改良し新バッファー層を開発して、高効率太陽電池素子を試作検討する。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。CZTS(Cu2S、ZnS、SnS、S)ナノ粒子の合成とそれを用いた薄膜の作成と素子化までを達成しており、この研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
触媒金属ナノ粒子を分散内包したカーボンナノ構造の創生大阪大学河野日出夫二つのアプローチによってナノ空間を有するグラフェンナノ構造体に金属触媒ナノ粒子を内包した新しい触媒システムの創生を目指した。ひとつはカーボンコートされたシリサイドナノチェインのジュール加熱による、触媒金属ナノ粒子を内包したチューブ状カーボン生成、もうひとつはレーザーアブレーションによる触媒金属内包カーボンナノバブル生成である。前者については、その基盤技術として、制御された炭素コーティング法を確立した。また後者については、Pt, Pd, Rhナノ粒子内包ナノバブルの創生に成功した。これらの成果に立脚すれば、熱的安定性に優れ活性低下の少ない優れた触媒が実現できると期待される。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。Pt、Pd、Rh金属を内包したグラフェンナノバブルの生成に成功しており、活性低下の少ない優れた触媒として期待できる。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けて研究を検討することが望ましい。
低出力レーザピーニングにおける最適照射密度の探索大阪大学崎野良比呂疲労強度向上手法としてレーザピーニングに注目した。しかし、これまでの研究では、低出力でのレーザピーニングでは高出力に比べ疲労強度向上効果が小さかった。本研究の目的は、低出力レーザで橋梁溶接部の疲労強度を向上させることができる照射エ条件を明らかにすることである。 本年度は、低出力で照射した場合の圧縮残留応力の板厚方向分布深さが、高出力の場合に比べて浅い事を明らかにした。これが、疲労強度向上効果が小さかった原因の一つであると考えられる。この結果を踏まえ、23年度に行う疲労試験に用いる照射条件は、照射エネルギーが70mJと20mJ、エネルギー密度が7.2MJ/m2と3.6MJ/m2の4条件、比較用の2条件と合わせ6条件で行うこととした。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。鋼橋の経年疲労劣化の修復方法として、実用性の高い低出力レーザピーニング法を開発しようとする本研究課題は極めて重要である。本研究では、レーザエネルギーが低いほど疲労寿命が延びるという現象を発見しており、成果として評価できる。本研究課題は社会的重要性も高く、基盤研究の推進と実用化に期待する。
磁場による混合粒子体の完全分離および物質同定大阪大学植田千秋本課題では粒子の混合体を物質の種類ごとに分離し、その同定を簡便に実現する手法を構築を目指した。その原理として反磁性磁化率χDIAを利用する。即ち微小重力(μG)条件下の磁場勾配中に開放した反磁性体は、磁場勾配力を受け磁場外に放出される。その速度から得たχDIAを文献値と対照させて同定が実現する。開発を進めた結果、目標どおりφ50μmの粒子で、磁気並進運動の映像を習得できた。この先、異種粒子の分離を実行するのに技術的困難は予想されず、研究の目的は容易に達成されると予想される。本研究では当初の目標通り、以下の性能のμ G発生装置を開発できた。[μG 時間0.6s、占有空間100x 100x200cm、分析時間: 4hr]。これにより従来のような大型μG 施設を用いることなく、一般の研究室内に設置可能な 装置で、迅速かつ安価に分析が可能となった。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。小型で簡易なμG発生装置を試作し、幾つかのモデル物質について磁気分離・同定を確認している。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
放射線還元法によるPVAスポンジへの銀ナノ粒子担持抗菌処理大阪大学清野智史PVAスポンジは、その高い親水性と微細気孔に由来する毛細管現象から、抜群の吸水性と保水性を有する。ウェット状態で柔軟性・弾力性があるため、特に洗浄材や拭き取り材として利用されている。PVAスポンジはその性質上、保水状態で使用あるいは保管されるため、内部で菌が繁殖しやすい状態であるとも言える。抗菌性能を付与することが望ましいが、既存技術では達成されていない。本研究では、放射線による銀ナノ粒子担持加工技術を適用し、PVAスポンジの特性を維持したまま、抗菌性能と洗濯耐久性の付与を狙った。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。放射線還元法により従来方法では出来なかったスポンジ中に銀ナノ粒子を均一に析出させるという技術を確立しており、早期に研究成果を特許として権利化し、企業と連携して実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
非水系分散液によるCNT被覆金属粉末の表面酸化抑制効果の検証大阪大学梅田純子金属強化材としてのCNTの利用に際して、湿式製法を実用化するには「CNT凝集体の完全解消と金属表面の酸化現象の抑制」が重要課題である。非水系CNT分散液(イソプロピルアルコールIPA系溶液)を開発し、チタン粉末に適用した結果、粉末表面に目標値である0.3wt%以上にCNTを被覆した場合、粉末の酸素増加量は0.05~0.08wt%(目標0.1wt%以下)を達成した。チタン粉末に対するCNT分散液を12%以上配合して得られたCNT被覆純チタン複合粉末に対して、焼結・熱間押出加工を施して得られた素材は引張強さ815~899MPaを示し、目標特性(800MPa以上)を達成するためのCNT被覆量は0.35wt%であることを確認した。強化機構として、CNT被覆量が0.14wt%以下ではチタンへの炭素原子の固溶強化が主となり、それを越えるCNT被覆量では反応合成により素地中に分散するTiC粒子の複合強化によることを明らかにした。またヘンシェルミキサーによる撹拌被覆と真空加熱によるIPA除去の連続処理の可能性を検証した。今後、大型ミキサーでの連続処理を行い、実用化に向けたスケールアップ技術の実証を行う。期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。非水系CNT分散液(IPA系溶液)を開発し、チタン粉末に適用した結果、粉末表面に目標値である0.3wt%以上にCNTを被覆した場合、目標である低い酸素増加量を達成している。すでに企業との共同研究を実施しており、早期に研究成果を特許として権利化し、技術移転に向けた実用化研究に入ることが望ましい。
13C-enrichedグラフェンの創成と新物性の開拓大阪大学白石誠司自然界にかつて存在しなかった13Cをenrichした単層グラフェンを創出する。これによりバンドギャップ変調効果やグラフェンのπ電子スピンと13C核スピンの相互作用による単一スピン制御などの新物性・新機能発現のための材料面での基盤を構築する。13C-enriched単層グラフェンは申請者らの独自技術であるポリマー材料を出発材料にしたSuper Graphiteから剥離法によりSi基板上に作製するが、これがほぼ唯一の13C-enriched単層グラフェンの創出方法であり、本研究により材料合成面だけでなく、将来的な新奇な電子素子・スピン素子の創出においても絶対的優位性を構築できる。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。13C-enriched単層グラフェンの創出に成功しており、この研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けて研究を検討することが望ましい。
自己選択性触媒を利用した無電解めっきプロセスによる微細金型形成大阪府立大学岡本尚樹本研究開発では、必要な箇所にのみ金属薄膜・構造物を簡便な液相反応のみで析出させることが出来る自己選択性触媒を利用した無電解めっきプロセスにより、MEMS作製や各種ナノインプリント技術に用いられる複雑形状の金型作製や、半導体銅微細配線の形成時の電気導通層(シード層)、光学素子をガラスや樹脂などの各種非導電性基板上に形成するプロセスをナノ粒子触媒およびコロイドを用いて構築することを検討した。これにより、高コストな各種ドライプロセスを用いることなく、かつ、これまでの電気めっきや電鋳では作製困難であった複雑形状の金型や光学素子を、単純な低コストプロセスにより製造することが可能になると考えられる。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。無電解めっき法によりナノ粒子触媒およびコロイドを用いて複雑な微細金属構造の形成法を検討しており、この研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
貴金属陰イオンを微量に含んだ新規シンチレータの開発大阪府立大学河相武利毒性のない貴金属陰イオンを発光中心として微量に含んだCsI:Ag-、CsI:Au-結晶を作製し、それら結晶のシンチレータ特性を明らかにするため、可視発光波長、発光強度、発光寿命を室温において測定した。その結果、現在シンチレータとして幅広く使用されているCsI:Tl+結晶と遜色ない発光強度を得たが、CsI:Ag-結晶では1 ms以上の遅い残光成分があることが分かった。一方、CsI:Au-結晶については、発光寿命が約600 nsであることが分かり、CsI:Tl+結晶より優れた特性を持つことから、新規シンチレータの可能性を見出せた。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。CsI:Au結晶の発光時間応答は従来の結晶に比べて優れており、新規シンチレータ候補材料の1つとしての可能性を見いだしており、この研究成果を早期に特許として権利化し、企業と連携して実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
ナノコンポジット化による高性能・高強度熱電酸化物モジュールの開発大阪府立大学小菅厚子本申請課題は、高温廃熱回収を目的とした熱電モジュール実現のため不可欠な、高熱電特性及び高機械的強度を有するCaMnO3系材料の実用化を目指した研究開発を加速するものである。その手法として、ナノ粒子熱電酸化物とナノ金属粒子をコンポジット化させる事で、熱電特性と機械的強度を同時に改善することを目指した。本研究開発において、数100nmのグレインを有する熱電酸化物マトリックスの粒界を平均粒径数10nmの金属粒子でコートしたナノコンポジット焼結体を作製する事に成功した。このコンポジット材料の電気的特性は、熱電酸化物単体のものより約20%向上した。しかしながら、ナノコンポジット化しても焼結時にひびがはいりやすく、機械的強度を評価できるサイズの試料は現時点では得られておらず、ナノコンポジット化による劇的な機械的強度の改善は達成できていないと考えられる。今後、マトリックスと金属材料の混合比や作製条件の最適化を行う事で、さらなる熱電特性の向上と機械的強度の改善につなげたいと考えている。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。酸化物熱電素子の結晶粒の粒界制御で一定の成果が得られており、この研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
線形性に優れた圧電応答を示す非鉛系圧電材料の創製大阪府立大学森茂生圧電アクチュエーターなどの圧電デバイスに対して、有害な鉛を含む圧電材料は厳しく規制され、非鉛系圧電材料の開発が急務とされている。最近、(1-x)BiFeO3-xBaTiO3において、BaTiO3置換量(x)の増加に伴い、強誘電ドメインが微細化し、微小電場に対して線形性の良い電場-歪応答を示すことを見出した。本研究では、(1-x)BiFeO3-xBaTiO3および関連物質系を研究対象物質として、 BiFeO3にペロブスカイト型化合物BaTiO3およびSrTiO3を置換することにより、強誘電ドメイン構造をナノスケールサイズに微細化し、線形性に優れた圧電応答を示すと同時に、圧電定数(d33)が150以上をもつ非鉛系圧電材料の開発を行う。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。鉛フリーで圧電係数150を超える材料を開発に成功しており、この研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けて研究を検討することが望ましい。
全固体電池実現に向けた銀系イオン伝導物質の開発大阪府立大学牧浦理恵加工性、安定性、安全性の観点から、全固体電池の開発に期待が高まっている。しかし、高いイオン伝導性を示す固体物質は数少なく、且つそのほとんどが、高温でのみ超イオン伝導性を示すため、実用化が進んでいない。本課題においては、高温で超イオン伝導性を示すことで知られるヨウ化銀を独自の手法によりナノメートルサイズに微粒子化し、20℃以下の低温まで安定化させた超イオン伝導相を実現し、超イオン伝導体を用いた固体電池の実用化に繋がる諸物性を明らかにすることを目的として、以下に関して研究開発を実施した。 [1] ヨウ化銀-ポリマーナノ粒子の低温におけるイオン伝導挙動の解明 10 ナノメートルのサイズを有する有機ポリマー保護ヨウ化銀ナノ粒子に関して、インピーダンス法を用い室温よりも低い温度におけるイオン伝導度を調べた。その結果、-190℃において、抵抗率が約2×10-2 Ωcmであった。このことより、ヨウ化銀ナノ粒子は、室温のみならず、極めて低い温度においても高いイオン伝導性を有することが明らかとなった。 [2] 放射光X線回折手法を用いたヨウ化銀-ポリマーナノ粒子の低温結晶相挙動の解明 10 ナノメートルのサイズを有する有機ポリマー保護ヨウ化銀ナノ粒子に関して、放射光X線回折(XRD)を用いて低温における結晶相を調べた。その結果、冷却過程において、約40℃で超イオン伝導相であるα相からβ/γ相への相転移が見られ、それ以降の低い温度では、β/γ相の状態であることが明らかとなった。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。粒子径10nmの有機ポリマー保護ヨウ化銀ナノ粒子に関して、室温よりも低い温度でも高いイオン伝導性を有することを見いだしており、研究成果を特許として権利化し、企業と連携した研究を検討することが望ましい。
遷移金属の複機能性の発現による非貴金属系燃料電池触媒としてのヘモグロビン炭化物の高性能化地方独立行政法人大阪市立工業研究所丸山純固体高分子型燃料電池の本格的普及の実現に貢献すると期待される非貴金属系正極触媒の一つにヘモグロビン炭化物がある。本課題では、ヘモグロビンと遷移金属を複合化し、熱処理中に生成する遷移金属酸化物の鋳型となる機能、ならびに遷移金属と活性点との電子的相互作用による電子供給機能によって、ヘモグロビン炭化物でこれまでに得られた活性、耐久性の2倍程度の向上を目指した。鋳型となる機能は見出されなかったが、遷移金属に加えて高表面積ナノ炭素粒子とヘモグロビンを複合化することで高表面積化が達成され、かつ電子供給機能により活性が向上することが見出された。結果として、複合材料全体として見た場合には未だに不十分であるものの、ヘモグロビン炭化物重量当たりでは2倍以上の向上を達成し、ヘモグロビン炭化物が非貴金属系正極触媒として有望であることが示された。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。ヘモグロビン炭化物が非貴金属系正極触媒として有望であることを見いだした。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
超音波援用はんだ付法によるAl管の高品位接合技術の開発地方独立行政法人大阪市立工業研究所長岡亨Al管の超音波援用はんだ付において、Zn-Al系合金はんだの組成の変更、および接合条件の最適化を行った。その結果、最適な接合条件を選択することで、Al管を過剰に変形させることなく、接合界面にはボイド等の欠陥が認められない継手を得ることができた。また、はんだ組成を最適化することで、高い接合強度を有し、耐食性も改善されたAl管継手を得ることができ、当初の目標は達成できた。熱交換器等の製造においては、Al管を2箇所以上同時に接合する必要がある。今後は2点同時接合が可能な装置の開発を目指し、超音波工具ホーンの設計変更、および加熱装置の配置の変更を検討する必要がある。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。Al管の接合条件を明らかにしており、装置開発に繋がる研究成果が得られている。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を行うことが望ましい。
スピノーダル分相ガラス電解質による低コスト・高効率燃料電池の開発兵庫県立大学大幸裕介燃料電池の低コスト化及び高効率化を実現するために、500℃前後の温度域で高いプロトン伝導性を示し、耐久性に優れる安価なガラス電解質の開発に取り組んだ。ケイ酸塩ガラスの分相現象を利用してガラス組成を検討することで、潮解せず化学的に安定でかつ500℃付近でプロトンのみが伝導する全く新しいガラス電解質の作製に初めて成功した。500℃において、導電率は600時間を超えて全く低下することなく安定であり、また水中に1週間以上浸漬してもガラスが溶解することは無かった。500℃での燃料電池発電試験において、開回路電圧は1.1 Vと高く、燃料電池電解質として応用可能であることを研究期間内に実証した。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。珪酸塩ガラスの分相現象を利用してガラス組成を検討することで、化学的に安定でかつ500℃付近でプロトンのみが伝導する全く新しいガラス電解質の作製に成功しており、燃料電池への応用が期待できる。特許出願及び企業との連携を実施しており、市場調査を行い、実用化研究に入ることが望ましい。
超高圧操作による次世代バッテリーの高速充電技術開発兵庫県立大学福井啓介超高圧による高速な結晶核発生を利用した次世代バッテリーの新しい高速充電技術を開発することを目的とする。様々な無機塩はバッテリーの電解液として利用されているが、イオンの結晶化としてとらえた研究はない。そして、近年注目されているバッテリー技術で最も重要なポイントは充電速度であり、自動車産業で利用されている2次電池では充電に時間がかかることが最大の問題と考えられる。本研究は、1次電池や2次電池の充放電に対する圧力の影響を観察し、新しいバッテリー・充電技術のヒントを得るものであった。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。バッテリー技術の中で、高速充電技術は重要である。1次電池や2次電池の充放電に対する圧力の影響を観察し、次世代バッテリーの充電技術へつなげる指針を見いだす課程の中で得られた研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
細孔表面を改質した多孔質ガラスチューブによる燃料電池用プロトン伝導体の開発兵庫県立大学矢澤哲夫1~5nmのナノ細孔を有する多孔質ガラスチューブの細孔表面をスルホン酸基で改質したプロトン導電体を開発し、メタノールを燃料とする燃料電池セルを試作する。当該プロトン導電体は、ガラスであるので、メタノールに対するバリアー性、耐久性とも良好であり、メタノール透過率は従来のフッ素系高分子膜と比較して1桁以上低く、室温で2.1 × 10-7 cm2/sの値であった。チューブ内壁にはPtRu担持カーボン触媒を交互積層法により固定化し、またチューブ外壁にはカーボンペーパーを集電体として、プレス法によりPt担持カーボン触媒を固定化した。メタノールおよび酸素による発電試験を行ったところ、室温で0.7 V近い電圧を観測した(出力は50 μW/cm2)。携帯電話の電池サイズで15 V近い回路電圧を発生する見通しである。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。多孔質ガラスプロトン導電体は従来のパーフルオロスルホン酸系の有機高分子膜に比べて、耐メタノール性や耐熱性が高く、燃料電池用プロトン導電膜として魅力的である。研究成果を特許として早期に権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
高耐久性編針の開発奈良県工業技術センター三木靖浩炭素工具鋼製の実用試験片に40N以上の剥離荷重を有するSi含有炭素系膜をコーティングすることを目標とし、種々の条件でコーティングしたSi含有炭素系膜の残留応力値、硬さ、剥離荷重、摩擦摩耗特性、耐酸化特性等について検討した。また、所定の条件でコーティングしたハイゲージ用編針を用いて丸編機による1,500コースでの編成試験を行い、試作した編針の耐久性について検討した。その結果、炭素工具鋼上に41N~43Nの剥離荷重を有し、500℃までの大気雰囲気中で使用できる低摩擦かつ高密着なSi含有炭素系膜をコーティングする技術を確立することができた。なお、編成試験の結果、Si含有炭素系皮膜をコーティングしたハイゲージ用編針先端部の摩耗を、ほとんど確認できなかった。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。編針の耐久性が向上したことは編物業界には大きな福音として期待できる。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けて研究を検討することが望ましい。
高親和性と認識特異性を有する蛍光プローブ分子による微量有害重金属イオンの検出奈良女子大学三方裕司本研究では、特に水銀(II)イオンを標的とした、有害金属イオンの検出を高い感度と選択性で実現するための蛍光プローブ分子の開発を行った。本研究で用いた分子は、チオエーテル鎖を有するビスキノリン誘導体で、配位硫黄原子の数あるいはキノリン環における置換基を変化させることにより、水銀イオンに対する蛍光応答特性が大きく変化した。その他に、イソキノリンを基本骨格とする亜鉛イオン特異的蛍光プローブの開発にも成功した。この系では非常に高い亜鉛イオン親和性と特異性が実現できた。さらに糖分子を連結した蛍光プローブ分子も開発した。今後は、水銀プローブ分子の金属イオンに対する親和性と水銀イオン特異性を改善していく。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。塘分子導入が傾向プローブ分子の水溶性向上に大きく寄与することを見いだしたことは、今後の重金属センサーへの展開に繋がる可能性も大きく、この研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
電子機器への応用を指向した高性能ペルチェ素子材料の開発鳥取大学陳中春冷却や精密温度制御の電子機器に利用されているBi2Te3系ペルチェ素子材料は、機械的性質の不足によるへき開割れや歩留まりの低下、また、熱電性能の更なる向上による熱電変換効率の改善が産業界から求められている。本研究では、メカニカルアロイング(MA)と熱間押出しを組み合わせるプロセスを提案し、押出し製品における結晶粒微細化による性能向上を目指す。MAと熱間押出しにおける加工条件と製品の健全性、微視組織・集合組織及び熱電性質・機械的性質との関係を明らかにするとともに、緻密・健全かつ優れた熱電性質・機械的性質を有するBi2Te3系バルク材の安定・安価な作製プロセスを確立することを目的とする。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。Bi-Te-Sb系熱伝材料の結晶粒微細化を図り、機械的強度の向上に成功し、さらにホットプレス材に熱間押し出し法を適用すると熱電特性の向上することを見出している。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けて研究を検討することが望ましい。
高炉スラグを活用した耐硫酸性コンクリートの生コンクリートへの適用性の検証調査岡山大学綾野克紀高炉スラグを用いることで、普通コンクリートに比べて3倍以上の耐硫酸性をもつコンクリートを開発し、二次製品での実用化を図っている。しかし、下水道施設の汎用的な設計を行うためには、耐硫酸性水和固化体を生コンクリートとして供給することが必須である。本研究では、耐硫酸性水和固化体を大型の実構造物へ適用した場合を想定し、耐久性について検討を行った。また、実環境と実験室での耐硫酸性について、比較検討を行った。高炉スラグを用いた耐硫酸性水和固化体は、マスコンクリートのような断熱状態で養生されると、乾燥収縮ひずみが小さくなる。一方、実際の下水道環境での硫酸侵食の結果と実験室で行った結果とは、相関性があり、室内で測定される結果によって品質保証が行える可能性を示した。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。耐硫酸性コンクリートを生コンクリートとして製造し、その汎用性拡大を図ることは社会的要請もある。得られた研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
フラストレーション効果を活用した次世代セラミック誘電体の開発岡山大学花咲徳亮コンデンサーは電子機器に不可欠な部品である。近年の電子機器のモバイル化によって、素子の更なる小型化、優れた高周波特性等の過酷な条件が求められている。本研究では、物質に内在しているフラストレーション効果を活用して、高速応答性、高効率性を有する次世代のコンデンサー材料を開発することを目的としている。22年度の研究では、試料合成を繰り返し、良質の結晶を安定して作成できる条件を精査した。その結果、原料の調整が合成雰囲気に大きな影響を与えていることが分かった。また、合成物の価数を分光学的に精密に評価したが、当初の予想どおりの価数を有する事を実証した。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。誘電率及び応答性が良好なニオブ酸化物の合成条件を確立し、次世代セラミックス誘電体への可能性を広げた。研究成果を特許として権利化し、コーディネーターを通じて企業との連携を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
室温で機能する高速で高効率な酸素吸着・分離剤および酸素活性化剤開発岡山大学黒田泰重室温で、迅速に酸素分子を吸着できる物質はほとんど存在しない。本研究では室温で迅速に酸素分子を吸着できる物質の開発・デザインを行うことを目的とした。本系では銅イオン交換ゼオライトを吸着剤として用いた。酸素の室温での迅速な吸着現象および吸着酸素種を利用した有機気体の活性化の検討を行った。本物質は室温で酸素の吸着および活性化について十分機能することを明らかにした。さらに、この物質の特性を利用し、光活性化などのプロセスを経ることによって、不均一系の酸化触媒開発への研究展開も行った。今後は生成物の詳細な確認と他の有機物の酸化反応への適用をめざして研究を展開していく。これらの特性を利用すれば、酸素の分離剤、気体の高純度化、断熱材などとしての利用はもちろん酸化触媒としての可能性についても期待できるので、室温で機能する高速で高効率な酸素吸着・分離剤および酸素活性化剤への応用展開も可能であると判断する。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。イオン交換率を制御することで吸着酸素量を著しく増加させる可能性を見出していることは今後の研究開発に期待ができる。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
強誘電体を用いた貴金属フリーナノ触媒の開発岡山大学狩野旬燃料電池の電極触媒、あるいは排ガスなどの有害物質除去に用いる環境保全触媒の市場で占められている貴金属触媒の代替えとなる、新原理に基づく卑金属・遷移金属触媒の開発を行う。強誘電体内部にユニバーサルに存在する巨大電界効果は、強誘電体表面に制御可能な電荷秩序を形成させる。その強誘電体表面に卑金属・遷移金属ナノ粒子を固定分散化させることで、従来なら容易に酸化してしまう金属に非酸化機能性を発現させる。本研究によりこの新形態触媒が実現すれば、従来不可能とされていた貴金属フリーで圧倒的に安価な卑金属・遷移金属での触媒能発現を可能とし、貴金属触媒と同等に長寿命化ができる。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。申請者の合成法により、強誘電体表面へのナノ粒子状合金の担持に成功し、触媒活性の向上が得られている。貴金属を使わない触媒の開発はインパクトも高いと思われる。特許出願及び企業との連携を実施しており、市場調査を行い、実用化研究に入ることが期待できる。
電子誘電体の光応答の応用研究岡山大学池田直電子誘電体は、0.3eVからはじまり1.7eVという低エネルギー可視光領域で105/cmを超える高い光吸収特性を持つ。また電子相関効果により、電子ないし正孔が秩序化しているため、一光子の刺激により多数の光電子放出が期待される。これを適正なPN接合の電位勾配に導くことが出来れば、高効率の太陽電池となることが期待されている。本研究は電荷秩序型誘電体の光吸収特性と半導体特性を理解し、太陽電池応用に必要な導電性の原理機構を解明することが目標である。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。電子誘電体に関する基礎的データの取得によって、電子誘電体の導電機構に対するモデル構築に成功している。太陽電池への応用で期待ができる。出願された特許を核として、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
廃リチウムイオン電池のリチウムイオンの高速湿式回収プロセスの開発岡山大学武藤明徳本研究は、蓄電用電池に不可欠なリチウムを、使用済み電池から電池用途に利用できる形態で実用的な化学回収プロセスの確立を目指して実施した。具体的には、1)ナトリウムイオンが共存してもリチウムイオンだけを回収できる抽出液の開発、2)抽出プロセスの短縮操作の大幅な短縮のための反応器、3)回収したリチウムイオンを濃縮できる逆抽出方法および抽出剤の回収・再利用について研究開発を行った。成果として、本研究の抽出液は、1)Na/Li が1000倍であっても、Liだけを選択的に抽出できる。2)マイクロリアクターのセトラーを工夫し、年間12トン以上のリチウム水溶液を60秒以下のプロセス時間で扱うことができる。3)抽出液の繰り返し使用を10回行い、性能が劣化しないことを確認した。本抽出プロセスはリチウムイオンの回収・濃縮の実用化として大いに期待できる。期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。リチウムイオン電池の需要の拡大は急務であり、そのリサイクル技術の解決は重要であり、成功すれば社会的なインパクトは大きい。企業と連携してマイクロリアクターの設計とスケールアップの実験に入ることが望める。
鋳鉄部品への高靭性厚膜硬化層形成技術の開発広島県立総合技術研究所花房龍男鋳込みと同時に、球状黒鉛鋳鉄におけるミリ単位以上のパーライト組織による部分硬化層を作製することを目的とし、各種パラメータの改質層におよぼす影響について調査した。 種々の改質用元素および粘結剤を検討し、これらの混合条件を検討した。これらの結果により、マトリックスのパーライト層の硬さは母材部のものと比較して約60~200Hvほど硬くすることが出来た。また、量産化技術の開発にも取り組み、粉体塗装法による改質剤の塗布が行えるようになった。 この技術を地場企業の製品に適用したところ、形状を良く転写し、mm単位以上の硬化層を得ることが出来た。今後、耐摩耗性の評価を行うとともに、広く普及活動を行う。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。鋳鉄部品に粉体塗布法により改質剤を塗布して表面硬さ354HB、厚さ2.3mmという成果を得ている。特許出願及び企業との連携を実施しており、市場調査を行い、実用化研究に入ることが期待できる。
形状回復温度制御型の高強度チタン合金設計と浮揚溶解・凝固による材質制御広島大学松木一弘400K以上の高温適用で1000MPa以上の引張強度を示す形状記憶合金の開発を目標として、β型Ti基合金に着目した。二種の電子パラメータを用いることで、変態温度や強度を推定できる事を可能とし、Ti-6mol%-0/3mol%Alの二合金を設計した。組成の最適化と浮揚溶解炉を用いて材質制御・最適化を行うことで、エコバランスを図った。当初の目標であった、400K以上での形状回復と1000MPaの引張強度は、Ti-6Mo-3Al設計合金で達成された。本設計指針と製造プロセスの最適化により稀少元素戦略も促進でき、さらに合金系の異なった高性能・多機能材料の正確・迅速開発に適用が大いに期待される。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。400K以上の高温適用で1000MPa以上の引張強度を有する形状記憶合金が開発できており、この研究成果を特許として権利化し、企業との連携によって実用化に向けて研究開発のスピードアップを図ることが望まれる。
極細硫黄繊維のエネルギー貯蔵材料としての可能性探索山口大学堤宏守硫黄は、高密度エネルギー貯蔵可能な(1675 mAh/g)の二次電池用正極材料として注目されている。しかし、硫黄の絶縁性、低反応性、脆さが、その実用化を阻んでいる。 本申請では(a)溶融電界紡糸法による硫黄の極細繊維化、(b)極細硫黄繊維表面上への導電性被膜の形成による導電経路の確保と強度向上により、これらの問題点を解決することを目指した。 (a)については溶融電界紡糸装置の改良により繊維径を1μm程度とすること(b)については導電性被膜の厚さを機械的強度と電気化学反応性のバランスの取れた厚さ(100 nm程度)とすることにより解決を目指し、以下のような目標を設定した。【目標】(1)放電容量 400 mAh/g以上、(2)充放電時のクーロン効率 90%以上、(3)試作電池の充放電可能回数 500回以上、(4)通常の取り扱いでは繊維が破断しない機械的強度【達成度】(1)定電流放電条件(75 mA/g)で、570mAh/gの放電容量を得られる事が確認でき、この目標は達成できた。(2)及び(3)第1回目の放電反応は確認できたものの、再充電反応については、明確な電極応答が得られなかった。(4)機械的強度のある程度の付与は確認できたものの目標値には達しなかった。【今後の展開】 一次電池用正極材料としての可能性を示すことはできた。二次電池用正極材料への展開には放電反応時に生成するチオラートアニオンの散逸を防ぐ方法の探索を今後実施する。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。金属-硫黄電池用正極として、一次電池用としての可能性が得られている。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
微細花状構造を有する酸化亜鉛を用いた高効率光電変換素子の開発地方独立行政法人山口県産業技術センター村中武彦本研究の目標は、酸化亜鉛を光電変換素子として用いた色素増感太陽電池Dye-Sensitized Solar Cell(以下、DSSC)を作製し、6%以上の効率を達成することにある。その手段として、微細花状構造Micro-Flower(以下、MF)の制御法および複合法を開発した。概ねその目標を達成することができた。 本事業により、透明導電膜付きガラス基板に直径5μm以下のMFを有する酸化亜鉛膜の成膜法を開発した。そのMF密度を0~約3万個/mm2の間で3段階に制御し、そのMFを膜中に複合する方法を開発した。それらの新規開発した膜を光電変換素子として用いてDSSCを作成した。それは6.0%の光電変換効率を有していた。今後は山口大学および九州工業大学を含め議論し、具体的な出口用途を検討して進める予定である。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。ミクロフラワー構造の酸化亜鉛を光電変換素子として用いた色素増感太陽電池を作製し、変換効率6%を得ている。この研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
生産プロセスに向けた噴霧乾燥による固相中析出型ナノ蛍光体作製の高速化阿南工業高等専門学校小西智也希土類含有蛍光体ナノ粒子を作製するにあたり、ナノ粒子を固相中に析出させ、水中に溶出分散させることで凝集を防ぐ方法があるが、出発原料溶液の乾燥に十~数十時間以上の長時間を要し、均質に大量合成できない欠点があった。本研究では、噴霧乾燥法との組み合わせにより、これらの欠点を克服することを目的とした。本研究実施の結果、噴霧乾燥および熱処理によって、造粒されたマイクロ粉体中にナノ蛍光体を析出させることができ、目標としていた数時間以内の作製時間、および500±100 nmの粒径制御が達成され、生産レベルへのスケールアップの可能性が見出された。今後セキュリティ印刷用蛍光顔料インクなどへ向けた生産技術移転を目指す。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。噴霧乾燥および熱処理によって、造粒されたマイクロ粉体中にナノ蛍光体を析出させることに成功しており、この研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けて研究を検討することが望ましい。
鉛製水道管における水道水中の鉛などの有害重金属分析装置の開発徳島大学今井昭二本研究開発は、鉛管による住民の暴露問題の解決のための鉛製水道管の交換が進まない中、現在の水道管での使用が余儀なく続いている。蛇口一つずつの鉛濃度検査を行うことで、安全性を確かめつつ社会インフラである水道設備の使用を行うための迅速かつ低コストの分析法を開発している。従来法では、鉛水質基準の10ppbの検出が不可能であった。今回の研究において、50μLの水道水中有に含まれる鉛を気体にして効率よくフレーム原子吸光分析装置に導入できるアタッチメントを開発することで、高感度を達成できた。開発したアタッチメントの使用によって水質基準の2分の1(5ppb程度)の検出限界を達成した。今後は、水質基準において報告義務のある基準値の1/10以下の鉛濃度を検出するまで高感度化を計画している。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。研究成果によって人命に影響する水道水中の鉛イオン濃度の簡便な検出が可能になり、社会還元効果が大きい。研究成果を特許として権利化し、企業と共同して市場調査を行い、研究開発のスピードアップを図ることが望ましい。
液晶性半導体の高純度化による特性向上香川大学舟橋正浩液晶性半導体の高純度化とそれによるデバイス特性の向上を目指して、昇華精製装置を製作し、p-型液晶性半導体3‐TTP‐Ph‐5の精製を行った。有機溶媒を用いた再結晶法では、溶液中から液晶相が析出し、十分な精製効果が得られなかったのに対して、昇華精製による気相成長法では結晶が成長し、十分な精製効果が得られた。TOF方によるキャリア移動度の評価を行ったところ、昇華精製法によるキャリア移動度の向上は確認できなかったが、過渡光電流の減衰速度はシャープになり、キャリア分布の分散を引き起こす局在準位の密度を低下させることができた。n-型半導体である液晶性ペリレンテトラカルボン酸ジイミドの昇華精製も試みた。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。多くの液晶性半導体物質系について高純度化と物性の検討を進めることで有機TFTデバイスなどの開発応用へつながると考えられる。発展著しいディスプレイ分野への応用展開野中で競争力のある技術になることが期待できる。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けて研究を検討することが望ましい。
導電性を有する耐プラズマ性セラミックスの開発香川大学楠瀬尚史低電力損失および急速スイッチ機能を有するSiCパワーデバイスは、現在深刻化しているエネルギー問題を軽減することのできるシステムとして、近い将来必ず実用化される技術である。このSiC半導体の製造工程で使用されるプラズマエッチング装置の電極材料には、高熱伝導性、耐プラズマ性、高電気伝導に加え、SiとC以外に不純物を含まないことが望ましい。一般的に、SiC焼結体は、10-4~10-5S/cm程度の電気伝導性を有する半導体であるが、電極材料として応用するためには、100S/cm以上の電気伝導が望ましい。本研究では、SiCに僅か4~6vol%の添加剤を加え、焼結条件を制御することにより、10-1S/cm代の電導度を実現することに成功した。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。SiCの導電率を0.1S/cm程度まで高める成果が得られており、この研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
発光性イリジウム錯体LB膜を用いたセンシングデバイス愛媛大学佐藤久子本研究では、従来我々の行ってきた発光性イリジウム錯体分子膜に関する基礎研究を発展させ、実用に供せられるような高い感度と選択性を持った気体センサーLB膜を製造することをめざした。まず、堅固な膜をつくるために、粘土鉱物とのハイブリッド化を検討した。粘土鉱物を用いたのは、イリジウム錯体の粘土への吸着による発光波長の変調、発光強度の増大、気体に対する消光作用への抵抗などへの役割をもたせるためである。種々の粘土鉱物の検討をおこなった結果、サポナイト粘土ではハイブリッド化することで強度の増大したLB膜を形成することを見出した。しかも、得られたハイブリッド膜は酸素に関して酸素圧10KPa以下の範囲で感度の良いセンサーとして働くことがわかった。また、モンモリロナイト粘土とのハイブリッド化によって平らな2次元形状の上に均一に吸着したイリジウム錯体膜の形成条件を確立することができた。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。発光で気体センシングを観察することはセンシングデバイスとして新規性がある。粘土鉱物との複合化でIr錯体の燐光発光特性の制御と高発光効率化を実現している。今後、企業との連携によって市場調査を行い、実用化に向けて研究開発のスピードアップを図ることが望まれる。
二次元層状構造型リン酸ジルコニウムによる放射性Cs固定化技術の開発新居浜工業高等専門学校橋本千尋本研究の目標は、高レベル放射性廃棄物中で最も長期間安定な固定化が望まれている元素の1つである137Csの新しい永久固定化技術の開発である。研究責任者らがこれまで取り扱ってきた三次元網目構造型リン酸ジルコニウムHZr2(PO4)3と同様に、化学的及び熱的に安定で優れたイオン交換特性を持つ二次元層状構造型リン酸ジルコニウムZr(HPO4)2を本研究課題の固定化材として使用した。本研究では、Zr(HPO4)2がHZr2(PO4)3よりも多くのCsを取り込むことが可能であり、かつ1 mol・L-1-HClに対するCs浸出率もHZr2(PO4)3より優れていることが明らかになった。さらに、各種金属イオンが存在する水溶液からCsイオンのみをZr(HPO4)2中に固定化する手法について提案することができた。この手法は、これまでHZr2(PO4)3を用いたCs固定化体においてNaの共存により耐Cs浸出特性が低下するという問題を解決できるものとして期待される。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。各種金属イオンが存在する水溶液からCsイオンのみを二次元層状構造型リン酸ジルコニウム中に固定化する新たな手法を提案しており、本手法に新規性と優位性が認められる。研究成果を特許として早期に権利化し、企業と連携して実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
新型孔形状ノズルを使用した水流交絡法不織布の開発高知県立紙産業技術センター田村愛理本研究の目標は、細孔の形状やピッチ及び配列を検討し、水流交絡法不織布製造において、従来の円形細孔形状ノズルを用いる場合よりも、高圧ポンプ消費電力を70%程度に低減し、かつ使用水量を2倍以下に抑えることとしていた。研究の結果、対象とする円形細孔形状ノズルで細孔径の小さいものと比較した場合は、その目標値は達成できたが、細孔径の大きなものと比較した場合は、その目標値に達しなかった。しかし、今回研究を行った新型孔形状ノズルを使用すれば、設定水圧1.5~3MPaという低圧で、ある程度引張強度が強く、耐摩耗性に優れた不織布を製造することができるため、今後、企業において、水流交絡に使用するノズルの選択肢の1つとして、利用されることを期待している。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。ノズルの改良を行った装置で作製した不織布が高い強度と耐摩耗性を示す結果が得られたことやノズルの配置によって不織布表面の地合いに大きな差異を見出したことは大きな成果であり、この研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化を検討することが望ましい。
非超伝導体のナノロッド導入による希土類系高温超伝導線材の高性能化高知工科大学堀井滋高い磁場中送電能力を有する薄膜型希土類系高温超伝導ケーブルの製造技術の構築を目指して、希土類系高温超伝導薄膜に導入するナノロッドの最適化を図った。3.5 重量%のBa-Nb-O 系ナノロッド物質の添加と成膜条件の最適化により、Er 系だけでなくY 系高温超伝導薄膜において10T を超える実用的臨界磁場を液体窒素温度でも実現できることを示した。また、実用的臨界磁場を最大化するための最適成膜温度は、ナノロッド材料の添加量および超伝導物質に大きく依存する結果も得られ、希土類系高温超伝導ケーブルの製造プロセスにおける制御因子として成膜温度だけでなく母物質の適切な選択の重要性も明らかとなった。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。成膜温度やナノロッドの導入量の最適化を図ることで実用的な高温超伝導線材に発展することが期待できる。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けて研究を検討することが望ましい。
揺らぎ制御によるSi系単分散ナノ粒子の非凝集大量合成技術構築九州大学鎌滝晋礼本研究開発では、プラズマプロセス中のプラズマ揺らぎの制御技術を確立し、Si系単分散ナノ粒子の非凝集合成技術の構築を行った。この揺らぎ制御技術により、単分散ナノ粒子のサイズを1-2nm間隔で4-8nmと数nmという小さい粒子に対する高性能制御できた。また、ナノ粒子の粒径分布においても11%分散と制御できた。更に、プラズマ揺らぎを制御することで、ナノ粒子量が従来の1.8倍に増加することが分かった。ナノ粒子サイズ、生成に対するプラズマ揺らぎの依存性を明らかにした。揺らぎ制御は、従来技術に比べ、消費電力が同じでありながら、上記のような利点があることから、今後プラズマプロセスの技術において重要になる。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。プラズマプロセスの揺らぎ制御によるSi系単分散ナノ粒子の非凝集合成技術において、粒径と形状分布の制御に成功しており、この研究成果を特許として権利化し、コーディネーターを通じて企業と連携を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
ペロブスカイト型酸化物を用いる非貴金属三元触媒の開発九州大学石原達己自動車の排ガス浄化を目的にPt-Pd-Rhからなる三元触媒が用いられているが、Ptの高騰や資源的制約から非貴金属系の三元触媒の開発が強く求められている。本研究ではペロブスカイト型酸化物を用いる新三元触媒の開発を行うことを目標とする。種々の酸化物の三元触媒能を評価したところPr(Sr)MnO3の三元触媒活性が高く、とくにMnサイトにCuを添加したPrMnO3触媒の活性が高いことがわかった。反応はNOの還元が進みにくく、三成分を完全に除去するには高温が必要であった。しかし、Pdを5%と少量Mnサイトに添加した際に300℃で、三成分を除去できた。目標の200℃に比べると反応温度が高くなったが、ほぼ目標を達成できた。一方、BaOを担持したY2O3が比較的、良好なNO吸蔵特性を示し、低温でも大きな水素吸蔵特性を有することを見出し、目標を達成できた。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。NOの吸蔵能力を有する触媒と分解触媒を組み合わせた高活性触媒を開発した。安価な触媒開発は魅力的テーマであり、予定されていた検討項目は実施されている。研究成果を特許として権利化し、コーディネーターを通じて企業と連携し、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
非生理的環境下で利用可能な酵素―無機層状物質複合体の開発長崎大学鎌田海無機層状物質層間への固定により物理・化学的に不安定な酵素分子の非生理的環境における耐久性向上を目指した。ホスト層として鉄チタン酸、ゲスト酵素としてペルオキシダーゼを用い、液相中で両者を混合することで酵素―鉄チタン酸複合体が生成した。層間に固定化されたペルオキシダーゼの耐紫外線安定性はホスト層の遮蔽効果により劇的に改善された。また、強磁性鉄チタン酸の磁化率は還元処理により増加し、生体分子固定化磁気ビーズに類似した磁気的応用可能なホスト層が得られた。今後、耐熱性あるいは耐溶媒性など種々の非生理的環境における酵素安定性を多面的に評価し、合成物の工業的利用価値の向上を図る。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。酵素分子の耐紫外線安全性が層状物質への層間への固定化により改善されることを見出している。研究成果を特許として権利化し、企業と連携して市場調査を行い、実用化に向けた研究を検討することが望ましい。
チタン材料に優れた耐摩耗性と耐食性を与える表面処理技術の開発熊本大学森園靖浩チタンは高い比強度と優れた耐食性を有する素材であるが、鉄鋼材料と比較して耐摩耗性に劣る。この改善策として、申請者らは最近、炭素鋼と炭素材料からなる混合粉末を利用した窒素雰囲気中での熱処理により、チタン材料表面に硬質のチタン炭窒化物を形成できることを見出した。そこで本研究では、この表面処理技術の実用化を目指し、最適処理条件について調査した。全ての実験パラメータの最適化には至らなかったが、最終的には従来のPVD法と同様、“黄金色を呈した硬質層”をチタン材料表面に形成することができた。「電気炉があるところならどこでも、安価に表面処理が可能」という本法を実用技術として確立するため、今後も調査を続けていく。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。炭素鋼と炭素材料からなる混合粉末を利用した窒素雰囲気中での熱処理により、チタン材料表面に硬質のチタン炭窒化物を形成できることを見出している。今回の研究成果を生かし、さらに周辺特許を検討すると共に、コーディネーターを通じて企業と連携を行い、実用化に向けた研究開発を進めることが望まれる。
有機溶媒中微量水分の新規分析法熊本大学大平慎一微量でも燃焼機関や化学反応に悪影響を及ぼす有機溶媒中水分の含有量を試薬フリーで高感度に検出するシステムの開発を目的とした。ガラス管内に感湿薄膜を形成し、その電気容量変化をモニターすることで高感度な湿度センサーを構築した。さらに、そのセンサー内で有機溶媒中の水分を選択的に気化する機構を組み込み、試料溶媒中の水分を検出した。測定試料と同じ溶媒を一定流量で流し、30 μL の試料を導入するだけで100 ppm~100%までの含水を定量できた。また、測定結果は、ガスクロマトグラフ/熱伝導度検出器による結果とよい一致を示した(相関係数0.99)。さらに、同じシステムでアルコール類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸を測定試料とすることができた。今後、多くの測定対象によるシステム有効性の検証が望まれる。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。有機溶媒中の微量水分の連続測定の可能性が示され、実用化に向けての技術移転が期待できる。有機溶媒中の微量の水分量を検出することは重要であり、、研究成果を特許として権利化し、コーディネーターを通じて企業との連携を強化し、実用化を検討することが望ましい。

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