JST20周年記念式典 開催報告

JST20周年記念式典受付風景

 11月4日(金)、東京・有楽町の東京国際フォーラムB棟 ホールB5において、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)は20周年記念式典を開催した。式典は、昨年から今年にかけて5回の記念シンポジウム等をはじめとする多彩な活動を展開してきたJST20周年記念事業の集大成として実施したもの。当日は16時に受付が始まると、国会議員や大学、企業、官庁の関係者ら約200名が続々と来場した。

JST半世紀の歩み
JST半世紀の歩み

 


科学技術振興機構理事長 濵口道成
科学技術振興機構理事長
濵口 道成


 初めに、主催者を代表してJST理事長の濵口道成が「理事長式辞」を述べ、来賓をはじめ関係者に向けて感謝の意を表し、「次世代の希望と活力を生み出すために、科学技術がますます重要な時代を迎えている。我々の責務を全うするため、“濵口プラン”に基づき、内外の大学や産業界との緊密なパートナーシップを深め、国民生活や社会の持続的な発展に貢献したい。また、世界トップレベルの研究を行うネットワーク型研究所として未来共創イノベーションを先導し、日本の科学技術、産業界の活性化のために邁進したい」と、21年目に向けての決意を表した。


衆議院議員、総務大臣 高市 早苗氏
衆議院議員、総務大臣
高市 早苗氏

衆議院議員、文部科学大臣政務官 田野瀬 太道氏
衆議院議員、文部科学大臣政務官
田野瀬 太道氏

株式会社日立製作所顧問  住川 雅晴氏
株式会社 日立製作所顧問
住川 雅晴氏

 続いて、「来賓祝辞」では、高市早苗氏(衆議院議員、総務大臣)、田野瀬太道氏(衆議院議員、文部科学大臣政務官)、住川雅晴氏(株式会社 日立製作所顧問)、安西祐一郎氏(独立行政法人 日本学術振興会理事長)、山本尚氏(日本化学会会長、中部大学教授)が順に登壇し、祝辞を述べた。


 ~以下、来賓祝辞より一部抜粋~

「IoT時代の核となる技術であるAIの研究開発と実装を合わせて進めたい。日本のイノベーションを先導してきたJSTの知見も活かし、省庁の垣根を越えてAI、IoT、ビッグデータ等について世界をリードしていきたい。そして、日本列島の隅々まで経済活動が行きわたり、イノベーションが絶え間なく起こる国造りに邁進していきたいと思います」(高市氏)

「濵口理事長のリーダーシップの下、引き続き、内外の動向の変化をいち早く察知するとともに、未来を洞察し、大変革時代の科学技術イノベーションを先導していただきたいと強く熱望しています」(田野瀬氏)

「民間企業の一人として、2点JSTの方々や関係の方々にお願い申し上げたい。1点目は、研究成果の財産化。2点目は、出口条件を明確にした研究開発プロジェクトの推進。この2つの点において、JSTが今後ますます活動を強化していただくことをお願い申し上げます」(住川氏)



独立行政法人 日本学術振興会理事長 安西 祐一郎氏
独立行政法人 日本学術振興会理事長
安西 祐一郎氏


日本化学会会長、中部大学教授 山本 尚氏
日本化学会会長、中部大学教授
山本 尚氏



「日本学術振興会は、科学研究費助成(科研費)、特別研究員事業等々、研究者の独創的な発想を基にした総合的な助成事業を行っています。JSTとは車の両輪として、わが国のイノベーションの推進にも役立っていければと思っております」(安西氏)


「大学や大学院では今後、若い研究者には論文を書く教育より、問題を発想する能力の啓発が、はるかに大切なのではないかと思っています。JSTが率先して大学教育に対し、いかにして問題を発見するのかという教育が必要であると説いていただき、わが国の大学を今後も強く先導していただければと願っています」(山本氏)



 5名の来賓の祝辞が終わると、司会者が会場にいる来賓の方々を紹介し、川端達夫氏(衆議院副議長)らから寄せられた祝電を読み上げた。その後、ひときわ盛大な拍手で迎えられたのは、2014年にノーベル物理学賞を受賞した天野浩氏(名古屋大学教授)。天野氏は「青色LEDにおけるJSTの貢献と未来のイノベーション創出への期待」と題して、記念講演を行った。


 名古屋大学教授 天野 浩氏
名古屋大学教授
天野 浩氏

 天野氏は最初に「JSTの委託開発制度に名古屋大学の赤﨑勇教授と豊田合成株式会社の青色LEDのプロジェクトが採択されたのが1987年、29年前のことでございました。そのとき、私は学生で、大変有難かったことを覚えています。今日、このような場でお礼の機会を与えていただきまして、感謝申し上げます」と述べた。

 そして、「なぜ日本人1人当たりのGDP(国内総生産)が低いのか」と問題を提起し、「輸入に頼るだけでは、未来はないのではないか。日本ならではの取り組みを考えた方が、われわれの力を発揮できるのではと考えています」と、現在の取り組みについて語り始めた。

 まず、天野氏は「LED電球によって、世界15億人に明かりを提供することができました。中でも印象深いのは、遊牧生活が基本のモンゴルの人たち。モンゴルの人たちの中には、明かりがなく不便だったために都会に定住する人が増えていたそうです。でもLED電球によって、また遊牧生活に戻る若者たちが増えているとか。今年3月に遊牧生活をしているモンゴルの家族を訪問したら、LED電球が使われていて、非常に嬉しかったです」とエピソードを披露。

 

 続けて「さらに発展させて、水問題の解決に挑戦しています」と語り、「ユニセフの報告によれば、いまだに世界の6.6億人もの人が安全な飲み水にアクセスできない。24億人もの人が衛生的なトイレを使えない。それに対して、この材料を用いた紫外線の殺菌装置<深紫外線LED>が市販できるまでに至りました」と報告した。


 最後に、これからの取組みとして、パワーデバイス(インバータ)について紹介。天野氏は、日本はインバータの先進国であると前置きし、「インバータはホテルの空調だけではなく、太陽電池、電気自動車、将来の燃料電池車にも使われます。そうすると、日本のエネルギーは問題ないのではないように思われるが、実は落とし穴があります」と話し、シリコンで作られているインバータは電力の損失も多いことを解説。「元々の発電のうちの4分の1はインバーターコンバーターのところで損失していますが、シリコンから青色LEDの材料(窒化ガリウム)に変えると、全体で10%近い省電力化が可能になります。例えば、水をきれいにするとか、あるいは電気自動車、燃料電池車、ロボットにも使えます。それを社会実装するために、どうしたらいいか。濵口先生のプランを参考に、われわれなりのプランを作って頑張っております」と“濵口プラン”についても言及した。


天野 浩氏



天野 浩氏



 天野氏は、濵口プランの中で一番大切にしていることは「若い人が思う存分、研究できる仕組み作り」と明かし、次世代の若者たちに期待を寄せた。そして、「これまで日本では、デスバレーと呼ばれる大学と企業を繋ぐところが手薄でした。今後は、大学、国研、企業が参加したコンソーシアムで研究組合を作って、オープンイノベーションとクローズドイノベーションをうまく使い分け、新たな日本型の共同研究システムを作ることで、社会実装を加速しようとしています」と意気込みを見せた。
 また、その実現のためには、産学連携推進のための若手スタッフの充実などが今後の課題であると締め括られ、場内から大きな拍手が送られた。

 式典には、各国大使館および海外の関係機関からもご出席いただき、日英同時通訳による国際色豊かな雰囲気の中、閉会の辞をもって記念式典を終えた。


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