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概要

JST20周年記念誌JapanWay0203

第1章│社会の変化と共に広がったJSTの役割JST設立3周年の記念講演会。円内は中村守孝理事長幅な権限を付与するERATOの手■基礎研究支援軸に法を「相当冒険だね」と言ってい新規事業にも挑戦た有馬氏も、納得した様子だった、という。1996(平成8)年10月1日、JST実際にはスタート後も、文部省が発足した。行政改革という流れからの風当たりは強かった。「国の中で決まった合併だったが、決立大学の教授を総括責任者にするまってしまった以上、結果をよりなら、科研費の申請はさせない」よいものにするにはどうしたらよ「大学の施設は使わせない」などいか。JICSTとJRDCの合併が決非協力的な姿勢が続いた。しかし、まった1995年2月の閣議決定から当時、地方分散という政策の大き4カ月後の6月、科学技術庁科学な流れがあったことも幸いする。技術振興局は「法人統合の進め方通商産業省が造ったハイテクセンに関する中間報告書」をまとめた。ターが各地にあるなど、国立大学「無駄を省く」ことに加え、「新し以外の施設を利用することで、国い行政ニーズに機動的に対応」と立大学に研究の拠点を置かずに済いう側面が行政改革にはあると前んだ。実際、国武化学組織プロジェ向きに捉え、新法人の長期ビジョクト(総括責任者:國武豊喜九州ンを提示している。大学教授、1987~1992年)や、その第一に挙げられているのが新海包接認識プロジェクト(同:「基礎研究の一層の推進」だった。新海征治九州大学教授、1990~基礎研究を担うのは学術行政を管1995年)は、福岡県の研究機関で轄する文部省というのが当時、世ある福岡工業試験場(現福岡県工間一般の見方である。あえて基礎業技術センター)を研究の場とし研究推進を第一に持ってきたのは、て利用していた。すでに走っていたERATOに対する国内外の評価の高さから得た自信によるものだ。基礎研究の推進を必要とする理由として挙げている「品格ある国家として相応しい役割を果たしていくために」という記述にも、「基礎研究ただ乗り」批判に対し、きちんと応えなければならないという強い意思が込められていた。その他、長期ビジョンには「国際的役割を果たしていくため」「科学技術人材の充実のため」「地域における科学技術活動を活性化させるため」として、それぞれ必要となる「科学技術振興基盤の整備」がうたわれていた。これらはいずれもJST発足時の事業目的に組み込まれる。特に「理解増進」と「国際協力」は、JST発足とともに課された新しい任務となった。JICST理事長を約5年務めた後、引き続き初代理事長(1996年10月~1999年12月)としてJSTを率いた中村守孝は、JST発足時を次のように振り返る。「JICST時代からだんだん予算が絞られて無駄を排除せよという要請が強くなっていた。JST誕生の理由は、特殊法人を減らすには似通った法人を一緒にすればよい、ということだ。私も、新しい法人になったから新しい展開をしようというよりは、いかに仕事を合理化、効率化するかの方にウエイトを置いた。今日のように事業が拡大し、これだけ膨大な仕事をする法人になるとは夢にも思わなかった」JSTの役割が増した背景には、科学技術の重要性を理解し、支援する国会議員の存在と、基礎研究分野でも社会への応用を重視する研究者が増えてきたという社会的21