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概要

JST20周年記念誌JapanWay0203

特別寄稿──JSTへの期待2010年ノーベル化学賞根岸英一2010年に幸いにもノーベル化学賞を北海道大学の鈴木章先生と米国デラウェア大学におられたRichard Heck先生との三人でShareすることになった。その直後に当時の菅直人総理大臣に招かれて日本の理工系の研究と開発を更に活性化するにはどうするべきか、進言をする機会を得た。その直前に北海道大学の高橋保博士(パデュー大学博士研究員)らとこの件で検討していたので、化学分野を中心に、理工系分野で、日本がそしてさらには世界がやるべき研究テーマ10項目をすぐに提案した。その10項目のTop Threeとして次の三項を強く進言した。1 CO2の還元による有益な化学薬品、例えばCO,CH3OH,CH4等々、の合成。2当時発見されたばかりのフラーレン等を含む有機材料のさらなる合成法の開発。3セルロース等の安値かつ大量に得られる天然資源の有効利用による衣食住のみならず、高度な薬品類やその他諸々の有機物の合成。その1~2年後にJSTでACT-C(先導的物質変換領域)と名付けられた全国的かつ最高レベルの研究体制が確立され、私に研究総括の大役が廻ってきたのは2012年のことであった。それから早くも数年がたった。半年に一度数十チームによる研究発表会では、様々な分野での確かな進展ぶりを実感できる段階に来ていることは間違いない。しかし、先の道のりはまだまだ長いことも、かなりの数のプロジェクトについて云えそうである。日本がこれ等の分野で世界をリードすべく数々の研究開発、さらには実用化面でのすばらしい成果を出し始めていることも確かであると信ずる。1935年生まれ。パデュー大学特別教授。東京大学卒業後、民間企業在籍中にペンシルバニア大学で博士号取得。パデュー大学博士研究員から同大学助教授、シラキュース大学准教授を経てパデュー大学教授となる。2010年に有機合成におけるパラジウム触媒カップリング反応の開発によりノーベル化学賞受賞。2011年よりJST総括研究主監。2011年から2015年JST戦略的創造研究推進事業の先導的物質変換領域(ACT-C)研究総括補佐。8