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概要

JST20周年記念誌JapanWay0203

第1章│社会の変化と共に広がったJSTの役割究開発期間は1年、研究費は上限200万円とした。産学官連携支援データベースを公開して、オープンイノベーションを先取りするような支援策もとられた。これらは「産学官連携は、地方の大学、研究者を含む国全体で取り組む必要がある。イノベーションプラザ・サテライトは全員参加のプラットホームにするという考えだった。データベースも誰もが利用しやすく、イノベーションに貢献できるようにした」との沖村の考えに基づいていた。米国のバイ・ドール法に倣って、日本でも1999年に作られた産業活力再生特別措置法に、特許に絡む大きな変更が盛り込まれた。米国と同様に、政府から研究委託された研究開発から生じた特許を、研究者や所属機関に帰属させることを可能にする条項である。研究開発受託者が中心となって、技術移転を促進することを狙いとしている。日本版バイ・ドール条項によって、全体としては産学連携にプラスに働いているとの評価が一般的である一方、それまで積極的に企業に研究成果を教え、産学連携に熱心だった大学の研究者が、かえって自由に企業に情報を流しにくくなる結果を招いている一面もある、という指摘も現在では聞かれる。「研究成果が社会に役立つことを願う工学者たちは、もともと企業への情報提供をいとわず、そうした大学の研究者の助力を得ていた有力企業も少なくない」と、阿部博之氏(元総合科学技術会議議員、元東北大学総長、現JST特別顧問)は、日本版バイ・ドール条項のプ「J-STORE」のウェブサイトラス面マイナス面を指摘する。JSTも日本版バイ・ドール条項によって頭の切り替えを迫られた。それまで、研究支援によって得られた2,000件ほどの有用特許を所有し、その中から見所のある成果を基に委託研究に移行するというのが、JSTの主要な事業の一つだったからである。しかし、研究資金を提供して得られた成果を特許申請するのは、JSTでなく大学や自治体、企業の役割に、というのが日本版バイ・ドール条項の主旨である。「JSTの産学官連携活動は、オールジャパンの観点からサポート役に徹する」(沖村)という事業の見直しが行われた。その一つが、2000年にサービスを開始したデータベース「J-STORE」の内容の充実である。「J-STORE」は、大学、国立試験研究機関の研究成果を企業へ技術移転し、実用化を促進することに寄与するさまざまなデータが入っている。もとより日本中の大学の特許も含まれていたが、さらに、出願中でまだ特許と認められていない未公開特許もここに加えるという見直しが行われた。権利侵害という微妙な問題が絡むため、未公開特許データは弁理士と相談し、権利関係の核心はつかめないが、方向は分かる表現に工夫したものとなっている。未公開特許データを「J-STORE」に加えたとたんにアクセス数が跳ね上がったことで、企業などに与えた影響の大きさが裏付けられた。現在、特許の申請だけでなく、得られた特許の管理に予想以上の費用や人手がかかることが分かった大学の中には、研究成果の特許申請を逡巡するところも出ている。JSTは海外への特許申請の支援は行っているが、今後、さらに特許の管理に関する支援要請が高まることも十分予想される。■社会のための科学ブダペスト宣言にも対応大学が企業に協力する産学連携などとんでもない。旧帝国大学の国立大学を中心にそうした言葉が35