第2回JST20周年記念シンポジウム開催レポート 基調講演

東京理科大学 学長
藤嶋 昭氏

「偉人に学び、新しい科学を作ろう!」

 偉人は続き、偉人が持っている「知」はつながっていく。基調講演に立った藤嶋昭・東京理科大学学長が、偉人たちの足跡から新しい科学技術の行く末を語った。


東京理科大学学長 藤嶋昭氏
東京理科大学 学長
藤嶋 昭氏

 冒頭、藤嶋氏は偉人たちの輩出について語る。「偉人を調べてみると、偉人はつながっていることがわかる。例えば2000年前のギリシャでは、アリストテレス、ピタゴラス、プラトンといった偉人たちがほぼ同時期に現れ、人類の文化に素晴らしい基礎を築く。ルネサンス期には、イタリアにレオナルド・ダ・ビンチ、ミケランジェロ、ラファエロ。続いて、ガリレオ・ガリレイが輩出して特別な雰囲気をつくりあげ、それぞれ大きな足跡を残していく。こうした流れはイギリスのシェイクスピアやニュートンに受け継がれ、ボルタ、デイビー、ファラデー、モーツァルト、さらにルノアール、ゴッホ、ゴーギャンなどが同時代に活躍する不思議さ、キュリー夫人の偉業、その12歳年下のアインシュタインの貢献につながっていく」と語った。今年は一般相対性理論百周年であり、偉人たちの基礎的な研究のつながりが、のちのちの我々の生活を豊かにし、変革を導いていることを紹介。

 さらに、新しい科学や革新的な技術を生み出す研究者には3つのタイプがあると藤嶋氏。「基礎研究を重視するニールス・ボーア型、応用研究を重視するトマス・エジソン型、そして、基礎から応用研究までを重視するルイ・パスツール型がある。どのタイプも重要だが、自然現象に学びながら研究を進めるパスツール型は、中でも大きな影響力を持つ」と偉大な先達の研究のやり方や学ぶべきことの多さを語った。

 藤嶋氏は自らの体験として、基礎的な研究からスタートして、光触媒では丸ビルのタイルや新幹線の空気清浄機に応用されるなど実際に役に立つところまで成果をあげた。そうした業績が中学生の教科書にも採りあげられるようになり、科学技術白書にも掲載され、現在も光の利用の研究を行っていることを語った。さらに、『数学をつくった人びと』という書籍から、ベルヌーイ一家の人々は2~3代にわたって数学者として一流の成果を残していることを紹介し、環境と教育がいかに大事かを付け加えた。
 最後に、「物理や化学に関連する領域には宝の島がたくさん隠されている。それを見つけ出して役立てることも大切である。私たち現代の研究者も、個々の優れた発想を生かし、先人に学びながら大きなイノベーションを起こしたい」と講演を締めくくった。

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第2回JST20周年記念シンポジウム



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