ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

JST20周年記念誌JapanWay0203

第1部│展望編社会」「生命の科学と人間」「地球環境とフロンティア」という四つの展示領域それぞれの責任者として、北澤宏一東京大学教授(後にJST理事長、2007年10月~2011年9月)、安西祐一郎慶應義塾大学教授(後に慶應義塾長、現日本学術振興会理事長)、金澤一郎東京大学教授(後に日本学術会議会長)、茅陽一東京大学名誉教授(現公益財団法人地球環境産業技術研究機構理事長)ら学界の指導的な人たちに展示の作成を任せた。さらに館長はもともと核融合炉壁材料の研究者で、何より日本人宇宙飛行士として初めてスペースシャトルに搭乗して、知名度が抜群の毛利衛氏に依頼した。「科学者がコンセプトを作成し、科学者が展示物を作成し、科学者が運営する『日本の科学者の拠点』たる科学館を目指した」と、沖村は狙いを明かす。かくして、「展示内容は建設工事が始まってから議論」、「開館は川崎雅弘第二代理事長建設が決まってわずか2年半後」など異例ずくめの科学館造りが、無事、完了する。「上野公園の国立科学博物館、北の丸公園の科学技術館という先行の科学館に比べ、立地条件が悪い科学館に果たして客が入るか」という当初の心配も杞憂に終わった。とはいえ、科学館に対する社会の関心度は、海外先進国に比べるとまだ十分高いとはいえない。例えば米国の首都ワシントンの中心部、連邦議会議事堂とリンカーン記念館の間の広い区域に並ぶ、スミソニアン博物館はそれぞれの展示品もさることながら、入場料が無料という魅力を備えている。「政府の金だけでなく、寄付金で運営されているのがスミソニアンをはじめとする米国の科学館の特徴。日本の企業も科学館にお金を出してくれるようになるといいのだが」。JST理事長退任後、日本科学未来館の初代総館長を務めた中村守孝は、日本の科学館運営の難しさを指摘する。中村の「科学技術の施策を国民に理解してもらい、日本の科学技術の現状を海外にも知ってもらう」という要請に応え、日本科学未来館がさらに多くの人々から愛される科学館として発展を遂げるには、公的支援だけに頼らない、新たな収入増を図る工夫、仕組みが必要だろう。■内外の関心集めた基礎研究推進事業広く浅く基礎研究費を配分するという、長い伝統を持つ日本の研究助成の在り方を根本的に変えたERATOは、米国立科学財団(NSF)の視察団が二度訪れるほど海外からも注目された。川崎雅弘が理事長時代に、米マサチューセッツ工科大学など国際共同研究の相手機関を訪問したときのことである。米国立衛生研究所(NIH)で「ERATOの総括責任者はどのようにして選んでいるのか」という質問を受けた。説明したところ「ピアレビューでないのがよい。ピアレビューでは、平均値の人を選んでしまうから」と言われたという。同じ専門領域の研究者たちが審査して研究費の配分相手を決めるピアレビューは、研究費支給の最も一般的な手法として内外で実施されている。日本の科学研究費補助金(科研費)も同様だ。しかし、ピアレビューにも弱点があることは、NIHの指導的立場にある人たちも先刻承知の話ということになる。ERATOが海外からも注目された理由を示すエピソー24