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概要

JST20周年記念誌JapanWay0203

第2部│歴史編SATREPSインドネシアでCO 2の地下貯留およびモニタリングに関する先導的研究を行う点から、文部科学省とJSTは国際共同研究としての観点からそれぞれ評価し、最終的に共同で採否を決定する。審査では、科学技術的および社会的効果などの他、予算内容、実行の可能性、地域や国別の偏りなども考慮される。研究期間は3年から5年、研究費は年間約1億円以内、うち約3分の2がODAとしてJICAから、約3分の1が競争的資金としてJSTから支給される。この仕組みは省をまたがるプログラムの成功例として、欧米諸国からも注目されている。対象となる研究分野・領域は、環境・エネルギー、生物資源、防災、感染症としてきたが、そのうち感染症に関するものは2015年度から新たに設立された国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)に移管された。これらも含め、2015年度までに43カ国との間で99件(2015年度のAMED採択を含めると101件)のプロジェクトを採択、推進してきた。応募件数は毎年採択件数の7、8倍から10倍程度である。発足して9年。その間の開発途上国の目覚ましい発展や科学技術レベルの向上で、SATREPSに求められるニーズ、期待も変化してきている。これまで得られた成果の社会実装、第三国への水平展開に加え、相手国のニーズや事情に沿った柔軟な運営を可能とするなど、より戦略的な推進が期待される。■アジアの研究開発・人材育成のためにe-ASIA JRPの試み「第4期科学技術基本計画(2011〈平成23〉年)」で掲げられた「東アジア・サイエンス&イノベーション・エリア構想」を具現化するため、2012年度に誕生したのが「e-ASIA共同研究プログラム(e-ASIA JRP)」である。プログラムの対象機関は、東アジアサミット(EAS)の参加国、いわゆるASEAN+8の18カ国(ASEAN加盟10カ国+日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランド、米国、ロシアの8カ国)の公的ファンディング機関(FA)とした。開始当初に参加表明したのは18カ国中8カ国9FAだったが、その後協力の輪は大きく広がり、2015年8月には、12カ国17FAにまで拡大した。さらに、現在は複数の未参加国FAが新たな参加を検討している。日本からは、JSTの他、2015年4月よりAMEDが参加している。e-ASIA JRPの主な活動は、3カ国以上のFAの参加による公募を通じた多国間共同研究課題の支援、ワークショップなどのイベント開催による研究者交流の促進、そして国費留学生制度を活用したe-ASIA JRP参加国からの留学生招致などである。中でも、3カ国以上の公的ファンディング機関の支援により実施される共同研究は、本プログラムのユニークな特徴として挙げられる。これは、JSTはもとより、2国間共同研究の経験が乏しい国からの参加FAにとっても非常に野心的な試みだが、この制約から生じる課題をともに乗り越える過程で、各国機関が国際研究協力を行うための普遍的な知識を獲得しつつあることは、今後の国際研究協力の進展にとって大きな成果である。e-ASIA JRPはイコールパートナーシップを理念としており、参加FAの責務は平等である。研究資金の拠出も同等であることが期待され、各国FAが合意した研究課題では、それぞれのFAがそれぞれ自国の研究者を支援するというマッチングファンド方式を採っている。2015年5月の時点では、「ナノテク・材料」「バイオマス・植物科学」「ヘルスリサーチ」「防災」「先端融合」という5つの協力分野において、11の共同研究プロジェクト(ナノテク・材料:3、バイオマス・植物科学:1、ヘルスリサーチ:7)が採択されている。加えて、この5分野のワークショップを、シンガポール、インドネシア、ラオス、ミャンマー、日本、フィリピンで開催している。本プログラムは共同研究の支援が活動の中心である72