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概要

JST20周年記念誌JapanWay0203

第1章│科学技術イノベーションの創出果を創造することを考えると、これよりはるかに大きな経済波及の創出に寄与したと見なすことができる。委託開発制度の利用による特筆すべき成果としては、名古屋大学の赤﨑勇教授(当時)と豊田合成株式会社が共同で行った青色発光ダイオードの研究開発が挙げられる。本研究開発を経て、1995年に販売が開始された青色発光ダイオードは、現在、信号や照明、ディスプレーのバックライトをはじめ幅広く活用されており、応用製品で3.6兆円の売り上げと3.2万人の雇用を生み出した。また、委託開発制度に関わる実施料として2013年度までにJSTに約56億円の収入がもたらされている。2014年には、上記の窒化ガリウム系青色発光ダイオードへの貢献が評価され、赤﨑教授は、名古屋大学の天野浩教授、カリフォルニア大学の中村修二教授と共同で、ノーベル物理学賞を受賞した。■地域の科学技術イノベーションを創出するJST発足と同時に開始されたのが、地域における科学技術によるイノベーションの創出に向けた取り組みである。1995(平成7)年の科学技術基本法および科学技術会議における「地域における科学技術活動の活性化に関する基本指針」の制定、1996年の第1期科学技術基本計画を踏まえて開始された。まず1996年度に創設されたのが、「地域研究開発促進拠点支援事業(RSP)」である。RSP事業では、地域における産学官の交流を活性化する目的で、「新技術コーディネーター」(その後科学技術コーディネーターに改称)を都道府県の財団法人等に配置し、地域の優れた研究開発人材の発掘、人的ネットワークの構築などを目指して活動を行った。その後、RSP事業は地域の研究シーズの発掘・育成に制度の軸足を移し、2005年度にその役割を終了した。またJSTは、1997年度に「地域結集型共同研究事業」を創設した。本制度は、地域で企業化の必要性の高い分野の個別的研究開発課題を集中的に実施する産学官共同研究事業であり、その分野の研究を継続・発展させ、さらに成果を利活用する地域COE(Center ofExcellence)の整備を制度目標の中心として実施した。と改称し、新事業・新産業創出を制度目標の主軸として実施(2008年度まで新規採択を実施)するとともに、2009年度には卓越した研究を実施している研究者を中心としたドリームチームにより、特定分野の産業創出を目指す「地域卓越研究者戦略的結集プログラム」を実施した(2013年度に終了)。2013年度には文部科学省の地域科学技術振興施策の研究成果を生かし、国際競争力の高い広域連携による「スーパークラスター」を構築する取り組みを開始し、現在も継続している。さらに、2001年以降、地域イノベーション創出に向けた拠点として、産学官交流機能および研究室などを有する研究成果活用プラザ(その後JSTイノベーションプラザに改称。以下「プラザ」という)を8カ所、および地域のニーズに応じたよりきめ細かな産学連携活動を推進するための拠点であるJSTサテライト(その後JSTイノベーションサテライトに改称。以下「サテライト」という)を8カ所整備した。■地域の産学官連携に大きな効果プラザ・サテライトでは、「地域の産学官交流」の実現に向けて、各プラザ・サテライトに科学技術コーディネーターを配置し、セミナー・フォーラム・研究会などの開催や大学の技術シーズ、企業ニーズ情報の収集・マッチングなどの取り組みを実施し、地域の産学官ネットワークを構築した。また、大学の技術シーズの発掘から実用化開発までのシームレスな研究開発プログラムにより、地域における研究成果の育成、実用化開発を総合的に促進した。研究者や大学など研究機関・企業にとっても、プラザ・2005年度からは、「地域結集型研究開発プログラム」研究成果活用プラザ京都開館記念式典であいさつする沖村憲樹理事長63