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概要

JST20周年記念誌JapanWay0203

第2部│歴史編第2節│研究開発戦略の立案2003(平成15)年、JSTはシンクタンク「研究開発戦略センター(CRDS)」を設立した。従来の科学技術政策に基づいた活動に加え、新たに政策の提言を行う機能も併せ持つことになったのである。さらに、2006年に中国総合研究センター(現中国総合研究交流センターCRCC)、2009年には低炭素社会戦略センター(LCS)を設置。これらのシンクタンクを通して、JSTはわが国の科学技術政策や研究開発戦略に種々の提言を続けている。■国の科学技術政策を先導する戦略提案を行うCRDS研究開発戦略センター(CRDS)は、JSTにおける研究開発戦略の立案機能を抜本的に強化することにより、JSTのファンディングエージェンシーとしての体制強化を図るとともに、わが国全体の研究開発戦略の立案に貢献することを目的として、2003(平成15)年7月に設置された。設立当初より戦略立案に当たっては、最先端の研究者のみならず、企業や政府の政策立案者も参加するワークショップの開催(場の形成)を重視するとともに、研究開発分野を俯瞰し、重要課題を抽出し、さらに国際技術比較調査によりわが国のポジションを明確にするというユニークな検討プロセスを採用しており、この方法論は現在でも踏襲されている。2008年にユニット/チーム制を導入し、研究開発分野の俯瞰から重要課題(戦略スコープ)を抽出する定常的なユニットと、抽出された戦略スコープごとに複数ユニットの適任者数名から構成される時限的なチームを並立させ、チームが1年間で戦略プロポーザルを完成させる機能的かつ機動的な体制を構築した。ユニットは社会の時勢や政策ニーズに対応して柔軟に編成され、2016年4月現在は6ユニット制(環境・エネルギー、システム・情報科学技術、ナノテクノロジー・材料、ライフサイエンス・臨床医学、科学技術イノベーション政策および海外動向の各ユニット)をとっている。2010年には、社会的期待と科学技術分野の俯瞰から抽出された研究開発課題とを結びつける「邂逅」による戦略立案の方法論の検討を開始した。社会的期待・邂逅に関する取り組みは、科学技術と社会との関わりや課題達成型の研究開発を重視した第4期科学技術基本計画(2011年~)とも呼応し、ステークホルダーからの関心を集めた。また2011年からは、設立以来取り組んできた研究開発分野の俯瞰活動や国際技術比較調査を総合的に取りまとめた研究開発の俯瞰報告書の作成に着手し、2013年に初版が発行された。俯瞰報告書は、延べ1,500名を超える第一線の研究者との意見交換や情報提供等を反映させ、2年に一度発行している。2016年には隔年を埋めるべく「研究開発の新たな動向(2016年)」が発行された。俯瞰報告書は、関係府省の政策検討の場のみならず、産業界、関係シンクタンクなどにおいて幅広く活用されている。さらに、緊急を要する事案については、時機を捉えた提言を発した。京都大学山中伸弥教授のiPS細胞作製成功時の緊急提言や、東日本大震災に際しての「東日本大震災に関する緊急提言」、東京オリンピック招致が決定した際の「東京オリンピック・パラリンピック2020の先を見据えて」などがそれである。CRDSは、2016年3月末時点で116件の戦略プロポーザルを発信してきたが、その中から「元素戦略」と「iPS細胞」に関する戦略プロポーザルについて紹介する。■元素戦略とiPS研究の将来を見据えて「元素戦略」は、科学者の議論から生まれた「元素の機能を最大限に発揮することで、夢の新材料を実現56