第4回JST20周年記念シンポジウム開催レポート 基調講演

山海 嘉之氏
 (筑波大学システム情報系教授・サイバニクス研究センター長 CYBERDYNE株式会社社長/CEO)

「被災地支援を通して世界へ
~世界初のイノベーションで社会変革・産業変革を牽引する~」

 サイボーグ型ロボット「ロボットスーツHAL®」の開発者として知られる山海氏は、筑波大学教授であるとともに自らが立ち上げたベンチャー企業「CYBERDYNE(サイバーダイン)」の社長でもある。基調講演では「被災地支援を通して世界へ」と題し、人の脳や神経と相互作用するロボット工学の可能性を分かりやすく語った。


筑波大学システム情報系教授・サイバニクス研究センター長 CYBERDYNE株式会社社長/CEO 山海 嘉之氏
筑波大学システム情報系教授・サイバニクス研究センター長
CYBERDYNE株式会社社長/CEO
山海 嘉之氏

 山海氏は最初に、「基礎研究と社会をつなぐ」と語り、そのターゲットに「重介護ゼロ®社会」を掲げた。狩猟、農業、工業、情報化と進んできた社会の先にはどのような社会があるのかと問い、その社会を『Society5.0』と説明した。また、その実現に向けたカギとして、まずは理想の未来を想像し、そこから現在を見たときの課題を解決することにより結果として理想の未来に到達できるとする、“バックキャスト思考”の重要性を強調し、そのためには専門外の分野も積極的に学ぶ姿勢が必要であることを説いた。それをもとに提唱したのが、人・ロボット・情報系を融合複合した新学術領域「サイバニクス」であり、そのサイバニクスを駆使して開発されたのが、世界初のサイボーグ型ロボット「ロボットスーツHAL」だ。HALは人間の脳神経系の情報をもとに装着者の動作をアシストするだけではなく、HALを装着して意思に従った運動を繰り返し行うことで、実際の運動に連動した感覚神経系の情報が脳にフィードバックされ、脳や神経系の再学習や機能再生を促すという。この仕組みを利用した医療用のHAL®は、身体機能を改善する世界初の治療機器として、日本、欧州で医療機器として承認されている。


 人は身体を動かそうとするとき、脳から脊髄や運動ニューロンを通じて筋肉に命令が伝達され、その際に微弱な生体電位信号が皮膚表面に漏れ出てくる。HALはその生体電位信号を皮膚に貼ったセンサで読み取り、HALが装着者の意思に従った動作をアシストするという。

 最近は人間とロボットが一体化したサイボーグが活躍する漫画やSF映画が人気だが、山海氏は「現実はSFを超える」という。それだけに「科学は悪用すれば怖いもの」と指摘し、テクノロジーが進歩するほど、倫理観、社会観、人間観が重要になってくると言及した。

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第4回JST20周年記念シンポジウム



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