第2回JST20周年記念シンポジウム開催レポート パネルディスカッション

「イノベーションを語る」
   ~企業、大学、公的機関の役割とは~

第2回JST周年記念シンポジウム

  • ■パネリスト:
  •  株式会社ニコン 代表取締役会長
     木村眞琴
  •  横浜国立大学大学院 国際社会科学研究院 教授
     河野英子
  •  国立研究開発法人 産業技術総合研究所 理事長
     中鉢良治
  •  東京理科大学 学長
     藤嶋 昭
  •  国立研究開発法人 科学技術振興機構 理事長
     中村道治
  • ■モデレータ:
  •  京都大学大学院 総合生存学館「思修館」教授
     山口栄一
  • (敬称略)

 最初に、モデレータの山口栄一・京都大学大学院教授が、「第1回のテーマ“人材のあり方”に続いて、第2回は、技術革新のほか、経済価値、社会価値を改革する“イノベーション”について、パネリスト一人ひとりのイノベーション観を語っていただきたい」と述べ、ディスカッションが開始された。

 まず、株式会社ニコンの代表取締役会長・木村眞琴氏が「イノベーションを実行するには既存価値を破壊し、新しい価値を創造することが必要。既存価値の破壊、これは企業にとってはなかなか難しい。フィルムからデジタルへの変換などがそれをよく表している。価値の転換をできるかどうかで、その後の事業に大きな影響を与える。そのためには、開発から生産販売まで、全部門のベクトル合わせが重要である」と説明し、これからの課題を提示した。
 続いて、河野英子・横浜国立大学大学院国際社会学科研究院教授が「経営学的観点からすると、社外との連携以上に社内のマネジメントが難しいことに留意すべき。イノベーションを継続的に生み出していくためには、知識の探索と活用の両立が重要。その両立のもとで高い経営成果を実現している優良企業例として、浜松ホトニクスをあげたい」とイノベーションをもとに成長してきた企業事例を提示した。

 中鉢良治・国立研究開発法人産業技術総合研究所理事長は「技術が高度化・複雑化している昨今、イノベーションを進めるには、一企業単独ではコストと時間が足りない。したがって、民間の競争原理、市場原理が働かない領域は、大学や公的機関が主導し、産業化、実用化のための研究開発は、企業が中心となって、お互い連携しながら進めなければならないが、日本はそうした各界の結集力が弱いように思う」と提言した。
 基調講演に続き、藤嶋昭・東京理科大学学長は「イノベーションを行おうとする時、下からあげて行くと同時に、トップに理解してもらうサンドイッチ方式しかないのではないか」と具体的な解決方法を示す。
 中村道治・国立研究開発法人科学技術振興機構理事長は、「イノベーション創出におけるJSTの役割は、コトを興す、つなぐ、リスクテイクの3つがある。そして4つ目としてサイバー世界が到来している今日、情報通信技術の重要性にもっと留意すべき」と続けた。

 その後、山口モデレータの鋭い指摘を含んだ進行によって、活発な議論が展開された。「境界連結の欠如をただすために、プログラム・ディレクターやプロジェクト・マネージャーを育成・活用することが大切ではないか」「イノベーションを起こすには、専門に特化した人でなく、広い知識や教養をもった人材が必要」「大学をより元気にすること、クリエイティブにすることが大切だ」「産業技術総合研究所のような組織には、新産業をおこす使命があるのではないか」「JSTの役割は今後オペレーショナルなレベルから科学プロデュースするところ(日本の科学技術を牽引する)まで引きあげるべきだ」など、白熱した議論が続いた。最後は会場の参加者からの質疑応答を経て、1時間にわたるディスカッションは盛況のうちに幕を閉じた。

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国立研究開発法人産業技術総合研究所理事長 中鉢良治氏
国立研究開発法人
産業技術総合研究所 理事長
中鉢良治氏

横浜国立大学国際社会科学研究院 教授 河野英子氏
横浜国立大学大学院
国際社会科学研究院 教授
河野英子氏

株式会社ニコン 代表取締役会長 木村眞琴氏
株式会社ニコン 代表取締役会長
木村眞琴氏

科学技術振興機構理事長 中村道治
国立研究開発法人
科学技術振興機構 理事長
中村道治

東京理科大学 学長 藤嶋 昭氏
東京理科大学 学長
藤嶋 昭氏
 

京都大学大学院 総合生存学館「思修館」教授 山口栄一氏
京都大学大学院
総合生存学館「思修館」教授
山口栄一氏



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