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概要

JST20周年記念誌JapanWay0203

第1部│展望編が限界だった。コーディネーターの役割、つまり人を重視するJRDC以来の経験が生かされたといえる。「250件くらいのプログラムを採択し、270人くらいの雇用を生み出した。偽物の技術では、たとえ3人、5人の中小企業の方たちも救うことはできない。これはトップサイエンスを育てて、トップイノベーションに育てるという私の基本的考え方と全く同じだ」と、中村は、復興促進支援事業の手応えを語る。■トップサイエンス重視の産学官連携強化イノベーションを生み出す基礎研究推進事業は、当然、北澤宏一理事長にとっても最重要課題となった。広く浅く配分する日本学術振興会の科学研究費補助金(科研費)で生み出された成果から、これぞと目をつけた研究にJSTが研究資金を投入する。北澤が基礎研究推進事業についての説明に使った「二段ロケット型の研究資金配分システム」に対する理解は、科研費やピアレビュー方式に好意的な人が多い大学研究者などにも支持が広がった。2007(平成19)年11月、ヒトの皮膚細胞から人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作り出した山中伸弥京都大学教授の成果が米国の医学誌に発表された。その後のJSTの対応は機敏だった。CRDSがiPS研究を進める意義と具体的な研究の方向を提言し、いち早くERATOで研究体制を構築したほか、2008年5月にノーベル賞受賞者を含む海外からの指導的研究者を招いた国際会議を京都で開き、国民にiPS細胞研究の重要性を理解してもらう活動にも力を入れた。山中教授の研究に対するJSTの支援は、ヒトの皮膚細胞からiPS細胞作製という画期的な研究報告が出る4年前にさかのぼる。岸本忠三大阪大学学長が研究総括を務めるCREST「免疫難病・感染症等の先進医療技術」という領域の2003年度課題に山中教授の研究を採択している。岸本氏が、山中氏の研究を採択する際「うまくいくはずがないと思ったが、面接での迫力に感心して採択した」と後年語った話は、将来、ブレークする可能性の高い研究(者)を見つけ出す「目利き」の重要さを示す例としてよく引用される。ERATO、さきがけ、CRESTを中心とする研究成果の中で、さらに一押しすれば企業化が十分期待されるなど有望な研究課題について「切れ目なく継続し、発展を目指す」発展研究「SORST」が2000年からスタートしていた。現在、有機ELディスプレーや電子ペーパーの製品化が始まっている細野秀雄東京工業大学教授のIn-Ga-Zn-O(IGZO)アモルファス酸化物研究成果など、内外から注目される成果が「SORST」から生まれている。「SORST」はそ2008年5月、JSTが京都で開催したiPS国際シンポジウム30