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概要

JST20周年記念誌JapanWay0203

第1章│社会の変化と共に広がったJSTの役割団となったことになる。翌2004年4月、神奈川県の箱根プリンスホテルに国内トップクラスの研究者や府省関係者たち約40人が顔をそろえ、会議が開かれた。「日本の物質材料科学全体を見通して、将来の研究開発をどのように進めるべきか」について存分に語り合ってもらうことを狙いに、CRDSが呼びかけた1泊2日の合宿形式会議である。この会議から生まれたのが、その後、日本の重要な研究開発の方向を決める「元素戦略」だった。工業材料として不可欠な希少元素をありふれた元素で代替し、さらにこれまで全く知られていない機能を元素から引き出そうという挑戦的な研究開発構想だ。「元素戦略」は、CRDSの役割を明快に示した格好の例となる。箱根会議の合宿型会議の議論が、CRDSの戦略プロポーザル(提言)「元素戦略」(2007年11月)として結実し、この年、この提言に基づいた文部科学省の「元素戦略プロジェクト」と、関連する経済産業省および新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「希少金属代替材料開発プロジェクト」が動き出すまでに要した時間は、3年半余り。実際に政策立案担当者たちを動かす提言となるには、学界の意欲的研究者の動員に加え、政策担当者への周到な働きかけも不可欠であることを如実に示した例ともなった。何より必要なのは、CRDS担当者の先を見通す能力と、関係者たちとの議論、交渉に時間と手間を惜しまない強固な意志ということを、この成功例は示している。CRDSは発足して14年目に入った。JSTのためでもなく、文部科学省のためでもない、日本のあるべき研究の戦略目標を、という発足時の意気込みにかなう戦略的な政策提言をまとめ、意義のある政策に結び付ける任務を担うプロフェッショナルな集団として存続し続けることができるのか、重大な岐路に立っているようにも見える。■インターネット事業で積極的に情報発信沖村憲樹が理事長就任後に掲げた方針に、「インターネット事業体を目指す」があった。実際、他の政府機関や独立行政法人には見られないインターネットを利用した積極的な情報発信が行われた。沖村主導で数多く立ち上げられたウェブサイトは、JSTあるいは文部科学省の活動紹介だけが目的ではないという共通点を持ち、オー沖村憲樹第三代理事長ルジャパンを念頭に置いた特色あるウェブサイトが少なくない。産学官連携に関わるデータ集から関連イベントなどのお知らせ、さらには産学官連携の具体例を紹介したオリジナル記事などを盛り込んだ「産学官の道しるべ」は2005(平成17)年1月に開設。さらに科学技術政策に関わる公的な資料、研究助成・求人公募・科学技術関連イベント情報に加え、寄稿、インタビュー記事や講演内容の詳しい紹介など、人を中心に据えたオリジナル記事を重視する編集方針を通した「サイエンスポータル」(2006年開設)、英文で公開されている科学技術関連のデータ類を網羅し、海外からも日本の基本的な科学技術情報に触れられる英文サイト「Science Links Japan」(2006年開設)、中学生を対象とした身近な関心から世界を揺るがす話題まで科学に関する記事や科学用語辞書などを盛り込んだ「かがくナビ」(2007年開設)など。27