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概要

JST20周年記念誌JapanWay0203

第1章│科学技術イノベーションの創出ヒト人工多能性幹(iPS)細胞の作成成功を機に、関連の幹細胞研究を急速に促進するための緊急提言課題解決型研究開発の提言(1)(2)(3)する」というビジョンを具体化するために、化学、物理、金属、セラミックス、鉄鋼などの学会、大学、研究所、企業などと連携して、CRDSが戦略プロポーザルとして取りまとめた。関係府省に対しても「元素戦略」の必要性を説き、産学官のさまざまな関係者の協力を得て、2007(平成19)年、文部科学省の「元素戦略プロジェクト」が経済産業省の「希少金属代替材料開発プロジェクト」との密な連携で研究開発をスタートした。「元素戦略」は、資源の限界を克服すること、新たな物質材料の基盤技術を拓くこと、さらにはわが国の産業界はもとより、世界の産業にも貢献することを目的とし、現在なお展開を続けている。2007年11月20日、『Cell』誌に山中伸弥教授のiPS細胞に関する画期的な研究成果が報告された。CRDSは報告から間もない同年12月7日付けで緊急提言を発し、12007年度内に実施すべき事項、22008年度以降5年以内に実施すべき事項を明示し、再生医療の1日でも早い実現に向けた指針を示して政府に働きかけた。2008年に戦略目標が設定され、ERATO、さきがけの双方で研究がスタートし、2010年には京都大学iPS細胞研究所が設立され、研究が大幅に加速された。■社会的期待・邂逅に関する取り組みCRDSは、科学技術に対し「社会が何を求めているか(社会的期待)」に応えることを研究開発戦略の立案に当たっての基本理念とし、2011(平成23)年から新たな方法論の検討に着手した。社会的期待の抽出と具体的な研究開発領域/課題の抽出を個々に進めた上で両者を結びつける(邂逅させる)一連のプロセスを開発し、次の3件の課題解決型の戦略プロポーザルを策定した(2014年6月)。1都市から構築するわが国の新たなエネルギー需給構造2強靭で持続可能な社会の実現に向けた社会インフラ統合管理システムの研究3ヒトの一生涯を通した健康維持戦略──特に胎児期~小児期における先制医療の重要性また、戦略プロポーザルの特徴である課題解決型アプローチについては、研究開発分野/領域の視点や枠組みにとらわれずに社会的課題を把握、認識することができ、また課題解決に寄与しうる研究開発領域/課題を複数の異なる分野から見出すことができる点に改善が見られた。一方、課題解決型アプローチでは解決が求められる課題への対処を起点として検討を進めるため、描かれる将来の社会像は問題が解決された状態のものにとどまる傾向にあることから、新たに未来志向で新規性のある社会像を描き、先駆的、先端的な研究開発課題を特定することを目指した方法論(未来創発型アプローチ)を検討することとなった。このように、CRDSは社会の変化や科学技術イノベーション政策の動向に応じて多様な戦略立案の方法論を展開し、実践している。57