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概要

JST20周年記念誌JapanWay0203

第2部│歴史編野を設定し、産学がプラットフォームを形成して研究開発を重点的に進めることも方策の一つである。JSTは、国の方針に基づく先端計測分析技術・機器の開発、および産学の対話などに基づくテーマ設定型の研究開発を実施している。最先端の研究開発、生産技術の確立には、それに対応する計測分析技術が必要不可欠であるが、わが国では海外製品への依存度が高いことが指摘されている。2002(平成14)年、株式会社島津製作所の田中耕一博士のノーベル化学賞受賞を契機に、開発の重要性に対する認識が高まり、2004年度から「先端計測分析技術・機器開発事業(現先端計測分析技術・機器開発プログラム)」がスタートした。本制度は、高性能顕微鏡、質量分析装置、分離装置などの多種多様な計測分析技術・機器の開発に特化した制度であり、産学が共同で開発する。特徴としては、計測分析機器の要素技術の開発から応用開発、プロトタイプによる実証までを一貫して実施するために、開発フェーズに対応した開発タイプを設けるとともに、開発が成功した場合は、評価を踏まえて次の開発タイプへステップアップすることも可能としている。また、2012年度からはターゲットを絞った「重点開発領域」を設定し、東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射性物質による環境汚染に早急に対応するための「放射線計測領域」を立ち上げるなど、社会からの要請に応える研究開発も実施している。この取り組みは、2004年の事業開始から約350件以上の開発課題を採択しており、そのうち50件以上が製品化され、その売上総額は700億円を超えている(2016年現在)。その他のテーマ・分野重点型の取り組みとして、2009年度には、JSTの基礎研究事業などの成果を基にテーマを設定し、そのテーマの下で実用化に向けて、終始一貫してシームレスに研究開発を推進する「戦略的イノベーション創出推進プログラム(S-イノベ)」を創設した。また、2010年度には、産業界で基礎研究テーマを公募し、それを基にテーマを設定し、産と学の対話の場である「産学共創の場」を通じて、大学等において産業界の視点を意識した基礎研究を推進する「産学共創基礎基盤研究プログラム」を開始した。両制度についても成果が上がりつつあるが、2015年度のA-STEPの見直しの際、両制度の趣旨を踏まえた新たな支援タイプ(産業ニーズ対応タイプ、戦略テーマ重点タイプ)を設け、新規テーマの研究開発を推進している。■東日本大震災からの復興支援先端計測分析技術・機器開発プログラムで開発された三次元前眼部診断装置2011(平成23)年3月11日、三陸沖を震源とする東日本大震災が発生し、わが国に甚大な被害をもたらした。JSTは震災の翌年、2012年4月に「JST復興促進センター」を開設し、東日本大震災からの復興事業として「復興促進プログラム」を開始した。被災地域に密着した活動を行うため、センターの事務所は特に被害が大きかった被災3県の岩手県(盛岡市)、宮城県(仙台市)、福島県(郡山市)の3カ所に設置し、本部機能は仙台に置いた。各事務所には、技術の目利きとしてマッチングプランナーを計18人配置した。復興促進プログラムは「マッチング促進」、「A-STEP」、「産学共創」の三つの支援プログラムからなり、メインとなる事業はマッチング促進である。震災復興に当たっては単に元に戻る「復旧」だけではなく、その先を見据えた「復興」の施策が必要とされ、66