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概要

JST20周年記念誌JapanWay0203

第2章│不易流行神宮の20年ごとの技術の再確認やシステムの改革にもあるものが多数含まれているように思う。エコシステムとして破綻のないように、森を造り、100年後、200年後に使用する部材を作りながら、20年ごとの改築を繰り返す。伊勢神宮の遷宮に見られるようなこうした日本の伝統的な文化は、実は国連の新しい持続可能な開発目標「SDGs」に適合しているのである。高度成長期に、私たちはすさまじい公害を体験している。東京の川も今ではきれいになっているが、魚もすめない最悪の状況であった。ディーゼルエンジン車の排気ガス規制などによって、東京にも青空が戻った。このように、日本はいろいろな問題を解決する苦しみを経て、今のクリーンな環境をつくり上げたのである。しかも、豊かな生活が実現できている。さらに、誰もがどこでも一定の技術水準の医療が受けられる。そんな社会を、日本人は戦後、実現してきた。この素晴らしい価値を自己認識し、かつその問題点もよく分析しながら、未来社会をどうつくっていくかを考える際に、われわれの持つ価値観を提示していく義務がある。先端技術を追いつつも、日本の各地域が持っているいろいろな文化や、一人一人の普通の人間の生き方の中にある価値観をどのようにして科学技術の中に染みこませるか。そうした課題に真正面から向き合わなければならない時代になってきている。それが、濵口プランの「地域創生への貢献」に込めた私の思いである。JSTは、これまでいろいろな地域振興事業を行ってきた。その遺産は確実に引き継がれていることは疑いない。一方、個々の事業を見てみると、途中で終わってしまったものがあるのも事実である。あえて地域創生を掲げたのは、東京と同じようなことをやるより、地域の独自性を生かさなければ日本の将来はないと考えたからである。■JSTと大学の関係も変わるべきネットワーク型研究所というものが、なぜ必要か。JSTは内外から注目された最初の基礎研究推進事業であるERATO立ち上げのときから、研究拠点をどこに設けるかでは大きな苦労があった。国立大学の先生たちの研究を支援するためには、大学施設などを活用させてもらうのが当たり前だが、それにはきちんとした契約を結ぶということがこれからは必要になってくる。今後のJSTについて語る濵口理事長JSTは、先輩たちの血のにじむような努力のおかげで今の状態があるのだが、先ほど申し上げた国立大学の疲弊感が強くなり、逆に、時代の要請からJSTがフロントラインに登場することが求められている。国立大学の側にも、法人化によりそれぞれ独自の判断ができる柔軟性が出てきているという事情がある。国立大学自体の内部は、社会に向かって開かれた存在にならなければいけないという認識が、この10年ほどの間に非常に強くなってきた。名古屋大学などは特にそうした意識が強くなっている。もはや「象牙の塔」などと、やゆされる時代ではない。JSTと国立大学の関係も、あうんの呼吸やあいまいな形ではなく、しっかりした契約を結んで進めるのが今の時代にふさわしい方法である。インターネットが大学の改革を促したともいえる。中世からずっと続いてきた大学のシステムは、知識を体系化して、それを少しずつ小売りして生きてきたようなも47