ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

JST20周年記念誌JapanWay0203

第1部│展望編ら理事長を引き継いだ沖村が、文部科学省の発足と、新しい科学技術基本計画への対応を迫られることになる。すぐに問題となったのが、もともと文部省の傘下にあった日本学術振興会とJSTの役割をいかに明確にするか、だった。文部科学省と新たな関係ができた中で、JSTはどうあるべきか。沖村が当時を振り返る。「JST発足時、国際協力と理解増進という新たな任務が課されたことで、科学技術を総合的に振興する新しい組織に変わった。さらに、文部科学省の発足によって強く意識したのが、大学と一緒にやらなければいけない組織になったということだ。有馬朗人元東京大学総長・元文部相、井村裕夫元京都大学総長など多くの研究者や、遠山敦子元文部科学相などを顧問に迎えた。さらに総合的な仕事に対応できるよう、職員の体質から変える必要があるため、研究経験者、企業の技術者、英語が堪能な人など中途採用でどんどん採用した」科学研究費補助金(科研費)の配分を担っている日本学術振興会と同じ文部科学省傘下となったことから、研究支援についても再構築を迫られる。「大学の基礎研究成果を基に戦略的にイノベーションを担う機関に」ということがJSTの明確な目標となる。実際に文部科学省から戦略目標がJSTに示されたが、それは、JSTにとっては満足できる内容ではなかった。これが、2003年7月、JST内に研究開発戦略センター(CRDS)を設立するきっかけとなる。国の科学技術イノベーション政策に関する調査、分析、提案を中立的な立場に立って行うことを目的とする組織だ。通商産業省(現経済産業省)が作っている産業のロードマップの先を行く、その産業を導く研究開発のロードマップを作るのが狙いだった。「初代センター長の野依良治先生(後に理化学研究所理事長、現CRDSセンター長)、次のセンター長の生駒俊明先生(東京大学名誉教授)には、JSTのためでもなく、文部科学省のためでもない、日本として研究すべき戦略目標を作ってほしい、と申し上げた」と、沖村は狙いを語る。基礎研究への支援強化が何より重要という、従来の考えに変わりはない。企業の役員を続けながらセンターに迎えられた生駒俊明氏が企業や大学から人を集めて精力的に議論を主導し、文部科学省や内閣府に戦略提言を行い、それを基に文部科学省が戦略目標をまとめ、JSTに投げ戻す、というスキームが作りあげられた。JSTが、科学技術政策の実行部隊という役割に加え、政策提言の機能を持つ集元素戦略構想が生まれた「箱根会議」26